酉年様事件~修慧の弓

作者:犬塚ひなこ

●酉年の祝い
 正月も過ぎた頃、少女は小さな神社にお参りに訪れた。
 初詣にはほんの少し遅いがこれが彼女にとっての初詣となる。手にはお参り前に買った破魔矢。冷たい風が吹き抜け、結わえられた鈴が愛らしい音を鳴らす。
 少女は風に揺られた黒髪をそっと抑えた後、破魔矢を小脇に抱えて両手を合わせる。
「弓道の段位が取れますように!」
 元気よく願いを口にした少女は私自身も頑張りますから、と付け加えた。
 だが、そのときだった。
 突如としてビルシャナ・酉年様の力が彼女を襲う。抵抗する暇もなくその身体は見る間に鳥人間のような姿へと変わっていった。そして、酉年様の影響を受けた少女は手にしていた破魔矢を本当の矢に見立てて構える。
「段位を取るなら今すぐ練習をしなきゃ! 的はそう、あなた達だよ!」
 ビルシャナ少女は得た力を使い、他の参拝客に矢を差し向けた。そして酉年なら一年中酉年様を崇め奉って祝わなければならないと語り――その日、神社は惨劇の舞台となった。
 
●矢の向かう先
「あけましておめでとうございます! じゃなくって、たいへんです皆様!」
 ごく普通に新年の挨拶をした雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は、ふるふると首を横に振って皆を集めた理由を語り出す。
 酉年様というビルシャナが出現した。
 その敵は十二年に一度だけ、特別な力を得る能力があるらしく、酉年を祝う人々の祈りを奪って急速に力をつけたようだ。そして、集めた力を利用して神社でお祈りを捧げた老若男女を『酉年ビルシャナ』に変貌させて配下としている。
「このままでは変貌させられた方々が他の参拝客を殺してグラビティ・チェインを奪ってしまいます。お願いです、被害が出る前に向かってくださいです!」
 リルリカはケルベロス達に真剣に願い、深く頭を下げた。
 この酉年ビルシャナは強制的にビルシャナ化させられているだけなので、撃破する事ができれば救出も可能だ。しかし今回撃破できなければビルシャナ化が定着してしまい救出できなくなるので注意が必要となる。
「皆様に戦って頂くのは弓道をやっている女の子です。段位が欲しいと願ったようなのですが、その思いを利用されてしまったみたいでございます」
 その見た目は二足歩行の黒い鶏のようになっており、手には武器となった破魔矢が携えられている。相手は魔力で形成した弓を使って矢を飛ばす攻撃を行う為、上手く対応しなければならない。
 元は弓道少女ということもあって敵の攻撃の命中率はとても高い。こちらの体力を削られ過ぎぬよう連携すべきだと話し、リルリカは更なる説明を続けた。
「酉年ビルシャナは、より強いグラビティ・チェインを得る為に『酉年を褒め称える』発言をした相手を最優先で攻撃するみたいです」
 つまりケルベロス達がそのような発言をすれば周囲の一般人が狙われることはない。現場に到着した時点でビルシャナの気を引けば避難行動は必要ないのでそこは安心だ。
 後は全力で戦って欲しいと告げ、リルリカは話を締め括った。
「参拝に来た人の純粋な願いを捻じ曲げるなんて許せません。絶対にです!」
 神様に願うということは自分に誓うということでもある。
 少女の思いと願いを未来に繋げる為に、神聖な矢を人殺しの道具に挿せぬ為にも、今こそケルベロスの力が求められている時だ。


参加者
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
日向・向日葵(向日葵のオラトリオ・e01744)
エリノア・ルーヴェンス(プールー・e15389)
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
サシャ・フラヴィニー(矯めるなら若木の内に・e21203)
篠村・鈴音(焔剣・e28705)

