雛人形職人・雲井さんの受難

作者:林雪

●狙われた雛人形職人
『埼玉の古い町並みを再現した通りに、雛人形、というものを作る職人がいるそうですね。あなた達、その人間に接触しその技術を習得した上で、殺しなさい。グラビティ・チェインはどうでも構わない。まずは技術の習得を』
 ミス・バタフライがそう告げると、
『ヒナ、とはつまり……鳥の雛のことでございましょうか?』
 ミス・バタフライの前にひざまずいていた道化師の姿をした螺旋忍軍が、顔を上げてそう訊ねると。
『それも含めて調査するのがあなたの仕事、違いますか?』
『お、お許しを、ミスバタフライ……! 必ずやその、雛人形というものを作る技術を習得して参ります。この技術が地球支配の第一歩となるのでしょう』
 道化師の傍らに控えていた猛獣使いの姿をした螺旋忍軍も、深く首を垂れた。

●雛人形職人・雲井さん
「雛祭りって案外楽しいよね。僕誕生日が3月だからさ、近所の女の子のとこの雛祭りで一緒に祝ってもらったりしてたんだよね。段飾りの雛人形がどーんと飾ってあって、豪華だったの覚えてる」
 ヘリオライダーの安齋・光弦が楽しげにそう語る理由は、今回の事件の標的にあった。
「もうそろそろお馴染みかな? ミス・バタフライっていう螺旋忍軍が事件を起こそうとしている。今回彼らが狙うのは、雛人形職人。正確に言うと雛人形の体の部分を作ってる職人さんなんだ。恭志郎くんが事前に調査しててくれたおかげで正確に予知出来たよ」
「何となくですけど、そんな気がしてて」
 視線を振られた筐・恭志郎(白鞘・e19690)がそう言って頷く。頷きを返して光弦が説明を続ける。
「ミスバタフライが起こすのって一見小さな事件なんだけど、それが巡りめぐって大事件になってケルベロスの不利に繋がる……っていう独特の能力なんだよね。予知の一種ってことになるのかな」
 雛祭りに飾る雛人形は、一般的に人形の顔を作る職人と、首から下の着物の部分を作る職人とがいるのだという。
「今回狙われた職人は雲井さんっていって、着物の部分を作る人なんだ。まだ若い男の人だけど彼の作る着物は本物そっくり小さいサイズで再現してて、帯とか襟とかもそりゃもう細かく作ってあるらしい。ここだけの話……お値段も相当高価」
 敵がこの技術で何をするつもりかは読めないが、螺旋忍軍は雲井の技術を習得した上で、彼を殺そうとしている。
「ミスバタフライの能力をさておいても、一般人の殺害なんて絶対させるわけにいかない。撃破してきて欲しい」

●弟子入り
「残念だけど雲井さんをあらかじめ避難させてしまうと予知が変わってしまって、螺旋忍軍が別の場所を襲撃してしまう可能性がある。そこで、君たちが雲井さんの元に赴いて弟子になるってのはどうかな。襲撃の日の三日前くらいから雲井さんとこに詰めて、人形の作り方教えて貰うんだ。見習い程度の技術を習得して職人っぽさを出せたら、敵の標的を君たちに変えさせることが出来るはずだよ。とは言え……相当必死に修行しないとダメだろうね。頑張って!」
「ケルベロスやってると、色々出来ることが増えていきますね。人形作りはかなり難しそうですけど」
 と、恭志郎が苦笑した。
「雲井さんの人形工房は、元々剣術道場だったところを買い取って改築したんだ。だからこう、広くてなーんにもない感じ。場所もメインの通りからは一本外れたところだから、すぐ近くに空き地があったり昔ながらの井戸が残ってたりする。敵の螺旋忍軍はふたり連れ、うまくやれば片方をそういう人のいない場所に誘き出して分断したり出来るかも」
 接触してくる敵は道化師の姿をした螺旋忍軍と、シルクハットをかぶり鞭を手にした猛獣使い風の小男である。
「雲井さんの命と技術をみすみす失うわけにはいかない。頼んだよ、ケルベロス」


