米を愛し、米に生きた

作者:飛翔優

●白く輝く粒に全てを捧げ
 窓枠から差し込む日差しさえも遮るほどに、積み上げられた米袋。ただ一つだけ輝いている電灯に照らされて、冷たい煌めきを放つ机にカウンター。最奥の席に腰掛け、うなだれている一人の男。
 男は盛大なため息と共に、誰に語るわけでもなく語りだす。
 自分が好きだから、きっと好きな人が居るはずだ! と思い経営を始めた、ご飯専門店。料理こそ炊いたご飯しかないものの、塩などと言った調味料は豊富に用意した。ご飯を求めてくる人々を、暖かく出迎えることができるはずだった。
 しかし……。
「……残ったのは借金と、この米の山……か」
 中々上手く行かないもの。ご飯だけでは魅力に乏しいのか、客が寄り付くことはなく……このたび、閉店と相成った。
 何が悪かったのか、何をすればよかったのか……男は呟きながら、夢の跡を見回していく。少なくとも食い物には困ら無さそうだと、乾いた笑みを浮かべていく。
「……」
 ちょうど十回目となるため息を吐いた時、ふと、何かの気配を感じて顔を上げた。
 視線を向ける先、大きな鍵を手に持つ女性が立っていて……。
「あんたは……!?」
 返答の代わりに、女性は鍵で男の胸を貫いた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの後悔を奪わせてもらいましょう」
 告げるとともに、鍵を引き抜いていく。
「あ……」
 小さな声を漏らし……血をこぼすことはなく、男は倒れ始めていく。
 入れ替わるかのように、割烹着姿の男が前触れもなく出現した。
 静かな装いで立つ、割烹着姿の男……ドリームイーターは、ゆっくりと周囲を見回して……。

●ドリームイーター討伐作戦
「はい、そのような形で……」
「なるほど……あ」
 ポネシー・シンポル(情けは巡る・e23805)と会話をしていたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、足を運んできたケルベロスたちと挨拶を交わしていく。
 メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「自分の店を持つ、そんな夢を持つ方は多いです。そして、その夢を叶えた……しかし、その店を潰してしまい後悔している方が、ドリームイーターに襲われてその後悔を奪われてしまう……そんな事件が起きてしまいました。そのことを、ポネシーさんの予想によって察知しました」
 後悔を奪ったドリームイーターは、すでに姿を消している。しかし、奪われた後悔を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしているようだ。
「現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしいんです」
 このドリームイーターを倒すことができれば、後悔を奪われてしまった被害者も目をさましてくれることだろう
 続いて……と、セリカは地図を広げていく。
「現場となっているのはこの、ビジネス街の一角にあるビルの中。三階にあるテナントフロア、ですね」
 そこで営まれていたのは、ご飯専門店。店主の名は、飯野。
「飯野さんはお米が大好きで、自分が大好きな以上好きな人もいるはずだ……と、ご飯専門店を立ち上げました。しかし……ご飯専門店の名の通り、置いている料理はご飯だけ。国産はもちろん、海外のお米も取り揃え、現地の作り方で作ったりお塩などと言った調味料を取り揃えたり……お米の美味しさを最大限に引き出す工夫を行っていたのですが……」
 やはり、ご飯だけでは物足りない……といったところだろうか。客足は伸びず、閉店となってしまった。その、何が悪かったのか、どうすればよかったのか……そんな後悔を奪われた形である。
「そして、この後悔をもとに現実化したドリームイーターなのですが……割烹着姿の男性といった姿をしています。そして、以前にご飯専門店が営まれていた時と同じような形で、経営を行っています」
 そこに乗り込んで、いきなり仕掛けることもできる。
 しかし、客として中に入り、注文したご飯を平らげ、心から楽しんであげると、ドリームイーターは満足して戦闘力が減少する。また、満足させてから倒した場合、意識を取り戻した飯野も後悔の気持ちが薄れて前向きに頑張ろうという気持ちになれるという効果もあるようだ。
「この辺りも考慮に入れて、行動してくださると幸いです。最後に、戦闘能力について説明しますね」
 性質としては妨害特化。美味しいご飯で心を惑わしてきたり、ご飯を引き立てるための塩を用いて攻撃の勢いを削いできたり、釜炊き用の釜を用いて加護を砕いたりしてくる。
「以上で説明を終了します」
 セリカは地図などを纏め、締めくくった。
「たとえ失敗し、後悔したとしても……生きていれば次を目指せる、再起も望める、そう思います。ですのでどうか、全力での行動を……」


