酉年様事件~ケガをしたくないビルシャナ

作者:荒雲ニンザ

 顔に大きな絆創膏をつけた『やっと退院できた』風のひ弱な男性が、静かに階段をのぼって神社にやってきたのは、1月も10日を過ぎた遅い初詣のためだ。
 5円を賽銭箱に落とし、悶々と願い事を思い浮かべる。
(「去年もケガ続きであった……。だが今年の小生は年男! おそらくツイてるはず! 年間50件……否! 1件くらいで事を済ませられるはず! どうかこの1年、ケガすることもなく穏やかに暮らせますように……!」)
 不運というより、どんだけドジで不注意なんだといった内容であるが、その切実な願いを拾った神様……もとい! 酉年様のビルシャナが、いらんパワーを授けて下さった。
 男性の身体が七色に輝いた後、そのシルエットがみるみる巨大な酉の形を模していく。そして全身プロテクター並にマッチョな酉年ビルシャナに変化を遂げると、突然周囲の参拝客に向かって叫び始めた。
「一年中酉年様を崇め奉って祝えば、ケガ知らずなのだ! 酉年の今、そのチャンスを逃してはならぬ! 祝え祝えーぃ!!」
 人々は突然の恐怖に逃げようとしたが、それより早くビルシャナの爪が彼らの背中を引き裂いた。

 言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)は明るい色の着物で登場すると、深々頭を垂れた。
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。とまあ、新年のご挨拶は早々に切り上げ……年始めにいきなりビルシャナの依頼でございます」
 酉年様、というビルシャナが出現した。
 このビルシャナは、12年に一度だけ特別な力を得る能力があるらしく、酉年を祝う人々の祈りを奪って急速に力をつけたようだ。
 そして、その集めた力を利用して、神社でお祈りを捧げた老若男女を『酉年ビルシャナ』に変貌させて配下とし、人々を殺害して更なるグラビティ・チェインを得ようとしている。
「酉年ビルシャナは、日本各地の神社などで発生するようなので、被害が出る前に撃破をお願いしたいのです」
 酉年ビルシャナとなった人物は、強制的にビルシャナ化させられているだけなので、撃破できれば救出も可能だという。
「ただ、今回撃破できなければ、変化した被害者はビルシャナ化が定着してしまい、救出できなくなってしまうようなのです。できるだけ今回で倒して下さいますよう」

 事件が起きる場所は、千葉にある神社。
 このビルシャナは、マッチョな見かけによらず、かなり保守的な性格のようだ。
 攻撃方法も保守的なパターンが多いらしい。
 そして、より強力なグラビティ・チェインを得る為に、『酉年を褒め称える』発言をした相手を最優先で攻撃する性質があるようだ。
「この特性を利用し、我々ケルベロスにターゲットを固定させることができれば、一般市民は狙われませぬ故、避難の必要がなくなりますぞ。ぜひ良いカンジに酉年を褒め称える発言をしながら戦闘をして、優位にことを運んで下さいませ。相手の性格も考慮することをお忘れなく」
 そういうことなので、酉年について色々調べてから任務に望もう。
「ハー、やれやれ。年明け早々もビルシャナは相変わらず楽しそうで、腹立たしい限りですぞ。こちらの苦労も知らぬ存ぜぬで勝手気ままにしおってからに……許せませんな!」
 一年の計は元旦にありと言いますし、ビシッと早い内に叩きのめしてしまいましょう。

 戻ろうとした万寿が『おっと』と振り返る。
「終わったら初詣でもして、今年の祈願をして帰ってもよろしいですぞ」
 せっかくのお正月ですし、余裕があったら神社で遊んで帰って下さいね。


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)
月宮・京華(ドラゴニアンの降魔拳士・e11429)
茶野・市松(ワズライ・e12278)
ソテル・セイヴァー(アルカイックスマイル・e14724)
ノーフェイス・ユースティティア(それは無貌であるが故・e24398)
天泣・雨弓(女子力は物理攻撃技・e32503)
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)

