酉年様事件~憧れの女子高校生デビュー!

作者:そらばる

●はっぴー・にゅー・酉年
 正月三が日はなんだかんだと忙しい。その後もなんだかんだと時期をはずして、一月十日を過ぎた頃に、ようやく初詣に訪れる人もいる。
 三つ編みおさげに瓶底眼鏡、垢ぬけない風体のフミコも、その一人だった。
 自身の周囲に人がいない事を念入りに確認して、おずおずと賽銭投入、鈴を鳴らし、二拝二拍手、ぎゅうっと目を閉じ、
「こっ……今年こそ、根暗な自分から卒業できますように……っ」
 ……最後の一拝の為に瞼を上げた瞬間、フミコの全身を『何か』が包んだ。

「コケコッコー!!」
 境内に、鶏の雄叫びと思しき声が木霊する。
 何事かと衆目が見上げる石段の上、大鳥居の前に、一羽のビルシャナ。
 派手な金髪、ケバケバメイク、モリモリ睫毛、ミニスカ制服、背後にはなぜか、リオのカーニバルかくやな派手派手飾り羽。
 それは、強制的に姿を変えられたフミコだった。
「ふふふっ、酉年様に心を開いたら、私だってこんなに変われたんだょ! すごくなーい!? ね、ね、みんなもさ、酉年様を崇め奉って年がら年中酉年をお祝いしようよ、ね! ミャハッ☆」
 軽やかに石段を駆け下りたフミコこと女子高校生ビルシャナは、モリモリにデコられた鳥爪を、逃げ惑う参拝客に向けて振り下ろした。

●イケイケ女子高校生?ビルシャナ
「明けましておめでとう御座います。本年も、世界の守護をよろしくお願い致します」
 戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)はにこやかに祝辞を述べると、新たなデウスエクスの事件を告げた。
「こたびは、酉年にまつわるビルシャナの一件にございます」
 暗躍を始めたビルシャナは、その名もずばり酉年様という。
 酉年様は、十二年に一度だけ、特別な力を得る能力があるらしい。それがまさに今年。初詣に参詣した人々の、酉年を祝う祈りを奪って、急速に力をつけたようなのだ。
「左様に収集された力により、新たな『酉年ビルシャナ』が生み出されようとしております」
 酉年様の力によってビルシャナへと変貌させられるのは、神社でお祈りを捧げた老若男女。強制的に配下にされた彼等は、人々を殺害して更なるグラビティ・チェインを酉年様に捧げようとする。
「かくなる事件が、日本各地の神社仏閣を中心に発生しようとしております。被害を出す前に、迅速な撃破を皆様にお願い致します」
 『酉年ビルシャナ』は強制的にビルシャナ化させられているだけなので、本作戦中に撃破してしまえば、利用された被害者も元に戻るはずだ。逆に、今回撃破に失敗するとビルシャナ化が定着してしまうので、被害者は救出不能になる。できる限り、確実な撃破を目指したい所だ。

 今回ケルベロス達に向かってもらうのは、茨城県の地方に存在する中規模の神社だ。山裾の参道から中腹にある本殿までは、長い石段が繋いでいる。
 ビルシャナは石段の最上段から駆け下りながら、人々を襲おうとするようだ。『デコりまくった鳥爪で引っかく』『デカ目でプレッシャーをかける』『サンバを踊る』といったグラビティを仕掛けてくる。
「こたび、酉年様に見込まれてしまった一般人は、地元の女子高校生、フミコさん。地味で消極的な性格を克服したいと願い、酉年様の力によって干渉を受けた結果、軽薄で派手好きな『酉年ビルシャナ』へと変貌してしまいます」
 偏ったイメージを元にイケイケ女子高校生と化したビルシャナは、とかく目立ちたがる為、人目の多い石段での派手な立ち回りを好んで行う。石段の上にある本殿にはまだ人出が少ない為、目もくれない。
 このため、狙われるのは石段周辺の一般人という事になるが、今回は特殊な対処方法があるという。
「酉年様の力は、酉年を祝う祈りを奪う事によって高まります。よって、酉年ビルシャナは、『酉年を褒め称える』発言をした人物を最優先に攻撃し、酉年様にとってより上質なグラビティ・チェインの収集を目論む事でございましょう」
 つまり、ケルベロス達はなんでもいいので『酉年を褒め称える』言葉を発しながら戦闘を行えばいい。そうすれば、狙いはケルベロス達に絞られるはず。避難誘導などは考えずとも良さそうだ。
「人々の願いから力をくすね、それを元手にさらなる凶行に及ぼうなど言語道断。新年を祝う人々の純粋な願いに報いる為にも、皆様のお力で、フミコさんの暴走を止めて差し上げてください」


