太くて長い、触手の恐怖

作者:零風堂

 閑静で清潔感のある住宅街を眼下に、緑豊かな小高い丘が悠然と立ち尽くしていた。
 麓から、バスも通っている緩やかな坂を進んでいけば、唐突にその建物が現れる。
 ――私立ベルフラワー女学院。
 その外観は西洋の城を思わせる豪奢な造りだが、内部は整然としており、格式高い学舎であることを疑う余地はない。
 なんでもとある資産家が、次世代を担う若き女性の育成を目指して創立し、かなり高度な教育環境を整えたということだ。
 そして多感な女子生徒たちが学業に専念できるよう、学院内は教職員はもちろんのこと、出入り業者や警備員も、そのほとんどが女性で構成されているという。

 そんな女学院の、とある日の午後。
 生徒たちは授業も終わり、クラブ活動に精を出していた。
 グラウンドではソフトボール部がキャッチボールをしており、ボールがミットに収まる小気味いい音が響いている。
「せ、先生……あれ!」
 4番ファーストのスラッガー、青空・翔子が声を上げた。ショートカットに小麦色の肌が、実に健康的である。
 彼女の示すほうを見てみると、空間がゆっくりと渦を巻き、異様な気配の漂う穴が広がり始めていた。
「うっ……」
 その穴から、思わず鼻を覆いたくなるような異臭が漂ってきたかと思うと、背中に無数の触手を生やした豚の化け物……オークたちが這い出してきた!
「オンナ……グフ、グフフ……」
 オークたちは涎の混じった呟きを漏らしながら、女生徒たちに襲いかかる。
「きゃああああっ!」
 女生徒たちは悲鳴を上げて逃げ惑うが、オークたちは笑いながらそれを追い回し、触手で手足を縛りあげていった。
「みんな逃げて!」
 勇敢にも翔子がバットを手に、他の生徒たちの盾となって、一際触手の大きなオークに立ち向かう。
「強イオンナ……強イオレノ子、産まセル……グフッ」
 太い触手がバットを打ち払って、他の触手が手足を縛った。オークの強い力で手足を大の字にされても、翔子は気丈に相手を睨みつける。
 ばりばりばりっ!
 オークが乱暴に、無防備な翔子の体操服を引き裂いた。誰の目にも触れたことのない肌を化け物に晒されて、流石の翔子も声にならない悲鳴を上げる。
「グハッ、グハッ、グハハハハ……!」
 勝ち誇ったオークの粗暴な笑い声が、女生徒たちの悲鳴を掻き消してゆく。こうして学院の女生徒たちは、オークたちに連れ去られてしまうのであった……。

「そんなわけで、ちょっと手を貸してほしいんだ」
 リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)は、紫の凛々しい眼差しで仲間たちを見つめながら言った。
 少しの間をとってから、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が口を開く。
「先ほどお話ししたのが、リーファリナさんの懸念していた事象に関する私たちヘリオライダーの予知……ケルベロスが動かなければ、起きてしまう悲劇です。何の罪もない女生徒たちがオークによって連れ去られるなど、放っておくわけにはいきません」
 セリカの言葉にリーファリナも頷いた。他のケルベロスたちの表情も確認してから、セリカは話を続ける。
「魔空回廊を通って、どこに連れ去られるかは不明ですが……彼女たちにとって悲惨な未来が待っていることでしょう」
 なんとしても防がねばとケルベロスたちも意気込んでいた。
「襲われてしまう女性たちを事前に避難させてしまうと、オークたちは別の場所に出現してしまい、事件を防ぐことができなくなってしまいます。ですから女性たちの避難は、オークが出現してから行うようお願いします」
 セリカはそこまで話すと、一瞬だけ言葉を切って思案を巡らせ始める。
「ただ……女性が増える分には問題ないようですので、女性のケルベロスが事前に潜入することは可能です。あと、一般人に見破られないほどに高度な女装ができるのであれば、男性のケルベロスも潜入することができるでしょう」
 女装と聞いて動揺があったのか、何人かの表情が少し動いた。
「事前にケルベロスが潜入した場合も、本来そこに居るはずだった女性が居なくならないよう、注意して下さい。例えば予知のことを事前に知らせてしまうと、女性が逃げてしまって、オークが別の場所に現れてしまう……ということもあり得ます」
 潜入する場合は、そういったことにも気をつけようと、ケルベロスたちは視線を交わす。
「現れるオークは、太くて長い触手を備えた強力なオークが1体と、その配下の5体のオークです。強力なオークは巨大な触手を3本生やしていて、通常よりも強い力で叩きつけてきたり、溶解液をぶち撒けてきたりします。配下のオークも5体と数が多く、触手で締め付けてきたり、溶解液を放ってきたりしますので……十分に警戒するようにして下さい」
 セリカは真剣な眼差しでそう言った。
「そういうことだな。オークなんかに未来ある女生徒が連れ去られるなんて、絶対に許せないよな。太い触手だかなんだか知らねえけど、オークどもをぶっ潰して、女生徒たちを助けような!」
 リーファリナは仲間たちに向けて、気合の入った言葉を送るのだった。


