ゾンビと祟りと廃村と

作者:ハル


 つい先日に成人式を迎えたばかりの女性……彼女の足は第三者が見て簡単に分かる程に震えていた。
「成人式で久々に友達に会って、お酒飲んで盛り上がって……その場のノリで近頃噂になってる場所で肝試ししようなんて……どうして言っちゃったかな……」
 とても、新年早々やる事とは思えない。女性は何かを紛らわすように。言葉を続ける。とても無言ではいられなかった。
「でも、興味があったのは確か……よね。今だって、ワクワクしている自分がいるもの」
 言い出しっぺは他ならぬ女性なのだろう。それで、下調べに来た……といった所か。
「……ここ」
 女性が手に持った地図を見る。地図上では、女性の立つ先に道はないはずだ。だが、実際には細々とした道が続いていた。
「よ、よし、来るなら来なさい!」
 意を決し、女性は地図なき道へ。噂ではこの先に廃村があり、過去に虐殺された村人の霊が漂い、祟りを起こすという。
「な、なんか楽しくなってきたかも。村人さん、いるなら返事を――」
 変なテンションになった女性がそこまで言って、言葉を止める。視線の先には、噂通りの廃村があった。
「じょ、上等よ。私が噂は真実か確かめてやろうじゃないの!」
 女性が廃村へ一歩踏み込んだ、その時!
 ……女性の胸には、鍵のような何かが突き立てられていた。
「ふふふっ、私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 第五の魔女・アウゲイアが含み笑い、ドサリと倒れる女性。
「アー、アウー」
 入れ替わりにボロ布を纏い、身体の所々が腐ったゾンビが姿を現すのであった。


「新年早々に肝試しの約束とは……」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は苦笑を浮かべ、ケルベロス達を見渡す。
「妹島・宴(彼岸の契り・e16219) さんの懸念通り、不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 元凶となるドリームイーターは姿を消しているが、虐殺された村人の祟りに関する噂を元に生み出されたドリームイーターは健在だ。
「どうか被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい! また、ドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるはずです!」
 セリカは事件の概要を纏めた資料をケルベロス達に配る。
「敵の情報ですが、ゾンビのような姿をしたドリームイーター一体となっております。身体を内部から腐敗させる吐息を使った攻撃に加え、モザイクを口に変えての噛みつき、体内で飼っているウジのような虫を使役して襲ってくるようです。恐らく、気分としては最悪に近い相手だと思われます……」
 また、ドリームイーターは、自分の事を信じていたり、噂している人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。
「廃村の中央にある広場は比較的足場がよいため、そこに誘き寄せるといいかもしれません。広場といっても、不気味な雰囲気に変わりはないですけれどね」
 そこまで言って、セリカは資料を仕舞う。
「廃村がいつから存在しているのかは、定かではありません。ですが、こうして噂になり、興味を奪われる被害者が出ている以上、見過ごす訳にはいきません」
 荒む村人の魂に、どうか平穏を。


参加者
十六夜・伊織(コーラをこよなく愛する者・e04519)
天羽・舞音(アーマードケルベロス・e09469)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
メドラウテ・マッカーサー(雷鳴の憤怒・e13102)
妹島・宴(彼岸の契り・e16219)
チェシャ・シュレディンガー(凸凹不偏な能芯套・e27314)
黒岩・白(狼虎絢爛・e28474)
黛・朔太郎(みちゆくひと・e32035)