■リプレイ

●酉年の始まり
 新年を迎えて暫く。進むのは小さな神社へ続く道。
 初詣には少し遅い時期だからか、境内に向かう人の姿は疎らだ。そのことが事件を引き起こすことになるとは誰もが予想していなかっただろう。
 エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)は酉年ビルシャナが起こす事件を思い、巻き込まれてしまった少女について考える。
「武道にとって技能の向上は大事で、それを認定する段位は大きな目標。高みを目指す願いを奪わせはしません」
 自分だって黒帯を目指しているのだから、と拳を握るエステルは件の少女を身近に感じていた。エリノア・ルーヴェンス(プールー・e15389)も少女を救わねばならぬと感じ、戦いへの思いを強める。
「それにしても、十二年に一度だけとはまた稀有な機会に遭遇したもんだなぁ。十二支なんて普段あんま気にしてないんだけども」
 すると、霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)が仲間の意見に頷き、同意を示す。
「お正月の神社にビルシャナが現れるなんて新年早々ひどいですわね」
「ビルシャナも仕事熱心だこと。干支だから躊躇するとでも思ったのかな?」
 ちさの言葉に日向・向日葵(向日葵のオラトリオ・e01744)も肩を竦め、諸悪の根源である酉年様の企みに呆れを覚えた。
 それでも、人々の安全を守ることが自分たちの役目。
 篠村・鈴音(焔剣・e28705)もビルシャナの動向に思いを巡らせ、小さな溜息を吐く。
「相も変わらずですが、こちらもやる事は変わりません。とっとと追い返しましょう」
 そして、向日葵や鈴音は仲間達と共に境内を目指して走る。
 其処に続きながら、サシャ・フラヴィニー(矯めるなら若木の内に・e21203)はそっと首を傾げた。自分には馴染みのない干支は何だか不思議な風習に思える。
「とにかく純粋な方の想いを利用するだなんて許せませんね。退治しましょう」
 例の少女は酉年様などには全く関係なく、ただ運が悪かっただけ。サシャが神社の鳥居を指さし、もうすぐだと皆に呼びかける。
 ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)と羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)達が先を見据えると、境内の中に異様な影が確認できた。
「正直筋肉の事ならともかく、酉年についてってあまり良く知らないんだよな。……よし、ノリと勢いと筋肉で何とか頑張ろう!」
「純粋な願いに付け込もうとは、とんだ罰当たりな相手です」
 ムギの気合いに同調し、紺は敵を見つめた。
 敵と化した少女はまだ此方に意識を向けていない。ムギは一般人が襲われてはならぬと気を引き締め、大声で叫んだ。
「おー流石は酉年! 凄いな酉年! 酉年万歳! 正に酉年は筋肉と言えるな!」
「……ん?」
 その声により、酉年ビルシャナがケルベロス達の方に振り向く。
(「崇め奉れとか言われっと逆に反発したくなるんだけどね。でも……」)
 浮かんだ思いは言葉にせず、エリノアは首を振った。今は被害を出さない為に嫌でも酉年を称える時。言祝ぐべき新年を血で染めぬこと。それが番犬としての使命なのだ。
 そうして、新年早々の奇妙な戦いが幕開ける。

