口裂け女、現る!

作者:なちゅい

●私、きれい?
 岐阜県岐阜市。
 日が暮れたと言うのに、繁華街の裏通りには1人の女子高生の姿がある。
「この辺りね。口裂け女の目撃証言があったのは……」
 彼女の名は、遠藤・果歩。スマホを構え、目的の都市伝説をデータとして収めたいと歩いている。もう世も更けているのに、彼女は制服姿で街を徘徊する。
「スクープのかほちゃんにかかれば、都市伝説の1つや2つ……」
 きらりと瞳を光らせ、果歩は注意深く周囲を見回す。
 そうして、街を彷徨うこと小一時間。残念ながら、この日はそれらしき人影を発見することができない。
「残念。ま、辛抱強くいこうか」
 そんな彼女の背後に、いつの間にか迫っていた人影。ボロボロの黒い衣装を纏い、ひどく病的な肌をした魔女だ。
「え……?」
 果歩が驚く間もなく、魔女が手にした鍵によって貫かれてしまう。彼女はそのまま意識を失い、崩れ落ちてしまった。
 胸を貫かれたはずの彼女。しかし、その胸には傷すら残されてはいない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 そばに伸びる触手のような手は、淡いモザイクに包まれている。それを操る魔女はドリームイーター……第五の魔女・アウゲイアスだ。
 やがて、倒れる果歩のそばから現れたのは……すらりとした体型の女性。しかし、顔はマスクがつけられており、目元はモザイクで覆われていた。
「私は……だぁれ……?」
 そいつはポケットから包丁を取り出し、当てもなく彷徨い始める。それを見届けたアウゲイアスもまた、いずこともなく消えていったのだった。
 
 ビルの屋上へとやってきたケルベロス。
 そこにいたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はやってきたケルベロスに小さく手を振る。
「皆、お疲れ様。来てくれてありがとう」
 早速依頼の話をしようとしたところで、ケルベロスの中からレオナルド・ドール(沈む獅子・e26815)が前に進み出た。
「口裂け女の都市伝説が現実になる……違うかい?」
 レオナルドの言葉に、リーゼリットが頷く。
 都市伝説、口裂け女の存在を確かめようとした女子高生がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われる事件が起こってしまう。
「奪われた『興味』を元にした怪物型のドリームイーターが実在化しているよ。この夢喰いが事件を起こそうとしているようだね」
 『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。こちらの消息を追いたくはあるが、今は新たな被害が出る前に現れた怪物形のドリームイーターを討伐したい。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだよ」
 襲われたのは、岐阜県在住の高校一年生、遠藤・果歩だ。
 夢喰いに襲われて『興味』を奪われた彼女は岐阜市内の繁華街の裏路地に倒れ、昏睡状態にある。どうやら、彼女は今回襲われたことに懲りず、都市伝説を追いかけようとするようなので、無事にドリームイーターを倒したのならば、介抱した後、注意や説得など行ってもよいかもしれない。
「『興味』から生まれたドリームイーターは、繁華街を徘徊しているようだよ」
 このドリームイーターは口裂け女についての都市伝説を噂したり、信じるような発言があると、その人の方に引き寄せられる性質がある。これを利用することで相手を誘い出し、有利に戦うこともできそうだ。
「怪物型ドリームイーターは長身の女性の姿をした者が1体だけで、配下などはいないようだね」
 一見すれば普通の女性とさほど大きな差異がないように見えるが、目元を覆うモザイク、そして、マスク。もちろん、その名の通り、マスクを取ると耳元まで裂けた口がある。それがドリームイーターだと、すぐにわかるはずだ。
「このドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを質問してくる』よ」
 返答によっては、夢喰いは相手を殺そうとするようだ。もし、一般人がドリームイーターと出くわした場合、これによって、命の危機にさらされる可能性がある。
 もちろん、ケルベロスとしては見過ごすわけにはいかないので、返答内容に関わらず、早々に討伐してしまいたい。
 ドリームイーターは手にする包丁を惨殺ナイフのように使うことがある。また、その大きな口で食らいつき、相手の『興味』を奪うこともあるようだ。
 不気味な敵だ。リーゼリットもやや表情をこわばらせ、最後にこうケルベロスへと告げる。
「噂話が具現化し続けていると、厄介だね。こうした怪物が際限なく生まれてきてしまう……」
 その原因を叩いてしまいたいが、今は少女を助ける為にこのドリームイーターの撃破をと、彼女はケルベロス達へと願うのである。


