動く巨大雪だるま

作者:天木一

 真っ白な風景。家も地面も何もかもが白く染まっている。今も降り止まぬ雪はどんどん積もっていく。
「うーさぶさぶっ。雪積りすぎじゃないかなぁ」
 ずぼっずぼっと深い雪に小さな足跡をつけながら少年が進む。
「でもこれだけ雪があったら試せそう! つっくるぞー!」
 手袋をした手で雪を丸め始め、それを転がして少しずつ大きくしていく。やがてでこぼこな一塊となった雪に、もう一つの一回り小さな雪玉を乗っけた。
「よーし、あとはこれで顔をつくってと」
 そこへ用意しておいた黒いペットボトルの蓋を目に、ニンジンを鼻に見立ててくっつける。木の枝を腕にし、最後に赤いバケツを頭に被せて雪だるまが出来上がった。
「雪だるまのかんせー! あとは呪文をとなえて……えーっと、ゆーきだるまさん、ゆーきだるまさんっ。おーきなお腹で、学校をふんづけちゃってくださいな~」
 少年が唱え終わるとしーんと音が雪に吸われるように静かになる。
「ちぇっ、動く雪だるまが学校をぺしゃんこにしてくれるって噂があったのに……」
 やっぱり無理かぁと、少年は残念そうに頭を振って雪を払う。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 突然現れた第五の魔女・アウゲイアスが少年の胸に鍵を突き刺した。少年は無いが起きたのか理解する間もなく意識を失って雪だるまに寄りかかるように倒れた。
 少年に一瞥もくれず、魔女はその場から消え去る。
 後に残されたのは倒れた少年と、いつの間にか現れた高さ5mにもなる巨大雪だるまだった。
『ごろごろごろごろ、学校を踏んづけちゃうぞー』
 雪だるまがごろりと転がり、学校へ向かって動き出した。
 
「雪がふってるよっ! 雪といったらやっぱり雪だるまだよねっ!」
 寒さも何のその、ジャスティン・ロー(水色水玉・e23362)が元気いっぱいにケルベロスへと声を掛けた。
「第五の魔女・アウゲイアスが現われ、奪った『興味』から雪だるまの姿をした怪物型ドリームイーターを生み出してしまったようです」
 事件についてセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明する。
「ドリームイーターはグラビティ・チェインを奪おうと行動します。周辺の町が被害に遭えば人が死んでしまいます。そうなる前に現場に赴きドリームイーターを倒すのが今回の作戦となります」
 今ならまだ雪だるまが現場に居るタイミングで踏み込める。
「敵が現れるのは秋田県にある町です。少年は家の近くの空き地で雪だるまを作っていたようです」
 少年は雪だるまのすぐ傍で眠っている。敵が狙う事は無いが戦闘の巻き添えで怪我をする可能性はあるだろう。
「ドリームイーターは雪だるまの姿をしていて、雪や冷気を操った攻撃を得意としているようです」
 雪だるまらしい見た目通りの攻撃をしてくる。
「大きな雪だるまは可愛いかもしれませんが、人を襲うとなると放ってはおけません。眠ったままの少年を目覚めさせる為にも、雪だるまを破壊し人々を守ってください」
 お願いしますとセリカは頭を下げ、出発の準備に取り掛かる。
「おっきな雪だるま! たのしみだね!」
 こんなくらいかなぁと、ジャスティンが両手を広げて円を描いてみせる。
「雪だるまをこわすのはもったいないけど、でもそれもたのしそうだね! お外はさむいけど、みんなでがんばろー!」
 ジャスティンの掛け声にケルベロス達も元気に返し、雪だるま退治の作戦を考えるのだった。


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
ゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)
相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)
オーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928)
ジャスティン・ロー(水色水玉・e23362)
長月・秋華(読者の秋・e29545)

