ミッション破壊作戦~解放の狼煙を上げろ

作者:さわま


「ダモクレスの一斉襲撃、そしてゴッドサンタの撃破と、貴殿らケルベロスの活躍で世界中の人々も安心してクリスマスを過ごす事ができた。改めて礼を言わせて欲しい」
 山田・ゴロウ(ドワーフのヘリオライダー・en0072)がペコリと頭を下げる。
 そしておもむろに光る小剣を取り出してみせ言葉を続けた。
「そのゴッドサンタから入手したこの『グラディウス』の使い道が判明した。これは武器として使用する事は出来ないが、『魔空回廊を破壊する力』があるのだ。
 通常の魔空回廊であれば時間が経過すれば消滅するので無意味に思えるかもしれないが、固定式の魔空回廊……『ミッション』地域中枢にある『強襲型魔空回廊』の破壊などもこの兵器を使えば可能だ」
 集ったケルベロスの中からどよめきが起こった。
「『グラディウス』は使い捨ての道具ではなく『時間をかけてグラビティ・チェインを吸収することで何度でも使用可能』である事も判明した。そして入手した『グラディウス』の中に『すぐに使用可能なもの』が多数見つかったのだ」
 そこで、一旦言葉を止めるゴロウ。
 ケルベロスたちと目を合わせお互いに頷き合う。
「この『グラディウス』を用いて『ミッション』地域の解放を目指す『ミッション破壊作戦』を提案したい。どの地域の攻略を目指すかは貴殿らの判断にお任せする。どうかデウスエクスの手から人類の生活圏を取り戻して欲しい」
 
 さらに詳しい作戦の段取りについての説明が続く。
「まず、フェイズ1。ヘリオンにより『強襲型魔空回廊』のある『ミッション』中枢部まで移動。高高度から『強襲型魔空回廊』に対して降下強襲攻撃を敢行する。
 『強襲型魔空回廊』は巨大なバリアで囲われており。これに『グラディウス』を触れさせる事で魔空回廊にダメージを与えることができる」
 普通、デウスエクスに対して降下による奇襲攻撃は不可能に近いが、巨大で移動を行わない魔空回廊に対してならば降下中の一撃を入れる事も可能だ。
「『グラディウス』は貴殿らひとりひとりに1本ずつ貸与される。貴殿ら全員のグラビティが極限まで高まった状態ならば、場合によっては1回の降下攻撃での破壊もありえる」
 今回の降下攻撃での破壊が出来なかったとしてもダメージは蓄積される。最大で10回程度の降下作戦を行えば確実に破壊できるとゴロウはいう。
「フェイズ2。『強襲型魔空回廊』周辺は当然ながら強力な護衛戦力が配備されている。『強襲型魔空回廊』へのアタック後、貴殿らはその場から撤退しなければならない。
 『グラディウス』は攻撃時に爆炎と雷光を周囲に発生させる。この爆炎と雷光により護衛戦力に混乱が生じるので、その隙に撤退を行う」
 『グラディウス』の数には限りがある。
 『グラディウス』を無事に持ち帰る事もケルベロスたちの大切な任務だ。
「護衛戦力の多くは爆炎と雷光で無力化できるだろうが完全には難しい。強力な敵との戦いは避けられないだろう。目の前の強力な敵を短時間で撃破し、護衛戦力が態勢を整える前に離脱を行う必要がある」
 万が一、敵の撃破に時間が掛かりすぎてしまうと、降伏するか暴走して撤退するしか手がなくなるかもしれない。
「どの『ミッション』地域を選ぶかによって、立ち塞がる敵の予想も立てられるはずだ。作戦を立てる参考にして頂きたい」
 
「グラビティはケルベロスの魂に比例して高まるという話を聞いたことがある。貴殿らの魂の昂ぶりが『ミッション』地域解放へと繋がるはずだ。よろしくお願いしますだよ!」


参加者
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)
リィン・リーランス(捕食式食欲型決戦兵器・e00273)
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
安倍・麻里亞(竟・e03271)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
巽・清士朗(町長・e22683)