■リプレイ


 その村の空気は、何故か他の場所よりもヒンヤリと感じるものだった。村全体に漂う、おどろおどろしい雰囲気が、そう感じさせているのかもしれない。
 そんな村に、ボゥと灯りが灯る。
 メドラウテ・マッカーサー(雷鳴の憤怒・e13102)のショルダーガードに装着された電灯に、妹島・宴(彼岸の契り・e16219)、黛・朔太郎(みちゆくひと・e32035)と、それぞれが持参した物だ。
 だが、そんな中でも一際異彩を放っていたのは――。
「……うっ!」
 宴が、怯えたようにゴクリと生唾を飲み込む。視線の先に居たのは、灯籠を手に、長い黒髪の隙間からジロリと周囲を見やる祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)であった。
「……悪くないな」
 ポツリと、言葉に感情を乗せずイミナが呟く。呟き通り、彼女のこの場への馴染み方は他の追随を許さない。
「とりあえず、あの広場に行ってみます?」
 肝試しに来た一般人を装い、天羽・舞音(アーマードケルベロス・e09469)が中央広場を指さした。
 ケルベロス達は頷くと、村の入り口で眠る被害者の女性の脇を抜け、広場へと向かおうとする。
「(もう少しだけ辛抱してください。一刻も早くゾンビを撃破して、あなたも、虐殺されたという方々の魂も鎮めますから……)」
 通り過ぎる際、朔太郎は眠る女性に心の中で声をかけた。
「仕方ないわ、できる限り彼女から離れた所で敵と遭遇したいものね」
 メドラウテがそんな朔太郎の肩に手を掛け言うと、朔太郎も「ええ」と頷いて仲間の後を追った。

 中央広場は、他の場所に比べて足場こそ良かった。だが、不気味な雰囲気は健在で、足場から突然何かが飛び出して来ようとも、不思議には思わないだろう。灯りによって影が伸びているのがまた、不気味さに拍車をかけていた。
「ねえ知ってる、ここの噂?」
 そんな、いるだけで肌を粟立ちかねない空気を振り払うように、チェシャ・シュレディンガー(凸凹不偏な能芯套・e27314)が切り出す。一見真面目を装っているが、緩みかかった口元はこの状況を楽しんでいることを如実に示していた。
「もちろんっす。でも、本当に廃村、あったんですね。何でも、村八分にあった村人が復讐のために大量殺人をして、未だに血痕が残った屋敷が残されているんだ、とか」
「なるほどな。なら、探してみれば見つかるかもしれないな」
 チェシャに乗っかる宴に、耳を傾けていた十六夜・伊織(コーラをこよなく愛する者・e04519)が相槌を打つ。
「現代にも、このような祟りがあるだなんて……」
 朔太郎は、自然に驚いた表情を形作っていた。さすがは役者。
「マーブル? そんなに吠えて……何かいるんスか?」
 その時、話の流れを切るように、虚空を見つめた黒岩・白(狼虎絢爛・e28474)が言った。視線の先には、適当な場所に向かって吠えている愛犬が見えているが、宴など、一部を除いて普通は見えない。
「どうしたんです?」
 舞音が首をコクンと傾げて問いかけるが、白は肩を竦めて見せるだけ。
「一体どういう理由で虐殺されたのかしらね? 年貢でも修められなかったのかしら?」
 気を取り直すようにメドラウテが咳払いを一つして、噂話を再開させる。
「……祟りを起こす村人の霊か。……実に興味深い。……無念、悔恨、数多の残留思念は呪いとなりて地に縛り、怨霊となる」
 すると、それまで黙っていたイミナが、低い声で言った。 
「火のないところになんとやら。大体なんかいるんスよねぇ。こうやって話してると向こうが興味持って寄ってきたり――マーブル?」
 仕上げに白が、誘うように言葉を紡ぐ。そして、言いながら気付いた。適当に吠えていたはずのマーブルが、いつの間にか一点に向かって吠えていることに。
「そろそろだな」
 仲間の変化に目敏く気付いた伊織が、警戒を促す。すでに、イナミと宴の視線も、白と同じ方向を向いている。これはもはや、疑う余地はどこにもない。
 グワッ!
 地面が盛り上がり、そこから手が生える。生えた手は地面を掻き、やがてその腐敗した全容を露わにした。
「……酷い匂いね」
 腐臭に、メドラウテは顔を顰める。腐った生卵の匂いを何倍にも凝縮したような悪臭。
「……霊ではなく肉体があるゾンビ、屍隷兵に近いな」
 イミナは顔色一つ変えずに、冷静に現れたそれを評した。
「アー、アウアー……オ、オラ……ナニ……モノ?」
 ケルベロスと相対したゾンビは、途切れ途切れに自身が何者であるかを問う。
「見た目通りの化け物、ゾンビでは?」
 それに、一歩前に出た舞音が間髪入れず返答する。
 すると……。
「チガ……ウ、オラ、バケモノ……チガウ……」
 どうやら、その返答は期待したものではなかったようだ。ゾンビの暗闇を宿す瞳に、一筋の感情……怒りが映ると――。
「アアアアアーー!」
 巨大な口を剥き出しに、ゾンビ姿のドリームイーターは、舞音へと襲いかかるのであった。
 

