フルールショコラティエ

作者:波多蜜花

 夜の街を眺め、手元のトランプを蝶に変えて遊ばせていた女が動きを止めた。
「あなた達に使命を与えます。この街にチョコレートを専門に扱う菓子職人が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認……そうね、可能ならば習得した後に殺害しなさい」
 グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わない、そう女は言った。
「了解しました! ミス・バタフライ! 一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう? ならばこのカルシーが参りましょう!」
 鞭を腰に下げた猛獣使いのような格好をした女が頭を上げて答える。
「その通りです、理解したならお行きなさい。期待しているわ」
「はい、このビータもミス・バタフライのお言い付け通りに参りましょう」
 踊り子のような姿をした女が立ち上がり、優雅に一礼をしてみせた。カルシーとビータが音もなく姿を消すと、ミス・バタフライもまた姿を消したのだった。


「ショコラティエを狙う事件が起きてしまうのですね」
 チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)がヘリポートの風に柔らかな金色の髪を浚われながら信濃・撫子(撫子繚乱のヘリオライダー・en0223)へと問い掛ける。
「せや、チェレスタが危惧しとった通りになってしもたね」
 撫子が頷いて、チェレスタからケルベロス達に視線を移す。
「前々からミス・バタフライが動いてるんは皆も知っての通りやね。今回狙われるんはチョコレートを専門に扱うパティシエ、ショコラティエの女性なんよ」
 そこへミス・バタフライの配下である螺旋忍軍が2名現れ、教えを請うのだという。その仕事の情報を得る、または習得してしまえば相手を殺して去っていく。
「この事件の厄介なとこは、それを阻止せんとケルベロスにとって不利な状況が発生する可能性があるって事やね」
 それもかなり高い確率で、と撫子が分厚い手帳を捲る。それでなくとも、一般人に被害が及ぶのだから阻止しなければいけない案件である。
「皆には狙われるショコラティエの女性……チエさんの保護、それから螺旋忍軍の撃破を頼みたいんよ」
 狙われる対象を事前に避難させてしまうと他の対象を狙って螺旋忍軍が動く為、被害を食い止める事ができないのだと撫子が説明を続ける。
「今から行けば螺旋忍軍が現れる3日前にはチエさんのとこに到着できるはずや。チエさんにはうちから説明させてもうてあるよって、ショコラティエの仕事を教えてもらうんがええと思うわ」
 その結果によっては、チエの代わりとして囮になる事が可能だと撫子が微笑む。
「バレンタインも近い事やし、ショコラティエから教えてもらうんもいい経験になると思うよ。もちろん、囮になる為には見習い程度の力量が必要になってくるよって、かなり頑張ってもらわんとあかんけどな」
 訪れる螺旋忍軍の数は2名で、鞭使いのような女のカルシーと踊り子のような女、ビータだ。カルシーは螺旋忍者に似たような力を使い、ビータはエアシューズに似たような力を使ってくるようだと撫子が手帳から顔を上げる。
「チヨさんの工房はのんびりした田舎にあってな、周囲には民家も少ないんよ。ちょっと広めの庭があるよって、そこで戦うんがええんとちゃうかなって思うわ」
 そんな田舎で客が来るのかと問えば、通信販売を専門にしているらしく問題はないのだという。
「まぁ、せやからこそ皆に教えてくれる時間があるんやと思うけどな。知る人ぞ知る人気のショコラティエみたいやから、注文も結構なもんみたいやよ」
 人通りもほとんどないので人払いなどの必要はなく、戦闘に集中する事ができるだろう。
「上手く囮になれたら、技術を教える為の修行やとか言うて有利な状況で戦闘を始めることもできるやろから、色々考えてみるとええと思うわ」
 そう言って撫子が手帳を閉じる。
「滅多にない機会やと思って、ショコラティエの修行もチヨさんの護衛も頑張ってきてな!」