参加者
ヴィヴィアン・ウェストエイト(バーンダウンザメモリーズ・e00159)
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)
揚・藍月(青龍・e04638)
ロイ・メイ(荒城の月・e06031)
大成・朝希(朝露の一滴・e06698)
村雲・左雨(月花風・e11123)
レオナルド・ドール(沈む獅子・e26815)
月島・彩希(未熟な拳士・e30745)

■リプレイ

●口裂け女に対する好奇心
 上空を飛ぶヘリオン内。ケルベロス達は銘々の時間を過ごし、到着を待つ。
 きゅあきゅあと可愛く鳴くボクスドラゴンの紅龍のそばで、揚・藍月(青龍・e04638)が口裂け女についての特徴、噂話について色々と調べている。
「――ム。口裂け女……か……。竜派ドラゴニアンなら元々口は裂けているが……」
 それがバーヴェン・ルース(復讐者・e00819)の目に入ったらしい。当人も竜派のドラゴニアンであるバーヴェンは、こめかみを叩きつつ呟く。
 他のメンバーが思わずそうじゃないと手を振るが、バーヴェンは至って真面目である。
 村雲・左雨(月花風・e11123)もまた、こういった都市伝説の調査に興味を抱きながら、その情報について少し目を通す。
「だからといって、そのせいで自分が危険な目に遭ってりゃ、世話ねえんだけどよ」
「好奇心は猫も殺す。そんな感じだな」
 実際、今回は女子高生が被害に遭ってしまっている。少女が夢喰いに襲撃されたこの状況は、ヴィヴィアン・ウェストエイト(バーンダウンザメモリーズ・e00159)が示した通り。そばにいたロイ・メイ(荒城の月・e06031)も小さく頷く。
(「うぅ……ホラーはあまり得意じゃないけど、怖がってばかりもいられないよね」)
 仲間達の会話にわんこの耳をぴくぴくと動かす月島・彩希(未熟な拳士・e30745)は震えていたのだが、思い切って、仲間の方へと飛び込む。大成・朝希(朝露の一滴・e06698)も興味を抱いて耳を澄ましていたようだ。
「本当に、口裂け女が現れるとは思ってなかったよ」
 この依頼を持ちかけてきたレオナルド・ドール(沈む獅子・e26815)が本音を漏らす。
 例え、その女性が口が裂けていようとも。レオナルド曰く、自身よりも小さいbella(かわい子ちゃん)なのだそうだが……。
「それ以前に、ドリームイーターだからね、退治しないといけないね」
 頷くメンバー達。ヘリオンは丁度、現場空域へと差し掛かったようだった。

