●あの人と一緒になりたい……!
2017年も始まって、十数日経つ。
OLの野田・亜里奈は年末に実家で親や親戚の相手をし、三が日を過ぎてすぐ仕事始めと、忙しない年始を過ごしていた。
それも一段落したのが10日を過ぎてから。彼女はようやく、神社に初詣へと参っていた。
これだけ経ってしまえば、行かなくてもとツッコミが来てしまいそうだが、彼女はどうしても、今年は願っておきたいことがあった。それは……。
(「どうか、今年こそ、進君と一緒になれますように……」)
彼女が願うのは、付き合っている彼氏、三橋・進との結婚。
大学院で研究を行う彼は今年、助手から講師へと昇任するのだという。それを機に、彼からプロポーズがもらえたら……。そうなったら、自分も頑張らねばならないのだが。
「うっ……!」
その彼女に、突然異変が起こる。見る見るうちに外見が変化していき、羽毛に包まれた姿へと変貌していく。そして、彼女の願望が形となったのか、花嫁衣裳……白無垢をベースとして、華やかな装飾で着飾った姿をしている。
「おほほほ、私の幸せの為に、酉年様を崇め奉るのよ!」
突然、亜里奈はビルシャナを称える言葉を叫びながら、境内にいる人々を襲い始める。
神社への参拝客はそれに巻き込まれまいと逃げ出すが、ビルシャナとなった亜里奈は止まらず、人々の命すらも奪ってしまうのである……。
年も明け、ケルベロス達も本格的に活動を始める者も多い。
ケルベロスがヘリポートへと向かうと、すでにそこには、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の姿があった。
「皆、お疲れ様」
挨拶もそこそこに彼女が語ったのは、酉年様と呼ばれるビルシャナの話だ。
「相手は12年に一度だけ、特別な力を得る能力があるらしいよ。酉年を祝う人々の祈りを奪うことで、このビルシャナは急速に力をつけたようだね」
そして、このビルシャナは集めた力を利用し、神社で祈りを捧げていた人を見定め、『酉年ビルシャナ』へと変貌させて配下にしてしまうという。
「酉年様はその人に人々を殺害させて、更なるグラビティ・チェインを得ようとしているようだね……」
この一連の事件は日本各地の神社で発生している。被害が出る前に撃破してほしいとリーゼリットは語る。
「あと、酉年ビルシャナは、強制的にビルシャナ化させられているだけだから、撃破することができれば、その人を救出できるはずだよ」
だが、撃破ができなければ、ビルシャナ化が定着して救出ができなくなってしまう。この為、この場で確実に撃破しておきたい。
「場所は、宮崎県宮崎市内にある神社だね。そこで暴れ始めた酉年ビルシャナを相手してほしい」
現れる酉年ビルシャナは、20代のOL、野田・亜里奈が変わり果てた姿だ。
彼女は現在付き合っている男性、小野・進との結婚を願っていたこともあり、白無垢姿をメインとして、全身に華やかな装飾を施した姿で現れる。
「孔雀炎、閃光といったビルシャナの力と、扇子を使った攻撃を行うようだね」
扇子は直接叩きつけて来たり、つむじ風を起こして相手に浴びせかけたりしてくるようだ。
この酉年ビルシャナは、より強力なグラビティ・チェインを得る為、『酉年を褒め称える』発言した相手を最優先で攻撃する性質がある。
「だから、例え周囲に一般人がいても、皆が酉年を褒め称える発言をしながら戦えば、酉年ビルシャナは皆を狙ってくるはずだよ」
こうした性質があるので、一般人の避難も必要ない。それどころか、人々からの声援を受けて戦うことができる。それに応え、ケルベロスとしての戦いを人々に見せながら戦うのもいいかもしれない。
説明を終えたリーゼリットは、表情を沈ませてこう続ける。
「純粋な願いを悪用するなんて……、許されないよ」
彼女の帰りを待っている男性もいるはずだ。悲劇とならぬようにこの事態を打開し、女性を救い出したい。