■リプレイ


 鳥が嫌いだ。
 特に目が不気味で仕方ない。
 あの瞳の奥で何を考えているのか?
 おそらくそれは常人には理解不能、非合理、不条理の極みに違いない。
 少し昔の話だ。
 鳥に襲われる古い映画があるが俺様も訳の分からない理由で連中に襲われたことがある。
 しかも傷つきひとりきりだった所を狙いすましたように、だ。
 あの時の事を思い出すと今でも怒りと……当時の恐怖が蘇ってきてしまう。
 全く意味不明で最悪の連中だとは思わないか?
 だから俺様は――鳥が嫌いなのだ。

「鳥なんて唐揚げにして食べてやるのです~!!」
 リィン・リーランス(捕食式食欲型決戦兵器・e00273)の声に、レッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)の意識は急速に現実へと戻された。
 彼らはミッション地域解放の為に南アルプス北東部の鳳凰三山へと向かう途上であった。
「あれは中央道。昔、家族で遊びに行くときよく通ったなぁ」
 窓から安倍・麻里亞(竟・e03271)が見下ろす先。
 そこに緑と白に覆われた南アルプスの山々の麓を縫うように長く長く続く道が見えた。
「まったく人の思い出の道で何してくれてるデスカネ……交通事故って大嫌い! ワタシはケルベロスに覚醒して無事だったケド、そんな偶然普通は無いんだからね!」
 憤る麻里亞。
 と、こちらを心配そうに見る鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)の姿に気づく。
「あっ、ワタシの事故は今回の連中とは無関係よ」
 麻里亞が慌てて首を横に振ると、ヒノトが少し明るい顔を見せた。
「そうか! でも俺も事故は嫌いだ。犠牲者もそうだけどさ……遺された家族だってきっと悲しむ事になるからな」
 家族の事故死。その痛みをヒノトはよく知っていた。
 それは時間と共に和らぎはするかもしれないが、決して癒える事の無いものだ。
「夜は眠るのが自然。それは道理だけど彼らのやってる事は正に余計なお世話ね」
「悪戯に悲劇を振り撒く行為に救済などと大層な名を付ける。そんな輩を放ってはおけん」
 背中からの見知った声にヒノトと麻里亞が振り向く。
「千歳!」
「こうやって一緒に仕事に行くのはいつ以来かしら? 改めてよろしくねヒノト」
 繰空・千歳(すずあめ・e00639)が嬉しそうに駆け寄ってきたヒノトに微笑みかけた。
 そして確か前に同行した依頼は桜が咲いていた頃だったかと指折り数えてみる。
「町長さん! 今回はゴシドウゴベンタツお願いしますデスヨ」
「こちらこそ頼りにさせてもらうぞ」
 麻里亞に町長と呼ばれた巽・清士朗(町長・e22683)がフッと笑みをこぼす。
 こちらも互いによく知った仲ではあるがこうやって依頼で同行するのは初めてであった。
「何百年も前から大勢の人が傷ついてきた。数え切れない多くの明日が奪われてきた」
 砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)がその手の中の光を放つ小剣をじっと見つめていた。
「この牙は今日この日この時の為に。絶望の連鎖を断つ為に――ボクは今ここにいるんだ」
 小剣の柄を握る手に力を込める。
 そのあどけない青い瞳には強い決意の光が灯っていた。
「はい――虐げられてきた無辜の人々の為に私たちの持てる力を尽くしましょう」
 ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)がイノリの言葉にうなずく。
 だがロベリアは同時にこう思わずにはいられなかった。
(「まずは全員が無事に帰還できますように……それが何より大事です」)


