酉年様事件~レイジアゲンスト・トリーズン

作者:鹿崎シーカー

「ぬおおおおおッ! ふごおおおおッ!」
 怒声めいて咆哮を上げるシルエットが膨れ上がっていく。
 おみくじやお守りを販売するアルバイト、暇そうにしていた露天の親父、影の周囲にいた人々が唖然と事態を見守る中、影はばさりと翼を広げた。先刻まで太った男性だった彼は、羽毛に覆われた巨体を揺らして振り返る。その姿はもはや、邪悪なるビルシャナとなっていた!
「フゴーッ! 酉年……酉年を祝わんのは誰だァーッ! ふごおおおおおッ!」
「うがッ……!」
 腰を抜かし逃げ出そうとしていた者が踏み潰され圧死! 地に落ちたトマトめいた光景に出店でお好み焼を作っていた売り子はリバース! うずくまった彼女の頭上ではがした鉄板を、肥えたビルシャナはクッキーのように食らい始めた。
「フゴゴーッ! 美味しッ! こんな美味いものが食えるのもまた酉年のおかげ! 酉年様のお力ッ! こんなスゴいのになんで酉年を称えないんだこのアンポンタンがァァァーッ!」
 鉄板を噛み千切りながら足元の女性を蹴り飛ばす! 彼は自分の店を捨てて逃げだす人々に首を巡らせ、目とクチバシを光らせた。
「美味い飯が食えるのも全て酉年様のおかげ。感謝し、祈らんゲロ野郎共は……こうしてくれるわアアアアアアッ!」
 カッと開いたクチバシからまばゆい閃光が放たれる。無慈悲なレーザーは逃げ惑う人々を一瞬にして灰に帰した。
「みんな言ってた。今年とりどしだからビルシャナ出るって」
「いっつも出てるような気が……まぁいいや。始めるよー」
 半ば諦めの表情を浮かべる跳鹿・穫を見て、ミッシェルは味噌汁にスプーンを突っ込みながら首を傾げた。
 そういうわけで、新年早々ビルシャナが大暴れするとの情報が入った。
 主犯となるのは十二年に一度特別な力を得るとされる干支ビルシャナ、酉年様。初詣で賑わう神社仏閣から供給されたグラビティ・チェインを吸って急速に力をつけたこの鳥は、三が日と七草を過ぎたあたりで酉年を祝う者が減ったことに大激怒。以降神社でお祈りした人々を配下の『酉年ビルシャナ』に変え、人々を殺害してさらなる力を得ようとしているのだ。
 酉年様は神社を通じて人を配下に変貌させる。皆には現場となる神社に急行し、被害が出る前にこれを撃破してほしいのだ。
 そして今回、対応してもらうのは酉年ビルシャナの一人『大原さん』。
 酉年様から力を得た彼は、様々なものを食って力を溜め、口と目からビームを出す能力を身に着けた。かなり太った体型ゆえに動きはそれほど早くないが、とにかくビームを乱射してくる面倒な相手だ。
 また、戦場となる神社は広いのだが、入って右側は露店が並び、左側にはおみくじとお守りを売るエリア、神社中央には御神体である大きな杉が立っており、少々見晴らしが悪い。
 ちなみに、酉年ビルシャナは、より強力なグラビティ・チェインを得る為に酉年を褒め称える者を最優先で攻撃する性質があるので、周囲に一般人がいても、ケルベロス達が酉年を称えながら戦闘をすれば、一般人が狙われる事はないだろう。
 なお、強制ビルシャナ化させられた大原さんは、倒せば救出も可能だ。ただ、今回撃破できなければ、ビルシャナ化が定着してしまい救出できなくなってしまう。心して戦ってほしい。
「新年早々忙しいけど、人の命がかかってるからね。今年もよろしくおねがいします」
「おねがいします」


参加者
シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
因幡・白兎(非情食・e05145)
マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)
シュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)
忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
ソル・ブライン(醤油・e17430)

■リプレイ

「フゴーッ! おいお前……甘酒臭いぞッ!」
「アイエエエ!」
 境内で絶叫が響く。失禁する中年男性を軽々と持ち上げるのは、突如として超肥満体のビルシャナとなった大原さん。蒸気めいた息を吐く彼の後方、他の参拝客は腰を抜かし、おみくじ売り場や露店の売り子は事態をただ呆然と見守っている。
「美味かったか? 甘酒は。一体どうしてそれを飲めたと思うかッ!」
 激しく揺さぶられ、顔を青くする男を、大原さんはなおも揺さぶる。
「酉年だからだッ! 酉年様のおかげだッ! 貴様が今まで食った飯、これから先食う飯もッ! 全て酉年様の思し召し! お前、ちゃんと感謝したのかッ! フゴーッ!」
「しっ……しました! ちゃんと感謝しましたッ!」
「嘘を吐くなァッ!」
「アイエエエ!」
 打ちつけられる中年男性。助けも待ったの声もない。皆腰を抜かしているのだ。
 再び男を持ち上げた大原さんはクチバシを開く。アゴが滑り落ち、腹まで達する。その中に満ちるのは、虚無の暗黒なのだ! コワイ!
