地下で眠るダモクレス工場

作者:雪見進


 ここは神奈川県のとある市街地。一件平和なのだが、その地下では静かに厄災の種は育っていた……。
「グググ……」
 そのダモクレスは小さかった。しかし、その力は小さくなかった。そのダモクレスは最初は近くの石英を吸収改造し自身を覆う装甲を、次に地面に埋まっていたプラスチックの破片を回収し手足とした。それから更に地中を進み、配線の皮膜を捕食し少しづつ身体を作っていった。
「ガガガ……」
 しかし、途中で身体を大きくするのと止め、すぐに小規模ながらもダモクレス工場の建設を開始め、同時に周囲の鉱物を吸収し穴を作っていく。
 そして、さらには廃ビルの地下にあった壊れた機械や廃棄された機械を集め地道にゆっくりと工場を造っていた。
 静かに誰も来ない地下で秘密の工場を造っていたのだ……。

「ペコペコさんが予想した通り、地下にダモクレスの工場が発見されました」
 ケルベロスたちに説明を始めたのは笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)。
 ペコペコ・デリシュ(ネジマキハート・e00449)が『地下に秘密工場がある! かも!』と、言っていたので、調べた結果発見されたのだ。
「このダモクレスは穴を掘って秘密の工場を作っているようなのです」
 どうやったのかは不明だが、地下に謎の空洞が出来上がっていた。そして、その空洞が下水道と繋がったようだで、下水道の中にダモクレスの警備ロボットが発見されたのだった。

「その工場はまだ、稼動していないようなの」
 そして、その工場は、まだ人間を捕らえ改造する能力は無い事だ。ただ、警備ロボットを周囲に展開し、地面を堀り道を作り、工場の部品になりそうな物を回収している。
「幸い、工場が大きくなったおかげで、地下に作られた通路は人が通れるほどの大きさになっています」
 一部はマンホールと繋がっているので、そこからダモクレスの工場へ向かう事が出来、その箇所が現在確認されているだけでも5ヶ所ほど。
 警備システムは、戦闘力はかなり低いようだが、数だけは多いようだ。さらに、工場を作成しているダモクレス自体も比較的弱い。
「ただ、問題があります」
 材料を集める目的があるからなのか、警備ロボットの数がとても多いのだ。警備ロボットはケルベロスから見れば弱い相手だけど、普通の人から見れば脅威。その警備ロボットが最低でも20体以上いるようなのだ。
「そして警備ロボットに見つかると、ダモクレスは工場の部品を使って自分を強化するのです」
 そうなると、かなりの強敵となる事が想定されるのだ。
「この工場の完成は時間がかかりそうですけど、それでも完成すれば多くの人がロボットに改造されちゃいます。みんな、お願いね」
 そう言ってむねは説明を終えるのだった。

「地中に潜みひっそりと工場を造る……敵ながら知恵の回る相手のようでござるな」
 しかし、その作戦もペコペコのおかげで阻止出来る可能性が出てきた。
「この機会、逃すわけにはいかないでござる」
 そして気合を入れるように口に入れるのは……羊羹。
 たんぱく質を含む羊羹は非常食としても優れた食品。最近のは一口サイズで食べやすい物が多い。
 そしてヘリポートへ向かうのだった。


参加者
ペコペコ・デリシュ(ネジマキハート・e00449)
山神・照道(霊炎を纏う双腕・e01885)
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)
テレサ・コール(至高なる白銀と呼ばれた少女・e04242)
儀竜・焔羅(咆撃要塞・e04660)
凶月・陸井(我護る故に我在り・e04913)
栗須・レビス(義賊忍者・e06456)