参加者
ナコトフ・フルール(千花繚乱・e00210)
エレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)
御伽・姫桜(悲哀の傷痕を抱え物語を紡ぐ姫・e02600)
花筐・ユル(メロウマインド・e03772)
七星・さくら(桜花の理・e04235)
チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)
上里・もも(遍く照らせ・e08616)
レイン・プラング(解析屋・e23893)

■リプレイ

●チョコレートレッスン
 ケルベロス達を出迎えてくれたのは、おっとりとした雰囲気の女性ショコラティエのチヨ。工房に招かれて入ってみると、甘いチョコの匂いが溢れる洗練された空間が広がっていた。チヨに案内され、荷物を置くと寝泊りする場所などの細やかな説明を受ける。
「それじゃ、さっそくチョコの修行に入ってもらうわね」
 おっとりとした中に、職人らしい芯の強さを感じてケルベロス達は居住まいを正して返事をする。それが3日間の修行の始まりだった。
「まずは基本からなのだけど……ふふ、それなりに心得のある方も初心者の方も同じスタートラインだと思って頑張ってみてね」
 まずはテンパリングから、とチヨがチョコの湯煎を始める。テンパリングとはチョコの温度調節の事で、これを怠ると味の劣化や光沢がでなくなるのだとチヨがチョコが溶けたボウルを氷水に浸けて取り出して再び混ぜる、という温度調節を実演しながら説明を入れてくれた。
「チョコの種類によって温度が少しずつ違うのですね」
 花筐・ユル(メロウマインド・e03772)が手にしたメモ帳に、チヨのいう温度やコツを書き記していく。
「チョコレート、とても奥が深いのですね……!」
 アイズフォンで軽く検索をして知識としてはあったけれど、チヨの実演を見ていたエレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)が感嘆の声を上げた。まさに百聞は一見にしかずだ。
「プロの方は大理石でテンパリングをすると思っていたよ」
「ふふ、大理石でもするわよ。大理石の上でしか作れない細工もあるから」
 それも興味深い、とナコトフ・フルール(千花繚乱・e00210)が折角プロに教わる機会なのだからとその手付きを真剣な眼差しで見つめた。テンパリングが終わったチョコを、チヨが型へ流し込む。
「とっても艶々で、固める前から美味しそうね」
「そうですね、これくらい艶々で美味しそうに作れたら……きっと喜んでもらえるでしょうね」
 もうすぐバレンタインということもあり、任務として教わるだけではもったいないと七星・さくら(桜花の理・e04235)が同じくらい艶々で美味しそうなチョコを作るのだと意気込むと、チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)も最愛の夫の為にと控え目ながらも優しい微笑を見せた。
 そんなケルベロス達へチヨがどんなチョコを作ってみたいのかと問い掛ける。
「私はショコラオランジュを作ってみたいです」
 オレンジコンフィにチョコレートを半分程つけてチョコ掛けにしたお菓子は、キラキラとして見た目も美しい。レイン・プラング(解析屋・e23893)の希望にチヨが後でコンフィから作りましょうと頷いた。
「薔薇の形を模した花束のようなチョコレートが作ってみたいのですが、できるでしょうか?」
「薔薇の形のチョコを寄せてラッピングすれば華やかだし素敵だと思うわ」
 御伽・姫桜(悲哀の傷痕を抱え物語を紡ぐ姫・e02600)の問いに薔薇の形はチョコと水飴を混ぜたプラスチックチョコレートと呼ばれる物を作ってそれを使えばいいとチヨがアドバイスしていく。
「うーん、まだどんなのを作りたいか決まってないんだけど……」
 そう前置きした上里・もも(遍く照らせ・e08616)が、修行が終わるまでには決めるからと明るく微笑んだ。他にも、宝石を模した物やボンボンショコラ、トリュフと作りたいチョコの話題は尽きない。そんな楽しそうな主達の様子を、少し離れた場所で4体のサーヴァント達が用意されたクッションの上で眺めていた。