●崇め奉る
 突如現れた黒い鶏の化け物に対し、訪れていた人々がざわつく。
 すぐにでも避難誘導をしたいが、そうすれば敵の意識が避難を行う人に向けられてしまうだろう。それを防ぐために鈴音は両手を掲げ、高らかに称える。
「今年は酉年、鶏が美味しい年! ムネ・モモ・手羽先……一年楽しく過ごせます! だから今年は頑張って鶏の普及に尽力します!! 万歳酉年!!」
 万歳三唱と共に叫ばれた主張に続き、サシャも敵へと一歩踏み出す。
「酉年は商売運アップ、学業運もアップ! さらに言えば酉の市も楽しく心がワクワクしますね! 焼き鳥とか唐揚げも美味しくってとにかくいいとこづくめです!」
 食べ物に関しては少し違う気がする、という突っ込みは敢えて抑え、エリノアは酉年ビルシャナをちらりと見遣った。
「酉年ねー、いいよねー。鶏って白と赤で色からしておめでたい雰囲気あるもんねー」
 こんなものかな、とエリノアが様子を見ると向日葵も続く。
「酉年の酉とりは『とりこむ』と意味もあるそうだから、今年は商売が繁盛しそうな縁起の良い干支だね。酉年パワーでお客様をがっぽり取り込むぅッ!」
「そうそう、商売繁盛。運気もお客も取り込める、っつったかな」
 エリノアと向日葵の連携口撃に敵の気は徐々にケルベロスに引き付けられていた。
 さらにはエステルがずい、と踏み出して語る。
「トリって言えば鶏! みんなも鶏のように早起きすれば一年を健康に過ごせます! それに中国では『金鶏』と『吉』って同じ発音だし!」
「やはり酉年生まれが一番幸運だったりするのですわっ」
 エステルとちさは良い調子だと頷き、思いつく限りの言葉を並べる。同時にちさはアイコンタクトで以て戸惑う一般人に逃げて欲しいと告げた。それを受けて人々がそっと逃げてゆく様を、紺は横目で見守った。
 酉年だか何だか知らねーが調子に乗るな。と、本当は敵に啖呵を切りたいところだったが紺はぐっと堪えて仲間に同調する。
(「ムギさんがいる前でそのような粗相はできませんよね」)
 そう考え、紺は酉年の主張を続けるムギを見上げた。彼はテンション高く、弓道少女の酉年ビルシャナに呼びかけていく。
「酉年ってのは幸運に恵まれた年なんだってな。これはまさに新しい事を始めるには絶好の年って奴だ、本当に酉年は最高だぜい!」
 すると、敵は大きく胸を張った。
「ふふ、何だか気持ち良いな。決めた! 今年最初の的はあなた達だよ!」
 刹那、身構えたビルシャナが魔力の矢を作り出す。
 サシャは逸早く敵の動きに気付き、傍らのテレビウム・雨過天青に構えるよう呼び掛けた。防護の構えを取ったサシャは放たれた矢を自ら受け止めに駆ける。
「人を的にするなんて、普通じゃありません!」
 そうして、サシャは母が聞かせてくれた癒しの歌を紡いでいった。
「目を覚ましてくださいませ。あなたは操られているだけですのっ」
 サシャを補助するべくちさが癒しの力を紡ぎ、ビルシャナに言い放つ。同時にウイングキャットのエクレアとネルが癒し手としての位置についた。
「よく分からないけどあなた達の力を奪ってあげるね!」
 だが、ビルシャナと化した少女は聞く耳を持たない。これが酉年様の力なのだと感じた向日葵と鈴音は敵を倒す覚悟を決めた。
「縁起物を武器にするなんて罰当たりだぞぉッ! この勘違い系!」
 戦闘態勢を整える向日葵に続き、鈴音は凛と告げる。
「――ビルシャナは斬ります」
 そうすることが救出と解決への一番の近道。地面を蹴った鈴音は高く跳躍し、流星めいた蹴撃を敵へと叩き込む。
「ネルくん、後ろは任せたよ。帰ったら昼寝していいから、今だけでもがんばろうな」
 欠伸でもしそうな翼猫に呼び掛け、エリノアは地面に守護星座を描いた。生み出された加護は光を放ちながら前衛達を包み込む。
 エリノアからの援護を受け、エステルは拳を強く握り締めた。
 彼女の気持ちが近く感じられる分、いつも以上にあの鳥が許せない。武道は相手に勝つのを目的とはせず、自らを鍛える修練のため。
「己に打ち克つのが武道です。だから――」
 真剣な瞳を差し向け、エステルは裂帛の気合を重力震動波に変換する。次の瞬間、敵の近くに重圧の力が炸裂した。
 されどビルシャナはそれをひらりと交わし、新たな矢を番える。
 冷気が渦巻き、氷の矢が中衛の鈴音と紺に放たれた。すぐにちさが鈴音を庇いに向かったが、紺は氷結の一閃をまともに受けてしまった。
「大丈夫か、紺! お返しだ……我が筋肉を以って、打ち貫く!」
 紺に問いかけたムギは敢えて前を向き、竜槌を大きく振りあげた。反撃として放たれた超重の一撃はビルシャナを穿ち、氷の力を宿し返す。
「大丈夫です。神社に訪れていた人々のためにも、しっかり勝利を収めたいですから」
 紺は平気だと首を振り、鋭い銃弾を放った。
 そして、改めて境内を見渡す。引き付けがうまくいった事もあり、既に敷地内には自分達しかいない。此処で勝利すればこの場所にも普段通りの平穏が戻ってくるはず。
 向日葵も強く頷き、全力の攻撃に移る。アームドフォートの主砲を敵に向け、向日葵は銃弾を一斉発射していく。
「罰当たりなのは、神社の中でドンパチしているボク達も言えた義理はないけどさぁ! それでも、ボク達は勝ってみせるッ!」
 高らかに宣言したのは少女を救い、平和を取り戻す為の気合い。
 矢が舞い、銃弾が飛び交い、癒しの力が交差する。何か一つを崇め奉るわけではない、新年を本当の意味で祝えるようにする為に戦いは続いてゆく。

