怪奇、ターボ婆ちゃん!

作者:なちゅい

●道路を疾走する老婆
 ターボ婆ちゃんといえば。
 道路を車と同等の速さで道路を疾走する都市伝説として知られる。
「折角やから、この目で見るんや」
 兵庫県在住の高校生、小幡・隼士は冬休みを利用して六甲山にやって来ていた。サイクリングを楽しむのが主目的だが、どうせならばSNSで聞いた都市伝説を目にしようとやってきたのだ。
 隼士は見晴らしの良い高さまで登って来た後、周囲を眺めながらもその都市伝説を自らの目で確かめようと道路も見渡す。
 小一時間ほど探し回ったが、やはり都市伝説。そう簡単に確認できるものではない。
「……やっぱ、ダメか。しゃーないな」
 諦めた隼士が別所に向かおうとすると。いつの間にか彼の背後にぼろぼろの黒い衣装を纏い、ひどく病的な肌をした魔女が立っていた。
 その魔女は隼士が声を上げる間すら与えず、手にしていた大きな鍵で彼の体を突き刺す。隼士は倒れてしまったが、鍵を抜いても傷痕すら残ってはいない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 そばに伸びる触手のような手は、淡いモザイクに包まれている。それを操る魔女はドリームイーター……第五の魔女・アウゲイアスだ。
 やがて、倒れる隼士のそばから現れた者。それは、彼が思い描いていた老婆そのものの姿をしていたが、その顔面にはモザイクがかかっていた。
「あたしゃ、一体誰なんだい……」
 そいつは一言呟いた後、その場から走り去っていく。それを見届けたアウゲイアスもまた、いずこともなく消えていったのだった。
 
 ヘリポートでケルベロスを迎えるリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)。彼女は小さく手を振った。
「あけましておめでとう。今年もよろしく頼むよ」
 今年も、できる限りの依頼を提供して、人々の、そして、ケルベロス達の役に立つことができたらと、彼女は抱負を述べる。
 ケルベロス達もまた、様々な今年の抱負を語り合う中で、やってきたフォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)が早速、話を持ちかけてくる。
「この間、人面犬を討伐したけれど、次はターボ婆ちゃんかなと思っていたのよ」
「さすが、鋭い読みだね」
 リーゼリットは新たな事件を読んでいたフォトナに笑みを浮かべるも、すぐに表情を引き締めて依頼の話を始めた。
 都市伝説、ターボ婆ちゃんの存在を確かめようとした少年がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われる事件が起こってしまう。
「奪われた『興味』を元にした怪物型のドリームイーターが実在化しているよ。この夢喰いが事件を起こそうとしているようだね」
 『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。こちらの消息を追いたくはあるが、今は新たな被害が出る前に現れた怪物形のドリームイーターを討伐したい。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだよ」
 襲われたのは、兵庫県在住の高校一年生、小幡・隼士だ。
 夢喰いに襲われて『興味』を奪われた彼は六甲山周辺の道路に倒れ、昏睡状態にある。無事にドリームイーターを倒したのならば、介抱して何かフォローしてあげたい。
「『興味』から生まれたドリームイーターは、この道路上を疾走しているようだよ」
 このドリームイーターはターボ婆ちゃんについての都市伝説を噂したり、信じるような発言があると、その人の方に引き寄せられる性質がある。これを利用することで相手を誘い出し、有利に戦うこともできそうだ。
「怪物型ドリームイーターは老婆の姿をした者が1体だけで、配下などはいないようだね」
 その大きさはごく普通の人間並みだが、顔面にモザイクがかかっている。四つん這いの体勢で疾走する人間など、異種族でもなければそう見られるものでもない。発見すれば、それがドリームイーターだとすぐに分かるはずだ。
「このドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを質問してくる』よ」
 返答によっては、夢喰いは相手を殺そうとするようだ。もし、一般人がドリームイーターと出くわした場合、これによって、命の危機にさらされる可能性がある。
 もちろん、ケルベロスとしては見過ごすわけにはいかないので、返答内容に関わらず、早々に討伐してしまいたい。
 ドリームイーターは怪しげに瞳を輝かせて相手を惑わしたり、敵陣へと猛ダッシュして相手を怯ませたりしてくる。また、モザイクを飛ばし、相手の『興味』を奪うこともあるようだ。
 説明を終えたリーゼリットはさらに続ける。
「少年の状態を考えれば、悠長にしているわけにもいかないけれど……」
 しかしながら、彼女は晴れやかな顔でケルベロス達へと語りかけた。
「新年1つ目の依頼。皆なら気を引き締めてこの事態に当たってくれると、ボクは信じているよ」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
浅川・恭介(ジザニオン・e01367)
シヲン・コナー(清月蓮・e02018)
高原・結慰(四劫の翼・e04062)
クリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416)
唯織・雅(告死天使・e25132)
リノン・パナケイア(狂気の道へ・e25486)