■リプレイ

●遅い初詣
 今まさに、祈りを終えた被害者の男性が、酉年ビルシャナへと変化を遂げた瞬間。ケルベロスご一行が現地に到着した。
「祝え祝えーぃ!!」
 遠目からでもビルシャナだと分かるシルエットを目に入れ、月宮・京華(ドラゴニアンの降魔拳士・e11429)が眉尻を下げる。
「あーあ……年男なのに年の初めからツイてないみたいだね。いやツイてるといえば憑いてるのか」
 周囲には参拝客がチラホラと。遅い時期でもまだ1月、年始が忙しかった人々がお参りに来ている。何が起きたか知らないが、急に騒がしくなったとその場で足を止めてしまっていた。
 天泣・雨弓(女子力は物理攻撃技・e32503)が周辺を見回し、ナノナノのだいふくに指示を出す。
「ここは私達が頑張らないと。ね、だいふく」
 ヘリオライダー曰く、この酉年ビルシャナは『酉年を褒め称える』発言をした相手を最優先で攻撃するとか。
 ディフェンダーがヘイトを集め、一般から目を反らしながら闘う。こぼれた攻撃は各々拾う。一同その作戦で一致し、攻撃にかかることに。
 念のため京華が、一般市民は危険なので近寄るべからずと声かけをしていた。
 このチームのディフェンダーは雨弓と、茶野・市松(ワズライ・e12278)とノーフェイス・ユースティティア(それは無貌であるが故・e24398)。そしてサーヴァント数名。のしのしと前へ出て、テンションが高くなっている酉年ビルシャナに『おい』と声をかけた。
「ム、貴様ら、普通の人間ではないな」
 その後ろで控えていた、鉛色の西洋甲冑の置物にしか見えないラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)が、大げさな仕草でしみじみ言った。
「怪我をしないようにと願って、結果、武器を携えたケルベロスに囲まれるとは。災難にございますね」
「何、ケルベロスだと! 貴様等本当に……どこにでも現れるな!?」
 続いてマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)が、ラーヴァの背後から手と顔を出し、調子よく茶化しにかかる。
「やっと退院できたらしいのに、アレですけど。ねえ?」
 マサムネの視線を受け、ラーヴァのバケツヘルムが頷く。
「せっかく怪我などし難そうなお姿となっていらっしゃるところ悪いですが。まあ。もうちょっとだけ怪我をして戴くことになるわけでございます。早めに救って差し上げましょう」
 それを聞いた酉年ビルシャナはケッ! と吐き出し、羽をばたつかせる。
「小生は、もお酉年様によって救われた! 見よ! この鋼鉄ボディ! 貴様等ケルベロスが束になってかかってこようとも、傷一つつくまい!」
 マッチョな肉体にふくれあがり、朝日に照り返すツヤテカな羽根の光沢を目に受け、うっとうしそうにそれを振り払うケルベロスご一行。
 ただ一人、ソテル・セイヴァー(アルカイックスマイル・e14724)が不敵に笑う。
「ンフフフ……酉年様ですか……信心は、感心しますが、願掛けの相手を間違えたようですね…」
 流れる視線が身体のラインを滑りゆく。酉年ビルシャナが身の危険を感じ、咄嗟に羽根で身を隠した。
「な、何か……お前等、ちょっとアレだし、危険なニオイするから、向こういけよ! 小生、もっと敬虔な人達が好きなの!」
 それを聞いたソテルが良いように解釈し、そして言った。
「どうやら、ココはワタシの出番……哀れな被害者を救済してあげましょう」
 通じてない。ある意味お互い通じてない。
 その上ディフェンダーの背後から、アルカイックスマイルを浮かべた大きな仏さんのような表情でじっとり見つめられるこの恐怖。保守的な酉年ビルシャナはひどく狼狽え、攻撃態勢に入った。
「も、もおいい! 貴様等からやってやる!! うりゃー!!」