●平穏の酉
 破魔の鈴が鳴り響き、ケルベロス達を惑わせる。
 繰り広げられる攻防は激しく、敵からの猛攻は恐るべきものだった。
 されど防護に回るサシャとちさ、エリノアが与えらえる衝撃を交互に受けることでダメージは上手く分散されている。それだけではなく痛みはすぐにエクレアや雨過天青、ネルが癒してくれていた。
「ありがとー、ネルくん。よく頑張ってくれてるな」
 エリノアは相棒猫を褒め、敵の次なる動きに注視する。これまでに繰り返された構えをよく見れば、矢の軌道もきっと予測できるはず。
 その狙い通り、エリノアは次の一手が向日葵に向けられた事に気付く。来るよ、という彼の声に反応したちさが向日葵の前に回り込み、炎矢を受けにかかった。
「させませんわ!」
 ちさは矢を受け、痛みを堪える。庇ってくれた彼女に礼を告げた向日葵は魔法の剣を掲げ、一気に敵へと向かう。
「マジックサーキット。リバイバルッ!」
 凛々しい掛け声と同時に向日葵色の眩い光が斬撃と化す。伸びた光は夕焼け色の残光となり、鮮やかな色を戦場に宿した。
「なに、この力……すごい……」
 一閃によってビルシャナがよろめき、感嘆の声を漏らす。
 此処からが勝負だと感じたサシャは仲間達に更なる力を宿す為、唇を開いた。
「――母さんのこと、思い出すように歌うよ」
 再び歌い上げられたのは亡き母ヴィオレットから習った歌。戦う力を呼び起こす歌声は戦場に広がり、穏やかながらも燃え上がる心地を宿していく。
 それを受けた鈴音は薄く笑み、敵をじっと見つめた。
「ビルシャナも鶏ですよね。どんな味がするのか、ちょっと気になるんですよね……」
 ふふ、と笑みが妖しくなったことに思わずビルシャナが後退る。そして、鈴音は魔煤を幾重にも纏わせ、緋焔を長大な黒剣へと造り替えた。灼刃が迸るように振り下ろされ、ビルシャナの羽を大きく散らす。
 エステルも今が畳みかける瞬間だと察し、少女ビルシャナを真っ直ぐに捉えた。
「私も頑張るから、あなたも頑張って!」
 少女とて、ただ参拝に来ていただけ。無事に助け出してみせるという誓いを抱き、エステルは敵の羽腕を強く掴んだ。まるで円錐曲線のような軌道で空中へ舞い上がった彼女は、ひときに敵を叩き落とす。
 其処に大きな隙が生まれ、ムギは傍らの紺に声をかけた。
「合わせろ紺、一気に終わらせる」
「はい、たくさんの人にこれからの一年に希望を持ってもらえるように。そのために、私……ムギさんと一緒に頑張ります」
 彼の呼び掛けに応えた紺は貪欲な寓話を発動させる。ムギとなら心配は要らないと感じた紺は黒い影を蔦のように絡みかせ、敵の力を奪い取る。
 同時にムギが地獄化した炎を右腕に宿し、一気に地面を蹴りあげた。
「その肉体もその願いも、お前の好きにしていいもんじゃねえんだよ! これで終わりだぁぁあああ!!!」
 その力はまさに筋肉弾丸。音速を越えた一撃は敵を撃ち貫く為に振るわれる。強靭な一撃を受けた敵はいよいよ弱り、反撃すら出来ぬまでに追い込まれた。
「わ、私……何でこんな……助け、て――」
 零れ落ちたのは正気を取り戻しかけている少女の言葉だ。向日葵は絶対に助けると声をかけ、エステルも少女に手を伸ばす。
 そして、ちさとエリノアはしっかりと頷きを交わしあった。
「お正月はおめでたいものでないといけませんもの」
「酉年だからって取り込まれちゃ駄目だからね。さーて、終わらせるよー」
 悪しき存在の支配から解放するため、エリノア達は最後の力を振り絞る。跳躍したちさの旋刃の一閃によって敵の動きが止められた。今です、と告げたサシャの声を聞き、エリノアはバスターライフルを構える。
 そして、一瞬後――氷色の鋭い閃光が放たれ、戦いの終幕を飾った。