「どうせ祈ったのは身勝手な欲望。フゴーッ……許すまじ! 俺の胃で身勝手を後悔しながら酉年様にドゲザしろォッ!」
「アイエエエエ! アイエーエエエエーッ!」
 暴れる男が口の中に下ろされてゆく。ナムサン……男は得体の知れない闇に閉ざされ、胃酸に真夏の氷めいて溶かされてしまうのか? 誰もが息を飲み、目を逸らした……その時である!
『イヤーッ!』
「フゴーッ!?」
 大原さんの頭に衝撃、賽銭箱に倒れ込む! 逃れた男が見たのは、回転しながら着地する二つの人影。忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881)と鶏の着ぐるみを着たソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)だ! アンブッシュを決めた二人は、横倒しの大原さんにオジギする。
「ドーモ、オオハラ=サン。ダークブレイズです」
「ドーモ、アイアンディノです」
「フゴーッ……ドーモ、オーハラ・ダイチです」
 ふくよかな腹を揺らし、大原さんが立ち上がる。目に怒りを燃やす彼もまたオジギした。アイサツは必ず返すのが礼儀!
 山めいた巨体を遠くに眺め、シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)は小さくガッツポーズする。
「や、やった……やりましたよシュテルンさん! なんとかなりました!」
「まだ安全圏じゃありませんけどね。やれやれ……」
 炎をかたどったアーマーを装着したシュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)が、食われかけた中年を地に下ろす。へたり込む男の首根っこをつかみ立たせるマサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)。
「そういうわけだ。あんたら、そこの二人と一緒に逃げろ。あれは俺達が引きつけておく。しっかり逃がせよ」
「はいっ! 皆さん、ボク達はケルベロスですっ! 慌てずに避難を!あっ、間違っても酉年を褒めちゃダメですよ! 逆効果です! 狙われますから!」
 子供の手をとりシェリンが誘導を開始、シュテルンは巫女たちへと急ぐ。一方、鶏ペイントの機械恐竜にトサカをかじられながら、ソラネは大原さんを指さす。
「しかし奇遇ですね。私は今年で二十四歳……そう、酉年なんですよ!」
「Oh! アイアンディノ=サンも酉年デース? 酉年生まれは冷静で分析力が高く、仕事ができるそうデース。また、プライドを持って自分を貫く傾向も高いらしいデース? 仕事ができて、自分を貫くクールガイ、実際素敵だと思いマース!」
 大原さんとソラネを片目に、飛影丸。陽気な反面、その目は全く笑っていない。油断のない二人の背後で、ソル・ブライン(醤油・e17430)はお好み焼きを食べてつぶやく。
「新年早々美味いもんが食えんのも、我流だけど新しい格闘術を編み出せたのも思えば酉年のおかげだったな」
 大原さんのスモトリめいた巨体の下で、足が一歩前に出た。
「フゴ、フゴゴゴゴ……」
 汗をにじます面々の前で、大原さんは地を蹴った!