■リプレイ

 ここは神奈川県のとある市街地。そこのマンホールの側でケルベロスたちが、準備をしていた。
 そんな中で一人、静かに地面を見つめる真っ黒な肌で白い髪の少年。
「ペコペコはもう知ってるの。人を改造するのはダメなんだよ」
 天真爛漫さの中に複雑な気持ちを込め呟くのはペコペコ・デリシュ(ネジマキハート・e00449)。言葉には出さないけど、いつかダモクレスたちと和解したいという、困難極まりない想いを胸に秘めている。
 そんな複雑な想いを察してか、気負いすぎないように優しい言葉をかけるのは山神・照道(霊炎を纏う双腕・e01885)。
「地下に本当に工場があるとは……流石はペコペコだな」
 照道は照光塾という塾の先生をしていて、ペコペコたちは、その生徒なのだ。
「うん!」
 さきほどまでの想いを仕舞いこみ、嬉しそうな笑顔を見せるヘコペコ。その光景がなんとも微笑ましい。
「おかげで、一般人に被害が出る前に発見出来た。ペコペコさん、ありがとう」
 仲間を思う凶月・陸井(我護る故に我在り・e04913)もペコペコにお礼を言う。その言葉はペコペコのおかげもあるが、それを信じて調べてくれた人たちへの言葉でもあるのだと思う。
「もしこの工場が完成していたらと思うと……」
「……工場の稼動を許すわけにはいかないな」
 工場が完成し稼動していたらどれだけの被害が出ていたのか、想像も出来ない。栗須・レビス(義賊忍者・e06456)と儀竜・焔羅(咆撃要塞・e04660)は改めて早期発見出来たことに安堵する。
「こういう地下ダンジョンみたいな基地への潜入って、ちょっとワクワクするよね」
 入り口の一つであるマンホールを見つめながら、そんな感想を抱くヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)。たしかに、漫画やアニメなどでマンホールから入る地下の秘密基地というのは、一部の人にとっては心躍るものなのかもしれない。
 レビスたちと異なる感想なのは、今回は一般人への被害が出る前に工場を発見出来たのが大きいのだろう。
「色々と準備されたようでござるな」
「そう、この日のために秋葉原で買い集めたのよ」
 ウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)の言葉に、怪しい笑みを浮かべ応えるミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)。アイテムポケット満載に様々な物を持ち込んでいる。。そんなミステリスを甲斐甲斐しくメイド服姿で手伝っているのはテレサ・コール(至高なる白銀と呼ばれた少女・e04242)。
(「私を作ってくださった主様も科学者でした……」)
 そんなテレサは懐かしさを感じながらミステリスの手伝いをしている様子だった。
「さあ、出発だ!」
 そして準備を終えたケルベロスたちはヴィットリオの声で出発するのだった。


 地下工場へはマンホールから入る事が出来る。
「思ったよりも臭くないのですね」
 下水道などとも繋がっているようなのだが、下水の悪臭は無い。周囲の壁も補強されている様子なので崩落の危険は無いし、事前調査の結果で空気の心配が無い。
「この様な場所でひっそりとな……厄介な事をしてくれる」
「本当だね」
 ダモクレスによって造られた地下道を歩きながら話をする焔羅とヴィットリオ。
「……」
 そんな皆の隣で地下工場の構造に静かに思慮する照道。
(「ダモクレスを倒した後、ここをまた利用できないようには、できないものか」)
 他の人よりも一歩先を考える照道。しかし、ダモクレス脅威の科学力で作られたこの工場を使用不可能にするのが難しい事も分かってしまう。
「では、ダミーコンピューターを造るね」
「ああ、じゃあこれを使ってくれ」
 地下工場の入り口付近でケルベロスたちはミステリスを中心に作業を開始する。みなで持ち寄った機械部品などを組み合わせて、大型で重いダミーコンピューターを作成する。このダミーコンピューターで警備ロボットを集め、一網打尽にする作戦なのだ。
「ミステリス様、汗が……」
「ありがとうね」
 そんな作業を行うミステリスを甲斐甲斐しく世話をするテレサ。その光景はサイエンティストに仕えるメイドという少し不思議な姿。しかし、お世話をするテレサの姿はとても馴染んでいる様子なのでした。
「さて、出来たよ」
 皆の協力の結果、出来上がったのは300kg近くにもなる巨大なダミーコンピューター。
「じゃあ、隠れようか」
 ダミーコンピューターを仕掛け、近くに隠れるケルベロスたち。 それからほどなくして、工場の方向から、何かの足音らしき音が聞こえて来る。
「!!」
 ケルベロスたちが設置したダミーコンピューターだが、部品を色々と考えた結果、ダモクレスが望む部品となっていた。それが効果があったのだろうか、続々と集まってくる警備ロボット。
「ゲットカモ!!」
「コレハイイモノダ」
「オモチカエリ!」
 電子音声を響かせる警備ロボットが微妙に可愛い。警備ロボットは四脚型で丸みを帯びた胴体に顔を思わせるような稼働部品があり、顔に見えるのもその一因か。
「サギョウカイシ!」
 そんな作業ロボットがどんどん集まってくる。そんな微妙に可愛いかもしれない警備ロボットが突如、真ん中から割れ、そこから触手のようなマニュピレイターを伸ばしてダミーの塊に絡みついていく。その光景はさきほどまでの少し可愛らしい雰囲気は無くなり、餌に群がる虫のよう。
「今、18……いや、19体」
 群がる警備ロボットを数える焔羅。しかし、20を越えたあたりで、集まるのが遅くなる。もしかしたら、他で資材を回収しているのかもしれない。
「ショウガナイ!」
 それから、20体ほどの警備ロボはドライバーやバーナーなどを取り出す。どうやら、持ち帰れる大きさに小さく分解するようだ。
(「あぁ、壊れる!」)
 そんな様子を、本人にしか理解出来なさそうな思考で恍惚とした笑みを浮かべるミステリス。
(「その瞬間が機械にとって最も美しい瞬間なのねぇ♪」)
 そんな笑みを浮かべながらミステリスは爆破スイッチを構える。
(「敵を爆破するときに言う言葉は学習しました……」)
 その様子を見て、テレサも何か少し方向性が迷子っぽい準備をする。
 そして次の瞬間、囮のコンピューターを中心にミステリスの『見えない爆弾』が連続で大爆発する。
 その瞬間、最高の笑みを浮かべるミステリス。
「きたねえ花火だぜ!」
 それに示し合わせたように、爆発をバックにセリフを決めるテレサ。
「……」
 ある意味豪華な花火に一瞬、微妙な雰囲気になる他のケルベロスたち。しかし、それも一瞬でミステリスとヴィットリオのライドキャリバーは警備ロボットを逃がさぬように道をふさぎ、同時にガトリングガンを乱射、ペコペコもマルチプルミサイルを発射し、ウィリアムは流水のごとき動きで警備ロボットを薙ぎ払う。
「すぐに片付けさせてもらうっす!」
 レビス投げる螺旋手裏剣と共にサポートに駆けつけた者たちも加わり激しい乱戦となるのだった。