参加者
大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)
月鎮・縒(迷える仔猫は爪を隠す・e05300)
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)
東雲・凛(角なしの龍忍者・e10112)
ランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793)
八島・トロノイ(あなたの街のお医者さん・e16946)
テトラ・カルテット(碧いあめだま・e17772)
四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)

■リプレイ

●雲井工房
「雛人形ってすごく繊細で綺麗だよねー……並べるのも小物つけたりするのも楽しいし」
 にこーっと自然に笑みが漏れてしまうのは月鎮・縒(迷える仔猫は爪を隠す・e05300)である。ここは雛人形作家・雲井の道場……ではなく、工房。剣術道場を改築しただだっ広いスペースには小さな人形専用のトルソーが並び、そこに作りかけの人形用の着物が着せてあるのだ。色とりどりの着物を前に、大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)も目を輝かせる。
「すごいすごい、こんなの作れるようになりたいなー」
「すごいね雲井さん! こんな襲色目、僕初めて見たよ」
 もの作りの得意なフィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)が興奮気味にそう言えば、主である雲井がぼそっと答える。
「……ちょっとだけ、蛍光色入ってるから」
「へえー、すごい!」
 情報通り雲井はコミュニケーションが得意な方ではないが、決してケルベロスたちの来訪を迷惑がっているわけではなさそうだった。
「これは、嫌でも女子力アップしそう……ていうか、細かい~」
 雲井の仕事道具である裁縫道具を見て、ランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793)が苦笑する。
 その彼女たちの姿を穏やかに見守る四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)が思い出すのは、雛人形を前にこんな風にはしゃいでいた妹たちの姿だった。懐かしさに目を細めるも、気になるのは今回の敵のことである。
「にしても、どうしてデウスエクスが雛人形に興味を持ったのかしらね。理由が気になる所だけれど……」
 出来れば尻尾を掴みたい。そう考えて顎に手を当てる玲斗を励ますように明るい声を出すテトラ・カルテット(碧いあめだま・e17772)。
「とにかく、女の子の日の主役、綺麗なお雛様! 日本の伝統工芸はあたしたちが守るっ☆」
 勢い押しに見えるテトラだが、実は修業に対する熱意は人一倍。明るく笑いながらも雲井の説明をじっくり聞くべく近づいていく。
「……そのへんに置いてあるのは、どれも好きに使っていいから」
 事前に作戦を大まかに説明しておいただけあって、雲井は用意が良かった。勿論、いきなり作品作りを手伝えるわけではないが『職人としてのふるまい』が出来るように人数分の針箱が用意されていた。どれも使い込まれた古いもので、雲井が単に才能だけでなく作品を作り続けて今に至っていることを思わせた。
「あれ、これ布じゃなくて紙よね?」
 大きな卓袱台を皆で囲み、その上のものを取り上げてランジが目を丸くする。 
「まず、千代紙でイメージを作ってみてから布で」
「あ、色のイメージとか大まかなデザインをこれでするんだね、僕こういうの好きー」
「う、うちも……がんばる。フィーちゃんわかんなくなったら教えて……」
 さっそく作業を始めるフィーに続いて縒が千代紙に手を伸ばす。
「ええっと……まずはこれを見ながらやるのかな?」
「やはー! ワクワクしてきたっ! 本気出しちゃうよー!」
 言葉とテトラもそれに加わる。玲斗はまだ雲井の作品をゆっくりと眺めていた。
 そんな中、雲井が八島・トロノイ(あなたの街のお医者さん・e16946)に近づき、小さな声で訊ねる。
「……リーダーってあなたですか?」
「あ、リーダーって言うか一応年上なもんで、俺が兄弟子役です。」
 腕組みして流れを見守っていたトロノイがそう答えると、
「じゃあ、これ」
「えっ?」
 雲井がトロノイに渡したのは、デリバリーサービスのチラシの束である。ピザや弁当、出前のそば屋などなど。
「引き出しにクーポンとかも入ってるから、適当に使って」
「え、ええっ?」
「僕は僕で頼むんで、そちらはそちらで」
 それだけ言って、雲井は奥の部屋に引っ込んでしまった。
「参ったな、昼飯担当ってことかな?」
 頭をかくトロノイに、くすくすと笑いながら東雲・凛(角なしの龍忍者・e10112)が声をかけた。
「……以前、小銭入れを作る職人さんが狙われた時も守りに行きましたけど、こんな感じでしたよ。みんなで一緒にご飯やおやつを食べて、合宿みたいに」
「そ、そうか……何だか修業、ってイメージじゃないが」
 そこからケルベロスたちは三日間、雲井の工房に泊まりこみでみっちりと修業に励んだ。初日は千代紙だけだったが二日目からはフェルト、それから本物の着物の端切れを使って人形の着物を作っていく流れだ。雲井が作るものは人形用に反物から織っているので質は桁違いだが、どうしてなかなか、一見すれば職人の仕事に見えてきたではないか。
「なるほど、ここを折ると一気に繋がって見えるんだ……」
 フィーが人形用の十二単を縫う細かい作業をするのを、キラキラした目で縒が飽かず見つめている。その隣ではトロノイが器用に布を裁ち、玲斗は襟の色選びに余念がない。テトラも真剣そのものという表情で針を持つ。戦いとは違う緊張感を持ちつつ、皆で作業に没頭するのが何となく楽しくて、凛が薄く微笑んだ。
 その間、雲井は基本自分の仕事をしていたがちょいちょいケルベロスたちの作業を覗きに来ていた。愛想はないのだが、的確に指示をくれる。
「……何だか一気に上手くなったわね?」
 コツを掴んだらしい言葉の手元を見たランジが驚いて褒める。
「やったー! へへー、どお? ぶーちゃん」
 ボクスドラゴンのぶーちゃんはあまり興味を示さない。どうやら雛よりあられ派らしい。
 