■リプレイ

●ご挨拶と都市伝説
 現場へと移動するヘリオン内。
「あ、みなさん明けましておめでとうございます」
 ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)が仲間達へと新年の挨拶を行うと、メンバー達は「おめでとう」とそれに応える。
「おめでとうございます……」
「ぷきゅぷきゅー」
 無表情の浅川・恭介(ジザニオン・e01367)も小さく返す。シヲン・コナー(清月蓮・e02018)と一緒にいたボクスドラゴンのポラリスも、可愛らしい声で鳴いて挨拶してくれていた。
「クリスティーネさん、お久しぶりですね?」
 十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)はチームメイトとして戦った経験のあるクリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416)へと声をかけると、彼女は笑顔で応える。
「オっさんも頼りにしていますよ」
 そして、泉がそばにいるオルトロスの頭を優しく撫でる。オルトロスはいまいちその名がしっくりきてない様子だが、ワンと鳴いて返事していた。
「それにしても、ターボお婆さんですか~。一体どのような方なんでしょうね~」
 挨拶が一通り終わり、クリスティーネが今回の相手について話を切り出す。その名前の響きに、興味津々な彼女である。
「うちの方では、『100キロババア』だったよ」
 ガドの地元ではまた違った都市伝説があるようだ。
 ともあれ、人面犬や今回の1件。怪奇とも言える都市伝説は今でも、巷で囁かれているらしい。
(「四つん這いで、車と同等の速度で疾走する老婆……」)
 高原・結慰(四劫の翼・e04062)は何気なくその絵面を想像し、気持ち悪さすら覚えてしまう。できれば、目にしたくない相手だ。
「はぁ、メンドイ……」
 彼女はややけだるげに言葉を漏らす。それでも、誰かが倒さねばならぬ相手だ。
 そうして、会話するメンバー達はやがて、窓から見える六甲山を見下ろす。冬の寒い時期ということもあり、雪の積もる山の眺めは幻想的にも見える。
「何もないように、さくさく終わらせましょうか」
 準備を追えたメンバー達は泉を先頭にし、ヘリオンから降下を始めたのだった。