 そんな警備ロボットが攻撃を受けたタイミングで、工場の主であるモグラ型ダモクレスが反応した。すぐに工場拡張作業を停止し、こんな事もあろうかと用意していた強化用パーツの準備に取り掛かる。
 強化パーツを格納していたシャッターを解放。そこには、追加装甲、増設ミサイルポッド、出力増加ジェネレーターの三つがあった。ダモクレスは追加装甲を搭載しようと、改造を開始。どこかのアニメのように『プッピ、ガン!』な音と共に装備出来るような構造ではないようで、改造には少々時間が必要なようだった……。

 最初の爆破スイッチの攻撃でダメージを与えた警備ロボットは、順調に倒していく。しかし、数ばかり多い。
「危ない!」
 激しいケルベロスの攻撃の中でも、怯まず反撃してくる警備ロボット。数を頼みに発射してくるミサイルがケルベロスたちを狙う。
「大丈夫ですか」
 激しい攻撃を巨大な盾を構え耐える大原・大地(元守兵のチビデブドラゴニアン・e12427) 。
「ああ、助かったでござる」
 素直な感謝の言葉に嬉しそうな雰囲気の大地。
「警備ロボットの残りは10体だ!」
 そんな激しい戦いの中でも、丁寧に数を数えていた焔羅。作戦通り、ヴィットリオ、焔羅、陸井、レビスは警備ロボの処理を残りの者に任せ、ダモクレスを探すために潜入を開始する。
「後は頼んだ!」
 ヴィットリオは残る者に声をかけ、工場の奥へ向かい走り出した。
「イカセナイ!」
 そんな動きに行く手を阻もうと動く警備ロボットだが、そこへ駆け込むのは黒住・舞彩(黒の住人・e04871) 。
「サポートさせてもらうわね、ペコペコ、ウィリアム」
 以前、依頼で共に戦った者の救援は嬉しいものだ。
「ありがとう!」
「舞彩殿、感謝するでござる」
 行く手を遮る警備ロボットを鉄塊剣で力任せに叩き潰し道を作る。さらに、警備ロボットを超重力の十字斬りで葬る呉羽・律(凱歌継承者・e00780) 。
「残り少しだ!」
 サポートの者たちと強力して残りの警備ロボットの殲滅にかかるのだった。