●甘い香りに誘われて
 テンパリングを習得したり、翌日の準備をするという過程で1日。そして翌日、各々の作りたいチョコの練習が始まった。
「ここをこうして……本物の薔薇の花びらに見えるように少し外側に丸めるのよ」
 花束のような、という姫桜のリクエストに答えて、昨日のうちに作ったプラスチックチョコレートは白とピンク、それからチョコの色そのままの物。教わる姫桜の目付きは真剣その物で、アドバイスされた通りに花びらを重ね合わせて薔薇を作り出していく。
「白とピンクを混ぜたり、中央をピンクにして外側を白にしても綺麗ですわね」
 手元に出来上がった少し歪な薔薇のチョコを見て、まだまだ薄くて綺麗な薔薇を作ってみせると姫桜が意気込んだ。その横ではユルがほんのりと薔薇の香りがするボンボンショコラを作ろうと、美しくテンパリングしたチョコを型へと流し込む。
「2~3分したら、さかさまにして固まっていないチョコを落としてね」
「はい、その後は固まるまで待つ間に中に入れるガナッシュを作る……で合っているかしら?」
 正解、とチヨが微笑めばユルが安心したように唇を緩めて頷いた。
「うーん……どんなチョコにするか悩むわ」
「作るチョコですか? それとも……差し上げるチョコ?」
 テンパリングする前のチョコを前に悩むさくらに、チェレスタが熱した生クリームをボウルに入ったチョコに注ぎながら問い掛ける。腕を組んで難しい顔をしたままのさくらが、どっちもだと答えた。
「好きな方への贈り物?」
 チヨが笑ってさくらに言うと、チェレスタが掻き混ぜるボウルを見て湯煎もするといいとアドバイスを送る。
「そうなの、何がいいか迷ってしまって……」
「お相手の好きな物を作ってみたら?」
 チヨの言葉にさくらが相手の好きな物を脳裏に浮かべる。刀剣……は難しいだろうし、あとは……思い付いて、ほんのり頬が赤くなる。
「思い付きました?」
 チェレスタに問われ、こくりと頷いた。
「桜の形をしたチョコにしようかなって……」
 少し恥ずかしげに言うさくらに、チヨが桜の型や桜の模様が数種類描かれた転写シートを用意してくれると、
「わたし、頑張るわね」
 と、腕捲りをしてテンパリングを始める。隣り合うチェレスタとお互いの大切な人の話で盛り上がってしまって、ほんの少しだけ失敗したのは内緒の話だ。
 宝石の形を模したチョコを作ろうと頑張っているのはエレで、ダイヤの形のチョコや飴でコーティングしたキラキラ光るチョコの作り方をチヨに教えてもらっていた。
「それなら飴を先に溶かして型に塗り付けて固めるのがいいかしら」
「抹茶やホワイトチョコ、フルーツゼリーなんかも入れたりとかはどうですか?」
 宝石箱みたいなチョコになりそうね、とチヨが笑ってくれてエレも出来上がりが楽しみになってくる。その後ろでは、レインがオレンジコンフィに挑戦していた。最初から作るには3日間では足らない為、チヨが作りかけていた物を少し譲ってもらってその続きからしているのだ。
「綺麗なオレンジです」
 チヨが作っていたものだから無駄にせぬよう慎重に作業をしようと、レインが慣れないながらも丁寧な手付きでたっぷりの砂糖が溶けた鍋の中で輪切りにされたオレンジを火に掛ける。
「美味しく作ろうと思うと、結構時間が掛かるものなのよ」
「はい、だからチヨさんの作るものは人気なのですね」
 美味しい物を誰かに食べてもらいたい気持ち……それはレインにも芽生えている感情だ。美味しくできたら、あの人にも――そう思うと、より一層楽しい作業に思えた。
 何を作ろうか迷っていたももは、ふと目に付いた四葉のクローバーをモチーフにチョコを作る事に決めた。
「ハートの味が違うチョコを4個セットにしてクローバーにしてもいいし……クローバー型のチョコを作っても楽しそうだね!」
 行動型のももがやると決めたらあとは早かった。テンパリングしたチョコを型に流し込んで、どんな飾りをすれば綺麗に見えるか考える。
「クローバーがモチーフなのね? それなら、ネイルアートみたいにアラザンを1粒、宝石に見立てて飾ったりとかはどうかしら」
 パール粒のようなカラーアラザンや、転写シートを持ってきてくれたチヨがももに話し掛ければ、もものアイデアが広がっていく。考えるのが楽しくなってきて、ももが笑みを浮かべた。
「おや、ももクン。鼻の頭にチョコが付いているよ?」
「え? あー、ほんとだ!」
 ナコトフが見せてくれた手鏡を見て、ももが笑う。そんなキミもまた愛らしい、とナコトフがハンカチで拭ってくれた。
「ナコトフさんは何作ってるのかな?」
「ボクかい? ボクはこの輝くばかりの美しさを表現するにはどうすればいいか悩んでいるところだよ」
 ナコトフはももと一緒の旅団で、よく一緒にバカな事をしてはしゃぐ友達だ。日頃から聞いている言動に、ふーんそっかーと相槌を打ちながらももは手元でちょっと余ったチョコでなにやら作り出す。
「ところで……ももクン、それは何かな?」
「これ? ででーん! これはナコトフさんの顔!」
 南瓜のような珍妙な顔? のようなチョコレートにナコトフが目を丸くする。
「ボク? ははっこいつぅ☆」
 ならば自分は犬型チョコだと、ナコトフが張り切ってチョコレートのテンパリングを始める。きっと美しい犬型チョコを作るのだろう。
 楽しい修行の日々は、いつの間にか螺旋忍軍が訪れる日を迎えようとしていた。