●ターボ婆ちゃん登場!
 六甲山の道路へと着地したメンバー達はまず、戦闘するのに適した場所……開けている上に封鎖が楽な箇所を探す。その途中で、『興味』を奪われた少年を発見できればよかったのだが、残念ながら見つからない。
 メンバーは仕方なく、先に発見した駐車場を戦場として定め、先にドリームイーターの対処を行うことにする。
 唯織・雅(告死天使・e25132)は口頭で周辺にいた人々に状況を伝え、泉が隣人力を使って避難を促す。ある程度人払いが出来たタイミングで、ガドがキープアウトテープをその駐車場へと張り巡らした。
 準備も整ったところで、メンバー達はドリームイーターのおびき寄せの為に噂話を始める。
「ターボ婆さん。高速道路でも、見られるの……ですよね」
「ターボとつく位だし、やっぱりお婆さんの姿をした何かが時速100キロオーバーで走るのかな?」
 最初にたどたどしく口を開いたのは、雅だ。それに結慰が言葉を返すが、彼女は嫌な意味で、色々と目に悪い光景になりそうだと自身の予感を語る。
 その噂話に他のメンバーも参加はするものの、リノン・パナケイア(狂気の道へ・e25486)などは敵の出現に警戒を強める。
「うちが小さい頃もよく流行ったよ。いやはや、懐かしいもんやね」
 怪談の類ではない為、そういった話が苦手なガドもにこやかに笑い、噂話を楽しんでいたようだ。
 そこで、恭介が道路へと視線を向けると、駐車場前を疾走していく物体があった。それは急旋回した上でこちらへと近づいてくる。
 それは、四つん這いの状態で疾走する老婆の姿。大きさも一般人とさほど変わらないが、『興味』と言う感情から生まれたドリームイーターなだけあって、その顔はモザイクに包まれている。
「うう~、オっさん! 助けてください~」
 思った以上に衝撃的なその姿に、クリスティーネは怯えてしまう。主を護ろうと、オルトロスのオっさんは敵に向けて吠える。
 すると、その夢喰いは急ブレーキを掛け、ケルベロス達へと問いかけてくる。
「あたしゃ、一体誰なんだい……」
 それまで都市伝説について語り合っていたメンバーは一斉に口をつぐみ、返答しようとはしない。退路を断とうと、恭介は敵の背後へと回る。
「……一体、誰でしょうね」
「さてねぇ、あんたから見て、うちらはどう見える?」
 答えを焦らす為にと泉やガドが返答を引っ張るが、それが逆効果となってしまう。夢喰いはモザイクの下から、瞳を怪しく光らせてきていたのだ。
「お前はターボ婆さんに違いない」
 問いかけてくる夢喰いへ、リノンが淡々とした口調で応える。敵が自身を狙ってくれることを願いながら。
「ふむ……、妖怪ダッシュババアかな?」
 シヲンは逆に敢えて誤答してみせる。これによる敵の反応を見ようとしたのだが、夢喰いの敵意はどうやら、曖昧な回答をしたメンバーへと向いている。
「高原さん、よろしくお願いしますよ」
「早く片付けよう。うん」
 泉の言葉に頷く結慰はケルベロスコートを脱ぎ去り、白い装束の背に4色の翼を広げた。
 再び、疾走を始める夢喰い。メンバー達はそのままその迎撃を始めるのである。