●褒めよ!
 酉年ビルシャナとの戦闘が始まった。
 マサムネからの第一発。
「暴れる酉を諌めるのは丑年のオレの役目!」
 地面を削るほどの威力でエアシューズを回転させ、酉年ビルシャナの足を蹴り上げると即座にその場を滑り抜ける。
「ぎゃああ!! あ、足が! 半年前ラッシュで壊れた傘に引っかけられた傷口の上に……!!」
 細い足を狙ったが、自負しているだけあり守りは堅い。
 涙目でマサムネを睨み付けてきたビルシャナの視界に、ひょいと市松のサーヴァントのつゆが顔を出す。
 しかもウイングキャットのはずなのに、何故か酉のコスチュームを着せられている。
「アラ、カワイイ」
 あざとさに酉年ビルシャナの意識が逸れると、市松がここぞと口を開く。
「オレさ、駄菓子屋で働いてんだけどさ、つゆはそこのマスコット的存在なんだよ。今年は商売繁盛も込めて酉年にあやかりたいと思ってよ!」
「うむ。中々にいい傾向だ」
「酉年は商売繁盛を意味するって俺は聞いたことあるぜ! 駄菓子屋で商売をする身としちゃあ、酉年はすげーありがてぇんだよなあ。験を担いで俺も商売繁盛に肖りたいぜ! ほんと、酉年様々だよなあ」
 雨弓もそれに賛同。
「そういえば、それ、昔から言われているそうです。ずっと酉年ならずっと商売繁盛。素晴らしいですね!」
 これにはウンウンと酉年様も気をよくして頷いている。
「よし、貴様等。合格だ!」
 遠巻きにこちらを伺っている参拝客が目に入る。やたらめでたい姿のビルシャナのせいか、今一危機感にかけるらしく、木の陰や社の柱の向こうから戦闘を見ているようだが、この状況に巻き込まれたらマズイ。
 幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)がヤレヤレとため息をつき、こちらに意識を向けさせるために話に加わってやる。
「そーそー! 酉年は良いぞ、何せまず『酉』の字がなんか四角くて堅牢そうでカッコいい!」
 新たなるエネルギーに酉年ビルシャナの意識が逸れる。
「酉年は良いぞ。なんせ酉にちなんでどこもかしこも卵菓子を増やす。卵は完全、万能食。体の健康を保ってくれるぜ!」
「ちょ、ちょっと待て! それはダメだ! 恐ろしいことを口にするな……! 卵の親は何だ! 酉は敬え!」
 そうだった。このビルシャナは保守的なのであった。ではこれでどうだ。
「酉年は良いぜぇ、年賀状で散々鶏を見るおかげでなんとなく早起きしたくなる! 早寝早起き健康の元! 酉年ならではのサブリミナル!」
「ウム! 健康は素晴らしい! 先の発言は取り消してやろう。貴様も合格だ!」
「医者側は、お得意様がお得意様でなくなる日を心待ちにしております」
 よほど毎回医者の世話になっていたのだろう。ビルシャナはウルウルした瞳で九助を見つめて言った。
「なっ、何ていい人なんだ……!! よし、貴様から酉年様の糧にしてやろう!」
 両羽根を大きく広げたビルシャナは、九助のいる位置に向けて攻撃を仕掛けようとした、その時だ。
「お大事にな!」
 九助のセリフと共にビハインドの八重子が飛び出し、ビルシャナに金縛りを仕掛けた。
 斬撃を真正面から喰らったビルシャナはその場でよろめき、抜け落ちて宙を舞う羽根を目に入れて震え上がると怒りに声を荒げる。
「グアアア……!! ここはエアバッグが破裂した時についた傷の上なのに、き貴様ぁぁ……!!」