●時にはビターに
「チヨさんはこちらに隠れていてくださいね」
 チェレスタの言葉に、チヨが頷く。2階の物置にチヨを隠し、ケルベロス達は螺旋忍軍が来る前に囮となる者以外は庭に身を潜めた。それから然程もせず、玄関のチャイムが鳴った。
「こんにちは! こちらにショコラティエさんがいるって聞いてきたんですけど!」
「チョコレートの作り方を教えて頂きたいのですわ」
 カルシーとビータと名乗った2人組みを迎えたのは囮となったユルだ。先生は不在だけれど、弟子の私で良かったらお教えしますよと工房内に招き入れ、信用させる為に2人にテンパリングを教えて自分が技術を盗むに値する人間だと思わせた。
「疲れたでしょう? 少し休憩がてら庭に出て細工に使うミントや花の採集に行きましょう」
 にこりと微笑むユルに逆らう事もなく、2人は庭へと出る。そこにあるミントを摘んでくださいますかとユルが声を掛けた。
 言われるままに2人がしゃがんでミントに手を伸ばす。無防備なその背中は絶好の的――声もなく、ももが動いた。カルシーの無防備な背中へ流星の煌きを蹴り放つと、オルトロスのスサノオが口に咥えた黒い刃で切り付ける。合間を置かぬように続けてエレが星の名を冠した『Betelgeuse』のスイッチを押し、さくらの背後にカラフルな爆風を起こすと、ウイングキャットのラズリが背中の翼を羽ばたかせエレと姫桜に清らかな風を送った。
 その風を受け、姫桜が大切な仲間を護る願いを込めて雷で編まれた壁を構築すると、ボクスドラゴンのシオンが姫桜へ属性を注入していく。続けてユルがビータに向けてライトニングロッドを構え杖の先から天罰の如き雷を放つと、シャーマンズゴーストの助手が原始の炎を召喚しカルシーに放った。
「な、何!?」
 状況が把握しきれないカルシーが動揺した声を上げる。ビータが振り向き、ケルベロスかと叫んだ。
「その通り、理解したなら大人しく観念してくれよ!」
 ナコトフがウィンクを飛ばすと同時にエアシューズのローラーを回転させ、炎を纏わせたそれでビータを蹴り付けると、さくらが高速演算により見つけ出した弱点に向かって烈火の如き一撃をカルシーに叩き込んだ。それは先程のエレの支援により更に威力が高まっていたのだろう、カルシーを弱らせるには十分な一撃だった。
 チェレスタが前衛に向けて雷の壁を巡らせると、レインが惨殺ナイフを手にしてグラビティの弾丸を放つ。
「貴方の逃げ場は、もうありません」
 カルシーが弾丸を回避しようとする先に立ち塞がり、手にしたナイフで切り裂いた。弱ったカルシーが倒れる落ちる前にレインが素早くその場を離れた。
「カルシー!」
 ビータの声が響くのと、ももが視線の先に激しい白い雷を迸らせるのと、どちらが先だっただろうか。
「さあ、ギアを上げるぜ!」
 強化が施された足で鋭い蹴りを放つと、スサノオが地獄の瘴気を解き放つ。
「何をどうすれば地球の支配権が揺らぐのかは知りませんけど、させるわけにはいきませんからね!」
 エレの持つ杖から雷が迸る。荒れ狂う稲光のようにビータを打ちのめすと、ラズリが稲光を追い掛けるようにキャットリングを放った。
「――さぁ、あなたの御伽噺を私に聴かせて下さいな?」
 分の悪さからか、逃走の姿勢を見せたビータに姫桜が『Conte de fee(コント・ド・フェ)』を紡ぐ。それがビータの動きを鈍らせるとシオンがボクスブレスを放ち、ユルが行く手を阻んだ。
「――大丈夫、痛みは一瞬だから。……Traeume suess」
  魔力を籠めた純白の薔薇が舞う。美しい、と思った瞬間には、『茨姫のくちづけ(ドルンレースヒェン・フェアフューレン)』がビータを凍てつく痛みに閉じ込める。そして続けざまに助手が非物質化した爪を振るう。
「調子に乗らないことですわよ……!」
 ビータの身体が独楽の様に舞い、近くにいたエレとスサノオ、そしてさくらへ守りの力を薙ぎ払うような鮮やかな蹴りをみせた。
「まだそんな元気があったのかい?」
 雷の力を帯びた槍を構えたナコトフの神速の突きが舞い終わったビータに刺さると、さくらが受けた傷を意に介さず前に出た。
「えぇと、乙女の拳でチョコを砕いて、炎で溶かして想いを篭めた赤い糸を絡めたら――」
 さくらの小指にちくりとした痛みが走る。そこから伸びた鮮やかな紅い糸がビータを追い詰める。
「最後は冷やして固めてKO! だっけ?」
 放たれた『紅絆(アカイイト)』は、見事にビータをノックアウトしてみせたのだった。