●迎撃!
 襲撃当日は、朝から気持ちよく晴れていた。小春日和の日差しを受けて、にゃ~んと鳴くのは屋根の上の黒猫……ではなく黒豹に変身した縒である。作務衣姿に赤い褞袍を羽織り、赤い手拭巻きをしたフィーが玄関先を掃き清めていると。
『……お掃除ですか?』
 近づいてきたふたりの影。これが敵の螺旋忍軍で間違いない、だがフィーは殊更に平静を装って掃除を続ける。
「玄関先は、忙しくても綺麗にしておかないと幸が逃げるんだよ。雛人形は縁起物だからそういうのも大事。お客様も来るし……ってあなた、お客様?」
『まあ、そうなりますかね。雲井さんにお会いしたい』
「はーい、今取り次ぎますね。トロノイ兄さーん」
 兄弟子に取り次ぐ風を装って、フィーが室内を振り返り目で合図をした。頷いて凛と言葉が雲井に付き添い、奥の間へ移動した。
「なるべく作品は壊さないように気をつけますね」
 そう気遣う凛への雲井の返答は意外なものだった。
「別にまた作ればいいよ……悪党を倒すんでしょ? そっち気をつけた方が……」
 一瞬目を見張った凛だったが、雲井なりの気遣いなのだと気が付いて言葉と顔を見合わせて笑顔を見せる。
「ありがとうございます。……絶対、お守りしますからね」
「絶対、雲井さんに手出しはさせないの!」
 一方、道化師と猛獣使いは兄弟子たるトロノイと、その隣で甚平を着ておっかない職人の雰囲気を醸しているランジに引き合わされていた。
「よく来たな。今は三月の雛祭りを前の最盛期だ。人手が増えるのは正直ありがたい」
『あなたが雲井先生?』
「俺はここの古株でね、まあ一番弟子、ってとこだ」
 トロノイの落ち着いた対応に、敵は特に怪しんだ風もない。
「師匠は手が離せないから、待ってる間あたし達が基礎を教えたげるね!」
 着物にたすき掛けで同じく弟弟子を装うテトラがそう言いながら道化師の服の袖を引く。その道化師にランジがビシリと人差し指を突き付けた。
「よっしゃ、アンタは新弟子1号! あ、そっちのアンタは2号ねー。じゃあこれから分担して修業に入ってもらうわよ」
(「何の予習もナシに乗り込んでくるなんていい度胸じゃない……これは恭志郎さんに楽しい報告が出来そうね?」)
(「ああ、そのためにも、頼んだぜ」)