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
ティオ・ウエインシュート(静かに暮らしたい村娘・e03129)
ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)
リリーナ・モーガン(君辱臣死の魔女・e08841)
ハインツ・エクハルト(光鱗の竜闘士・e12606)
フォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)
風戸・文香(エレクトリカ・e22917)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)

■リプレイ

●酉年を賛美せよ
 大鳥居の下で、女子高生風酉年ビルシャナがはしゃいでいる。
「ね、ね、みんなもさ、酉年様を崇め奉って年がら年中酉年をお祝いしようよ、ね! ミャハッ☆」
 ビルシャナは十分な『供物』の量にほくそ笑むと、じゃきんっと音を立てて、キラキラモリモリにデコられた鳥爪を露出させた。
 ビルシャナが石段を蹴って軽やかに駆け下り始めた。状況を理解した人々が悲鳴を上げ、逃げ惑い始める。
 その瞬間、石段周辺の木陰から、一斉に人影が飛び出し、ビルシャナの進路上に立ちはだかった。
「君わかってるな! 酉年は何をするにもうまくいく年だってオレ思うんだ!」
 戦闘準備も万端に、ビルシャナの真正面から、開口一番酉年賛美を言い放ったのは、ハインツ・エクハルト(光鱗の竜闘士・e12606)。傍らのオルトロスのチビ助の頭の上には、鶏のぬいぐるみを括り付けて、酉年アピール全開である。
 駆け込んでくるビルシャナは足を止めない。しかし、その興味は一瞬にして移ったようだった。
「アンタこそわかってんじゃーん! 酉年、サッイコーだょね! だからその敬虔なグラビティ・チェイン――酉年様の為にちょうだいっ!」
 降り上げられたデコ爪がハインツを切り裂く。堅固な守りのおかげで、傷は浅い。
 一旦退いたビルシャナは、正面と背後――すなわち、石段の下段と上段を、すでにケルベロス達に囲い込まれていた。
「ふははは、我こそは平穏なる酉年を守る為に遣わされた愛と正義の告死天使、アデレードじゃ! 汝にすまう邪悪なる鳥もどきは我らが刈り取ってくれようぞ!」
 豪胆に名乗りを上げるアデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)は下段に陣取り、ライトニングウォールを仲間達に付与。
「回復は私達に任せて! 皆はガンガン、攻めていってね!」
 上段ではフォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)が、同じくライトニングウォールを築く。ケルベロス達の陣営は、上下配置のバランスも抜かりない。
「お正月が荒らされちゃうとお節も食べられないし凧揚げとかもできないし……とにかく、色々と困ることになっちゃうのだよ!! そんなこと、絶対にさせないのだよ!!」
 上段から雷刃突で突っ込む叢雲・蓮(無常迅速・e00144)。
「どうやら、首尾は上々のようでございますね」
 オルトロスのアーサーと共に上段に陣取ったリリーナ・モーガン(君辱臣死の魔女・e08841)は、遠巻きに攻撃を撃ち込みながら、予定通りに敷く事のできた陣形を満足そうに眺めた。