●讃えよ!
 ビルシャナは怒りで我を忘れている。そのまま攻撃を放とうとした所にソテルが飛び込んだ。
 一般人を視界の中に入れ、位置取りをするとその方向から旋刃脚をめり込ませる。八重子の金縛りにパラライズを重ねられればと踏んだが、攻撃を止めるまではいかなかった。
 だが何としても攻撃はこちらに向けさせねば。
「今年は、酉年! 酉とは、古より動物の干支として仲の悪いとされる猿と犬の仲裁役としてその間に入った厳かな存在! そして、また酉とは収穫の際の実りを意味しているといわれています。さぁ、皆さん! 慎ましくもこの酉年と伝統に感謝を!!」
 クッと意識が向いた。その瞬間、前列に人にケガさせる閃光が降り注ぐ。
 列攻撃が一通り前衛を撫でたが、ズレた閃光は周囲の地面に反射して社の方までは届かずに済んだようだ。
「どうだ、ケガしたら痛いだろ! 人の気持ちも考えなさいっ!」
 その瞬間、閃光を耐えたケルベロスの背後から、京華が飛びかかって舞い込んだ。
 ゲンコツを力一杯握りしめ、食いしばった歯がギリギリと音を立てているのが聞こえるほどに、強烈なブーストナックルをビルシャナの頬にめり込ませ、そして言った。
「酉年、もとい鶏は天の使いと考えられ五徳がある神聖な鳥らしいですね。災厄を『トリ』除く年なんて最高の年になりそうですね」
 ものすごい勢いで地に叩きつけられたビルシャナは、殴られた頬を抑えて飛び起きる。
「ほ、褒めりゅか攻撃するか、どっちかにひろよ……!!」
 くちばしがバツにひしゃげたビルシャナの前に一歩を踏み出し、マイペースなまでに続けてみせる。
「本当は酉は鳥ではなく、作物が完全に熟した状態を表しているって知ってました?」
 グーと奇妙な音が京華の腹から聞こえ、嫌な流れにビルシャナは咄嗟に羽根で身体を隠す。
「熟した鳥・・・・・・お腹空いてきましたね」
 ヒッ!
 このケガはなかったことにしようと、慌てて自らをヒーリングにかかるビルシャナに、ノーフェイスが割り込んだ。
「まーまーまー、落ち着イテ。酉年ハなんでも縁起の良イ年らしいですネェ、良いものをトリこめるとかデ幸でも福でも呼び寄せルとか。そンな時に物騒なマネ、しまセンっテー」
 ヘラヘラ笑っているようにも思えるが、その表情が読み込めず、ビルシャナは不安になっている。
 それを読んでか、ノーフェイスは更に軽口を続けた。
「あっ、酉年ッテ12年に一度しかなイ年なんですカ!? それはすごい事デスヨ!」
「ウ、ウム。モノを知らないらしいようだが、価値観はしっかりているようだな……。ご、ごうか」
 合格、と続けようとした時、ノーフェイスの手にしていた惨殺ナイフがサクッとビルシャナの肩口に突き刺さる。
 隙あらば狙っていたジグザグスラッシュを至近距離から喰らわせられ、悲鳴も上げられずにその場を転げ回るハメとなった。
 親知らずを抜かれた部分、鉄棒での脱臼、そんな痛い思い出が渦を巻いて脳内を巡るビルシャナは、半泣きでヒールにかかろうとした。しかし、無論ケルベロスは鬼のように容赦なく連続で策を仕掛けてくる。
 雨弓が手を叩きながらノーフェイスの話に乗ってきた。
「酉年は素敵な年なんですね。ずっと酉年なら健康でいられるみたいです! だからそんな、ヒールなんて必要ないです!」
 彼女がサーヴァントにアイコンタクトをすると、だいふくはピョンピョン飛び回って同意を示した。
「ナノー! ナノー!」
 ここまで上げて落としての連続で、ビルシャナはすっかり不振に陥っている。雨弓とだいふくから距離をとり、訝しげな表情で構えていた。
 そんな心の硬くなった筋肉鳥に、マサムネはヤレヤレとため息一つ、まるで友達のように話しかけてやる。
「いやー酉年ほんっといいよ! ご利益は商売繁盛で学業運アップ! 試験とか、年明けてすぐあるじゃん? 酉年ってだけで勇気出るよねー!」
 ビルシャナはまだ白い目で見ているが、構わず続けた。
「年の瀬の酉の市なんて心がもうダンスしちゃうし、屋台フードとか高いけど、なんか買っちゃうんだよねぇ美味しいし」
 チラリと雨弓の様子を伺うと、彼女はニコニコ笑ってこちらの話に頷いていた。
「参考までに聞くが、何を食うつもりだ」
 マサムネは思い切り言った。
「鶏肉!」
 ダヨネ!
 その発言と共に雨弓が待ってましたと言わんばかりのヴァルキュリアブラストを放ち、暴走した光の翼はまるで後光が差しておめでたいシーンを物騒に演出した。
 彼女がビルシャナをメッタ撃ちにしている間中も、マサムネの演説が続く。
「未成年だから酒は飲まないんだけど、酒のツマミ的なものが好きでさ! 焼き鳥とか鳥刺しとか卵黄の味噌漬けとか? 今年は二十歳になるから楽しみだねっと!」
 一切手加減しない猛攻の後、フラフラな足取りでビルシャナが辿り着いた先……それはバケツヘルムを被ったラーヴァの目の前。
 甲冑は飾られているようにピクリとも動かず、構えていた妖精弓をビルシャナの眉間目がけて射ると、バケツヘルムからフウと一筋の炎を盛らし、そこで寸劇を終わらせた。