 一方、掃除中を装っていたフィーと黒猫擬態していた縒、そして隠密気流で身を隠した玲斗の三人は先に近くの空き地に向かい既に潜伏していた。弟弟子役の凛と言葉、それにランジとテトラの四人が誘導してくる道化師を急襲するつもりなのである。
(「先に倒せるといいのだけど……」)
 心配なのは、猛獣使いとふたりきりになってしまうトロノイのことである。必要なら自分も攻撃に参加を、と考えつつ玲斗は敵を待ち伏せる。
『工房ではなく外で作業を?』
 四人に連れられ歩く道化師がそう問えば、言葉がしれっと答える。
「あれっ、知らない? 雛人形は鳥の雛を使うのよ? お顔のシワとかがね、リアルに再現できるから」
 シワありの雛人形はちょっと想像したくない。だが敵は本当に雛人形のことがわかっていない。言葉のデタラメにも真顔で頷いている。
『なるほど、それなら鳥小屋の近くにあるのも頷ける、か』
「あの子たちとても元気がいいので、時々逃げてしまうんです。まずは捕まえましょう」
 と、凛も調子を合わせる。
 昔あった建物が取り壊された空き地は周辺に何もなく、戦うにはお誂え向きだった。燃えやすいものもない、との凛の事前の情報通りである。道化師が空き地の中央まで入ったことを確認して、ランジが仕掛けた。
「行くわよ、新弟子1号!」
 地獄の炎を纏った拳が、めいっぱいの力で道化師にヒットする!
『?!』
「たあっ!」
 咄嗟に何が起きたかわからずよろめく道化師に、物陰から飛び出したフィーの放った炎の竜が襲いかかった。そこへ。
「ゴメンねー、貴方たちにあげられる知識はないの!」
 テトラのトリッキーな蹴りが追い討ちをかけ、言葉の殴りつけるような剣の一撃が畳み掛ける。更にぶーちゃんが激しいタックル。命中するが、ヒットアンド超アウェイ! という風に後ずさる姿に、言葉がため息を吐いた。
「もう、ぶーちゃんビビりすぎ! がんばれっ」
「逃がさないよっ! 技術を盗もうなんて奴らは許さない」
 動物変身を解いた縒は空き地の入り口を塞ぐように布陣、氷で敵を捕えようと試みる。
「……」
 玲斗も冷静に状況を見極め、愛刀・光陰を抜いた。奇襲は見事に成功、敵が攻撃体勢を整える前に一太刀でも多く攻めておこうというのだ。
『おのれケルベロスども、こんなところにまで現れるとは……』
「こっちのセリフだよ!」
 フィーがそう言い返すや、敵は刀を抜いてきた。
『ダッ!』
「!」
 いち早く反応し、その刃の前に身を躍らせた縒のリボンがはじけ飛ぶも、傷は浅い。すかさず玲斗が駆け寄って治療に当たる。
「行きます!」
 凛の赤い目が燃え上がる。背から抜いた龍牙刀に螺旋の力が逆巻き、渾身の一振り!


