クリスマスを終え、年の瀬が迫って来た頃。
ケルベロス達をヘリポートで出迎えた静生・久穏は、時節の挨拶もそこそこに、依頼について語り始めた。
「クリスマスに出現したゴッドサンタの撃破によって入手された『グラディウス』ですが、この使用方法が判明しました」
この発言には、ケルベロス達も僅かではあるが騒めきを漏らしてしまう。それが収まるのを待ってから、久穏は説明を続けた。
「グラディウスは通常の武器のような使用は出来ません。ですが、魔空回廊を攻撃して破壊できるという特性を有しています」
長さ70cm程度の『光る小剣型の兵器』であるグラディウスは、時間経過によって消失しない固定型の魔空回廊を破壊することが可能である。
現在日本各地の『ミッション』の拠点となっている『強襲型魔空回廊』を破壊するという使用方法が有効であり、デウスエクスの地球侵攻に大打撃を与えられるだろう。
「グラディウスは一度使用すると、グラビティ・チェインを吸収して再使用可能状態になるまでかなりの時間を要するようです。ですが、今回入手されたグラディウスは『すぐに使用可能な物』が多数あり、それを使用して一気にミッション地域を解放する『ミッション破壊作戦』を実行できるのです」
このグラディウスを利用してのミッション地域開放を実行し、デウスエクスからその地を奪還する。それが今回の依頼であった。
「複数存在するミッション地域を攻撃するかは、皆さんの判断にお任せします。作戦の内容を考慮し決定してください」
久穏が説明する作戦の具体的な内容は、『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』であった。
これは強襲型魔空回廊がミッション地域の中枢であり、通常の方法ではそこに辿り着くのが困難であるためだ。
「強襲型魔空回廊の周囲は半径30mのドーム型バリアで囲われています。このバリアにグラディウスを接触させることで攻撃となりますので、高空からの降下で破壊できるでしょう」
8名のケルベロスがグラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用し、強襲型魔空回廊に攻撃を集中すれば、一度の降下作戦で強襲型魔空回廊を破壊に至る見込みすらある。
もし破壊できずとも、ダメージは蓄積するため最大でも10回程度の降下作戦で強襲型魔空回廊を撃破できるはずだ。
「強襲型魔空回廊の周囲には、強力な護衛戦力が配備されています。ですが、高高度からの降下攻撃を防ぐことはできません」
グラディウスは攻撃の際に雷光と爆炎を発生させる。この雷光と爆炎はグラディウス所持者以外を無差別に襲うため、強襲型魔空回廊を守る精鋭部隊であっても防ぐことは叶わない。
「バリアを攻撃し着地した後は、皆さんはグラディウスの雷光と爆炎を目隠しとして利用し、速やかにその場を離脱し撤退してください。貴重なグラディウスを持ち帰ることも、この作戦の重要な目的ですから」
この点にはくれぐれも注意してもらいたいと、久穏は念を押す。それは、ケルベロス達の無事の帰還を願う意味も込めているからであった。
強襲型魔空回廊の護衛部隊は、グラディウスの雷光と爆炎によってある程度無力化するだろう。だが、完全な制圧という状況にはなりはしない。
つまり、帰還するにはどうしても強敵との戦闘は避けられないのだ。
「グラディウスの効果によって敵は混乱し、まともな連携は取れないはずです。迅速に目前の敵を撃破し、撤退してください」
もし時間が経ち脱出できないまま敵が態勢を立て直してしまったなら、降伏するか暴走して切り抜けるしかなくなるだろう。
いかに素早く行動するか。それが今回の作戦においては極めて重要な要素となる。
「現在、デウスエクスは着々と地球侵攻を進めています。その前線基地となっているミッション地域を、何としても解放してください」
ケルベロスに重責を託す久穏だが、最も強い気持ちを込めて伝えるのは、強襲型魔空回廊の破壊ではない。
「敵地奥深くに挑む作戦です。くれぐれも、全員で生還してください」
ケルベロスを送り出すことしか出来ない久穏にとって、それは心からの願いであった。
参加者 | |
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メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015) |
不知火・梓(酔虎・e00528) |
ウィセン・ジィゲルト(不死降ろし・e00635) |
小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138) |
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623) |
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) |
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023) |
牧野・春(不死を振るわす者・e22103) |
●降下
寒い冬の空気がさらに冷たく凍えるような高度を、一機のヘリオンが航行している。その眼下には、地球上でありながら人類の領域ではなくなった地域が見える。
神奈川県相模原市に位置するその場所は、今ではデウスエクスの一種である死神の前線基地とも言うべき強襲型魔空回廊と化していた。
間もなくその区域を通過するという状況で、ヘリオン側面の搭乗口が開け放たれた。そして、躊躇いも無く8名の男女と小型の生物らしき存在が飛び降りる。
飛び降りたのはケルベロスとサーヴァント。落下によるダメージを度外視できる特性を活用した高高度奇襲作戦であった。