「行こう。ヘリオンはもう離陸できるよ」
すぐに現場へと向かおうと、リーゼリットはケルベロスに向けて手を差し出すのだった。
参加者 | |
---|---|
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638) |
クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651) |
エリース・シナピロス(少女の嚆矢は尽きること無く・e02649) |
眞山・弘幸(業火拳乱・e03070) |
リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130) |
ルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993) |
伊・捌号(行九・e18390) |
神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167) |
●依頼に当たって……
現場に向かうヘリオン内。
ケルベロス達は各自の時間を過ごして到着を待つ。
「どうして神社でお参りなんて、するの……かしら」
初詣といえば、日本における恒例行事。しかし、エリース・シナピロス(少女の嚆矢は尽きること無く・e02649)は、神様は困ったときに助けてくれないと辛辣な言葉を呟く。
「何かにすがりたくなる気持ち、分からなくはないかな」
そんなエリースにルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)が近づく。自身の正義を探す彼女はなんとなく浮かぶ考えを口にする。その意思も、かつて散ったケルベロスの意志なのかもしれないが……。
「そうなのかな」
ルージュ相手だと、やや滑らかに話すエリース。しかし、考えには完全には同意できないのか、首を傾げていたようだ。
そばでは、クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)が何やら唸っている。想い人がいて、しかも結婚にも近しい状況にある今回の被害者女性に妬ましさすら覚えていたようだが。
「……結婚は女の子の夢! それを利用するなんて、何の苦労もせずにリア充になったDQN共より許せない存在です!」
自身の結婚願望はさておき、クロコは事件を引き起こしたビルシャナに怒りを燃え上がらせる。
「人様の祈りに付け込むような真似は、ちっと気に入らねっすな」
自らを好んで『伊九』と名乗る伊・捌号(行九・e18390)は、酉年様の所業に不快感を隠そうとはしない。メンバー達は誰も、捌号の主張に反論はしなかった。
程なく現場に到着し、メンバー達はヘリオンから降下していく。
ヘリオンのドアに手を掛けた眞山・弘幸(業火拳乱・e03070)は、後ろの神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)の方を向く。
「雅、死んだらお前サーヴァントな」
ニヤリと笑った彼はそう言い捨てて後ろ向きで落下し、ドラゴンの翼を広げていく。
「死んだらサーヴァント、か。はは、ビハインドかボクスドラゴンか……。どっちだろうなぁ」
「そっちの意味ではなく、使用人や召使いって意味じゃないかな」
真面目で言葉を返す雅に、こっちが負けたらこき使うというブラックジョークなのだとルージュがツッコんでから降下していく。
「さて、行こうか」
2人に確かな信頼を感じる雅は、表情を引き締める。亡き友を演じる為だ。
「悲劇的な結末は誰も望まん……。未来は、変えられる」
凛々しい口調に変わった雅もまたヘリオンから飛び降り、竜の翼で空を舞い降りるのである。
●酉年最高!