 一方、工房では。
『何事……?』
 さすがにグラビティによる戦いの気配は、ラジオの音楽程度では消せるものではなかった。窓の外を頻りに気にする猛獣使いに、それでもトロノイは落ち着いて声をかける。
「おい、集中しないといい人形は作れないぜ」
 と言いつつ、雲井の工房には胡粉がなかったため、やらせているのは胡粉練りと称した小麦粉練りである。作業そのものは疑われていないが、どうやら敵は外の様子を探りにいく前に『職人を殺せ』という任務を果たすつもりになったらしい。作業の手を止め、ゆっくり立ち上がる。
『……実は私は重大な任務を帯びていましてね。貴方にはお気の毒ですが死んで頂きます』
「……そんな風にあっさり人を殺してきたんだな、お前らは」
『?! ……まさか』
 空き地の戦いは圧倒的にケルベロス有利である。囲まれた不利から脱しようと道化師は出口を探すが、そこも計算済みで布陣している。
「は~い、捕まえた。さようなら!」
 ドウッ! とランジの掌底が敵のわき腹で炸裂した。
『グオォッ!』
 悶える敵に、フィーの魔法光線とテトラの黒い弾丸が雨あられと降り注ぐ。そこへ言葉の鎌が唸りをあげた。
「そぉーれっ、凍っちゃえ!」
 その時、空き地の方へ駆けてきたのはトロノイ。さすがに一対一の戦闘は不利過ぎるとの判断で、極力時間を稼ぎながら仲間との合流を果たす。
『何と、罠だったとは……! 行け、プードルども!』
 後を追ってきた猛獣使いが、既に深手を追った道化師を見るやムチをしならせプードルたちをけしかけた。
「わんこに守らせるとは極悪非道な奴! もう手加減しないもん!」
 テトラの怒りに、白雲遠き高原に吹く風が答える。
「ベルの方が絶対可愛いし、モフモフなんだぜ!」
 ひとりで猛獣使いを相手にし、軽く手傷を負ったトロノイだったがこの局面でも飼い主バカは忘れない。ベルナドットはサモエドっぽいモフモフが可愛いオルトロスである。
「猫の牙だからって侮ったら後悔するよ……!」
 犬たちの攻防に割って入る縒のグラビティは、道化師に食らいつく。
『おのれお前たち!』
 それでも反撃を試みる道化師の剣、だがケルベロスたちに致命傷は与えられない。
「お客様には、栄養満点に育った果実をあげる」
 フィーが不敵に微笑んで取り出した果実は、道化師の前で破裂した。
『うギャァアあ!』
 連携を断たれた敵は、本来の力を出し切ることなく絶命していった。
『おのれ……ケルベロスども!』
「残念ね、回復が追い付かなくて。……光以て、現れよ」
 玲斗の冷静な声がそう告げ、光の術式が仲間達を包み込む。
 猛獣使いが目の色を変え、ムチで地面を打ち鳴らした。だが、罪なき職人の命を狙う輩に、容赦は要らない。
「次はあんたね、2号!」
 ランジがグリーフファングを振るったのを皮切りに、とどめの猛攻が始まった。フィーとテトラが火力で押しまくるのを、遠距離攻撃で皆がフォローする。
『行け、クマ! 野生の力を見せてやれ!』
 何とか身を守りつつ、猛獣使いが反撃に出る、が。
「わぁい現役肉食獣パンチは洒落になんないー!?」
 グラビティのクマの爪先を、ぴょんぴょんと身軽にテトラがかわす。
「今度は、燃やしてあげちゃう!」
 言葉がそう言って鎌を大きく振るい、縒も仲間の盾となるべく走り回りつつ、攻撃の手を休めなかった。
「女の子の健やかな成長と幸せを願う、大切な技術だ。お前らなんかには渡さねえぜ!」
 トロノイが熱く叫んで猛獣使いの鳩尾を蹴りぬいた。実は彼には、幸せでいて欲しい大切な人がいる。その子を思いつつ、修業も身を入れてやっていたのである。
『ミス・バタフライ……申し訳ありませぬ……!』
 その敵の呟きを耳にした玲斗が、何か聞き出せないかと一瞬考えるが調査は後でも出来ると思い直す。立ち位置をずらして導線を空けると。
「この一撃で……沈め!!」
 凛の渾身の一撃が風を巻き起こす。職人を狙った非道の輩達は、ケルベロスたちの連携の前にあえなく倒されたのだった。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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