「ウアアーー!」
「……っ、ぐぅ! 上等だ、すぐに退治してやる!」
 舞音は、飛びかかるドリームイーターを見るや、すぐにアーマードケルベロスに変身していた。アーマーの上から肩口を噛まれ、苦痛に歯を噛みしめながらも、ドリームイーターをガッツリ組んで離さない。
「……今回は天然物でなく、デウスエクスの仕業と言うのが本当に残念だ」
 イミナとしては、本物の祟りと出会う事を期待していたのだろう。言うなれば、お仲間のようなもの。感情の薄い瞳に軽い失望感を過ぎらせながら、「……ああ祟りたい」そうブツブツと呟きつつ、前衛に霊力を帯びた紙兵を大量に散布。さらに蝕影鬼が金縛りでドリームイーターの動きを止める。
「まったく、B級映画の助演さんじゃないんだから……」
 敵の見た目としては、まさにそれであった。ともかく、衛生的には受け入れられない。メドラウテは舞音と組み合って無防備なドリームイーターの背中に、右手の砲撃形態に変型させたハンマーで竜砲弾を打ち込んでやる。
「グギャッ!?」
 途端に体勢を崩すドリームーイータ。
「神妙にしていろ……!」
 そこを好機とみた舞音は攻めに転じ、蒼炎を纏わせたゲシュタルトグレイブでドリームイーターを切り裂くと、
「おら!」
「ウ゛ウ゛ッ!?」
 追撃に蹴り上げ、敵の身体が宙に浮いた所をさらに地面へ叩き付けた。
 土煙を巻き上げながら立ち上がったドリームイーターの瞳には、さらに色濃くなった怒りの炎が垣間見られる。
「この技あんまり使いたく無いんだけど……仕方ないわね。気休め程度にはなればいいんだけれど」
 舞音が怒りを利用して攻撃を引きつけようとしている事を察したチェシャは、援護をするために紅い大輪の薔薇を召喚する。薔薇の香りは周囲に漂う腐敗臭を打ち消し、仲間の心に一時の平穏を与えた。
 だが――。
「宴ちゃん、白ちゃん、イミナちゃん! そっちにも行ったよ!」
 怒りに突き動かされ、再び動き出したドリームイーターの次なる手は、舞音も巻き込んだ列攻撃。戦闘で負った傷や腐敗の後から次々とウジが湧きだし、
「アオオオオオーー!!」
 ドリームイーターの咆哮と供に、ウジの大群が撒き散らかされる。ウジに噛みつかれる痛みに、身体中を這い回られる嫌悪感。見ているだけでもゾッとするそれに、舞音とイミナは耐え、白もまた宴の前に立ち塞がって庇う。
「シャーマン警察官と心霊探偵。共闘はちょっと燃えますね」
「そうっスね。さぁ、宴さん、先に行くっスよ! 僕も後に続きまスから!」
「先陣、任されました!」
 感謝を込め、宴は白の背中に声をかける。白は、気合いがあればこんなものはなんでもないとばかりに笑うと、宴の背中を押した。そして、ウジの大群が落ち着くと同時に、宴は雷を帯びた斬霊刀をドリームイーターに突き立てる。宣言通り宴の後に続いた白は、幽を憑依させ、青い炎を纏った変幻自在の惨殺ナイフでドリームイーターの片腕を斬り飛ばす。
「さすがにお前では実験対象にはなりそうにないな」
 先程からアーだのウーだのしか言わないゾンビに、伊織の話術が通用するはずもなし。おまけに警戒していた攻撃方法は、伊織の予想を超えて気持ちが悪い。こちらの攻撃には反応するようだが、痛みに呻いているのか、ただ単に衝撃に驚いているかの判別がつかない。
 ままならない現実に、伊織は軽く息を吐きながら、ローラーダッシュに炎を纏わせる。
「寒いだろ? 温めてやるよ……」
 そのまま、伊織はドリームイーターに炎を纏った蹴りを叩き込んだ。
「……反応が悪いな」
 だが、ドリームイーターは燃え盛っているものの、期待以上の成果は得られなかったようだ。
「どうやら、理力は効きが悪いようですね」
 伊織の傍に位置どった朔太郎が言って、他の仲間にも周知する。
「なんにせよ、あのウジを使った攻撃は要注意ですね」
 朔太郎は、紙兵を散布し、前衛にBS耐性をさらに重ねた。敵はブレイクを持たない。これだけ重ねておけば、前衛に関しては当面安心であろう。
「心強いです、朔太郎さん」
「全員無事に帰りますよ!」
 宴の言葉に頷きながら、朔太郎は気持ちも新たに仕込み傘を握りしめるのであった。
 

