北風に吹き荒まれて

作者:幾夜緋琉

●北風に吹き荒まれて
 北海道、釧路湿原奥地。
 冬の寒波吹きすさぶ中、テイネコロカムイの目の前に姿を現わす牙の兵、竜牙兵。
 彼女は彼の姿を見て、くすりと微笑んだ後。
「そろそろ頃合いね。さあ、あなたに働いて貰うわ。市街地に向かい、暴れて来なさい」
 と指示を与える。
 その指示に従い、指示を受けた竜牙兵は。
「……解ッタ……テイネコロカムイサマ……」
 と、虚ろ気な言葉を紡ぎ、竜牙兵は市街地に向けての進軍を開始し始めるのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね? それじゃ早速ッスけど、説明を始めるッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスらを一望すると共に、早速。
「今回皆さんには、釧路湿原近くに現れた、死神にサルベージされた第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスの一つ、竜牙兵が暴れ出す事件を解決してきて欲しいッスよ!」
「このサルベージされたデウスエクス、どうやら釧路湿原で死亡したものではない様で、何らかの意図でこの釧路湿原に運ばれた……のかもしれないッス。そしてこのサルベージされたデウスエクスは、死神によって変異強化を施されており、周囲にも数体の深海魚型死神を引き連れやってくる様ッス」
「そして彼らの目的ッスけど、釧路湿原近くの市街地襲撃の模様ッスね。幸い、予知によって侵攻経路は判明しているッスから、湿原の入口辺りで迎撃が可能ッス。周囲に一般人のいない状態での戦闘が可能ッスから、戦闘に集中して欲しいッスよ!」
 そして、続いてダンテは。
「今回相手にする竜牙兵ッスけど、こいつはどうやら攻撃と防御のバランス型の竜牙兵の様ッス。ゾディアックソードの様なものを大振りに振り回してくると共に、意外に素早い身のこなしによって攻撃を次々とかわせる様ッス」
「又、この竜牙兵の周りには、怪魚型死神が3体飛来している様ッス。こいつらは、基本的に後方からのヒットアンドアウェイの噛みつき攻撃をメインとしている様ッス。つまりこいつらを残しておくと、ちょこまかと後々面倒な事にもなりかねない、って事ッスから注意して欲しいッスよ!」
 そして、最後に。
「何にせよ、こうした死したデウスエクスを復活刺せて、更なる悪事を働かせようとする死神の策略は絶対に許せないッスよね! 皆さん、どうか宜しく頼むッスよ!」
 と、深く一礼するのであった。


参加者
岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
雄山・春千代(地球人のガンスリンガー・e05211)
火倶利・ひなみく(フルストレートフルハート・e10573)
神藤・聖一(白貌・e10619)
藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)
ラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336)
ライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437)

■リプレイ

●雪風の牙
 釧路湿原に現れ続ける、テイネコロカムイによって産み出された様々な死神達。
 そんなテイネコロカムイを宿敵に持った岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)は、彼の者が居る筈の釧路湿原を静かに見据えながら。
「『湿地の神』……やれやれ、夏から今迄仕事熱心な事だ。誰にとって、何をするのに頃合いなのやら……」
 と肩を竦める。
 言葉は少し軽め、でもその視線はとても鋭い。
 そんな響の言葉を聞きつつ、ラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336)とライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437)、雄山・春千代(地球人のガンスリンガー・e05211)らも。
「そうだな……死者を蘇らせる……か。相も変わらず胸糞だぜ」
「ああ。死人に……いや、死者に口なし……どうせ今回も問いかけたって返答ねーんだろうけどな」
「そうねぇ。これ以上の被害を出さないためにも、一刻も早く敵を倒さないといけないわね……」
 と、口々に、テイネコロカムイの呼び出した死神の使いへの意思を紡ぐ。
 そして、そんなテイネコロカムイが今回死から呼び出したのは、竜牙兵。
「今度サルベージされたのは竜牙兵か。死神のやることにはきりがないが、今は目の前の相手を掃除するとしようか」
「うん。一般人を守るのはケルベロスの大切な使命だからね。頑張らないと……」
 神藤・聖一(白貌・e10619)と藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)、そして火倶利・ひなみく(フルストレートフルハート・e10573)も。
「そうだね。なんとかむいむいが何を考えてるかは判んないけど、思い通りにはさせないんだよ! いこうタカラバコちゃん! とうっ!!」
 先陣切って雪原に華麗に降り立つひなみく、そして他の仲間達も次々と外へ……。
「……っ……さ、寒い。できればこたつでぬくぬくしつつお汁粉でも食べていたい……っと、げふんげふん。いや、頑張らないとな!」
 吹きすさぶ寒風に、もこもこの防寒服をもぞもぞっと着込むシェーラ。
 そして、仲間達、雪原の湿地帯へ立つと共に。
「さて……そろそろ尻尾を捕まえたいところ。死神の尾は、湿っていそうだけれどね」
 と、それにシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が。
「ん? テイネコロカムイの尻尾って、湿ってるデスか?」
「たぶん、ね」
 くすり、と悪戯げに笑う響、シィカは。
「そうデスか。まぁ、別に構わないデスよ! さぁ、待ち伏せ開始デスよ!」
 と元気よく拳を振り上げ、愛用の大きなギターを肩に掛けながら前へ前へ、と進んで行くシィカなのであった。