宮崎県宮崎市の某神社。
現場に到着したケルベロス達。その境内には、すでに酉年ビルシャナと成り果てた野田・亜里奈の姿を発見した。
「私の幸せの為に、酉年様を崇め奉るのよ!」
元々の性格すらも歪められた亜里奈は、白無垢姿で手にする扇を振るい始めている。すぐに対処へと移らねば、境内にいる人々が危険だ。
まずは、ビルシャナの注意を引くべく、クロコがその場へと飛び込む。
「うぅ、去年は散々でしたが、故に今年は、酉年は素敵な年になるはずです! 酉年万歳!」
あわよくば、自身もリア充になれる。それが叶わずとも、生きるのが辛くならない程度に幸せな年になると、彼女は酉年を褒め始めた。
(「ビルシャナを褒めて、褒めて、惹きつけて、倒す。シンプルな作戦……」)
エリースもそう考えながら、予め考えていた事を口にする。酉年の『酉』は元々、果実が成熟の極限に達した状態を指すのだとか。
「ん、とっても縁起がいい名前。素晴らしい。他の年と比べても一番すごい……と、思うわ」
一応、ミミックのミミちゃんに周囲の状況を確認させ、エリースも酉年を褒めていた。
続き、この場のケルベロス達は口々に酉年を褒め称える。
雅は今年は丁酉年……ヒノトトリという言葉をもじり、火の鳥について語る。
「実に美しく幻想的。故に、十二支の中で特に酉年は素晴らしい」
「調べた所によると、酉年生まれは頭の回転が早いそうだ」
どこ調べとは言わない弘幸。それもそのはず、彼の話は捏造である。
「鳥には、縁起が良いとされるものが多いよね」
青い鳥に、梟、鶏、鶯、鶴、鳩、燕、鵲……。ルージュは様々な鳥を列挙し、ここまでの生物は他にいないと主張した。
「酉年って、めでてーっすよね。鶏と云えば、白に赤で紅白。紅白といやーめでたさの象徴っす」
紅白饅頭に紅白餅。あと、鳥といえば、チキンにたまご。クリスマスといえばチキン。毎年楽しみにしているっすと、捌号はふてぶてしく訴えかける。
「酉年なら唐揚げ、ターキー、焼き鳥……多くの鳥料理が他の年よりも美味しく食べれる!」
拳法の一派である白鶴拳のような構えを見せつつ、リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130)も食べ物を挙げていく。やや露出高めの彼女は胸、腰、お尻といった、女性らしさをアピールしながら声を上げていた。
「兎も角、酉年最高!」
「まさしく酉年こそ至高! 最高の1年が12年に一度、訪れるわけじゃろうのう!」
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)は「カッカッカッ!」と笑い声を上げ、最高の賛辞をビルシャナへと送る。
こうしたケルベロスの行動もあり、白無垢姿の酉年ビルシャナがケルベロスへと目を光らせ、扇を舞わせる。
それを目にし、境内の一般人達が巻き込まれぬようにと境内の端へと退避していく。
一方、各メンバー達は酉年を称えながらも、戦闘態勢を整えていた。
「誰だって、新年になればその年がいい年でありますようにと、或いはせめて悪い年ではないようにと願うものです。わたしもそうです!」
クロコはルーンアックスを手にし、この場にいない酉年様へと告げる。
「そういった、誰でも思う気持ちを踏みにじって利用する貴方の所業は、絶対に許せません!」
「最早、主義主張も捨て、無差別にビルシャナ化をするとは……」
同じく、酉年様のあるまじき行為を見過ごせないと、リヴィも怒りを募らせて全身にオウガメタルを纏わせる。
「人の恋路の邪魔をする以上、番犬に噛まれて地獄に落ちて貰おうか……!」
「どんどん崇め奉りなさい!」
対する酉年ビルシャナは扇からつむじ風を起こし、ケルベロス達へと浴びせかけてきた。
「ビルシャナってのは相変わらずおかしな奴が多いが、人の幸せを利用してってのが気に入らねぇな」
身を引き裂くような風に、弘幸は耐え切る。
「……必ず助けるぜ」
左脚の地獄と闘志を燃え上がらせながら、彼は構えをとるのだった。
●魅せる戦いを!