 次々と仲間が降下していき最後にヘリオンのデッキへと立ったロベリアが地上を見る。
 吹き付ける冷たい風が頬を刺す。顔をしかめつつもロベリアの瞳は雪と緑に覆われた鳳凰三山の山肌とその一角にある強襲型魔空回廊のバリアをとらえた。
「向日葵畑の騎士ロベリア、いざ参ります」
 デッキの縁を蹴り空中へと身を投げ出す。
 背中の翼を畳み重力に身を委ねれば、その身体は地上へと一気に舞い降りていった。
 最初に降下したリィンとシャーマンズゴーストのマン号の眼前にバリアが迫っていた。
「居眠り運転事故の元。そんな事を強要するビルシャナは唐揚げと焼鳥にして食べてやるのです~!」
 リィンの叫びと同時にバリアに突き立てられるグラディウス。
 直後轟音が鳴り響き、バリアの一角から爆炎が吹き出す。
「先に行くぜ!」
「了解したわ。鈴もしっかり背中に掴まっていなさい」
 千歳がバリアへと真っ直ぐ突っ込んでいくヒノトと背中のミミックの鈴に声をかける。
 そして左腕の機械腕を展開し、着装したグラディウスの切っ先を前方へと突き出した。
「父さんと母さんみたいな被害者を、遺される家族を、これ以上出してたまるもんかよ!」
 ヒノトの叫び。先ほどとは別の箇所から爆炎が放出されるのが見えた。
「余計なお世話は終わりにして頂戴。私たちの戦力を鍛える手助け、してもらうわよ」
 千歳もまた切っ先をバリアへと突き立てる。
「次はワタシたちの番! グラディウス+アタシの想い+体重。受けてみなさーい!」
「交通事故という、ともすれば親しき者の死にすら繋がる、悲しみを産むばかりの戯れが救済だと……笑わせるな!!」
 麻里亞と清士朗のアタック。
 立て続けに起こった爆発がバリアの周囲へと広がっていった。
「誰かの明日を守るために! 牙なき人に代わってお前達に噛み付くために! 深く深く噛み付いて食い千切る!」
 イノリが刃を深く突き立てる。バリアから閃光が上がり次いで爆炎と雷光が流れ出る血のように吹き上がった。
「『案山子』の威信にかけて、この山に蔓延る害鳥共を駆逐する!」
 バリアの真上に着地したレッドレークがグラディウスを振り上げる。
「『殲の名を』――撃滅しろ、グラディウス!」
 畑に案山子を立てるかのように切っ先を足元へと突き刺し爆炎と雷光を発生させる。
 そして最後にサーコートをはためかせたロベリアがグラディウスをバリアへと突き立てた。


 アタック後、リィンは翼を広げ空中にとどまっていた。
 続く仲間たちのアタックで次々と爆炎と雷光が吹き上がるバリアとその周辺の状況を固唾を飲んで観察していたのだ。
「やりましたですか~!?」
 最後のアタックが終わった後。
 バリアを覆い尽くした爆炎と雷光を注視し……そして小さく舌打ちした。
「バリアは健在です~、おのれ~!!」
 悔しそうな表情のリィンであるが、バリア周囲で混乱をきたした不寝番たちの姿を確認すると、急ぎ仲間の元へと向かう。
「急ぎ撤退しましょう」
 立ち止まりバリアの方に振り返ったイノリの背中にロベリアが声をかけた。
「うん……ボクたちの力が足りなかったのかな?」
「そんなはずはありません。それに生きて帰る事が出来れば次があります」
 その通りだろう。ケルベロスたちは人事を尽くしたのだ。
 運が向かずバリアの破壊には至らなかったが次に繋ぐ一撃を刻み込んだのは確かだ。
 と、バリアの周囲を不可視性のガスが覆っていくのが見えた。
 仲間たちが『バイオガス』を使用したのだ。
「本来の使い方じゃないからな。気休め程度の効果しかないだろうけど、急ぐぞ!」
 ガスの中から姿を現したヒノトにロベリアとイノリが頷いた。