●来る牙の応酬
 そして、ケルベロス達は、指示を受けたテイネコロカムイの竜牙兵が現れるという場所へ辿り着く。
 ……周りに人家なども無く、静けさにつつまれている。
 そんな場所で息を潜め、静かに待っていると……湿地の方から。
『グ、グゥゥ……』
 と、唸り声を上げながら、やってくる竜牙兵。
 伴う死神型怪魚を後ろにつれて、闇の中からうぞろ、うぞろと……。
「……出て来た様だね」
「ああ……護衛対象もなし。視野も広く、平野での戦闘だ。周囲に気を遣う事はねぇな」
「そうだな。周囲を気にする必要がないのは楽でいい。何時も通り、殲滅するとしよう」
 とシェーラ、ラズェ、聖一は頷き合う。
 そして……ケルベロス達と一歩の間合いの所まで接近してくると、竜牙兵は。
『……グゥゥ……?』
 と、様子を伺うように、ギロリと睨む竜牙兵。
 そして、そんな竜牙兵に響とひなみくが。
「竜牙兵。ここは通さないよ? 先に行きたいと言うのならば、私達を倒してから、という事だよ」
「そうだよ、ここから先は~、通行止めなんだよ!!」
 と言うと共に、シィカが。
「そうデス。それでは本日のケルベロスライブ、ロックにスタートデス! イェイ!!」
 と、愛用のギターを強く掻き鳴らすシィカ。
 そして、その音に逆に刺激されるかの様に、竜牙兵がそのゾディアックソードを空高く掲げて。
『ウガアアア!!!』
 と咆哮と共に、その剣を振り落としてくる。
 そんな竜牙兵の一撃、咄嗟に。
「ツバキ、庇え」
 と短く聖一はビハインドに指示を与え、カバーリングさせる。
 強力な一閃を喰らい、かなりのダメージを喰らうが……すぐさまひなみくが。
「強くな~れ~!」
 とブレイブマインで前衛にヒールと共に、壊アップを付与し強化。
 そしてカバーリングの次に、ジャマーのシェーラが更にメタリックバーストで、前衛に狙アップを付与すると、更に聖一も。
「輝きよ、照らし出せ」
 と、『白之残照・弐式』で更に狙アップを付与。
 ある程度、自己強化を付与してきた所で、今度はスナイパーに位置する春千代、ラズェが。
「本当、ちょこまかと動く怪魚達ねぇ……」
「ああ。優先的に怪魚の方を仕留めるぞ!」
 と声を上げて、攻撃のターゲットを竜牙兵ではなく、廻りにいる怪魚型死神へと定める。
 そして……先ずラズェがグラインドファイアの一撃を叩き込むと、春千代もグラインドファイアを重ね、炎を付与。
 そして、クラッシャーの響とライラットが。
「さて……君達はどれだけテイネコロカムイのことについて知っているのかな? 教えて欲しい所だけど……魚には喋る口なんて無いからね。なら、さっさと焼き魚にでもしてあげるよ」
「焼き魚。こんな怪魚の焼き魚だなんて、正直食えた物じゃなさそうだけどな」
「まぁ、確かに、ね」
 と苦笑しつつ、響、ライラットは共にドラゴニックミラージュを叩き込んでいく。
 強力なクラッシャーの攻撃を叩き込むことで、一気に体力を削り取る。
 更に、強化を受けたシィカと、ひなみくのミミックのタカラバコちゃんが、それぞれヘリオライトを奏でての催眠付与と、愚者の黄金を死神に叩き込んで行く。
 ……流石にそんな集中攻撃を受けては、怪魚型死神一体を倒す事など雑作も無い事。
 勿論、竜牙兵のゾディアックソードの一撃に加え、後方から怪魚型死神のヒットアンドアウェイの噛みつき攻撃が、少しずつではあるが、ケルベロス達に傷を残していく。
 ……そして、次の刻。
 強化も一通りついた事であるし、次は総攻撃。
 勿論、ターゲットは竜牙兵ではなく、後ろの怪魚型死神。
 あえて竜牙兵に近づき、ディフェンダーのツバキとタカラバコちゃんが竜牙兵の攻撃を引き付けつつ、残る仲間達はヒットアンドアウェイの瞬間を狙い、迎撃。
「意思も無く浮かんでいる怪魚たち……その鱗は狐の牙を通さないか、試してみる?」
 と言いつつ、死神に投げバールを叩き込む。