参加者
天音・風花(空色雪月花・e00243)
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)
フェミナ・アローン(やる気は衰退しました・e02844)
フレナディア・ハピネストリガー(サキュバスのガンスリンガー・e03217)
ユウ・アドリア(温泉に浸る闇猫・e09254)
スミコ・メンドーサ(地球防衛軍リア充チーム・e09975)
アルテミス・カリスト(正義の騎士・e13750)

■リプレイ

「ふふ、ちゃんと女性の姿にならないと怪しまれちゃいますからね~」
「そうそう。ユウ君はおも……げふんげふん。これは女装のお手伝いよ」
 大きな鏡に、幾つも並べられた化粧品。そして清楚な女子学生服。
 クノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)は晴れやかな笑顔を浮かべながら、そっとユウ・アドリア(温泉に浸る闇猫・e09254)の背後に回って両肩に手を置いた。
「い、いや! わしはジャージで十分……」
 ユウが抗議の声をあげようとするが、思ったよりしっかり押さえられていて逃げられない。
「なに言ってるの? 予知が変わったら大変じゃない」
 フレナディア・ハピネストリガー(サキュバスのガンスリンガー・e03217)が素早くパウダーパフを振るい、ファンデーションを広げていった。
「まーずーはー、お化粧を施して~、付け毛で髪を伸ばすだけでも十分よね」
 メイクを施すフレナディアが、とても楽しそうなのは気のせいだろう。
「ふふ、細くてしなやかな腕……本気で女装して生活するのも良いかもしれませんよ♪」
 クノーヴレットが後ろから、そっと腕に手を伸ばす。ユウはぶるっと背筋に悪寒を感じながら首を振った。
「な、何故じゃ。格好よくヘリオンから降下して女子生徒を救うはずが、なぜこんな事に……おのれ、オーク!」
 じたばたもがくユウであったが、これも作戦のため、オーク討伐のためだとフレナディアが笑顔を向ける。
「それだけじゃつまらないし、おっきなピンクのリボンもつけちゃいましょ♪」
「や、やめろーっ。くっころ……いっそひと思いに、ぬわーっ!」
 悲痛な叫びが響き渡る。ユウ……君の犠牲は無駄にはしない。

「似合ってるぞ……ハハハ」
 フェミナ・アローン(やる気は衰退しました・e02844)は乾いた笑いを含めつつ、女装してカツラとリボンを装備したユウに声をかけていた。
「……放っておいてくれぃ」
 ユウはなんだか影を背負っていたが、これからの作戦のために集中しているのだろう。そうに違いない。
 隠密気流で目立たないようにしているのも、決して見られたくないわけではなく作戦の一環なのだ。
 一方でフェミナはきちんと身だしなみを整え、髪も綺麗に梳かしてある。
「いずれは私もここの高校に入りたくて……見学に来ました!」
 演技モード全開で、普段の気だるい雰囲気は微塵も見せないフェミナであった。
「まずは、目立たないようにしないといけないですからね」
 アルテミス・カリスト(正義の騎士・e13750)は学生服で竹刀袋に武器を隠し、フェミナと共に見学者のふりをしつつ、グラウンドの付近から離れないようにしていた。
「……しかし、私、年齢的にJKな服装で大丈夫か……?」
 リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)は少々難しい顔をしながらも、制服姿で学校に紛れ込んでいた。
 武器を隠した大き目の鞄が目立つといえば少々目立つが、ここは不審に思われないよう振る舞うしかない。
 ユウの女装をこっそり眺めて気を紛らわせつつ、オークの出現を警戒しながら部活に精を出す生徒たちを眺めていた。
「女子高かー、ボクにはこういう雰囲気の場所は似合わなそうだよねー♪」
 天音・風花(空色雪月花・e00243)も制服姿で生徒たちに混じりながら歩いていたが、みんな上品な雰囲気で、どうも少し勝手が違うと感じていた。
「お勉強より体を動かしてる方が好きだし……」
 グラウンドの近くを散歩しつつ、運動部の子たちの方が、まだ馴染みやすいかなと考えている。
 フレナディアは帽子を深く被りつつ、グラウンドの端にあったベンチに腰掛けていた。
 出入り業者の運送屋さん風の変装をして、運んでいる大きな荷物に武器を隠しているという寸法だ。
 女装的な面や年齢的な面が少々懸念されてはいたが、騒ぎなどは特に起こらず……その時は来た。