 麓に向かいケルベロスたちは木々の立ち茂った森の中を進んでいた。
 『隠された森の小道』により森を迂回する事なく突き進む事が出来たのだ。
 と、何かに気づいたレッドレークの足が凍りついたように止まった。
 その直後、空から声が。
「何処のデウスエクスの襲撃かと思えばよもやケルベロスによるものとは。流石に想像だにしておりませんでしたぞ」
 見上げればそこに梟のような大きな瞳を持ったビルシャナ――不寝番がいた。
「やはり一筋縄ではいかんか」
 清士朗が腰の刀の柄に手をかける。
 すると不寝番は音も無くケルベロスの前へと降り立ち、グルリと首を90度捻ってみせた。
「魂は、夜の眠りによって救済される。我らは人間を殺める気などはありませぬ。それはケルベロスに対しても同じこと。グラディウスを差し出し、今後我らの邪魔をしないと誓って頂けるのであれば今回の襲撃は水に流しましょう」
「ナニふざけたことおっしゃってるんデスカネ? 交通事故を引き起こして人を殺める気満々ジャないの!」
 怒り心頭の麻里亞が喰ってかかるも不寝番に悪びれる様子は無い。
「余計なことをしていないで、あなたたちこそ夜は寝ていたらどう?」
「死を超越し、もはや生者に寄り添えぬ己らが齎す救済など――悪い冗談に過ぎる」
 一歩前へ出る千歳と清士朗。
「グラディウスは渡せないよ。これは虐げられた人々の牙なのだから」
「唐揚げのくせに説教とかマジ生意気なのです~!!」
 イノリとリィンも不寝番へと敵意を向ける。
 一方の不寝番はそんなケルベロスたちを大きな眼で見つめ返すのみだ。
「まったく……訳が分かりませんな」
 そう呟いた不寝番の言葉は本心からのものだろう。
 本気でケルベロスたちの行動が理解できないのだ。
「オイ――」
 レッドレークが声を掛けると、射すくめるような大きな瞳がこちらへと向く。
 その途端、ゾクリと凍りつくような恐怖がレッドレークの胸に蘇った。
 口が、喉が、手が、足が、動かない。次の言葉が続かない。
 と、仲間たちがこちらを見ている事にレッドレークは気づいた。
 すると、身体を支配していた恐怖が波のように引いていくではないか。
「残念だか日が高いぞ。お得意の教義も太陽の下では白々しさしか感じないな」
 レッドレークの口元に不敵な笑みが浮かんだ。


「仕方ありません。永遠の眠りについてもらうことにしましょう」
 不寝番が翼を翻すと凍りつくような冷たい風が吹き荒れていった。
 その風を突き抜けて姿を現すヒノトと鈴。
 鈴の酒樽のような身体から飛び出た酒瓶がミサイルのように飛び出し不寝番の身体を撃ちつけると、接近したヒノトが杖を不寝番の肩口に叩きつける。
 舞い散る羽毛に確かな手応えを感じたヒノトが声を上げた。
「コイツの弱点。清士朗の予測通りだぜ!」
 これまでの戦いの記録から、ヒノトをはじめ今回の個体も斬撃が弱点なのではとヤマを張っていた仲間は多かった。
 たまらず距離を取ろうとする不寝番。それを見たレッドレークが赤に染まった農業用レッキー『赤熊手』を地面へと打ち据える。
「逃がさん――『YIELD-FIELD:E(イールド・フィールド・エッジアース)』」
 地中を伝わった衝撃が敵の足元で爆ぜ、地面から突き出た石巖の刃が動きを止めた。
「穿て! 『ランスチャージ』」
 そこに上空から急降下したロベリアによるランス突撃が炸裂した。


「回復はボクに任せて、この焼鳥を速やかに倒しちゃってくださいです~!」
 リィンの癒しの光が仲間たちへと降り注いでいった。
「助かりマスよ! 増援が来る前に倒して逃げちゃおう!」
 麻里亞が召喚した氷槍の騎兵が不寝番へと向かっていく。
 この戦いに勝つ事が目的ではなく素早く撤退する事が目的なのだ。
 戦闘に時間をかけてはならないという意識は仲間全員が共有していた。
「マン号、やっちゃうのです~!」
「アカ、いくぜ!」
「鈴もしっかりね」
 仲間たちが相棒のサーヴァントやファミリアと息のあった連携で攻撃をしかけいく。
「ラダ、ラグ……お家で良い子にしてるかなぁ?」
 麻里亞が置いてきたフェレットのファミリアの事を思い出し寂しそうな顔を見せた。
「どうした?」
「な、なんでもありマセンヨ!」
 清士朗に声を掛けられ慌てて気を引き締める。
「そうか――罷り通る!」
 仲間の攻撃に乗じて不寝番へと接近した清士朗が刃を一閃。
 仲間に紛れ敵の反撃をやり過ごし離脱すると、再び接近し一閃。そして離脱。
「戦場に美も醜も無し――我が流儀は戦場にて磨がれし技なれば」
 正々堂々とは程遠い遊撃の剣を繰り出してみせる。
「あの時とは立場も違うが、形成逆転だな!」
 ニヤリと笑って『赤熊手』を振り下ろすレッドレーク。
 多勢に無勢で不寝番を翻弄していくケルベロスの姿がそこにあった。