 先行して情報を集めてくれた獅子・泪生(鳴きつ・e00006)のおかげもあり、工場の最奥に潜むダモクレスにたどり着けた潜入組。
「……結構、早くたどり着けたようだね」
 そのダモクレスは自身を改造中だった。現在、追加装甲を装着し終わり、次に増設ミサイルポッドを取り付けようとしている所だった。残り2つの追加装備があるのが見える事から、ダモクレスの想定よりも3倍早い速度でたどり着いたと予想出来る。
「よし、今だっ!」
 睦井がバイオガスを放ち、戦場の様子を外から見えにくくし、同時に攻撃を仕掛ける。
「もぐもぐぅ!」
 充満するバイオガスに警告音を発生させ、同時に全包囲にミサイルを発射する。さらにミツキ・キサラギ(超弩級砲塔狐・e02213) も牽制に加わりフォートレスキャノンを発射する。
「これ以上の改造はさせません!」
 潜入班は警備ロボットを全部倒して合流するまで、牽制に勤めるのだった。

「改造だの何だの冗談じゃねーし、出来るだけこの工場は壊しておきたいぜ」
「それもそうだけど、これだけの施設を密かに作っちまう技術、すげー欲しい」
 破壊工作とサポートを裏で進めるエンデ・シェーネヴェルト(飼い猫・e02668) と野木・九(獣装拳魔・e02945) 。本当に、ダモクレス驚異のグラビティ力である。
 そんな各所でサポートしてくれる仲間たちに支えられ、さらに双星・雹(恋する天使・e00152) が連絡を入れてくれたりしたおかげで素早い合流が出来た。
「お待たせしました」
 それからほどなく警備ロボットを片づけて合流するケルベロスたち。
「ちょっとだけペコペコに時間をちょうだい」
 しかし、そこでペコペコが皆に声をかけ、一人前に出る。
「あのね、機械にしなくても仲良くなれるんだ……友達のなりかた、ペコペコが教えてあげるから!」
 ペコペコの必死の説得。その言葉に、一瞬だけ攻撃を止め、小首を傾げるような仕草をするダモクレス。
「……モグモグ!」
 しかし、返事の代わりに返って来るのはミサイルの雨。精一杯の想いを込めたペコペコの言葉は欠片も届いて居ないようだ。
「だからもう止めようよ!」
 ダモクレスのミサイルを自身の腕部から発射したミサイルで迎撃しながらも説得を諦めない。
「……」
 そんなペコペコの肩に触れ静かに首を横に振る照道。
「モグモグウ!」
 モグラ型ダモクレスはさらに、背中のミサイルポットを展開し、ミサイルの雨を降らせる。それを照道が防ぎ耐え反撃を繰り出す。それを合図に他の者も反撃を開始したのだった。