●褒めながらタコ殴り
 今回、ケルベロス達がヘリオンからの直接降下を避けたのは、
『各々に逃げ惑い動き回る参拝客達と、彼等に対して今にも攻撃を仕掛けようとしているビルシャナとの間に、降下で直接割り込むというのは少々無茶が過ぎる』
 という判断からだった。
 果たして、それは正解だったようだ。物陰に隠れ潜んで、敵が現れた瞬間に自身の足で直接駆けつけるという堅実なやり方で、ケルベロス達は確実な囲い込みに成功したのだった。
「今回は、テープの出番もなさそうですね」
 ジョブレスオーラでハインツを包み込みながら、風戸・文香(エレクトリカ・e22917)は蜘蛛の子散らすように逃げ延びていった参拝客の様子を確かめ、ほっと安堵した。
 キープアウトテープを周囲の木々に張り巡らせれば、ある程度一般人の出入り制限はできそうだが、今回の場合は、戦闘の手数を割いてまでわざわざ貼りにいくメリットはなさそうだ。
 たまさか周囲に一般人が侵入したとしても、ケルベロスの戦列に加わるほど近寄られない限り、被害は出ないだろう。なんといっても、酉年賛美のおかげで、ビルシャナはケルベロス達に夢中なのである。
「太宰治や宇野千代なども酉年生まれの有名作家です。何気に多くの作家が誕生したのが酉年です。きっと酉にはそういう力があるんです」
 下段から、腕に装着した粉砕機で超高圧爆発を叩き込みつつ、ティオ・ウエインシュート(静かに暮らしたい村娘・e03129)が酉年礼賛で敵の気を引きつける。一巡ごとに前衛が一人ずつ酉年を褒め称え、すべての攻撃を受けきってしまう作戦であった。
 強烈な攻撃を最小限のダメージでいなし、ビルシャナは目を輝かせた。
「うんうん! 素晴らしい才能は酉年に生まれるものだょねっ☆ むしろ酉年以外に生まれたヤツラ全員天才にあらーず!」
 輝いていた目が、突如、立体的に巨大化した。
 プリントシールのデカ目補正が現実に反映されたかの如き異様な視覚攻撃に、一斉に引く前衛一同。ちょっと目を合わせたくない。すぐさまフォトナとアデレードがヒールを飛ばして、心身のダメージを補修する。
「これが女子高生というものですか……私、高専に行っちゃったので、女子高生時代というのは、あったようななかったような」
 スターゲイザーを叩き込みつつ、文香はピンとこない様子で首をひねった。高等専門学校時代の名残、今まさに着用中の指定体操着の左胸に縫い付けられている『風戸』の刺繍に、そこはかとなくやりきれない溜息が漏れる。
「自分を変えたい……分からない訳ではございません。……ですが、鶏に頼るのは如何なものでしょう……?」
 撃ち込んだ攻撃の、少々頼りない手応えに眉をひそめるリリーナ。フミコに対してはかつての自身に重ねて少なからず共感を覚えつつも、しかし頼る相手が悪すぎるとぼやく。
 三度目の『釣り』を請け負うのは、ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)。
「飛躍のイメージは他の年にもありますけど、飛べない鳥だからこそ、『自分の限界を超える』っていう、より強い印象を与えられますよね!」
 大きな声でハキハキと賛美を受けたビルシャナは、達人の一撃を紙一重で躱しながら、デコネイルを鋭く剥き出しにする。
「それね! 私だって、こーんなステキに限界突破しちゃったもんね! 酉年様、だーいすき☆」
 凶悪な爪の反撃に見舞われ、吹き飛ばされるように大きく後退するラリー。
「……ちと、長引きそうかの」
 ウィッチオペレーション越しに伝わる消耗具合に、アデレードは顔をしかめた。

