●駅前の激闘
北陸のとある駅前に牙が突き立ち、そこから5体の竜牙兵が現れる。
「さあ、オマエたちのゾウオとキョゼツをヨコセ!」
道行く人々に向けて、竜牙兵の1体が簒奪者の鎌を向けた。
だが殺戮は始まらなかった。
「いえいえ、あなたがたには渡しませんよ」
声をかけたのは幼く見える1人の女性。
彼女はゆったりした広口の袖を持つ白い服を着ていた。緑、赤、青、黄のベルトが胴体や腕に巻き付いている。
アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)の顔はニコニコと笑っていた。
張りついたような笑みだった。
「邪魔なんですよ、あなたがたは」
笑顔のまま両手を広げると腕を縛っていたベルトが弾けた。
手首から肘までが上下に開いた。人間にしか見えなかったアトだったが、内部が硬い機械であることがはっきりと見えている。
剣や丸鋸が金属製のアームに操られて竜牙兵へ向かっていく。掌からは蛇のようなケーブルが敵を狙った。
戦闘は始まり、しばし後5体いた竜牙兵のうち1体が倒れていた。
けれどもアトのほうも限界に達しようとしている。
「さア、つギに、ころサレたイのは、ダレですカ?」
アトは自らの損傷など気にも留めていない。
何を考えているかわからない笑みは、機械のような無表情に変わっている。レプリカントとして得たはずの心をどこかで落としてきてしまったかのように。
竜牙兵たちに倒される瞬間がきても、アトはもう眉1つ動かすことはなかった。
●ヘリオライダーの依頼
小松空港へのミッション破壊作戦後、行方がわからなくなっていたアトが見つかったと石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はケルベロスたちに告げた。
「彼女は『竜牙竜星雨』の精鋭部隊である竜牙兵と交戦し、撃破されてしまいます」
現場はとある都市の駅前だ。
周囲には多数の一般人がいるが、竜牙兵はもちろんアトも気にせず攻撃を開始する。
危険だが、彼らを事前に避難させてしまうと竜牙兵は別の場所を襲撃するし、アトが姿を見せることもなくなる。
とはいえ戦闘開始後に警察が避難誘導する手はずになっているのでケルベロスたちが周囲のことを気にする必要はない。
「問題は警察ではどうにもできないタウィルさんのほうです。撃破された時点ではまだ命に別状はありませんが、連れ去られたり殺されたりしてしまうかもしれません」
ヘリオンで向かえば倒された直後くらいに到着する。
敵を撃破すれば戦闘不能状態の彼女を救助して回復することができるだろう。
「竜牙兵は5体いましたが、タウィルさんが1体倒したので残りは4体です。うち1体はそれなりにダメージを受けている状態です」
倒れた敵とダメージを受けている敵は仲間をかばう様子があったらしい。他の3体は詳細までわからないものの、前衛ないし中衛のようだと芹架は告げる。
なお、武器はすべて両手に簒奪者の鎌を持っている。使える技についてはケルベロスたちもよく知っているはずだ。竜牙兵独自の技などはない。
「タウィルさんはレプリカントですが、戦う姿はまるで感情……心を失ったようでした」
芹架は最後に告げる。
見えたのは作り物めいた笑顔が、無表情に変わっていく様子。
「ほっとけないよね。やっぱり、笑顔でいなくちゃ幸せになれないもん」
ケルベロスたちの1人、有賀・真理音(レプリカントの巫術士・en0225)が言う。
だからこそ取り戻さなければならない。それができるのは、きっとケルベロスだけだ。
参加者 | |
---|---|
九石・纏(鉄屑人形・e00167) |
ステイン・カツオ(クソメイド・e04948) |
黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471) |