●その女の正体は……
 メンバー達が降下したのは、岐阜県岐阜市の繁華街だ。
 予め、藍月が用意した地図を元に、メンバー達は人気の少ない裏通りを見定めた上で、近辺をライトで照らす朝希がキープアウトテープを張り巡らす。
「なんだか変わった女性が現れるらしいね? なんでも……口が裂けてる、とか?」
 同じくテープを張っていたレオナルドも、ある程度作業が済んだタイミングで噂話を始める。
「何でも、この辺出るらしいぜ。異様に背が高い、マスクをした女。その下を見たヤツはいねぇ」
「……映画で見るみたいな話だな。本当にいるなら、見てみたいものだが」
 人払いがある程度進んだのを見て、ヴィヴィアンも言葉を返す。彼のそばにいたロイは殺界を作り上げて、会話に応じた。
「口裂け女の噂、僕も学校で聞いた事あります。でも、うんと昔からある話だそうですね」
 作業を終えた朝希も、知人の大人が子供の頃に聞いて怖がっていたという話を語る。
「こんなに長く語り継がれてるなんて、不思議ですよね」
 もしかしたら、単なる噂ではないのかもしれない――。実際はともかく、それらしきモノはこの近辺に必ずいるはずだ。
「口裂け女とは、とても有名な都市伝説の一つだね」
 藍月が聞いた話では、一説に人を引きずる妖怪に子を奪われた母親が悪鬼となったとされる説、そして、手術の失敗でそうなったという説などあるそうだ。
「実際なぜこうなったのか、興味は尽きないね」
 信心深い彼のこと、それは本音も混じっていたのかもしれない。
「実は、口裂け女は三姉妹って話もあるよな」
 左雨は別の話を持ち出す。その姉妹は全員、口が裂けているとか。……あるいは、口が裂けているのは1人だけで、他2人はメイクでそう見せているのだとか。
「ポマードが苦手でべっこう飴が好物って聞いたことがあるけど、本当なのかな?」
 都市伝説が怖いと尻尾を足の間で丸める彩希。それでも勇気を振り絞った彼女もまた、聞いた話の真偽を仲間達へと問いかけていた。
 バーヴェンはそれらを耳にしながら、周囲へと視線を走らせていると。闇の中からゆらりと現れた長身の女性の姿を目にする。
「私は……だぁれ……?」
 問いかけるコート姿の女性は目元がモザイクに、口元がマスクに覆われている。
 しかし、メンバー達は一斉に口をつぐむ。元々語っていなかったバーヴェンはもちろんのこと、彩希も黙って戦闘態勢を整えていく。
 それもそのはず、盾となるメンバーが応える手はずとなっていたからだ。
「俺からしたら、ただの美しい女性さ」
 レオナルドはまるで、目の前の夢喰いをナンパに誘うかのように告げる。
「……ああ、貴殿は幻……。人の心が生み出した幻だよ」
 藍月も続ける。心というものは強く、こうして貴殿の様な存在が現れるのだと。
 返答に関しては、間違ってはいない。口裂け女は自身の美しさについて問うこともあるというし、具現化した都市伝説であるのも間違いない。
 メンバー達はそのまま戦いを仕掛けるのだが……。
「間抜けは釣れたみてーだな」
 ヴィヴィアンが告げたその一言を、口裂け女は聞き逃さない。
「ま・ぬ・けぇ……!?」
 そいつはマスクを取り去り、取り出した包丁を振り回して突撃してくる。
 ただ、ケルベロスの方もすでに態勢は十分。そいつを迎え撃つべく、メンバー達はグラビティを繰り出すのである。

●狂気の口裂け女
 とある少女の『興味』が口裂け女として顕現したドリームイーター。
 そいつは包丁を振るって襲い掛かってくるものの、ケルベロス達は十分に対策を取っていた。
 高く飛び上がったロイは銀の靴をライトの光で煌かせ、口裂けの体を強く蹴りつける。
 ヴィヴィアンはロイの蹴りに合わせ、身に纏うオーラと地獄の炎を弾丸となし、夢喰い目掛けて撃ち放つ。仲間が敵の動きを止めるまでは、確実に攻めていくという戦法だ。
「思い切って……いくよ!」
 彩希が流星の如き蹴りで相手を一蹴する。左雨も不敵な笑みを浮かべて跳躍し、重力を宿した蹴りで敵の動きを制しようとした。続き、左雨のボクスドラゴンが援護の為にとブレスを吐きかけていく。
 一撃を食らわした左雨は余裕たっぷりに着地し、相手の出方を待つ。
「う、ああぁぁっ」
 口裂け女は呻き声を上げ、包丁を振り回してくる。
 藍月は紅龍と一緒になり、仲間の盾となるべく前に立つのだが。
「きゅあっきゅあきゅあきゅあー!」
 ナイフを受け止めるのは良いとしても、モザイクに包まれた両目に耳まで裂けた口という敵のおぞましい顔に、紅龍は体を震え上がらせた。
「きゅあーーーーーー!」
 あまりに驚き、紅龍は口裂け女の顔にブレスを吐きかける。
 それを浴びてうまく敵が怯んだ隙に、藍月は仲間の背後にカラフルな爆発を起こし、仲間の士気を高めていく。
 そこで、朝希がそれとなしに仲間へと呼びかける。
「気を付けて。『彼』が、来ていますよ」
 それは、蕗畑のまぼろし。ふと、その気配が頭上にしたかと思うと、大粒の玉水が落ちてくる。幻影はすぐに消え去り、癒しの飛沫を浴びたメンバーの集中力を高めていく。
 その1人、レオナルドは前に飛び出し、イタリア語で『愛する家族』と名づけられたマインドリングから光り輝く剣を具現化し、夢喰いの体を断ち切る。
 仲間が攻撃している間に、己の身を右目から燃える地獄の炎で包み込むバーヴェンが斬霊刀を構える。間髪入れずに、彼は雷の霊力を帯びたその刀身を敵のコートへと突き入れた。
「ああああっ!!」
 叫ぶ口裂け女。しかし、そいつは夜闇の中、モザイクの下から爛々と両目を光らせるのである。