●ターボ婆ちゃんの捕捉を!
 少年の『興味』から生まれたドリームイーター、ターボ婆ちゃんの動きは素早い。
 疾走してくる敵は、妖しく瞳を光らせる。狙ったのは、ガドを含む後方メンバー達だ。
 恭介は素早く彼女を庇う。広範囲に及ぶ攻撃の為に、その効力は薄められてはいるが、相手を惑わす眼力は脅威だ。
「アグレッシブな婆さんだ。しかし……」
 誤答したシヲンは自身が狙われると思っただけに、敵の動きに戸惑う。
 彼はふわもこのポラリスへと仲間の盾と属性注入を任せ、自らは機動力を活かして攻撃を行うキャスターとして立ち回る。2本のライトニングロッドを行使して敵を殴打し、強烈な電撃を走らせる。ちなみにそのうちの1本は、箱竜ポラリスのおててを模した物だ。
 ケルベロスの布陣はキャスター2人というやや珍しいもの。そのうちの1人、リノンも機動力で敵を捉えて蹴りかかり、重力の力で敵の足を止めようとする。
「セクメト。全員の……バックアップ。状態異常耐性……お願い、します」
 自身のウイングキャットへと、雅は指示を出す。
 雌ライオンのような容姿のセクメトは鷲の翼を羽ばたかせて、夢喰いが引き起こす怪異に対する耐性を与えるのを確認する。
「まずは、その。厄介な……足を。止めさせて……頂きます」
 ものすごい速さで、戦場を走り回る夢喰いを見据え、雅もまた大きく跳躍し、流星の煌きが伴う一撃を見舞う。手応えならぬ足応えはあったが、それだけで敵の足を完全に止めるのは難しい。
 敵に狙われたガドは応戦を始める前に、自分達の背後にカラフルな爆発を起こして気分を昂ぶらせる。
 夢喰いの姿に恐れを抱いていたクリスティーネは、それによって幾分か士気を高めたようだ。
「こ、怖いけど、少しでも力になれれば……!」
 今度は彼女が、前に立つ仲間に対してカラフルな爆発を巻き起こす。漲る力にオっさんは一声嘶き、口にくわえた神器の剣を夢喰いへと浴びせていた。
 力を得た前線メンバー達。恭介は全く表情を変えることなく敵へと攻め入り、虚の力を纏わせた大鎌を夢喰いの体へと食い込ませて体力を奪い取る。
 続けて、後方に控えていたテレビウムの安田さんが手にした棒状の……尖端は歪に曲がっているが……凶器で殴りかかる。
 続く、2人のクラッシャー。泉は敢えて結慰よりも先に飛び出し、音速を超える拳で夢喰いへとアッパーカットを食らわせる。
 それに合わせ、結慰は全身のオウガメタルを鋼の鬼と化してから、拳での連撃を叩き込んでいく。敢えて泉がタイミングをずらしてくれることもあり、結慰はうまく連携して攻撃していたようだ。
 対するドリームイーター、ターボ婆ちゃん。そいつは質問を止め、ケルベロス達へと猛ダッシュしながら強襲を繰り返す。
 止まらない夢喰いをなんとか捕捉しようと、ケルベロス達はグラビティを繰り出し続けるのである。