●『彼女』は最後まで楽しそうでした。
 事実、戦闘は長期戦の気配を見せていた。
 ビルシャナの動きは軽快だった。ケルベロス達は肝心の攻撃を躱されたり、思うようなダメージが出せなかったりと、決定打を欠く攻勢が続いた。
 しかし『釣り』は非常に順調である。
「アゲアゲでイケイケな感じで、皆ハッピーになりそうな酉年はゴイスーなのだよ!!」
 ギャル言葉を駆使してイケイケを真似て見せる蓮。これにはビルシャナ大喜び。
「あっは、ボキャちょい古~? でもゴイスーハッピー、いいね☆」
 途端、どこからともなく流れて来たサンバのリズムに合わせて、小気味よく踊り始めるビルシャナ。忙しなく翻す羽扇が場違いな上に時代遅れな辺り、人の事を言えた分際ではない。
 ビルシャナが気持ち良く強化している隙にも、ケルベロス達は陣営と体勢を粛々と整え、切れ目なく攻撃を撃ち込んでいく。
 再び手順が回ってきたハインツが、
「オレは酉年生まれの年男、運気の良さは二倍、いや二乗!? こりゃ酉年に生まれたことを感謝するしかないぜ! あー、酉年になってから空気が美味しい気がするぜ! 酉年に生きてて良かった!」
(「ドイツ人だから干支とかよく知らないけどな!」)
 などと、心の声はひた隠しにして煽りつつ、さりげなく竜爪撃で強化を破れば、
「なにそれうらやましーっ」
 ビルシャナはデコネイルでやっかみ反撃。
「酉年は商業に縁起が良い年だそうですね! 世界経済もきっと良くなるに違いないです!」
 白く輝く光の短剣を射出しつつ、ラリーが褒めそやせば、
「バブルきちゃうー? まじウケる~」
 またしてもサンバ。戦術もへったくれもない。もちろん、この間他のケルベロス達の攻撃は続いているのだが、まったく意にも介さない。
 メディックの立ち回りは的確だった。これに加え、ハインツの激励の鬨《蔦》やティオのヒールドローンも手伝い、治癒と『釣り』は十分に機能している。
 負ける芽は万一にもないと信じ、攻撃を重ねていくケルベロス達。甲斐あって、長引く戦いにも終わりが見え始めた。
 敵の体力の底を見て取り、蓮は斬霊刀を両手に構えた。
「さあ、そろそろお姉さんを助けなくてはね!!」
 二刀斬霊波が地を走るが如くビルシャナへと殺到し、その霊体を斬り刻む。
「焼き鳥にでもなっておしまいなさい」
 慇懃無礼な嘲笑を口元に浮かべながら、地獄の炎の戦士を鉄塊剣と成すリリーナ。飛翔する鉄塊剣がビルシャナに襲い掛かる。
(「根暗な自分を変えたい。その願い絶対ビルシャナなんかに利用させません……」)
「フミコさん! 聞こえてないと思いますが大丈夫です! 絶対助けます! 待っていてください!」
 強い想いを籠めて呼びかけながら、ティオは渾身の居合斬りで斬り込む。
「女の子の純粋な願いを捻じ曲げて利用してるんだ、ぶっ倒さないわけにはいかないよな!」
 ハインツは輝き纏うライオットシールド『Heiligtum』に全身を預け、敵へと突進。ビルシャナの分厚い羽毛が派手に散った。
「名前も私と似てるし、ビルシャナの配下になって暴れられるのは、いい気しません!」
 文香は高熱に熱した剣先……どう見てもハンダごてでしかないそれを突きつけ、敵に焼きつける。
「しゃしゃり出てきた所、悪いけど。フミコさんは返して貰うわよ!」
 フォトナが喚び出したのは、海と空との狭間に微睡む神竜の、その司る荒ぶる風。猛き風が逃れようと動き回るビルシャナに過たず追いすがり、容赦なく引き裂いていく。
「新年の参拝というのは本来神様に今年の抱負を聞いてもらうものであって、願いを言う場ではないと聞いたことはあるが……」
 簒奪者の鎌に炎を宿しながら、アデレードは瞳を上げる。
「それでも少女の純粋なる願いを踏みにじるとは何たる邪悪か! 正義の告死天使として、許してはおけぬのじゃ!」
 変わり果てたフミコへの痛ましさ、ビルシャナへの怒りを籠めたブレイズクラッシュが炸裂する。
「酉年様、ばんっざーーーい☆」
 激しい炎に巻かれながら、ビルシャナは軽薄な叫びを上げた。
 やがて炎の去ったその場所には、野暮ったい瓶底眼鏡のおさげ少女が、ぺたんと座り込んでいたのだった。