●参拝と願い
 酉年ビルシャナは倒れ、少女を包んでいた羽が霧散する。
 蹲る弓道少女を支えたエステルはその身に怪我がないか確かめていく。少々混乱はしているようだったが、少女の身体は何ともないようだった。
「後でゆっくり、もう一度お参りをしましょうね」
「は……はいっ!」
 一緒に、とエステルが微笑みかけると少女は緊張しながらも嬉しそうに頷く。
 これで少女と神社の危機は完全に去った。鈴音は周囲にヒールすべき所がないか確認し、境内の何処にも傷がないことに安堵を覚える。
「さて、ついでに参拝していきましょうか」
「それは良いですね。お参りするのは悪いことじゃないですから」
 サシャは鈴音の誘いに同意し、雨過天青に行こうと手を伸ばした。エリノアもサシャ達に倣って参拝をしようと考え、傍らのネルを見下ろす。
「ネルくん、俺達も……あれ、眠い? 疲れた?」
 だが、肝心のネルは興味がなさそうに欠伸をしていた。そんなエリノア達の様子が微笑ましく感じられ、向日葵とちさはくすくすと笑いあう。
「さあ、みなさま。遅いお正月を祝いにまいりましょうっ」
「そうだね、今年もいろいろありますように」
 向日葵は年始の忙しさを思い出しそうになったが、慌てて首を振って新しい年の事を考えた。きっと、今年もたくさんのことがあるだろう。
 其処に希望があるよう願い、ちさ達はしっかりと参拝をした。
 ムギと紺も隣同士で神前に並び、軽く一礼する。まず鈴を鳴らし、二拝二拍手一拝。ムギが力強く叩く柏手の音は快く、紺の口元は自然と綻んだ。
 そうして、ムギは心からの願いを口にする。
「紺と一緒に、この一年を無事に乗り越えられますように……」
 そしてこれからも一緒にいられますように。
 些細だけれど何よりも大切な思い。そう、きっと――そんな小さな願いが叶えられる世界こそ、自分たちが求めるものであり、守るべき未来の形だ。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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