 戦闘開始から数分。中央広場の一角を紫色の霧が覆っていた。それは、ドリームイーターの口から吐き出された毒の吐息だ。
「うっ!?」
 それを真面に浴びてしまった朔太郎が呻くと、その口元から血の雫が流れる。毒は朔太郎の内部から浸食し、腐敗させてしまうのだ。
「くっ、前衛以外の守りが疎かになっていましたか」
「大丈夫、朔太郎?! 待ってなさい、あいつの醜い身体を吹き飛ばすわ!」
 膝をつく朔太郎へ追撃をかけようとするドリームイーターに、メドラウテはバスターライフルから魔法光線を放つ事で攻撃と同時に牽制をする。
「あと少しよ。動きも大分鈍くなっているし、凍傷も負っているわ」
「ええ、ありがとうございます、助かりました」
 朔太郎はメドラウテに軽く感謝を示しながら、まずは傷ついた自身を癒やすために分身を纏わせてやり過ごす。
「アーー! アア゛ーー!」
 ドリームイーターは邪魔をされたのが余程気に入らないのか、今度はメドラウテを標的に、巨大な口で襲いかかろうとする。
「はいはーい、ここから先は通行止めっスよ?」
「まさかリアルでゾンビ相手にチェーンソーを振り回す事になるとはな!」
 それを白、蝕影鬼が代わる代わる身を盾にして攻撃を防ぎ、舞音がギュイインッ! という激しいチェーンソー剣の駆動音を轟かせながら、ドリームイーターの傷を深く抉っていく。
「ウガアアアアアーー!!」
 ドロリとした黒に近い血と、腐った肉が抉られ飛び散る中、ドリームイーターは反撃のため、またしてもウジの軍勢で前衛を飲み込もうと試みる。
 数度目の、決っして慣れることのない不快感が前衛を襲った。だが、前衛に関しては対策がしっかりと取れてるため、深刻な被害は避けることができている。
 逆に――。
「ウ……ウウ……!」
 蓄積したダメージに、バッドステータスに音を上げたのはドリームイーターが先であった。
「皆さん、今です!」
 ドリームイーターの変化にいち早く気付いた朔太郎が合図を送る。
「任せたっスよ!」
 白が後方に下がりながら弾丸でドリームイーターを穿つ。変わりに前に出たのは、チェシャ。
「もちろん! それじゃ……仕掛けるよ!!」
 チェシャは自身にも気合いを入れるよう声を張り上げると、流星の煌めきと重力を宿した蹴りを派手にドリームイーターに叩き込む。そして、チェシャはチラリと一瞬だけ後ろを振り返り、口元に笑みを浮かべた。
「……せめて貴方に痛覚がない事を祈りましょう」 
「はいよ……ちょっとは俺も本気出すかね……」
 何故ならそこには、当然のように宴と伊織の姿があったから。
 宴が操る鎖が、蹴りを受けて吹き飛ぶドリームイーターを雁字搦めに締め上げる。動けなくなったドリームイーターに、伊織の空の霊力を帯びた武器が傷口を広げるよう、容赦なく突き刺さった。
「ギャアアアアア!」
 ドリームイーターは悲鳴を上げる。それは、痛みを感じている証拠だ。
 宴と伊織がその場を飛び退くと、ドリームイーターは夜の帳の先にイミナを見た。世界に呪いと祟りを願う、似非ゾンビなど及びもつかぬ怪異。
「……蝕影鬼、二重に祟るぞ」
 それは、まぎれもなく死の宣告だ。
「アアアアアーー!」
「……養殖だがいい怨念だ。……祟り甲斐がある」
 負けじとドリームイーターも腐敗の吐息で対抗しようとするが、イミナは口端から血を流しても顔色一つ変えない。どころか、薄らと笑ってすら見せた。
「……弔うように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……封ジ、葬レ…!」
 そして放たれる蝕影鬼の念に、イミナの呪言と、何度も何度も穿たれる杭。想像を絶する杭の痛みに、ドリームイーターは呻くが、やがてその呻きすら、呪言に埋め尽くされるのであった……。