「きゃああああっ!」
 絹を裂くような悲鳴が響いたかと思うと、グラウンドの空間がねじ曲がり、中からオークが這い出して来る!
「ここは私たちに任せてお前たちは逃げろー。豚の餌になりたくないなら早く行けー」
 フェミナが声を上げつつ、グラウンドの方へ駆けだした。その手には改造スマートフォンが握られている。
「んっ……それじゃあいきますよ」
 クノーヴレットのスポーツウェアの下から、ぬるりとブラックスライムが這い出して、腰あたりを包む。鞄からはネズミとなったファミリアロッドが駆け出してきて杖形態に変じ、クノーヴレット自身は魔導書を取り出した。
「好き勝手にはさせません!」
 魔導書に力を込めて、クノーヴレットは吹雪の精霊を召喚する。吹き荒れる冷気が最初に出てきたオークたちに襲いかかり、その意識をこちらに向けさせた。
「オンナ……グフ、グフフ……」
 あくまで、欲望に染まった下劣な意識ではあったが。
「行かせないよ!」
 風花が白きアームドフォート『Edelweiss』を竹刀袋から取り出して、グラビティ・チェインを巻きつけながら駆け出していた。
 女生徒たちの方へ進めないよう、オークたちの前に立ち塞がり、マスケット銃のような形状をした砲をくるりと回転させる。
 どん!
 思いっきり叩きつけた一撃が、オークの脳天を直撃した。そいつは情けない息を漏らすが、横に居た奴が触手を突き出して、風花の腹部を一撃した。鈍い痛みがじわりと広がってゆく。
「おのれオークめ! 許さんぞ!」
 ユウは何故かもの凄い勢いでオークに突っ込み、触手をぶっ叩いていた。後ろでは襲われそうになっていた女生徒が、ありがとうと言いながら逃げてゆく。
 ユウは思った。いまの女生徒が助かったのなら良かったと。
 しかしこうも思った。いまの女生徒、わしの格好を二度見しておった。とも。
「ども、通りすがりのスカイダイビング部です! お前ら全員『たこわさ』にしちゃる!」
 スミコ・メンドーサ(地球防衛軍リア充チーム・e09975)が上空より降下してきて、着地と同時にレイピアを抜き放つ!
 その宣言に何事かといった様子で、オークの視線がこちらを向いた。
 スミコは急ぎヒールドローンを周囲へ展開し、小型無人機を前線に送って守りを固めさせていく。