 なかなか、ドリームイーター、ターボ婆ちゃんの動きは鈍らない。
 狙撃役となるガドがオーラの弾丸を喰らい付かせ、雅も的確な狙いで爆破スイッチを起動させ、敵の胸の辺りに爆発を起こす。
 また、立ち位置を活かすキャスター勢。リノンは指にはめたリングを光り輝かせて具現化した剣で斬りかかり、シヲンは『アルテミスの勝利』と名づけられた靴で蹴りかかる。
 ぷきゅぷきゅ鳴くポラリスをシヲンは優しく窘めつつ、リノンの状況を確認する。狙われるのであれば、ポラリスにカバーを頼むのだが……。
(「想定と違うな……」)
 シヲンは首を傾げる。実際は自身も敵のターゲットになっていたし、何より、返答を引き伸ばした泉やガドの方が狙われている気すらする。どうやら、夢喰いの問いに答えられぬ場合も、敵の的になってしまうらしい。
 しかしながら、主立って狙われる2人は前衛と後衛に分かれている。敵の狙いが分散していることもあって、想定とは違っても、メンバー達は比較的順当に敵に対処することは出来ていた。
 狙われる仲間を、恭介が庇う。飛んで来るモザイクを受け止め、自身の身から力が抜けていくのを感じながらも、彼は叫ぶ。
「負けない……」
 傷つく恭介をテレビウムの安田さんも気遣い、応援動画を流して主を癒していたようだ。
 クリスティーネも仲間の回復の為にとオーロラの光を発するが、仲間がうまく敵の攻撃を捌いたのであれば、別の手段を講じる。
「誰にも傷ついて欲しくありません!」
 仲間のみを案じるクリスティーネは一筋の涙を零す。それが大きく宙に広がり、仲間を護る為の盾として展開して行った。
 援護を受ければ、火力となる泉がナイフを、結慰が飛び膝蹴りを叩き込む。その傷は着実に、夢喰いの体力を削り取る。
 時に、飛んで来る視線に思考を奪われながらも、ガドは自らに気力を打ち出す。
「位置よし、気合よし……せーのっ!!」
 瘴気を取り戻した彼女は虚空に衝撃を与えることで、螺旋の渦を発動させて、衝撃の槍をとばして夢喰いの体を射抜いた。
 そこで、雅が再び敵の体に爆発を起こす。大きく煽られる敵の姿に雅は冷静に見つめる。
「構造弱体化、確認……しました。このまま……一気呵成に。畳み掛けましょう」
 言葉に応じ、夢喰いへと攻勢に出るケルベロス。リノンは死神の形を取った影を操り、敵へと伸ばしていく。
「その生命、私が狩り取ろう」
 影は夢喰いに飛び掛り、その首を狙う。一撃で切り落とそうと刃を振るったが、夢喰いは素早く飛びずさる。だが、刃を完全には避けられず、影の刃をそのみに食い込ませていた。
 モザイクで表情は読み取れないが、夢喰い、ターボ婆ちゃんの息はすでに荒くなってきている。
 泉はそれまで結慰と攻撃のタイミングをずらしていたが、ここぞと、彼女と息を合わせる。
「制御できる自信はありませんが、ヒトツメ、行きますよ?」
 彼は的確にナイフ、敵の急所……首を狙う。
 結慰は滅びの崩壊を意味する【壊劫】の恩恵の一部を、その見に光となして降り注がせる。
「アナタが紡いだ歴史と世界は、此処でお終い。壊劫は等しく滅びを齎す」
 そして、全身に光を纏った彼女は、夢喰いへと躍りかかって……。
「例え世界でも、関係無く絶対に、ね」
 肉弾戦を仕掛ける結慰は、泉が敵の首に刃を掛けるのと同時に、数え切れぬ数の拳と蹴りを叩き込む。
 首を寸断され、胴に幾度も殴打を受けた老婆はその身をモザイクに変え、姿を無くしていく。
 消え去った跡に近寄る泉は、小さなハーモニカ……ブルースハープを取り出す。彼は小さな音色を響かせ、消えた夢喰いへとレクイエムを奏でるのだった。

●都市伝説の正体は……
 ドリームイーター倒した後、ケルベロス達は戦場となった駐車場の修復を始める。恭介はオウガ粒子を散布することで、駐車場を幻想交じりの姿へと元の姿に近づけていた。
 他のメンバーは倒れているはずの少年、小幡・隼士を探す。駐車場からやや高い場所にて発見し、駐車場に戻ってからその介抱を行う。
 雅が隼士に温かいお茶を手渡した後、都市伝説を探す間に倒れたことを告げる。
「お探しの、都市伝説は……デウスエクス、でした。貴方が、襲われず。済んだのは……幸い、でしたが……」
「そうなんか、残念やな……」
 その正体に、少年は少々がっかりしていた。
「命があっただけでも、幸いとおもうべきだろう」
 リノンがフォローをするとシヲンも頷き、念の為にと少年を診察する。
「怪異をその目で確かめようとする好奇心は、まぁわかる」
 とりわけ異常はないらしい。場合によっては病院への連絡も考えていた結慰だったが、取り越し苦労だったらしい。
「だが時には、その好奇心の先に、思わぬ危険が待ち受けていることもあることを忘れないようにな」
 シヲンの忠告に、少年は頷く。現に命の危険に晒されていたのだ。彼も肝に銘じていたことだろう。
「自転車も運んできたから、家に帰ろか」
 ガドが隼士へと促すと、恭介も送ろうかと尋ねる。
 サイクリングを行うという主目的は済んでいた為、少年はケルベロスに応じて帰宅することに決めていた。
 その時、ガドは視界の端、道路で何か人影を見たような気がして。
(「……いや、気のせいやね」)
 彼女は仲間に続き、駐車場を後にしていったのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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