ノイアール・クロックス(魂魄千切・e15199) |
餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298) |
兎塚・月子(蜘蛛火・e19505) |
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
●駆けつけた者たち
ヘリオンは竜牙兵が現れているはずの駅に向かって高速で移動していた。
「アッちゃんは真面目で、基本ぽわぽわしてそーでもって、実際ンとこはその“真面目”のアタマにクソがつくタイプだ」
兎塚・月子(蜘蛛火・e19505)にとって、アト・タウィルは同じ旅団の仲間だった。
彼女に限らず今回の作戦に参加している多くのケルベロスは彼女と旅団や師団で顔を合わせた者たちだった。
「……仕事は終わった、ってはよ伝えたらんとね」
「ああ、今回ばかりは負けられない。絶対にアトさんを連れて帰る。必ずだ」
九石・纏(鉄屑人形・e00167)も珍しく感情のこもった声を発する。
「私は面識はございませんが、少しでもお力になれれば……ダモクレスが動き出した現状では尚更のこと。必ず救出しましょう」
数少ない例外であるステイン・カツオ(クソメイド・e04948)にしても、心配する彼らの気持ちを感じずにはいられないようだった。
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)も、今のところ一度もアトに会ったことはなかった。
彼が知っているのは『AT』と名乗る人物の書き込みだけ。
(「だが、これは決して他人事ではない。今日の彼女は、明日のオレだ」)
AT……アトと同じレプリカントである彼は、ベースギターを手に静かに時を待つ。
「アトさんは、自分が自分を失った時に迎えに来てくれた一人っすからね。絶対に、連れ戻してやるっす!」
かつては救われた側であったノイアール・クロックス(魂魄千切・e15199)にとっては恩返しの機会でもある。
「アトのことを頼む、助けてやってくれ。必要ならリペアキットも用意してある」
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)はノイアールと、有賀・真理音(レプリカントの巫術士・en0225)へ告げる。
真理音はいつもと変わらぬ笑顔を浮かべて頷いた。
目的地の上空に着き、ケルベロスたちは急ぎ降下する。
「アト様……すぐにお救いします。お腹もすいているでしょうから、救出してお食事を作らねば」
倒れているアトに餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)が思わず呟く。
足音を聞きつけて竜牙兵たちが振り向いた。
「ナン……ダト……」
1体が思わず言葉を漏らしていた。
数えきれないほどのケルベロスが並んでいたからだ。
残り4体、倒れている1体を含めても5体のデウスエクスに対し、集まったケルベロスの数は実に30を超す。
「SYSTEM COMBAT MODE」
マークの声を合図に彼らは敵へと攻撃をしかける。
アトに止めを刺そうとしていた1体へ、鎧に身を包んだ男が真っ先に接近した。
「その鎌は振り下ろさせん」
黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471)の敵の鎌が構造的弱点を突く。
竜牙兵はとっさに攻撃対象を鋼へと変えたが、鎌の一撃を受けても全身を隙間なく覆う鎧は傷1つつかなかった。
●竜牙兵の驚愕
新手の出現に対して、竜牙兵たちは一斉に簒奪者の鎌を構えた。
「ナゼこれほどのケルベロスがイッカショにアツまっている!?」
「頭数が多くて卑怯とは言うまいね、あんた達だってよってたかってタウィルさんを傷付けたろう? 報いを受けろってんだよ!」