「ここは私に任せて、あなたは部員の皆さんを避難させてください!」
 アルテミスが剣を抜き放ち、オークとソフト部の間に割り込んだ。バットを構えた翔子を強く見つめ、それから敵へと向き直る。
「醜いオークたちは、この正義の騎士アルテミスが相手ですっ! 剣の錆にしてあげます!」
 勇敢にも斬りかかっていったアルテミスだったが、その手首がオークの触手に捕まった。そして長くて太い触手を持つ大柄なオークが、アルテミスの前に近づいてくる。
「なっ、て、手足がっ?!」
 そいつの触手も伸びてきて、アルテミスの四肢が絡め取られた。太い触手は欲望に染まった瞳でアルテミスを見ながら、荒い息を吐いている。
「女学生を襲うオークなど許されないなっ」
 リーファリナはミニスカートでポーズを取り、胸元をチラチラとはだけさせながらオークを挑発していた。
「ウホッ、オンナ、オンナ……!」
 オークは寄ってきたものの、それは配下の方だ。太い触手のボスオークと戦うつもりだったリーファリナにすれば、邪魔な存在である。
「わわっ、何をする!」
 触手でビシバシ襲われて、上着のボタンがはじけ飛ぶ。辛うじて1つだけ残った状態だ。
「青空翔子って凄い飛距離ありそう……ま、それどころじゃないか……」
 フェミナが避難してゆくソフト部の方をちらりと確認してから、洗脳電波を放出する。
「さぁ、お前は隣のオークが素敵なお姉さんにみえーるみえーる……」
 それで何とか配下のオークをやり過ごしたリーファリナは、フェミナに軽く会釈してから駆けだした。
 このままでは、アルテミスが危ない! 今の攻防で胸元がだいぶ露出してしまったが、気にしている場合ではなさそうだ。
「やっぱ、銃は撃ってこそでしょ!」
 フレナディアの砲撃が太い触手のオークに迫るが、何と相手は触手を振るい、フォートレスキャノンを弾き飛ばしてしまった。
 そこにリーファリナが駆け付けるが……ぶっとい触手がふるふると小刻みに震え始めている。
 ぶびゅるるるっ!
「わわわ、何をぶっかけて!?」
 溶解液をぶっかけられて、思わずリーファリナは声を漏らした。
「きゃ、きゃああっ! ふ、服がっ?!」
 アルテミスも顔を背けようとしたが、動けないのでまともに浴びてしまい、苦しんでいる。
 ぬるぬると溶解液を滴らせながら、太い触手のオークは勝ち誇ったかのように笑みを漏らしていた。

「グフ……オンナ……」
 オークの触手がスミコを狙うが、それをユウが庇って受ける。
「オンナ……グヌ? オトコ!」
 ユウは触手攻撃を受けたものの、攻撃した方のオークが何故かショックを受けた。
「お主らのせいで、こんな目に!」
 半ばヤケクソにスカートをひらひらさせつつ、ユウは自身の影を敵に取り憑かせる。
「光の尊さを、知っておるかの?」
 心の闇が恐怖を呼び起こし、オークはどさりと崩れ落ちた。
 ユウはこいつのトラウマが『女の子を襲ったら実は男だった』で無ければいいなぁと、胸中だけで呟く。
「ヒールドローンを射出する!」
 スミコは身を盾にして仲間たちを守るユウに向け、ヒールドローンの集中治療を開始させていた。
「うにゅ……変な臭いもするし、動けないからそろそろ離して欲しいんだよー」
 一方では風花がオークに溶解液をぶっかけられ、もう一体の触手に後ろから捕まえられていた。
 触手が蠢き、風花の体を弄ろうと動き始める。
「炎と硝煙の宴に酔いしれましょ」
 そこに無数の光線がばら撒かれ、触手の一本が焼け落ちる。フレナディアがダブルバスタービームを乱射しているのだ。
「ホント、気持ちいいわ!」
 大興奮なフレナディアをちらりと見てから、風花はずるりとオークの触手から抜け出す。
「あー、もう、折角用意した制服なのに……勿体無い事したらダメなんだよー」
 ぼろぼろと制服が崩れ、白いフィルムスーツが顕わになる。
 風花は無造作に触手を掴んで引っ張ると、アームドフォートの砲身を腹部に突き入れた。
 どんっ、と一瞬の隙を突いて放たれた一撃が突き刺さり、そのオークはどさりと果てたのだった。
「はーふざけんな、12歳のウスイ本とかやばい、洒落にならんぞー」
 フェミナは溶解液を顔に浴びてしまい、急いで拭いながらぼやく。
「狙うならもっと綺麗なお姉様方をだな……」
 呟きながら明日から本気出すパワーを集中させていると、先ほど催眠状態にしたオークが、今のオークに絡みついてきた。
「あー……オーク同士も、かんべん……」
 噴き上がるニートヴォルケイノの溶岩が、襲われていたオークを焼き尽くして消滅させる。
 クノーヴレットのミミック『シュピール』が、愚者の黄金を生み出すと、何事かと残った2体のオークが寄ってきた。
「熱くしてあげますよ」
 クノーヴレットがそこに火球を炸裂させ、じりじりと肉を燃やしてゆく。
「そこね!」
 フレナディアが前を開いた作業着で、ふるっと胸を揺らしながら砲口を向けた。一斉射撃にハチの巣にされ、オークが倒れる。
 残った1体には、ユウが回転しながら突っ込んで、触手と肉をズタズタに裂いてやった。