「良い連携だったわねぇ♪」
 チェシャを中心に皆でハイタッチを交わしたのも束の間。宴にクリーニングを利用して身支度を調えてもらうと、ケルベロス達は急いで被害者の女性の元へ向かう。
 すると、倒れていたはずの女性はすでに意識を取り戻しており、とりあえず皆は一安心した。
「興味本位で廃村に来るのはいいが……しっかり男の人にでも守ってもらいながらやるべきだな」
「そうです! 女性だけでこんな所へ来て、廃墟は危険だとわかってますか? 人目を避けて犯罪者が住んでいる可能性も、裏社会の人間が出入りしている可能性もあるのですよ。肝試しは中止です。いいですね?」
「……はい、ごめんなさい。軽率でした」
 基本優しく、だけど時に厳しく、伊織と宴は女性を諭す。
 それによって、女性も充分に反省したようだ。
「好奇心は猫も殺すのよ? なんてアタシは生きてるけど。女の子が1人でこんな所来ちゃダメよ?」
 神妙な空気を変えるため、チェシャがわざと猫耳をピコピコさせながら戯けたように言うと、その場に笑顔が戻る。
「あと、もし肝試しがしたいなら、いい人を紹介するわよ?」
 メドラウテも、冗談めかして言う。イミナに対して多少失礼かもしれないが、イミナの方がゾンビよりも実際恐かったのだから仕方が無い。
 その時、どこからかカンカンと、釘をハンマーで打つ音が聞こえてきた。きっと、廃村を見て回っているイミナであろう。
「とにかく、これから気を付けてくださいね。今日は安全な場所まで送りますから」
「気を付けるっスよ。お巡りさんとの約束っス」
「一先ずお化け屋敷ぐらいで我慢してくださいね?」
 朔太郎、白、舞音の言葉に、女性はしっかりと頷いてくれた。
 その後彼らは、戻ってきたイミナも揃って、伊織の用意したコーラで乾杯するのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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