参加者
ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)
櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の双銃猿忍・e29164)
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)
十六夜・琥珀(トロイメライ・e33151)
アドナ・カテルヴァ(ほんわかドラゴニアン・e34082)

■リプレイ

●艶やかに輝くご飯を求めて
 新たな年を迎えて日も浅く、けれども人々は心を引き締め仕事へと向かっていくビジネス街。その一角にひっそりと佇むビルへと足を運び、ケルベロスたちは様々な表情を見せている。
 仕事前に改めて……と言った装いだろう。岩櫃・風太郎(閃光螺旋の双銃猿忍・e29164)が、皆へと明るい笑顔を向けていく。
「明けましておめでとうございます。今日はよろしく頼むでござるよ」
「明けましておめでとう! 風太郎さんみたいに前日から……は無理だったけど、朝ごはんを抜いて、お腹を空かせておいたよー」
 十六夜・琥珀(トロイメライ・e33151)も笑顔で返しつつ、くうくうなるお腹を抑えている。
 見つめながら、風太郎は顎を軽くさすり始めた。
「十六夜殿、こういうのは修行の一環だと思えば全然辛くな……」
 半ばにて轟く、腹の虫。
 呼び起こされたかのように、櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)が静かな息を吐き出した。
「健康こそ一番の調味料、とも、いいますね」
「……櫂殿の意見も一理あり申す」
 風太郎が照れくさそうに笑う中、ケルベロスたちは早々に現場へ赴かんと歩きだしていく。
 怪談を登る中、叔牙がふとした調子で口を開いた。
「米は……馬鈴薯と共に、世界人口増加に、貢献した……植物の、双璧。ですが、それだけでは、生きられません、からね……」
「叔牙さん、バレーショってなぁに?」
 独り言を拾い上げ、琥珀が小首をかしげていく。
 エピソードを織り交ぜつつじゃがいもであると伝えられていくさなかにも、琥珀のお腹は鳴り続けた。
 そうしているうちに、ケルベロスたちはご飯専門店の前へとたどり着く。
 営業中の札を眺めながら、琥珀は小さく拳を握りしめた。
「よくわかんないけど、お米はおいしいよねっ・やっぱりおかずはほしいなって思うけど……」
「ま、それもこれも今から赴けばわかるでござろう。……頼もう!」
 風太郎が勢い良く扉を開き、専門店内部へと入っていく。
 素早く駆け寄ってきた割烹着姿の男を前に、晴れやかな笑顔を浮かべて告げた。
「ではご主人よ。この店で出す全ての米、全て一合ずついただきとうござる。拙者が纏めて食べ比べてくれよう」