「あぁん、ドロドロだ……」
 リーファリナの服に触手が潜り込み、ずるずる這い回る。
「こ、こんなことで騎士は挫けは……くうっ」
 アルテミスの腹部に触手が撃ち込まれ、激しい痛みが全身を貫いた。ズンズンと絶え間なく、力強く打ち込まれ続ける触手に、アルテミスの意識が飛びそうになる。
「そこまでだよ!」
 風花がフォートレスキャノンをぶっ放し、オークの体を大きく揺るがす。生まれた隙にアルテミスは雷刃突で攻撃し、怯んだ瞬間に触手から逃れた。
「友軍を支援するぞ! 治療開始!」
 スミコがドローンを射出し、その間にふたりのダメージを癒してゆく。
「あぁ、あんなの押し込まれたら、凄いコトになっちゃいそうです……」
 クノーヴレットがオークの太い触手をじっと見つめながら、リーファリナの援護に向かった。
 そっと指先で、優しくオークの触手に触れる。
「うふふ、捕まえました……♪ さぁ、私のこの指で奏でて差し上げますから、素敵な声で歌ってくださいね♪」
 クノーヴレットの魅惑の指先が、敏感な部分を優しく、時に激しく撫でたり揉んだり扱いたりしはじめた。
「グ、グガ……」
 オークは息を荒げながら、ブルブル震え始める。
「ふふ、さあこっちも……うふふふ、濃いの出そうですよね……♪」
 クノーヴレットの激しい攻めに、オークは盛大に溶解液をぶっ放した! 直撃を受けて、クノーヴレットは堪らず目を細める。
「誤射? 暴発? ううん、狙い撃ち♪」
 フレナディアがバスターライフルで狙撃し、オークの腹部を撃ち抜いた。苦しみもがくそいつの傷口を蹴って、リーファリナが抜け出す。
「あとはぶった切るだけだなっ! ……気迫と愛の一撃!」
 リーファリナは敵との距離を測りつつ、ぐっと拳を握りしめる。そしてアルテミスと一瞬だけ視線を交わし、敵へ向かってダッシュした。
「援護する……いけっ!」
 スミコがゾディアックブレイクで重力を込めた斬撃を叩き込み、ぶっとい触手を地面に落とす。
「気愛一閃、受け取れぇ!」
 リーファリナがぶっとい触手に渾身の拳を叩き込み、ぶちっと砕き散らす。オークから激痛の絶叫が聞こえた。
「……黙りなさい!」
 アルテミスが素早く踏み込み、刃を横薙ぎに繰り出す。ぞぶっと腹の肉で止まったが、アルテミスはもう一本のゾディアックソードを振り上げていた。
 ――これで終わらせる。
 重力を発生させながら打ち下ろされた斬撃が、オークの体を十字に切り裂く。
 砕けて消滅してゆくオークの亡骸を見届けて、アルテミスは仲間からかけられたマントを羽織り、剣を納めるのだった。

「これでおしまいかな?」
 風花はもう少し学園を見て回りたかったと残念そうに言いながら、討ち漏らしがないか確認していた。
「こういう堅苦しい所は苦手なんだ……」
 フェミナは学院の雰囲気にはなじめないと呟き、そそくさと立ち去る。
「任務完了だな」
 スミコも手早く、戦闘の痕跡を片付けて、最終チェックをしている所だ。
「酷い戦いだったな……アフターケアが必要か?」
 リーファリナは女生徒たちに被害が出なくて良かったと胸を撫で下ろしつつ、仲間たちに向き直る。
 溶解液や触手攻撃によって酷い目にはあったが……互いの健闘を称えつつ、一同は帰路についたのだった。

作者:零風堂 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 8
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