●美味しい時間
 チヨへ戦いが終わった事を報告し、庭のヒールが済んだ頃。折角だもの、チョコレートパーティーをしようと言い出したのは誰だったのだろうか。それにチヨも賛成して全員で作ったチョコを食べる、小さなお茶会が開かれた。
「とっても可愛らしくて、食べちゃうのが勿体無いですね」
 エレがラズリを肩に乗せ、机に並べられたチョコを眺める。さっそく、と自分のと交換して口に運び、美味しいと微笑むのはユルとレイン。さくらも皆のチョコの味が気になると手を伸ばす。
「へい、ナコトフさん。これあげる! ちょっと早いバレンタインデーだ」
 キッチンで追加のお茶を淹れるべく離れていたナコトフに、ももが可愛らしい包みを投げた。取り落とすなんてみっともない真似もせず、ナコトフがそれを受け止める。ホワイトデーは期待しちゃうぜ! と戻っていったももに、お返しはアネモネのような鮮やかな期待を込めて、とナコトフが微笑んだ。
「とても美味しいですわ」
「本当に……頑張って習った甲斐がありましたね」
 想いを込めたチョコはどれも美味しく、姫桜とチェレスタの頬が緩む。甘く美味しいひと時は、ケルベロス達を癒してくれるようだった。

作者:波多蜜花 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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