■リプレイ

●雪の季節
 白い風景。雪によって化粧が施され、今もまだ雪は降り続いていた。
「雪は好きだよ、なんかワクワクしちゃうんだ。でも冷たいのも寒いのも嫌い……」
 ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)は足跡をつけながら体を縮こまらせ暗い顔を見せる。
「しかーし! 今日の俺は、ダウンジャケットにマフラーと手袋も忘れずに着けてきたので寒くなーい! ふはははは! ESPの寒冷適応で防寒対策バッチリだ!」
 だが一転して防寒装備を翻すと、寒さを感じさせぬほかほかの装備で雪の感触を楽しんでいた。
「雪だるま、小さいころ作ってたけど、5mともなると小さな家サイズね。それが襲ってきたら、ちょっとシュールかも」
 防寒着を着込んだユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)は、巨大雪だるまが動くのを想像して口元に笑みを作る。
「でも、学校を踏み潰すにはサイズが足りないわよね。転がってるうちに、もっと大きくなったりするのかしら?」
 どこまで大きくなれば学校を踏み潰せるのだろうかと、巨大化していく雪だるまを思い描く。
(「動く雪だるま、だけならファンタジーで夢がある。でも人殺すのは今まで読んだ本でも殆どなかった。雪山ホラーでも雪だるまが殺人鬼なんてほぼないし……」)
 長月・秋華(読者の秋・e29545)はホラーに雪だるまが出て来て人を襲うというシュールな姿を想像する。
「まあデウスエクスなら放っておくわけにはいかないし、何より寒いからさっさと倒して帰ろ」
 面倒臭そうに溜息を吐き、早く帰りたいというオーラ全開で皆の後ろに続く。
「巨大雪だるま、とっても可愛いのでしょうねぇ! って、喜んでる場合ではありませんでしたね。」
 雪だるまが可愛くても敵となれば倒さなくてはならないと、相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)が笑顔から真面目な顔に戻る。
「犠牲者を出さないように、そして男の子が風邪引かないように、早くなんとかしなくては、ですね」
 歩く速度を速め、空き地の見える道へと出た。するとそこには塀の上から顔の覗かせる、巨大な白い雪だるまがどーんと立っていた。
「でっかい雪だるま……わー大きすぎー!?」
 目を丸くして見上げたジャスティン・ロー(水色水玉・e23362)が、上を向きすぎて後ろに転びそうになる。それを後ろからボクスドラゴンのピロモンが支えた。
「ととっ、5mってほんとに学校がぺしゃんこになっちゃうよー! ちゃんと止めないと!」
 こんなのが転がってぶつかったら大変だと、寒さも跳ね退ける高いテンションでロッドを振り回した。
「おっきい雪だるまさん……すごいっ」
 雪をワクワクした顔で踏みしめていたオーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928)も、驚いた顔で雪だるまを見上げる。
「倒しちゃうのはかわいそうだけれど……みんなを守るためだからっ!」
 お仕事だから頑張って倒そうと拳を握って気合を入れた。その頭の上ではウイングキャットのなるとが寒さに体を丸めていた。
「動く大雪像、か……雪祭りやテーマパークなら人気が出ように」
 現れる場所を間違ったなと雪だるまに気付かれぬよう注意しながら、ゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)はキープアウトテープを張って空き地周辺を立ち入り禁止にする。
「学校で何かいやなことでもあったのでしょうか」
 何故学校を壊してしまおうと思ったのかと、十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)は首を傾げる。
「ともあれ、このままほおっておくと男の子自身も危険ですから、何とかしましょうか、ね?」
 まずは敵を倒すのが先決と、親しげに周辺の人に話し掛けて避難するように説得する。