ケルベロスへと一撃を浴びせてきていたビルシャナへ、ケルベロス達は仕掛ける。
巻き起こる竜巻のような風の反撃にと、敵へ飛び込んだリヴィはオウガメタルを纏わせた拳を連続して叩き込む。
先制しての攻撃と思ったものの、猛る仲間達が飛び出したのに出遅れた形となったドルフィンも敵の正面から仕掛ける。
「結婚をする願いは分からんまでもないがのう。じゃが、その前にビルシャナ化を止めねばな」
強引にビルシャナと変化させられた女性を救い出す為にと、ドルフィンは大きく息を吸い込み、燃え盛る炎の息を浴びせかけた。
クロコは念の為にと周囲の人々に避難を促すが、半数近くはこの場に残っていた。相手がビルシャナということもあり、ケルベロスの戦いを目にしたいと考えていたのだろう。
やむなく、クロコも敵の対応を始め、刻まれたルーンを輝かせた斧を勢いよく振り下ろす。破れる白無垢。まずは、敵の防御を崩そうという戦法だ。
エリースにケルベロスの守りを託されたミミック、ミミちゃんがそこで偽物の財宝をばら撒いて敵を惑わす。同じく、前に出ていた捌号の白銀色をしたボクスドラゴン、エイトは自らの属性、十字架の力を前に立つメンバーへと与えていく。
その間、エリース自身はカラフルな爆発を後方メンバーの背後に起こし、士気を高めていく。捌号も周囲にオウガ粒子を飛ばすことで、自分達の感覚を高めていたようだ。
仲間の援護を受けた雅は腕を前に突き出し、ブラックスライム『朧銀龍』を放つ。宙をまっすぐ飛んでいくそれは、酉年ビルシャナの動きを拘束していく。
雅が暴れるデウスエクスを捕らえ、境内にいた観客達からは喝采が上がる。
しかし、動きを完全に止めたわけではない。ビルシャナは手にする扇子にグラビティ・チェインを込めてケルベロスへと叩きつけてきたのだ。
仲間を護るべくその扇子を受け止めたのは、額の皺をより深くした弘幸だ。
「そういや、酉年は未年とは、性格の違いが吉と出る良い相性なんだとよ」
何気なく語る彼だが、喋り方は戦闘前と違ってやや荒々しくなっていて。
「俺は未年だが……、俺とてめぇは相性が良いんだとさ……、遠慮するがな!」
飛び出た弘幸は、地獄となった左脚を零距離でビルシャナへと叩き込む。
すかさず、ルージュが攻撃を重ねる。全身にバトルオーラを纏わせた彼女は、音速を超える拳でビルシャナを強かに殴りつけた。
傷みに苦しむビルシャナへ、リヴィは凶斧【黒死】を鶴の頭に見立てて構える。
そして、高く舞い上がったリヴィは渾身の力で、重く、鋭い刃をビルシャナの頭上に叩き落とす。
続けざまに、敵の懐に潜り込んだドルフィンが回転しながら拳を捻じり込み、相手にプレッシャーを与えた。
「私の幸せを……」
声を震わせるビルシャナは歪められた想いに突き動かされ、なおも応戦を続けるのである。
白無垢姿の酉年ビルシャナは、遺憾なくその力を発揮してくる。
ただ、対するケルベロス達は優勢に戦いを進めていた。盾となるエイトが敵の孔雀炎で燃え上がるのを見て、捌号はすぐさま桃色の霧を発して鎮火してしまう。
周りで戦いを見守る神社の参拝客、そして、逆に戦いがあることを知って集まる一般人達が力の限りケルベロスを応援する。
しばらく仲間の回復に当たっていた捌号は、ボクスドラゴンのエイトが大きく息を吸い込むのを見て、自らも一度攻撃に乗り出す。
「んじゃま、お祈りの時間っすよ。鶏に祈るもんがあるとは思わねーっすが」
エイトが吐きかけた聖なるブレスがビルシャナへと浴びせかけられた瞬間、捌号はその頭目掛けて素早く踵を落とす。
それに怯むビルシャナを、今度はドルフィンが両腕両脚、尻尾を駆使して押さえつけ、関節を決める。
「カカッ、新年の祝賀代わりじゃ! いい声で鳴くがよい!」
敵が苦しんでいるところで、ドルフィンはドラゴンオーラを胴体へと叩き込み、敵の体の内部から破壊していく。
敵に反撃の暇は与えぬと、ボウガンを構えるエリースが精霊魔法を紡ぐ。
「これより先は我らが故郷……」