 それから席に案内され、注文も滞りなく完了した。
 少し時間がかかるものもあると告げて奥へと引いた男を見送った後、ケルベロスたちは各々のスタイルで時間を過ごし始めていく。
 ケルベロスたちのようなグループ単位での来店を想定したのか、落ち着いた彩りのテーブル席が程よい感覚で並べられている内装。けれど、決して不足はしていない……十人ほどは並んで座れると思われるカウンター席。
 周囲を彩る内装も、掛け軸や提灯と言った和の装い。静寂を嫌ったか、あるいは外の音をかき消すためか、緩やかな和の音色も店の中を巡っている。
 雰囲気だけを見るならば、落ち着いて過ごせる空間を演出できているだろう。
 穏やかな空気に抱かれて、待ち続けること数十分。空腹も限界だろう風太郎や琥珀を抱えるケルベロスたちのもとに、次々と注文した品が運ばれてきた。
 そのどれもが、白い湯気を立ち上らせている白い飯。光が当てられるたび、艶やかな輝きを返してくれる一品だ。
 茶碗を前に、フューリー・レッドライト(赤光・e33477)は手を合わせて頂きます。
 利き手で箸を、反対側の手で茶碗を持ち、過不足のない量を口に運び始めていく。
 決してかっこむことはなく、一粒一粒丁寧に、ふっくらとした甘みを心から楽しむことができるように・
 対象的に、ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)は元気にご飯をかっこんでいた。
「ごっはんーごっはんー♪」
 美味しいご飯だからこそ、次々と口の中へ運びたい。
 美味しいご飯だからこそ、箸を動かす手が早くなる。
 他者との共有も楽しくなる!
 オリヴィエ・デュルケーム(癒姫・e04149)はボクスドラゴンのフラウを膝に載せ、口へと運んであげていた。
「……どう? フラウ、美味しい」
 笑顔で頷いていくフラウ。
 笑い返しながら、フラウに負けないよう自身もご飯を口に運んでいく。
 ご飯しかないと言うけれど、ご飯だけでもかまわない。
 お米だけで食べることで本来の甘みや旨みを感じ取ることができて、おいしさを実感できるのだから。
 可能なら、熱々の白米の方が良い。冷やしたものもいいけれど、こちらのほうがより甘みを感じることができる気がするから。
 だから冷めないうちにと、オリヴィエはフラウと共にご飯を突き続けていく。
 一方、アドナ・カテルヴァ(ほんわかドラゴニアン・e34082)は概ね注文の品が落ち着いたタイミングを見計らい、男を軽く呼び止めた。
「私、ご飯大好きで、料理も好きで、興味あるんです。良ければ変わった調味料とか、美味しいお米の炊き方とか、色々と教えてください!」
「わかりました。例えば……」
 男は語る。
 一般的な日本のお米と海外のお米の違いや、その違いによって変わってくる調理法。はたまた、お米が壊れてしまうから力加減が重要などと言ったアドバイスや、少し変わったところでは天つゆを軽く垂らしてみるのも良いと言った調味料の提案など。
 紡がれていく言葉の数々を、アドナは熱心に聞き止めた。
 もちろん、ご飯を食べる手を止めはしない。時にはひとすくい分を取り皿に載せ、良いと進められた調味料を試してみたりもした。
「……うん、ちょっと変わってるけど美味しい。でも、少し分量を間違えるととたんに辛くなっちゃいそうですね」
「そうですね。ですから欲張らず、少し足りない程度がちょうどよいのかもしれません」
 ご飯をネタに盛り上がる、お米の食べ方や調理に関する二人の話。
 一段落付いたと思しき頃合いで、今度はリチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)が男を呼んだ。
 男がやってきた時、ご飯を口に運んでいく。十分に味わいながら食した後、ただ小さく頷いた。
「うん、ジャポニカ米は粘り、腰、香りどれをとっても一流ですね。まず清水を米に吸わせその後丁寧に米とぎをしてます。ここが下手だと米が欠けたり糠が取りきれず糠臭くなるのですがそういったこともない。炊き方は米が踊るようにしっかりと対流させながら炊いていますね」
 一方……と、リチャードはスプーンに持ち替え皿に乗せられているご飯へと手を伸ばした。
 同様に食した後、うんうんと頷き始めていく。
「こちらのインディカ米はきっちり湯切りをしてさらっとした仕上がりになってますね。これをジャポニカ米と一緒の炊き方をすると俗に言う臭い飯になります」
「……ありがとうございます。そう言っていただけて、幸いです」
 笑顔で、男は会釈した。
 満足気に頷きながら、リチャードは瞳をつむっていく。
 こういう、後先考えずに自分の好きな物に打ち込める人は好きだ。もっとも、計画性の無さはどうかと思うけれど。
 もっとも、それを口に出すことはない。
「……美味しいご飯を、ありがとう」
「……はい」
 改めての賛辞を送った後、再び食しにかかっていく。
 そんな折、今度は風太郎が男を呼び寄せた。
 風太郎は所狭しと並んでいる茶碗や皿の数々を次々と取り替え味の違いを楽しみながら食しつつ、幾つかのご飯を指し示した。
「こちらは甘みが強くこちらは程良い粘り気があって美味でござる。ご主人のこだわりが聞きとうござる」
「そうですね。例えば……」
 ご飯の関する会話を交えつつ、緩やかな時間が過ぎていく……。