 ドリームイーターとして現れた、口裂け女。
 都市伝説の噂通りの行動をするだけでなく、遠方から相手を狙って大きな口で食らいついてくることもある。狙いは1人だけではあるが、その威力は大きく、決して侮れない。
 そいつは、ドラゴニックハンマーを振り下ろすヴィヴィアンを狙い、裂けた口を大きく広げた。
「ヴィヴィ!」
 狙われた恋人の危機にロイが慌てて叫ぶが、ディフェンダー陣がそれを許さない。飛び出したレオナルドが身を呈して、夢喰いの食らいつきを受け止める。
「レオ!」
 尊敬する兄貴分のレオナルドの登場に、ロイは喜びの声を上げた。
「Solve vincla reis,profer lumen caecis,bona cuncta posce」
『罪の鎖より解き放ち、見えなき者に光を与え、幸ありますように』。
 レオナルドは語りかけるように言い、『獅子の雷』と名づけた槍で電光石火の刺突を喰らわせた。
「あうぅぅ……」
 呻く口裂けを、スナイパー勢が一斉に狙い打つ。
 飛び込んだ彩希はその身にオウガメタルを纏わせてから、夢喰いへと拳を叩きつけた。得意の体術での攻撃。彼女は着実に殴打を繰り返して攻め立てる。
 左雨もまた縛霊手をはめた拳で殴りかかる。この夢喰いは女子高生の犠牲の上で生まれたモノ。さらに、抵抗できぬ弱者をあの包丁で刻むのだろう。それを許せるはずもなく、左雨は、網状の霊力で敵の体を縛り付けていく。
 敵が動きを鈍らせる隙に、朝希は盾となるメンバーに緊急手術を施す。
「皆のサポートをお願いね」
 彩希の願いもあり、ボクスドラゴンのアカツキは自らの属性を注入することで回復支援を行っていた。
 盾となるメンバーも、代わる代わる敵の食らいつきや刃を受け止める。藍月は口裂け女の行動を見定め、次なるモーションを完全に読みきって仲間と対処を行う。
 包丁を大きく振るった隙をつき、ロイが躍りかかった。照明の光によって、彼女が首元につけた大事なドッグタグが煌く。
「我心より焦がれ望む。鞘無き追駆の剣よ、万物を喰らえ」
 ロイが握る鉄塊剣がひとりでに動き、敵と定めた相手へと重い斬撃と叩きつける。
 すかさず、恋人にもらったナイフを振るっていたヴィヴィアンが駆け寄った。
「死体を積み重ねていけば天国の階段にでもなると思ったのか。救われると思ったのか。振り返ってよく見てみろよ。地獄の門にそっくりだぜ」
 彼は地獄で補った記憶を言葉となそうとした。叫びは炎を介した地獄の門として具現化する。開かれた門は、超重力を発して夢喰いを飲み込もうとして……。
「そこを通る前に言ってやる。希望は捨てていきな」
 冷淡に言い放ったヴィヴィアン。しかし、口裂けは抵抗し、体力を奪われながらも異常な力でその場に留まって見せた。
 すかさず、そいつの腹へと彩希が回し蹴りと叩き込むと、口裂け女は全身に痺れを走らせたようだった。
 そこで、バーヴェンが一度鞘に収めた斬霊刀を抜き放つ。
 グラビティを乗せた拘束の抜刀術。その一太刀は口裂けの体を2つに寸断した。
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
「あ、あ、あぁぁぁ……」
 うめき声はすぐに聞こえなくなり、夢喰いの体がモザイクに包まれ、消えていく。
「きゅあきゅあ……」
 敵の姿が完全に消えるのと同時に、ぽてっと落下した紅龍がきゅーとへたり込んだのだった。