エリースの言葉によって顕現する結界。少女の原風景を模したこの場所において、旅人であるビルシャナを無数の罠が待ち受ける。
「旅人よ、去ね。去ねや、去ね。お前にまだ帰る場所があると云うのなら」
精霊の呪力が、ビルシャナに絶景と苦痛に彩られた旅へと誘う。
再び敵に大きな隙ができたことで、ビルシャナの攻撃によって傷ついたリヴィが迫る。
「我が降魔の連撃で沈むがいい……!」
全身を、武器をも駆使して、リヴィは連打を浴びせかける。その全てが降魔の攻撃。ビルシャナの体力を奪い去り、彼女は自らの傷を塞いでいった。
さらに、クロコが地獄となった右腕に闘気の渦を集めて敵に駆け寄っていく。
「右腕を失えど、龍王と呼ばれし我が闘気に一片の衰え無きことを、その身で味わうがいい!」
クロコが力の限りビルシャナの体を殴りつけたが、敵はまだ戦意を失ってはいない。全身から破壊の光を発し、ケルベロス達へと浴びせかけてきたのだ。
ケルベロス達は弾け飛びそうになる衝撃に耐え切る。それに、観客がなおも盛り上がりを見せ、ケルベロスへと声援を送った。
応戦をしてはいるものの、酉年ビルシャナは仲間のグラビティによって動きを鈍らせているのは違いない。
「ルージュ、デカい一発……期待してるぜ?」
後方から前に駆け出してきた雅は、友人のルージュ、弘幸に告げ、ビルシャナへと近づいていった。
「汝、断罪者にして罪人。その身は全てを凍てつかせ、その顎は全ての罪を噛み砕く。汝が名は――」
罪人の嘆きは氷となり、さらに竜の姿をとる。絶対零度の氷牙竜はビルシャナの体を噛み砕いていく。
「有効活用させてもらうぜ」
弘幸が攻撃を重ねる。鮮烈なる蹴りがビルシャナの腹を捉える。その身に痺れを走らせた敵へと、さらにルージュが仕掛けた。
周囲から起こる拍手、声援、期待、喝采。そういった力を彼女は自らの力と変える。
「成って見せよう、求められる英雄に!」
地獄となった炎は薔薇吹雪となって激しく舞い散り、境内を埋め尽くす。ルージュはその中で颯爽と敵に迫る。
「故にこれが、君に望まれた幕引きさ」
この依頼の為にと、生み出されたグラビティ。彼女は薔薇吹雪の中から姿を現し、握った如意棒を叩き込む。
「とりどし、さま……」
その一撃で、完全に力を失った酉年ビルシャナ。
刹那、淡い光に包まれたその出で立ちはもはやデウスエクスのそれではなく、野田・亜里奈の姿を取り戻していた。
「美味しい所持っていきやがる」
トドメを刺したルージュに、弘幸は笑いを浮かべるのだった。
●今年はどんな年に……?
ビルシャナの姿が無くなった神社にて。
戦場となった境内の修復作業に当たるケルベロス達。
呪書を紐解いて破壊箇所に力を与えていたリヴィはふと、神社の売店でお守りを購入する。それには、恋愛成就と書かれていた。
(「このくらいの応援はしてやらんと、な?」)
リヴィからお守りを受け取った亜里奈はほのかな笑みを浮かべていた。
彼女の行く末を願いつつ、弘幸は仲間と共におみくじを引く。
提案を持ちかけたルージュは、吉。『恋愛は実るので、気長に待て』とのこと。
隣りの弘幸は中吉。願望はきっと叶うとのことだが。
「俺の場合は、まずは相手だな……」
素敵な相手に、彼は出会うことができるだろうか。
そして、残念な結果を引いたのが雅だ。
『凶、待ち人来たらず。踏んだり蹴ったり』
「……結婚。全然考えて無かったな。もうすぐ三十路……。う、うむ……、少し、不味いか……?」
肩を落とす雅の姿に、友人達は苦笑してしまう。
そんな仲間を背に、ドルフィンは青い空を見上げる。そこには、光り輝く太陽があった。
「今年も、良き戦いが巡り合えるとよいがのう」
ドルフィンの場合は戦いではあるが、新たな出会いがあることを願う。
――今年は。
――今年こそは。
ケルベロス達は様々な思いを胸に秘め、神社を後にしていくのである。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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