●巨大雪だるま
 そうして周辺の人払いを終わらせると、空き地に鎮座する巨大雪だるまと、倒れている少年を確認する。
「それでは始めましょうか」
 踵をこん、こん、こんと鳴らすと、泉は素早く駆け抜けながらナイフを抜き銀の刃を閃かせた。そのまま通り過ぎると雪だるまの胴が抉れ雪が飛び散る。
「ほ~ら、こっちだよ~。よそ見してるヒマなんてないだろ!」
 カッコいい革靴で雪を蹴って駆けるルアは、その足に炎を宿らせて派手に敵を蹴り上げた。
「少年を連れ出す時間を稼がないとね、私たちが相手よ!」
 声を掛けたユーロは力強く心揺さぶる歌を唄い、敵の注意を引く。
『ごーろごろごろごろ、踏んづけちゃうぞー』
 すると巨大雪だるまがゴロン、ゴロンと横倒しになって転がってくる。ゆっくり動いているように見えるが、その巨体は一回転で十メートル近くを移動する。あっという間に間合いを詰めてそのまま体当たりをしてきた。
 その前に立ち塞がったピロモンとなるとが突進を止めようとブレスと魔法を放つが、雪だるまの勢いは僅かにしか抑えられずに巻き込まれて雪塗れとなった。
「怪我をしてもすぐに治療するからねっ」
 オーキッドは剣を突き立て雪の上に星座の輝きを描いて仲間達に力を与える。
「雪の上で寝たら冷たいよー! 毛布で包んじゃおっ!」
「そっち」
 仲間が注意を引きつけている間に、少年の元に駆け寄ったジャスティンは毛布で冷たくなった体を包む。そして秋華が言葉少なく上半身を持ち上げると、2人で抱き上げて空き地から運び出した。
「……折角子供が喜びそうな造型をしているんだ。大人しくそこで鎮座しててくれないか?」
 敵を睨みつけたゼノアの袖口から鎖状のエネルギーが蛇のように飛び出し、死角に回り込んで近づくと起き上がろうとする雪だるまの体を締め上げる。そこから毒液が流れ込み白い雪を汚した。
「可愛い雪だるまを攻撃するのは可哀想な気もしますが、頑張らなくちゃ……」
 震える手で2つの弓を束ねた美月は漆黒の巨大矢を射る。真っ直ぐに飛んだ矢は雪だるまの胴を貫き風穴を空けた。
「反撃する間は与えませんよ」
 跳躍して雪だるまの側面に着地した泉は、グラビティ・チェインを込めたナイフを突き刺し体を削り取る。
「攻撃しても出てくるのが雪ばかりじゃ、手応えががないな」
 獣のように俊敏に駆け寄ったゼノアがオーラを纏った拳を雪だるまの腹に打ち込む。その後から吹き抜ける衝撃が雪を吹き飛ばした。
『ゆーきやこんこん、まーるまる小さなゆーきだーるまー』
 呑気な歌声が響くと、雪だるまの体から分裂して小さな子供サイズの雪だるま達が飛び出して襲い掛かってくる。
「ヘッズ・アップ!」
 ルアの声にグラビティが乗り、衝撃波となってミニだるまを消し飛ばす。だがミニだるまは次々と生み出され、近くのケルベロス達に体当たりをして砕け散りながら凍結させる。
「ご、ごごごご、ごめんなさいっ」
 謝る美月の背後に現れた御業が火弾を撃ち出し、冷たい雪だるまを炙って溶かす。
「みんなを守ってみせるよっ」
 オーキッドの掌にぼんやりとした小さな光が集う。頭に着地したなるとが風を起こすと、光は一つとなって届き泉の傷を癒してしまう。
「これだけ大きいとどこから攻撃したものかしら」
 鋼を身に纏ったユーロは拳を打ち込む。ずぼっと肩まで雪の中に埋まり、引き抜きながら雪をごっそり掻き出した。
「安全な場所に寝かせてきたよー! 寒さに負けないで皆がんばって!」
 元気に駆け戻ったジャスティンが、ロッドを振るい雷の壁を敵と味方の間に築いてミニだるまの突進を受け止めた。
(「雪だるまに氷効くのかな。でもやる」)
 続いて戻った秋華が、物は試しと紅葉が描かれた大筒から弾を撃ち出す。それが雪だるまに命中すると、その体が雪から氷へと変わっていく。
「動きにくい足場でも、使い方によっては便利にもなるものです」
 戦いの余波で盛り上がった雪の山を滑るように移動した泉は、炎を纏わせた足で敵に回し蹴りを浴びせる。高熱が雪を溶かして蒸発させる。
「ほ~らほら、こっちだぞっと!」
 反対側から近づくルアは空の霊力を革靴に宿し、華麗に跳躍すると傷口目掛けて蹴りを叩き込んだ。
『ごーろごろ、ぜーんぶ踏ーんづーけちゃえー』
 ごろんと雪だるまが転がって来る。
「そんな鈍重な攻撃に、当たってやるわけにはいかんな」
 大きく跳躍して躱しながらゼノアは手にオーラを集めて撃ち出し、転がる雪だるまの体を抉った。それでも雪だるまの進行は止まらず、ジャスティンの体を踏み潰した。通り過ぎた後に真っ白に染まったジャスティンが残される。
「ふぁっ!?」
「大丈夫ですか? 今回復しますねっ」
「すぐに怪我なんて治しちゃうからっ、受け取ってっ」
 美月はオーラを分け与えて凍えた体を元に戻し、オーキッドはオーラを掌に集めてボールのように放り投げると、傷を癒し体を浄化する。
「やっぱり雪は溶かすのが一番よね」
 ユーロはその手に巨大な炎の剣を生み出し、大きく踏み込みながら薙ぎ払って周囲の雪を溶かしながら、敵の腹を斬り裂き溶かす。
(「まずは頭を狙ってみるか」)
 大筒を構えた秋華は、引き金を引き雪だるまの顔を撃ち抜く。眉間に穴が空くが、雪だるまは構わず攻撃してくる。
「うぅ、冷えちゃったよ……もう許さないんだからっ! 補助展開コード:鷹の目――千里を見透す眼となって!」
 ジャスティンが宙に術式を起こすと、自らと仲間の眼前に眼鏡のホログラフィが展開され、視力を飛躍的に引き上げた。