「フゴーッ!」
 ダイブしたクチバシが地面に食い込む! 大原さんは砂利を飲みながらサメめいて特攻した。
「ならばさぞかし美味いだろぉなァッ! フゴーッ!」
『イヤーッ!』
 側転回避するソラネと飛影丸! 飛び出したソルが突撃し巨体をつかんだ! 踏ん張る足が小石と土を巻き上げ後ろへ下がる!
「ぬおおおおッ!」
 鳥の目が動き、ビームでソルの肩を撃つ! 勢い止まらぬ暴食の徒に、セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)はストンピングをたたきこんだ!
「せぇいっ!」
「フゴーッ!?」
 地面に沈む鳥の顔! 直後、因幡・白兎(非情食・e05145)は人参型のスイッチを押す。
「すごいや酉年! こんな攻撃ができるとはー! よっと!」
「グワーッ!」
 噴き上げる炎が巨体を吹き飛ばした。ジャンプしたセレネテアルは大原さんを尻目に振り返った。
「ソルさん、大丈夫ですかー!」
「おう。酉年のおかげか?」
 大玉めいて転がる肥満鳥の前! そこへ立ちはだかったマサヨシは首を鳴らし、呆れ気味に呟いた。
「まぁ、なんだ……酉年というのは、商売繁盛の年だそうだな。うむ、景気が良くなるのは素晴らしいことだ。あと酉年の者は大器晩成型と聞く。なるほど飛翔の時へ常に努力を続けるものであるか」
「フゴーッ! フゴゴゴゴーッ!?」
 転がる肉を、マサヨシは腰を落として両手を広げて受け止めた! 足先が砂利を斬り裂く!
「……あぁ、とにかく強い、カッコイイ、スゴイ、素晴らしい。酉年、最高だッ!」
 バックドロップの要領で巨体を放る! 宙を舞った大原さんは本殿に突っこみ爆砕! 神の社前半分が砕け散った!
 立ち上る粉塵の中、カナブンめいてもがく大原さん。無防備な胸元に、セレネテアルのストンプが容赦なく打ち込まれる! 衝撃で再ジャンプしさらに踏む!
「フゴーッ! グワーッ!」
 セレネテアルは、苦悶する大原さんの上で流れるようにしゃがみ込んだ。丸く膨らんだ顔をのぞき問いかける。
「ちょっと聞いていいですかー? ……大原さんは去年ずっと、誰かのお腹で申年を称えながら生活していたんですかー?」
「グ、グワーッ! なんだと!?」
 大原さんが頭を上げる。
「それに、出店の料理を美味しくするのは、酉年様じゃなくてお店の方々の頑張りです。そのお店や人々を倒しちゃったら、美味しい料理が食べられなくなりますよー? それとも、酉年様がお好み焼を作ってくれるんでしょうかー?」
「ヌゥーッ……」
 真面目に問われ、大原さんは沈黙。だが一瞬後、その目がカッと見開かれた! 即座に跳ぶセレネテアルをビームがかすめる!
「ザ、ザッケンナコラーッ!」
 悪罵とともに第二撃! 空中でキリモミする両脇腹を光線が通過。大原さんは苦労して立ち上がり、首を振る。
「フゴーッ……おのれ邪教めッ! 誘惑には乗らんぞ! フゴーッ!」
 雄叫びを上げ、ビームを乱射! 小さな光弾の群れが殺到。弾幕を前にして割り込むのはマサヨシ。黒ガントレットを交叉し、盾となる。コートに咲く爆炎の花! 防御姿勢のスキマからマサヨシは獰猛な笑みをのぞかせた。
「おいおい大原さんよォ。そんなチキンな攻撃、オレにゃあ効かねぇぞッ!」
「ダマラッシェーッ!」
 手近な看板を食いちぎる大原さん! 口の端を輝かせ、吠えるように大口を開けた。巨大な口に収まる巨大光弾を咆哮とともに解き放つ!
「ドッソイオラァァァーッ!」
 轟音響かせ空を裂く光弾! 弾幕を受けきった拳を振り上げるマサヨシの周囲をピンクの霧が取り囲む。濃くなる霧は綿アメめいた桃色の雲を作り上げ、光弾をぼふりと受け止め飲み込んだ! 中から雲がボンと膨らむ! 直後、シュテルンとヨタローに乗ったシェリンが戦場にエントリー!