「悪いが、人に害なす前に倒させてもらう」
 ミサイルの雨を避けながら神速の突きを繰り出す陸井。
「ダモクレスの計画の緻密さは知っているですが、それでも今回は私達が勝つのですよ」
 その突撃を援護するように、機理原・真理(フォートレスガール・e08508) がフォートレスキャノンの砲撃を放つち、レビスが螺旋の軌跡を描く手裏剣を放つ。
 激しい攻防の中、サポートしてくれた者たちも集まってくれ、狼森・朔夜(人狼のブレイズキャリバー・e06190)などは丁寧に警備ロボットが残っていないか確認後、合流してくれた。
「よし、今だ!」
 ヴィットリオはライドキャリバーのディートを足場に大きく跳躍。天井の高いダモクレス工場でも天井に触れられそうなほどの跳躍から垂直に振り下ろされる鉄塊剣。
「ガガガ!」
 そんな攻撃に対して両爪を盾のように構え防ごうとすりモグラ型ダモクレスだが、その爪は無骨な鉄塊剣で粉々に砕け、眉間に叩き込まれる。
「ガルド流霊武術の力、とくと見よ」
 照道が静かに拳を握り突き抜くのは、派手さも何も無い一撃。しかし、その威力は一目瞭然。卓越した技量にのみ放てる達人の一撃。
「ガ、ガ、ガ」
 内部システムが不具合でも起こしたかのように、動きが鈍くなるダモクレス。
「おまえなんか食べちゃうんだ!」
 そこへ飛び込むペコペコ。凄まじい勢いでモグラ型ダモクレスに噛みつき、その魂ごと破砕しようとする。
「もぐうう!」
 そんな噛みつきに対抗するように大きく口を開け、ビームで反撃してくる。
「回復します……ちょっと気分が高揚するかもしれませんが」
 凄まじい接近戦となったペコペコへ御子神・宵一(御先稲荷・e02829) がルナティックヒールを行う。
「元気でてきた!」
 効果はすぐに現れペコペコの噛みつきが勢いを増して装甲を破壊していく。
「もぐぐぐう!」
 凄まじい攻撃に思わず一度距離を取るモグラ型ダモクレス。見た目によらず動きは早い。
「機動力を奪うっす!」
 その素早い動きを止めるために、流星の力を足に込めるレビス。そのまま大きく跳躍し重力と煌めきを足に宿しモグラ型ダモクレスの脚部に飛び蹴りを繰り出す。
「モグ!」
 脚部に損傷を受け、回避力が鈍るダモクレス。
「当たれっ!」
 そこへテレサが放つのは愛用のアームドフォート・ジャイロフラフープから放つ高威力の単発攻撃。
「モグモグ!」
 避けようと脚部を駆動させようとするも、さきほどのレビスの攻撃で反応が遅れる。
「地獄の業火はこの身に宿り、この地に顕現せし」
 そのチャンスに焔羅は詠唱と共に全ての武装を解放する。
「その野望、潰す!」
 クールに言い放つと同時に全砲門を一斉に発射。周囲を破壊し尽くす。
「所詮は付け焼き刃よね」
 さらにミステリスの凍結光線がダモクレスの熱を奪っていく。

 ケルベロスたちの連続攻撃に追加した装甲は半分以上が剥がれ落ち、様々な箇所が壊れ火花を散らしている。
「モグモグがおー!」
 それでも最後の抵抗とばかりに、ボロボロになった追加装甲をパージし、同時に背面のミサイルポッドと腕部の爪ブレードもパージ。身軽になったモグラ型ダモクレスは陸井に突撃する。
「壱の型……」
 それは切り札にして最後の一撃だったが、静かに呼吸を整える陸井の身体をダモクレスが素通りする。
「も、もぐ?」
 突撃を受けた陸井の姿が消えたかと思うと、ダモクレスを中心に風が流れる。
「吹き荒れろ、鎌鼬」
 次の瞬間、吹き荒れるのは霊力の斬撃。
「モモモモオオオオオ!!」
 吹き荒れる斬撃に舞い踊る木の葉のように打ちのめされたダモクレス。
「モ……グ……」
 そして、そのまま動きを止め、光に分解されるかのように、塵一つ残さず消えていった。
「急いで脱出しましょう!」
 それを見て、即座に反応したのは照道。
「う、うん!」
 その言葉に従い、すぐに脱出するケルベロスたち。照道は工場の後始末について考えていたからから気がついた。この工場もダモクレスの一部である可能性に……。
「……崩れてきたぞ!」
 その読み通り、脱出する途中で崩壊を始めた工場。そして、従来の下水道に到着する頃には地下工場は崩れてしまっていた。
「まあ、これで工場をまた利用される恐れはないだろう」
 全員無事だった事もあり、前向きに考える照道であった。


「お疲れ様でしたーっ!」
 地上へ戻ると、そこにはキンキンに冷えたジュースを用意して待っていてくれたピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106) の姿。空気の悪い中から戻ったケルベロスたちには何よりのご馳走だ。
「ウィリアムさん、今回は本当にありがとう」
 共に戦えたことに感謝を述べる陸井。
「いや、こちらこそ感謝するでござる」
 そんな陸井に同じく感謝するウィリアム。
「頑張ったな」
 朔夜はペコペコに声をかける。
「えへへ」
 同じ旅団の皆から優しい言葉をかけられかわいく微笑むペコペコ。
「ふむ、これも美味でござるな」
 大地が持ってきた愛媛の銘菓に舌鼓を打つウィリアム。他にも朔夜が持ってきた羊羹を自分のと交換して食べ比べている。
 そんな微笑ましい光景を見ながら、無事に任務を終えられたと実感するケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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