●増えたり減ったり
 雪だるまがゴロゴロと転がると、周辺の雪が減り雪だるまが一回り大きくなった。雪をその身に集めたのだ。
『ゆーきゆーき、ふーれふーれ、もーとふれー』
 ミニだるま達が次々と作り出されて襲い掛かってくる。
「道を作ります」
 駆け出しながらもう一本のナイフを抜いた泉は、左右のナイフを縦横に振り抜き、ミニだるまを斬り裂きながら道を開くと刃を突き立てる。
「重そうだな、ダイエットを手伝ってやる」
 その後に続いて接近したゼノアが星座の力を込めた剣で、横一線に斬りつけた。
 雪だるまは倒れるように覆い被さって転がろうとする。
「わわぁっ、あ、危な~い!」
 驚いて目を閉じた美月は腕をぐるぐると回し、敵をポカポカと殴りつけて雪を削り取る。
(「寒いからそれ以上近づくな」)
 照準を下げた秋華は銃弾を敵の足元に撃ち込み、地面に積もる雪ごと雪だるまを凍り付かせた。
「これ以上デカくなられると厄介だからな」
 その間にルアの元から生える蔓が触手のように蠢き、雪だるまを縛り上げるように拘束した。
「仕方ないとはいえ攻撃するたびに寒さが増すわね、風邪をひく前にさっさと終わらせるわよ!」
 背後から飛びついたユーロは鋼の拳を叩き込み、ボコッと後頭部の雪を吹き飛ばした。
「デカカワイくても、みんなを守るために倒しちゃうよっ!」
 オーラを纏ったジャスティンが体当たりのように懐に飛び込み、拳を打ち込んだ。
『おーきな雪玉、つくっちゃおー』
 ずぶりとジャスティンの体を雪だるまが内部に取り込もうとしたところへ、ピロモンがタックルで引き離す。
「寒いのなんて、飛んでっちゃえっ!」
 オーキッドの放つ暖かな光が体を包み込み。凍傷を消し去って春のうららかな温もりを生み出した。
『がっこも、ひーとも、踏んづけよー』
 雪だるまがミニだるま達を宙に放り、落下させてくる。それと同時に雪だるまも横倒しになって転がってきた。
「ハハッ、まるで雪合戦だな!」
 楽しそうにルアは雪を躱すと、声を放つと衝撃波となって雪を吹き飛ばし、雪だるまの動きを鈍らせる。
「雪だるまは大人しく飾られてろ」
 敵の周囲を飛び跳ねながらゼノアが鎖を巻き付け、がんじがらめに拘束する。
「制御が難しい技ですが、やってみせましょう」
 するりと滑らかに間合いを詰めた泉は、一切無駄のない最速の一撃を雪だるまの顔に叩き込む。ナイフが深く突き刺さり、それを一気に振り抜くと顔の上半分を斬り飛ばした。
「雪だるまでサッカーだよっ」
 元気に雪だるまを駆け登ったオーキッドが、残った顔を蹴りつける。すると頭部の雪玉が転がり落ち、なるとが爪で引き裂いた。
『ゆーきがあーれもいくらでもーゆーきだるまは作れるよー』
 胴体からぽこんと小さな玉が作られそれが新しい顔になる。だが雪だるまのサイズは随分と縮んでいた。
「可愛いですけど、ごめんなさいっ!」
 美月が炎を浴びせて雪だるまを溶かしていく。
「そのまま全部溶かしてあげるわ」
 跳躍したユーロが炎の剣を振り下ろし、体に真っ直ぐ縦の傷を走らせる。すると熱で溶けた体がどんどん水に変わっていった。
『小さな雪だるまでもーごろごろすーればおっきくなるのー』
 雪だるまが転がって雪を集めようとする。
「秋は夕暮れ。君は沈め」
 だがそうはさせないと、雪を固めて台を作った秋華は銃身を乗せて狙いをつける。そして銃口から紅葉のような色合いの太いビームが放たれた。エネルギーの残滓が紅葉のように飛び散り、光線は雪だるまを貫き内部を侵食していく。
 残った雪だるまは、もう道端にあるほどの普通の雪だるまサイズにまで縮小していた。
「これで止めだよっ!」
 塀に上ったジャスティンがロッドを掲げると稲妻が奔り、打ち据えられた雪だるまは粉々に砕け散った。