 勢い良く、茶碗を置いたミューシエル。
 ほっぺのご飯を指摘され、頬を染めながら片付ける。
 一粒も残さず平らげた上で、両手を合わせ……。
「ごちそうさまでした!」
 元気な声を響かせて、男へと視線を向けていく。
 お粗末さまでしたとの言葉を受け取りながら、ミューシエルは笑顔を男に向けた。
「ほんと、ごはんおいしかった! お米も、おいしいものも、知らないことを知ることも大好きだから、もっと色んなお米のこと、教えてくださいなっ!」
「……かしこまりました」
 頷き、語り始めていく男。
 ご飯が元は何かということに話が至った時、ミューシエルは驚きの声を上げていく。
「Riceの事をお米、いね、ごはんの三つに分けてるんだ! おもちもミューのところにはないから、MochiかRice Cakeって言うんだよ!」
 時に言葉を返しながら、語り続けられていくご飯の事。
 二人が楽しげな会話を交わしているうちに、ケルベロスたちは次々とご飯を平らげていった。
 風太郎が全てのご飯を片付けた時、ミューシエルの会話にも区切りがつく。
 改めて叔牙は手を合わせ、一礼。
「ご馳走様」
 再び顔を上げた時、鋭く目を細め……。
「さて……夢の時間は、終わりです。人は、現実を。生きねば……なりません、から」
「ごはんすごくおいしかった! だからね、あなたの後悔、ぶんなぐって起こして上げる!」
 琥珀もまた立ち上がり、お腹を満たして元気になったそらと共に男を見つめていく。
 驚いた様子を見せた後、男も距離を取り始めた。
 もっとも、殺気のようなものは感じられない。
 困惑や驚きといったものも感じれない。
 ただただ、あたり前のことのように身構えていて……。
「次は店主本人に出してもらおう。だからお前は、ここで朽ち果てろ」
 告げながら、フューリーは腰を落としていく。
 少しでも早く男を……ドリームイーターを打ち倒し、店主を救い出すために……。