●願いはきっと叶うから
 元の姿を取り戻したフミコは、ケルベロス達の介抱と説明を受けて事態を呑み込み、恐縮しきりであった。
「ご、ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ご迷惑おかけして、本当にすみませんでした……!!」
「ふむ、大事なさそうじゃの」
 忙しなく頭を下げまくるフミコの元気な姿に、アデレードは満足げにうなずき、ライトニングウォールで周囲の修復に取り掛かった。
「少々手こずりましたね……ああ、そうそうお嬢様、ご存知でしたか? 酉年の『酉』とは『完熟した果実』を指すもので、それから作った飲み物だから『酒』と言うそうです」
 リリーナはマイペースに、大好きな主へと豆知識を披露し始める。
 気にするな、と励まされても、どこか気まずそうな、自分を恥じている様子で、ぽつんと座り込んだままケルベロス達の修復作業を見守るフミコ。その傍らを、為すべきを為し終えた文香が通りがかる。
「ネクラ? それの何処が悪いの? 上っ面だけ明るいのは軽薄と言うんですよ」
「えっ……」
 唐突に言い置かれ、フミコは思わず視線を転じる。しかし文香の背中は振り返る事なく、神社へと駆けあがっていってしまった。
 呆気にとられるフミコの顔を、横からひょっこり蓮の笑顔が覗き込んだ
「お姉ちゃんは可愛いから自信持って大丈夫なのだ!!」
「えええっ!?」
 思いもよらぬ褒め言葉に、顔を真っ赤にするフミコ。他のケルベロス達も順次修復作業を終わらせて、フミコの傍に集まってくる。
「今の自分から変わりたいという思い、とても良く分かります! だからこそ……ビルシャナに頼るやり方じゃダメなんです!」
 同じく強烈なコンプレックスを抱えている者として、力強くアドバイスを送るラリー。
「控え目な娘って、明るい子に憧れがちだけど。『その控え目な所が良い!』って男子も少なくないのが、悩み所よね……」
 そうぼやきつつ、「とは言っても」とフミコを見るフォトナ。
「環境が変わった事にあやかって、自分を変えたい気持ちも分かるし、『変わる』為の手段として、形から入るのもアリなんだけど……やり過ぎると只の『痛い子』になるから、気をつけてね」
 諭すようなフォトナのその言葉に、なぜか悶絶し始めるティオ。
「……えーと先人からのアドバイスです。あんまり気合い入れてはっちゃけると失敗します。自然体を大事に、無理しないでくださいね。でないと後で死ぬほど後悔します」
 古傷を抉られながらの、迫真のアドバイスである。
「変わりたいって気持ち、オレもよくわかるんだ。自分の足でゆっくり歩いて、なりたい自分になれば良いんだぜ。ファイト!」
 ハインツは慰めるように、後押しをするように、フミコの肩をぽんぽんと叩く。
 こほんと咳をひとつ、気を取り直したティオは、
「貴方のその変わりたいと思う気持ち、きっと神様に届いてます。大丈夫、ありのままを仲間にぶつければ、きっと上手くいきます」
 そう、穏やかに激励した。
「がんばって下さいとは言いません、地道でも確実に! 自分を変える近道は常に進むことです!」
 お姉さんとの約束です! と、ここぞとばかりにお姉さん風を吹かせるラリー。実はこう見えて、今年度高校を卒業する、れっきとした先達である。
 たくさんの慰めと励まし、輝くような言葉達。
 フミコは躊躇いがちに、けれどとても嬉しそうに、はいっ、と短く答えて、はにかんで見せたのだった。

作者:そらばる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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