●雪遊び
「ゆっくり眠ってください」
 泉はブルースハープに口をつけて息を吹き込む。魂を安らかに眠らせるメロディが空き地に響いた。
「じゃ」
 少年と壊れた塀にヒールを掛けると、秋華は早く暖かいところで本が読みたいとさっさと帰ってしまった。
「ごめんなさい……」
 事件の発端となった少年が頭を下げる。
「一緒に雪だるま作ろうよ」
「え、いいの?」
 笑顔でルアが誘うと、俯いていた少年の顔が上がる。
「あのね、あのねっ、キミの作った雪だるますごくすごーくかっこよかったよっ。ボクにも作り方おしえてほしいなぁ♪」
 なるとを抱えたオーキッドが少年の作った雪だるまをべた褒めする。
「本当!? ありがとう!」
 すると少年の顔に笑顔が浮かんだ。
「みんなで大きな雪だるまを作ってみるのもいいかもね」
「わ~い! おっきい雪だるま作りたいです。実は、この時のために長靴で来たのです」
 横からユーロがそう提案すると、戦いよりもやる気を出した美月が賛同する。そうして皆で雪だるまを作り始めた。
「美月ちゃんはかわいくって、ルアおにーさんとゼノアおにーさんのには猫耳をつけてー」
 仲間のイメージを元にジャスティンは小さな雪だるまを作っていた。
「……目つきの悪い方が俺か?」
 それを複雑な顔でゼノアがじーっと見つめた。
「目つきが悪い方? じゃあこうかな~」
 ジャスティンが雪だるまの顔をキリッとさせると、ピロモンがやれやれと目を閉じて丸まった。
「まだまだ冷え込みますし、温かい飲み物はどうです?」
 泉が暖かな飲み物を用意すると、皆がほっと一息つく。その横には個性的な雪だるま達が並ぶ。見たものが思わず笑顔になる。そんなほのぼのとした光景だった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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