困惑する敵に北條・計都が気勢を上げる。
ステインはメイド服のスカートをひるがえして、傷ついている1体へ接近した。
「友人同士の感動の再会だ。部外者は死んどけや」
守りを固めた敵の装甲めがけて、エクスカリバールの尖った部分を叩き込む。
ケルベロスたちはまずノイアールたちがアトを救出するのを援護していた。
「アト様を返して貰いましょう。お食事をお出ししなければならないのでね」
ラギッドが鉄塊剣を派手に振り回した。
「アト、迎えに来た。さぁ、共に帰ろう」
彼に続いてマティアス・エルンストや篠・佐久弥らが接近できないよう割り込み、かと思うとジョン・ライバックが敵を背後から攻撃してかく乱する。
「せっかく同じ師団で出会えたのにここでお別れなんて悲しすぎる。これから皆と馬鹿話でもしながら笑いあおうぜ?」
雪村・達也や玄梛・ユウマは鉄塊剣を振り回して注意を引いていた。
皆、アトを救うために必死なのだ。
「私がケルベロスを助ける……なんて日が来るとはね」
それも、男でもない相手に。仲間たちの姿を見て、ステインは皮肉な笑みを浮かべた。
マークは敵とアトの距離が少し離れたところで、装備していた発煙筒を投げる。
煙が倒れた体を覆い隠していく。
(「……あの時の俺もあんな様子だったのか」)
ふと、かつて心を得たときのことを思い出した。
敗北し、倒れたままの彼を置き去りにしていった仲間たち。アトの姿が自分に重なる。
得たばかりの心は、なにを感じたのだったか。
少なくとも、同じ想いをさせるべきでないことだけはわかっている。
(「俺は誰も見捨てはしない」)
視界から隠したおかげか、竜牙兵たちはアトを狙おうとはしなかった。
全身を炎で覆い尽くして月子が煙を突っ切って敵に接近していく。
「サイレンナイッ フィーバァァァァッ――!!!」
ウルトレスのデスラッシュ・サウンドが皆の細胞を活性化させていた。音楽に合わせて滝川・左文字も咆哮で仲間を強化する。
「爆ぜろ」
纏の起こした爆発に紛れ、ノイアールや真理音を始め数人が動けないアトを担いだ。
「すぐ戻ってくるから、よろしくお願いするっす! ミミ蔵も頼むっすよ!」
ノイアールの言葉には無数の答えが返ってきた。
「緋色蜂師団から助っ人参上! 絶対にアトさんを取り戻すんだからね!」
長谷川・わかなや中野・美貴などにかばわれ、彼女たちが移動していく。
進路上の邪魔な位置にいた敵へリヴィ・アスダロスが重力振動波を放って押しのけた。
少し離れた場所では最終決戦モードに変身した八崎・伶や、端境・括が警察による避難活動を支援していた。
人々を早く逃がそうとするだけでなく、アトを避難させるスペースを作る意図もある。
「わしの知るアトは穏やかな笑みで皆をよぅ支え、助けてくれての。今、こうしてアトを助けようとする者の多きことこそその証明」
呟いて、括はノイアールに合図した。
アトを安全圏へ避難させるまで、ケルベロスたちは足止めを重視して戦闘を続ける。
鋼は敵の1体に執拗に攻撃し、自分から注意を外させないようにしていた。
それでも敵がアトを狙おうとしたならば、可能だっただろう。
だが予想外の多勢に囲まれた敵は冷静さを欠き、対して鋼は機械のごとく冷静だった。
(「俺は借りを返す主義だ。貸し逃げなど、されてたまるか。……必ず連れ戻す」)
アトが暴走したとき、鋼は共に戦っていた1人だった。
だからこそ、彼はアトを救わねばならない。
鋼の、そして多くのケルベロスたちの攻撃は、敵をアトたちに近づかせなかった。
●心はいずこに
ノイアールはアトの体を真理音と共にしっかりと支えていた。
なるべく揺らさぬように、それでいてなるべく急ぐ。
運びながら、ノイアールは動かない彼女の顔を静かに見下ろした。
前の時は、立場が逆だった。暴走したノイアールのところに彼女は来てくれた。
「恩返しできるのは嬉しいっすけど、できればそんな機会欲しくなかったっすよ」