●後悔を取り戻すため
 殺気もなく、かと言って喜んでいるわけでもなく、ただただ淡々とご飯を、調味料を提供し、時には釜炊き用の釜を振り回してくるドリームイーター。
 全てを容易くいなしながら、ケルベロスたちは攻撃を重ねていた。
 早々なる終結を目指すため、アドナは下から斜め上へと向かうかのようなジャンプキック。
「いい運動になりそうですよね」
 男の鳩尾へと突き刺して、壁へと押し付けていく。
 直後に叔牙が踏み込んで、指先を左肩へと押し当てた。
「経路、ひとつ。頂いた……」
 周囲が石化していくさまを見つめながら、後方へとバックステップ。
 入れ替わり踏み込むリチャードは、刀を大上段へと振り上げる。
「彼が、再起を図ることができるように……」
 渾身の力を込めて振り下ろし、ドリームイーターの体を沈ませた。
 さなかにはオリヴィエ操るオウガ粒子が舞い踊り、前衛陣の背中を押していく。
「順調に攻撃できています。この調子で、早々に終わらせてしまいましょう」
 頷き、フラウはブレスを吐き出した。
 次々と、ケルベロスたちは攻撃を重ねていく。
 壁に押し付けられたまま動くことのできないドリームイーターへと、叔牙は掌をかざしていく。
「息をつく、暇も、与えない」
 螺旋が右肩を凍てつかせ、薄く凍りつかせていく。
 すかさずそらが飛び込み爪を振り下ろす。
 琥珀はそらの背後から跳躍し、ジャンプキック!
 額を捉え、頭をも壁に叩きつけた。
「今です!」
「はい!」
 頷き、ミューシエルは大きなハンマーを思いっきり振り上げる。
 氷河期の力をいっぱいに、力任せに振り下ろした!
 凍てつきながら、膝をついていくドリームイーター。
 音もなく正面へと回り込み、風太郎は合掌、一礼する。
「ドーモ、エイプニンジャでござる」
 燃え盛る太陽光の螺旋を黄金の螺旋手裏剣へと変換し、後ろに大きく構えていく。
「ちなみに拙者はうどん屋の主人でござる! 喰らえ! サンライトォッ! フレイムゥッ! ニンジャヒュージシュリケェーンッ!」
 持ち込んできた看板をも輝かせながらぶん投げて、ドリームイーターを焼きながら壁に縫い付けた。
 直後、叔牙が距離を詰める。
 懐へと入り込む。
「懐の、ガードが……甘い!」
 左手でドリームイーターを押さえつけ、右手に小規模なら雷電を生成する。
 手のひらを広げ、鳩尾へと叩き込む!
「っ!」
 体を大きく逸した後、ドリームイーターは地面に倒れ伏した。
 叔牙が静かに見下ろす中、ドリームイーターは姿を失っていく。
 世界が、あるべき姿を取り戻す……。

●全てを胸に新たな道へ
 店の奥。従業員の休憩場所と思しき部屋に、一人の男が……店主が寝かされていた。
 ケルベロスたちは店主の介抱や店の片付け、各々の治療などを手分けして行っていく。
 すべてが終わると、店主のもとへと集まった。
 ケルベロスたちが見守る中、店主は目覚める。
 状況が理解できない表情ながらも起き上がった店主に、ケルベロスたちは説明を行った。
 倒れていたことがその証明になったのか、素直に受け取った店主はケルベロスたちにお礼を述べていく。
 けれど、次の瞬間には暗い表情で俯いてしまった。
「……」
 それは、たとえ心が晴れやかになっても、後悔が薄れても残ってしまう思いが故。
 少しでも導くことができれば……と、オリヴィエが切り出していく。
「確かに需要自体は少ないと思います。それでもそれが欲しいと思う人はきっといます。ただ、それでは継続した運営は難しいでしょうから、定期的なイベントとして振る舞ってみてはどうでしょうか?」
「他には……そうね、美味しいご飯に合った、栄養バランスの良い定食屋さんとか、どうかな?」
 アドナも提案してみたものの、反応はあまり芳しくはない。
 確かに、実行は可能だと思う。けれど、定期的なイベントとしても場所がない。定食屋だとおかずがメインになってしまう……と。
 ならば、とリチャードが落ち着いた調子で切り出した。
「冷えても美味しいご飯を炊いて塩握りとか調味料有りなら味噌むすびとか醤油を塗った焼きお握りとかをワゴン車で移動販売すればいいんじゃないですかね? ご飯に最も会うお茶と一緒に」
「……あ」
 おむすびなら、主役がご飯であることに揺るぎはない。
 顔を上げた店主は拳を握り、瞳に力強い光を宿して頷いた。
 未来を見据え始めた店主へと、フューリーは言葉を投げかけていく。
「今度はお前が出した米を食べたい……待っているぞ」
「……はい」
 返事にももう、迷いはない。
 ただただ前だけを見て、店主は再び歩き始めた。
 一度は店を出したほどの情熱があるならば、お米に捧げた想いがあるならば、きっと……!

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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