●暴走気味の少女へ……
 夢喰いを倒した後も、メンバーはてきぱきと行動する。
 朝希は自らの張ったテープを解除し、他人向けのヒールを持たぬバーヴェンが仲間へと破壊された裏路地の修復を依頼し、自らも片づけを手伝う。
「それにしても、いい加減、魔女どもとも決着をつけたいものだ……」
 なかなか、表にはでないパッチワークの魔女達。できるだけ早く討伐して根本を断ち切りたいところだが……。
 さて、メンバー達は程なく、倒れた遠藤・果歩の姿を発見して保護する。異常がないかとメンバーが確認している最中に彼女は目を覚ます。
「……あれ?」
 体が冷えているだろうと朝希は果歩に温かいお茶を差し出し、状況説明を始めた。
「こんな時間に女の子の一人歩きってのは、感心しないぜ」
「好奇心は猫をも殺す。探求は大事だが、知る為に命を失ってはそれこそ幾つあっても足りない。……気を付けると良い」
 自身の身の安全を一番に考えてほしいと、左雨は優しく諭す。藍月もまた言い聞かせるように言葉をかけたのだが、果歩は拳を握って主張する。
「いえいえ、スクープのかほちゃんはまだまだ頑張りますよ!」
「口裂け女の正体はデウスエクスなんだ。あまり深追いしてしまうと……、また危険な目に遭うかもしれないよ?」
 次は助けられないかもしれない。レオナルドはやや強めに嗜めるも、果歩は大きく首を振った。
「いやいや、見つけ出せれば、これ以上ないスクープなんですよ!」
 寒空の下で意識を失っていたというのに、果歩は鼻息荒くカメラを握る。
 その様子を見て、ヴィヴィアンは少し脅し気味に彼女へと告げた。
「あんまりウロチョロされると大変なんだよ。次、危なっかしいことしたら、そのスマホ叩き割ってヒールしてメルヘンにしてやるからな」
 自身の危険もそうだが、ケルベロスの活動の阻害にもなっている。ヴィヴィアンの言葉で、果歩はそれを自覚したらしく、さすがに反論を止めた。
「……やめろ、とは言わないが、自分の安全を、自分の手で守れる範囲で行動してみてはどうか」
 現実に、こうしてケルベロスに助けてもらっている状況だ。ただ、次はそれが間に合わず、自分の口が裂けるかもしれないとロイも忠告する。
 自身の状況をケルベロスから突きつけられ、果歩は言葉を失う。
「リスクを冒さないと得られない真実もあるのかもしれませんけど」
 厳しくも真摯な言葉で、朝希は彼女を説得した。
「あなたの命の無事と、あなたが持ち帰るスクープ。周りの方はどちらをより喜ぶと思いますか?」
 彼女には、その帰りを待っている家族がいるはずだ。
「あまり無茶はダメだよ。それに都市伝説より、わたし達ケルベロスの活躍をスクープして応援してくれた方が、わたし達も嬉しいかも」
「自分の身の安全を一番に考えてくれよ、な?」
「そうですね……」
 彩希、左雨の言葉に微笑を浮かべた果歩は、助けてくれたケルベロス達をぱしゃりとスマホのシャッターに収めていた。

 全てが終わり、現地で解散したケルベロス達。
 ロイはふと、ホラー映画を見たいという気分になったようで。
「帰りにレンタルしていかないか、ヴィヴィアン」
「悪くねえ。笑えるやつならもっといい」
 同居人からの誘いに、ヴィヴィアンは笑って応える。
 2人は仲睦まじく歩き、その場を去って行ったのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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