複雑な気持ちをアトへと告げる。
「さぁ、帰りましょう。みんなアトさんのこと待ってるんですよ?」
水瀬・麗奈やシェスティン・オーストレームらも牽制の攻撃を放ちながら声をかける。
たどり着いた避難スペースには千歳緑・豊が毛布を敷いて準備していた。
「確かに、彼女は預かったよ。死んでいないなら、助けるチャンスは十分だ」
「よろしくっす。アトさん、あなたは機械じゃなくてこの星の人っす。起きる時にはちゃんと、それを思い出しておくんすよ!」
目覚めた彼女の心に残っているよう強く声をかけてから、ノイアールは戦場へと引き返していった。
アトの周囲に集まっているケルベロスたちは、できる限りの手当てを試みる。
「とにかく応急処置だけでもしておきたいからね。どれだけ意味があるかはわからないけど、やれることはやらないとね」
屋川・標が自作した黄緑色の軟膏を塗り、セピア色の湿布を張る。
「これを食べてもうちょっとがんばりましょう、ふぁいとですの!」
元気が出るお弁当を取り出したのは霧城・ちさだ。
他にも多くのケルベロスたちが、傷ついたアトを回復していく。
アトが薄目を開けた。
「ミナさんは……ナぜこンなとこロに?」
無表情に、片言な言葉がアトの口から洩れる。
「おう、アト。とりあえず寝とけ。そんで、あとで泣きつかれろよ」
比良坂・陸也が告げる。
機械的な動きでアトがまぶたを閉じた。
●運の悪い竜牙兵たち
ラギットはノイアールたちが戻ってきたことに気付いた。
「お疲れ様です。さぁ倒してしまいましょう」
「そうっすね。まずはこいつからっす!」
最初から傷ついていた1体はとうに瀕死の状態になっていた。
戻ってきたノイアールはオーラを飛ばして爆発させ、竜牙兵の骨を砕く。
よろめいたところにラギットが近づく。体の表面から地獄化した胃袋がにじみ出る。
ただの胃袋ではない。堅牢な歯牙がでたらめに並んだ、獰猛な胃袋。
それは傷ついた敵へと幾度も噛みつき、後には食べ残しが残るばかりだった。
「緋色蜂師団が揃っていると心強いことです」
アトを含めて同じ師団の仲間である皆を見やり、ラギットは微笑する。
避難がすんだことを確認した皆は、ウルトレスの激しいベースギターをBGMにして一気に攻勢に移る。
月子は炎をまとったまま、仕掛けておいた爆弾の数を思い出す。
「さァ、テメーらの嫌悪と驚嘆と、ついでにされこべよこせ!」
ケルベロスに接近された中衛の竜牙兵2体が距離を取ろうとしたところで、足元にあった小型爆弾が爆発した。
「ははっ、足元がお留守になってたぜ。気をつけなきゃなあ?」
嘲りの言葉を聞く余裕が果たして竜牙兵たちにあったのかどうか。
「アト君には世話になっているからな。さぁ、一気に畳み掛けるぞ」
彼女が作った隙を逃さず、神崎・晟が砲戟龍の力を仲間たちに付与する。
竜牙兵たちが見る間に傷つき、すぐに限界を迎えた。
ハートレス・ゼロの地獄の熱線をなんとか耐えきった竜牙兵の胴体に、マークが改造アームドフォートXMAF-17A/9の砲口を押しつける。
ビームに貫かれた竜牙兵が砕け散る。
纏はいらだっていた。たぶん、ヘリオライダーの話を聞いてからずっと。
機械倉庫の片隅に共に集まっていた大切な友人が暴走したという事実は、彼が望む平穏とは程遠いものだからだ。
感情を内に秘めて、自作したアームドフォートの狙いをつける。
ケルベロスたちの攻撃を受けて、哀れなほど一気に追いつめられている竜牙兵。だが、纏に容赦はない。
「さっさと終わらせて、アトさんの所にいかないと、だから、邪魔だ」
直撃した砲弾が、3体めの敵を打ち倒していた。
ウルトレスは仲間たちの負傷状況を確かめる。
(「どうやら、回復役に活躍の場はなかったようだ」)
アトの避難に時間を取られて、それでも戦いはわずか数分で終わろうとしている。
最後の竜牙兵の反撃もケルベロスに痛打を与えるには至らない。