●おみくじのコーナー
 周辺ヒールと、被害者の介抱をしていると、人混みの中から日之出・吟醸(レプリカントの螺旋忍者・en0221)が顔を出した。
「やー、お疲れ様―。見てたでござるよぉ、ナイスチームワーク!」
 市松が気がつき、手を上げる。
「よお、またバイトか」
「そうなの。やってく? おみくじ」
 雨弓が喜んで頷いた。
「実は初詣まだしていなかったんです」
 マサムネが被害者を見てくれると言うので、皆はお参りを済ませてから、吟醸の元へ戻ってきた。そして『おみくじ』と大きく書かれた六角形の筒から、各々棒をひいていく。
「何がでた?」
 九助がウッと呻き、錫杖を左に構えて寄りかかる。
「大凶……まあ、そりゃそうかな的な」
 京華が笑って言ってやる。
「いい結果であれば喜べばいいし、悪い結果であれば信じなければいいし。他の皆はどう?」
 末吉が出たのはだいふくのようだ。あまりよくない結果にシュンとしているだいふくを横に、小吉をひいた市松とラーヴァが微妙な表情をしている。
 中吉はノーフェイスと雨弓で、こちらもまあまあな反応。
 京華が『あっ』と声を出す。
「惜しい、吉だ」
 神頼みだなんて無意味と冷めた見方をしている彼女だが、遊び事をわいわいするのは好きで楽しんでいる様子。
 そこでフフフと不敵な笑い声が。
「大吉です」
 ソテルのアルカイックスマイルが後光に栄える。こんな時まで引きが強い。
 そうでしょう、そうでしょう。そんな面持ちで、ビルシャナの呪いから解放された被害者の尻を眺めていた。
「今年一年が楽しいもんになりゃあ良いなあ」
 市松の台詞に雨弓も頷く。
「今年1年も、皆さんが幸せな時を過ごせますように……」
 それからラーヴァが、しょんぼりしていた被害者の男性に言った。
「いじめてごめんなさいね。一年頑張って強く生きてくださいませ」
 不注意は良いとして、年明け早々ビルシャナにつけ込まれ、この不運をどう頑張れば良いのだろう。
 男性が悩んでいると、ラーヴァが付け加えて言った。
「今年も平和となりますように。まあ私も居ますし、大丈夫でございましょう」
 神頼みはアテにならない。自らの力で切り開くのが、ケルベロスだ。
 ケルベロスたちは参拝に訪れる人々を遠目から眺め、とりあえず、1年の平和を心に願った。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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