「皆さんお待たせしましたっ! 避難誘導完了です!」
「オッケー。なら本気出しちゃうかな!」
 地面を突き破り白兎が大ジャンプ! 人参型ボタンを持つ彼の目に映るのは、大原さんの腹に食いつくギラティラとその背を駆け登るソラネだ! 鶏の着ぐるみを着たままかかと落としをたたき込む。なんたるケルベロス俊敏性!
「イヤーッ!」
「フゴッ……グ、グワーッ!?」
 インパクトに合わせて抜ける床! 腰まで埋まった大原さんの頭上でシュテルンは片足を立てた。装甲から炎を吐きだし隕石めいて急降下する!
「篁流格闘術……『氷柱針』ッ!」
「フゴゴーッ!」
 さらに胸元までが地面に埋まる! 後ろで白兎の笑い声!
「あっはっはっはっは! 地の利を活かしてイクサに臨む! これぞまさしくフーリンカザンッ!」
「ギラティラッ!」
 サイバネ恐竜が大口を開き、喉の砲からレーザー照射。しかし大原さんがそれを飲み込む! 輝き出す二つの眼!
「チャースイテッコラーッ!」
 直後にビーム弾が全方位にまき散らされた! シュテルンは回転跳躍して回避、だがソラネは真正面から弾き飛ばされる!
「ンアーッ!」
「イヤーッ!」
 飛影丸がブレイクダンスめいて逆立ち回転しながらインターラプト! 逆巻く炎がビームを巻き取り大原さんに迫っていく! 対する大原さんは地面をむさぼり、巨大光弾を吐き出した!
「フゴーッ!」
「イヤーッ!」
 炎のホイールソーがビームを凹ます! 光弾は風船めいて破裂し爆発! 飛影丸を跳ね飛ばした!
「グワーッ!」
「見たか! これが酉年様からたまわった力よーッ!」
「ほう、そうなのか」
 高笑いしながら這い出た大原さんの高笑いに、冷静な声が割り込む。拳を腰だめに構えソルは突進。起き上がった脇腹をロックオンする。
「なら俺のも見てくれよ。酉年のおかげで編み出した、格闘術をな! 我式機闘術、ソル・ブライン。いざ参るッ!」
「フゴッ……!」
 振り向くも既にソルは零距離! 強烈な踏み込みが、鉄の拳を射出する!
「『激突拳』ッ!」
「フゴーッ!」
 拳と伸びたクローが肉を裂いた! 脂ぎった鮮血を浴びもう片方の手も撃ち出す! 一瞬にしてえぐられた肉を散らし大原さんは怒りのままにソルをにらんだ。ビーム発射! 装甲を焦がし穴をうがつ!
「ぐおッ……!」
「今ですセレネさん! 足を!」
「了解ですっ!」
 桃色の雲をロッドで操るシェリンの声。背後に回り込んだセレネテアルは身を沈めて足払いを繰り出した。バランスを崩した懐に飛び込む白兎!
「そういえばアイサツしてなかった! ドーモ、うさぎ年のトラップハウスです! 酉年がすごいと言ったけどアレは嘘だよ! イヤーッ!」
「グワーッ!」
 高速掌底が腹にめり込む! 弾力に弾かれる白兎と入れ替わりにヨタローを蹴ったシュテルンが跳躍。両手の指を燃える刀めいて伸ばしX字に斬りつけた!
「スターフィンガー・プロミネンスッ!」
「フゴーッ! フゴゴゴゴーッ!」
 燃え盛る切り傷が漆黒の闇に隠された! 二人を食らおうとする横顔を殴り飛ばす蒼炎の大剣!
「ハハハハハハハハハッ! もっと気合入れろォ! 喰っちまうぞォア!」
「我式機闘術ッ!」
 蒼い炎の翼を噴射し剣を深く押すマサヨシ! ソルは口ふさがらぬ顔の反対にムチめいてしなるキックを打ち込む!