 ライラットもドラゴンブレスで、怪魚型死神を炎に包んでジリジリと炎ダメージを付与。
 又、シェーラ、春千代、ラズェのジャマー、スナイパーにおいては、敢えてライジングダークやグラインドファイア、フォートレスキャノンなどで、多種のバッドステータスを怪魚型死神に積み重ね、その動きを鈍らせる。
 鈍らせた上で、クラッシャー、ディフェンダー陣の猛攻を集中させる事で、二匹目、三匹目、と……確実に仕留める。
 そして、経過する事数分。
 後衛にいた怪魚型死神を全て倒し、残るは竜牙兵一体のみ。
 ただ、竜牙兵は仲間達がいなくなったことを全く認識していない様で、ただただ攻撃をしてくるばかり。
 ゾディアックソードを軽々と振り回しながらも、素早い身のこなしでケルベロス達の反撃のジャストを遮る。
 ただ……ケルベロス達も、怪魚型死神を全て倒した事により、敵の行動範囲を次第に狭める事で、回避をし辛くさせていく。
 ……そして、クラッシャー、ディフェンダーの総勢6人で、大きく竜牙兵を囲う様な包囲網へ。
『グ……ゥ』
 逃げ道に立ち塞がるケルベロス。また逃げても、更に別のケルベロス……。
「背中、がら空きデスよ!」
 と、その瞬間を狙って、気咬弾を叩きつけるシィカや、聖一。
 流石に背後からの攻撃は、躱す事は難しい。
 一本、二本と、竜牙兵の牙がこぼれ落ちると、段々竜牙兵の唸り声には悲哀の叫び声も含まれ始める。
 ……そんな叫び声を聞きつつ。
「待たせてごめんね? やろうか?」
 と、竜牙兵の真っ正面から対峙。
 渾身のバリケードクラッシュや、投げバールを次々に叩き込む事で、その体力を少しずつ、少しずつ削り取って行く。
 勿論、同じくクラッシャーに属するライラットも。
「しかしなんでよみがえったデウスエクスはこうも早いのかね。まあ当てる方法なら幾つかあるんだけど、さっ!!」
 と、叫びながら渾身のセイクリッドダークネスや竜爪撃を叩き込んで行く。
 クラッシャー二人が、バックアタックの後に生じる隙をついて次々と攻撃していく事により、加速度的に竜牙兵の体力は減少。
 そして……最早ボロボロになった竜牙兵へ。
「焼け……尽きろ……っ!!」
 と、『重粒子相転十式』を叩き込むラズェ。
 渾身の一撃に、ゾディアックソードを持った竜牙兵の片腕が砕け散る……そして、悲鳴を上げる竜牙兵の元へ、響が身を翻して接近。
「遍く悪神を討ち滅ぼした、カムイランケタム。相対する勇気はありや否や?」
 と、至近距離から、『虎杖丸』の一閃を首筋に放つと……竜牙兵の首は空高くに跳ね飛び……そして、自制を失うが如く、竜牙兵は一気に崩れ墜ちて行くのであった。

●湿地に沈む影
「……ふぅ」
 静かに、息を吐く響。
 目の前から姿を消した、竜牙兵。
 影も形も失われ、もう……暴れていた痕跡は、抉れた地面と、焦げた様な匂いのみ……。
「……安心して寝とけ。流石にもう誰も起こさねえよ」
 と、ラズェが骸に言い捨てる。そして……他の仲間達も。
「そうだねぇ……テイネコロカムイを倒さない限りは現れ続けるだろうけど、一つ一つ対処していくしかないよね」
「ああ、全くだ。この釧路湿原のどっかに居るんだろうけどな」
 シェーラ、ライラット湿原釧路湿原へ目を配る……すると、真剣な眼差しで見つめ、拳を静かに握りしめる響。
 ちょっと言葉を掛けづらい雰囲気ではあるが……それだけ響が真剣という意味であろう。
 そして……ラズェはそんな仲間達を後ろから見わたす様にしながら、煙草に火をつけて。
「……この季節、北の大地に赴くのは勘弁して欲しいぜ」
 と、煙を吹かす。
 そして、荒らしたところをヒールグラビティで修復するシェーラを待って……ケルベロス達は、釧路湿原を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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