「黒鉄様、今です! 止めを!」
「摸倣術式を展開、番号指定、重力鎖制御――第一番、起動!」
ラギットの合図を受け、鋼がグラビティ・チェインの刃をいくつも生成する。
重ね合わせた刃は暴走し、そして大爆発を起こした。
「ナゼだ? ココにはケルベロスにトッて重要なモノがあっタのか? ワレワレは、なんにテを出したのダっ!」
爆発の中に悲鳴が消えていく。
彼らには理解できないのだろう。なぜこれだけの数のケルベロスたちが動いたか。
「今回の敵も、よく解からんうちに粉々になってしまったな」
ラストフレーズを弾ききって、ウルトレスは消え行く竜牙兵に背を向けた。
●取り戻した心
戦いが続く間にも、アトの周りに集まったケルベロスたちは口々に声をかけていた。
「……ホラ、笑えよ。おまいさんの笑顔はそんなんじゃネェだろ……?」
悲劇を台無しにすべくヴォイド・フェイスが騒ぐ。
「アトさん、おつかれさま。アトさんのおかげで皆無事……だけどあなたが居ないと、皆笑顔になれないよ」
新条・あかりが黒豹の獣人に支えられながら語りかける。
「この冷蔵庫を忘れたとは言わせないです」
「今度は黄色ニンジンでも育てて見たいんですけど、何かオススメのレア野菜ってありますか? 調理方法も悩ましいのがまた、楽しいですよね」
思い出を語って聞かせているのは、コレ・アレソレやアニマリア・スノーフレーク――アトが音楽を奏でていた、朽ちかけた倉庫の住人たちだ。
竜牙兵を片付けた者たちも集まってきた。
「……機械倉庫にアトさんの音色が無いのは寂しいんだ。私も、アトさんがいないのは寂しいし、悲しい。だから、帰ろう、いつもの日常に」
「アト、帰ろう。スクラップだらけの我が家に」
静かな声で、纏やマークが語りかける。
「アト様、もう戦わなくていいのです。共に帰って皆で食事にしましょう」
ラギッドは今にもこの場で料理を作り始めそうな様子だ。
面識のないステインや真理音も、目覚めるまではと遠巻きに見つめている。
「大丈夫っす。絶対アトさんは忘れてなんかいないっすよ」
ノイアールは色黒の手を硬く握っていた。
他の仲間たちも、かわるがわる声をかける。
「アッちゃん、ホラ起きな」
全身を覆っていた炎をおさめて、月子もアトを囲む輪に加わる。
「……起きています。皆さんの声も……ちゃんと、聞いていました」
やがて、ゆっくりと、アトが目を開く。
彼女が微笑を浮かべるとケルベロスたちは歓声を上げた。
「寝覚めはどうだえ、最悪? あのハーモニカ失くしてない?」
「ハーモニカ。ええ……きっと、また吹けます。倉庫の片隅で……」
「ほんなら帰ろうぜ、ゆっくり寝直したらええわ。おはよう、おかえりだ」
月子に、そして皆に見せる笑顔は、機械で作られたような表情ではない。
「借りは返した。……おかえり」
鋼が兜の下から、優しい声をかけた。
彼女の心は消えていない。あるいは……消えていたとしても、皆の言葉が取り戻した。
ウルトレスは無表情にアトを見つめていた。
元ダモクレスのレプリカントなら誰でも恐れていることがある。ココロを喪失ったらどうなるのか。
(「答えはこうだ。喪失したなら、誰かが取り戻してやればいい」)
ネット上だけの付き合いである彼は、アトの無事を確かめると戦場を修復するためにベースギターを手に取った。
「あんなに大勢の仲間が彼女の帰還を喜んでいる。少し羨ましくもあるな」
『AT』の名がまた掲示板で見られることを期待して、ウルトレスは弦を弾いた。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年1月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 0
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