「雷蛇脚ッ!」
「ブゴッ! ……ぬおおおおおーッ!」
 ビームを回避する二人。そして……おお、ケルベロス動体視力をお持ちの方は括目せよ! 大原さんの周囲を高速旋回するヨタローとギラティラ、杉から飛来する木の葉スリケンを足場に七人が飛び回りながら代わる代わる攻撃をたたき込んでいく! 当然無傷ではないが、シェリンの桃色雲と薬液の雨で傷つくそばから回復している! なんたるデスパレートか!
「がんばってください皆さん! 行きますよ、テン! テケ・テェンッ!」
 たたいた魔法陣が雷を吐き、雲を伝って仲間を強壮。止まらぬラッシュに大原さんは悲鳴を上げる!
「ヤ、ヤメローッ! 死にたくないッ!」
「大丈夫です。殺しはしませんっ!」
 大原さん眼前でセレネテアルは一気に屈む。
「でもっ……人を殺させも、しませんっ!」
「フゴーッ!?」
 足を振り上げセレネテアルは宙返り! しなる足が下腹を押し上げ、氣を流す。重心をも吹き飛ばす一撃が巨体を吹き飛ばした。そして浮いた彼の真下に潜り込んだソルとマサヨシ、シュテルンは拳を握る!
「悪いが俺は亥年でなぁ! 突っ走ってぶち抜くしか能がないのさっ!」
「そら、こんがり焼いてやるから……自分の肉でも食ってろよッ!」
 瞬間、赤蒼の炎とオーラが爆発! 噴火めいて拳と竜巻蹴りの嵐が背中を容赦なく襲う!
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』
 砲撃と鋼の拳が大原さんを打ち上げた。火傷切り傷打撲でネギトロ寸前の背中に白兎の仕掛けた花火砲弾が連続着弾! 打ち上げられる大原さんを越え、ソラネと飛影丸は空へ身を躍らせる!
「鳴いた七面鳥は矢で射られ焼かれる定め!」
「カイシャクしてあげマース。ハイクを詠めッ!」
 大原さんをつかんだ飛影丸が炎をまとって回る。赤黒い竜巻を、ソラネの渾身の蹴りがブースト。地面に向けて一直線!
『イヤーッ!』
「グワーッ! 酉年様バンザイ! インガオホーッ!」
 末期のハイクと共に、大原さんは地面に激突!
「サヨナラ!」
 桃霧の中で、巨体は爆発四散した。


 軽やかな音を立て、小銭が賽銭箱に落ちていく。柏手二回、礼二回。お参りを終えた面々はウサギ型になった神社を見上げた。
「やれやれ、年明けから派手に暴れてくれたな……やはりビルシャナ滅すべし慈悲はない、かね……」
「そもそもなんだ。またイロモノというか……アイツら、真面目に侵略するつもりあるのか? 一昨年からふざけた連中出まくってるがよ」
 ソルとマサヨシが呆れ顔で頭を押さえる。修理した着ぐるみを抱えたソラネはほんのり苦笑した。
「まあまあ。何事もなく終わってよかったじゃないですか。……神社は壊れましたけど」
「ダイジョブダッテ! ヒールしたし日本全国似たようなもんだし! チャメシ・インシデントダッテ!」
「それにビョーキは気分の問題というコトワザもありマース! カラダニキヲツケテネ!」
 ぶんぶんと腕を振るヒール担当の白兎、片手で応急処置した大原さんの本体をぶら下げた飛影丸に、マサヨシの眉間にしわが寄る。
「本当に大丈夫なのか。俺、日本じゃ厄年なんだよ。祟られたりしないだろうな……」
「大丈夫ですよ! きっと今年もいいことあります! あ、セレネさんっ! 一緒に出店見に行きましょう!」
「いいですねー。何食べましょうかー?」
 再び漂い始めた香ばしい匂いに引かれ、シェリンとセレネテアルが走っていく。控えめに復活し出した祭りばやしを背に、シュテルンは神社に頭を下げた。
「去年もなんだかんだありましたが……今年もいい年でありますように」

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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