「あと少しでしょうか」
 ロベリアが槍と盾を構え小さく呟く。
 その視線の先には青い羽毛の所々に血を滲ませた不寝番がいた。
 と、木々の茂みから飛び出してきたイノリの一撃を不寝番は両翼で受け止める。
「ボクたちはお前たちを駆逐する。いつか、必ず!」
「黙らっしゃい!」
 不寝番の凍りついた両目が赤い光を放つと、イノリの足元が凍りついていった。
 そして地面に張りつけられたイノリを渾身の力で吹き飛ばす。
 さらに茂みの中へと消えたイノリに追撃を入れるべく距離を詰める。
「!? どこに消えました?」
 地面に転がっていると思ったイノリの姿はそこになかった。
「ガアア、グルルル!」
 頭上からの唸り声。
 木の上から現れたイノリが、不寝番へとのし掛かり、その爪を首元に突き立てる。
「『フェルカエンテクス』!」
「『飴色幻想曲(アメイロファンタジア)』」
 ヒノトの炎弾と千歳の弾丸が飛来すると、身を翻し飛び退るイノリ。
 直後盛大な爆発が巻き起こった。
「ヌォォオ!」
 爆炎の中から姿を現した不寝番がヒノトに襲いかかるもすんでの所で鈴が割って入る。千歳の目には鈴がいつもより張り切っているように見えた。
(「ヒノトの事をかわいい弟とでも思ってるのかしら?」)
「クッ……」
 不寝番がチラリと天を仰ぎ見る。
 その時、フワリと力なく接近した清士朗が、守りの構えさえも取れず呆然と立ち尽くした敵を容赦なく打ち据えていく。
「照りもせず、曇りもはてぬ、春の夜の、おぼろ月夜に、しく物ぞなき』
 清士朗が地面に転がる不寝番を虚ろな瞳で見下ろす。
「俺様たちの勝ちだな。せめてその死体くらいは大地の役に立つがよい」
 大きく目を見開いた不寝番にレッドレークの一撃が振り下ろされた。


「全員無事に帰ってこれたー、ヤッター!」
 山の麓へとたどり着き歓声をあげた麻里亞に清士朗がホッと息を吐く。
「ふぇ~、お腹一杯唐揚げが食べたいなのです~」
 マン号の背中におぶさったリィンのお腹が盛大に鳴る。
「お疲れ様、ヒノ……」
 ヒノトを見た千歳が何かに気付きヒノトの眼前に顔を近づける。
「いつの間にか抜かされていたのね」
 千歳が手で自分の身長を示してみせる。それはヒノトの頭にぶつかった。
「本当だ! ヘヘッ」
 得意そうなヒノトに千歳は思う。
 まだ子どもだと思っていたが、やがては心身共に自分を追い抜く日が来るのだろう。
「……」
 イノリが鳳凰三山へと振り返る。
 鳳凰三山のうちのひとつ、地蔵岳の山頂は鳥のくちばしのようにも見える。
 その地蔵岳をイノリはじっと見ていた。
「大丈夫、次があります」
 ロベリアの声に振り向いたイノリが頷く。
「種は撒いた。種はいつか芽吹き、やがて実る」
 そのいつかは近い将来必ずくる。
 レッドレークはそう確信していた。
 彼の周りには――頼もしい仲間たちがいるのたから。

作者:さわま 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。