強襲型魔空回廊を破壊すべく、ケルベロス達は手にした小剣型兵器であるグラディウスに想いの丈を込める。
グラディウスが発揮する威力は、使い手の想いによって高まったグラビティに比例する。
ケルベロスにとってデウスエクスと戦う理由は人によって異なり、戦いに向ける想いもまた多種多様である。
激しく燃え盛る炎、或いは爆発のような怒りを抱く者がいる。
凍てつく氷のように、あらゆる物質の運動が停止する絶対零度の如き殺意を秘める者がいる。
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)と、その弟である神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)は、憤怒を言葉に紡いだ。
「死神は、お父さん、お母さんの仇っ! 命を冒涜し、弄び、母親に我が子を殺させるような真似すら……。こんな悲しい戦いをグリちゃんには……させない! させたくない!」
「ふざけんなっ! あいつが……グリゼルダが今どんな思いでこの地で生きてると思ってんだ。死んだ仲間を心配させたくねぇと寂しい気持ちを押し込んで、精一杯の笑顔で日々を楽しく生きようとしてんだぞ」
姉弟は亡き両親や今を生きる友を想い、それ故に死者の尊厳を穢す死神という存在への怒りを燃やしている。
この神奈川県相模原市の強襲型魔空回廊では、死神がヴァルキュリアを蘇生し戦わせていた。それを許さないと断じるのは、ウィセン・ジィゲルト(不死降ろし・e00635)と牧野・春(不死を振るわす者・e22103)のコンビだ。
「俺達の道は融和を願う道、不死を定命に降ろし共に歩む事を目指す者! 転じてそれは死神の策略を止め、悲しみの種を砕く事!」
「私達の道は共存を願う道、不死の心を震わせて奇跡を起こさんとする者! 転じてそれはヴァルキュリアの、彼女達による悲劇を起こさせない事!」
ウィセンと春は、デウスエクスという不死存在を定命たらしめ共存の道を模索するという理念を抱いている。それ故に、死神による歪んだ生は許容できない。
デウスエクスの中でも他種族に干渉する事の多い死神に対しては、特別な感情を有する者や、因縁を持つ者は多い。
死者の安らかな眠りを穢す死神の行為をメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は嫌っている。
「亡くなった人には安らかに眠っていて欲しい。相手がデウスエクスであったって同じ。本人の意思と関係なく都合よく動かしてるのは冒涜でしかないよ」
そうした干渉を受けた者は、ケルベロスの使命とは別に死神を敵視していた。
(「あいつを、エルヴァを復活させた死神……。腹に据えかねる存在だな。こんな感情が私の中にあるというのは、自分でも意外なものだ」)
かつて仲間の助力を得て打ち破った宿敵を死神によって蘇生され、仲間と共に二度も討った経験は、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)にとって新たな感情を芽吹かせていたようだ。同時に、死神への敵意も。
それぞれの思惑を熱く、或いは冷たく掲げるケルベロス達。その中で、不知火・梓(酔虎・e00528)は一風変わっている。
「俺ぁよぉ、基本的にゃ強ぇ奴と戦えりゃぁそれで満足だからなぁ。魂の叫びっつーのは苦手なんだよなぁ」
間もなく強襲型魔空回廊のバリアへ到達しようという状況でも、さしたる緊張もなく飄々とした風情である。だからと言ってグラビティが高まっていないという訳ではない。
梓にとってもまた、死神の死者を利用するというやり方は心の底から嫌悪する、許されざる手法なのだから。
ヘリオンから飛び降りて以降に高まり続けたグラビティは、強襲型魔空回廊を守るバリアに接触する直前、各々のケルベロスにとっての最高潮に達していた。
小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)の傷跡が通る目は、地上でこの地の防衛を担うデウスエクスを捉えていた。それらの中にはこちらの存在に気付いた者もいるようだが、既に手遅れであった。
●接触
「どれだけのヤツに、アイツに伝わるかは解らないケド、コレを見てるクソ死神共、よく覚えておきな」
死神に対する深い殺意を瞳に宿らせる里桜のグラディウスが、最初にバリアを斬り付けた。
「私は……アンタ達から全てを奪い、焼き尽くす復讐の猟犬だッ!!!」
そして、次々にグラディウスがバリアを砕かんと打ち付けられる。その様は、さながら地獄の猟犬が獲物を蹂躙せんと牙を食い込ませていくかのようだ。
「地球から出てけっ! デウスエクスぅぅぅぅ!!」
「死神ぃっ! てめぇらは、ここで焼き尽くす! 絶対に許さねぇぞぉぉぉ!!!」
鈴と煉が、ほぼ同時に。
「さあ、今宵俺達の錬技を此処に刻もうか!!」
「さぁ、今宵私達の意思をこの剣をもって示さん!」
ウィセンと春も、同じタイミングで。
「全部は防げなくても、わたしの目の前くらいは止めるんだ」
「砕けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「叫ぶ代わりになぁ、この一刀に全ての剣気を乗せて、こいつを斬るのさぁ!」
メリルディ、ティーシャ、梓が、バリアにグラディウスを叩き込んだ。
同時にグラディウスからは見る者の目を灼くような雷光と爆炎が迸り、それらはグラディウスの所持者以外を襲う。この時この場では、魔空回廊の警備の任に就いていたデウスエクス達が、その標的となった。
雷光と爆炎によって着地直後に襲われる事なく態勢を整えたケルベロス達の視線が、前方に集中する。
果たして、魔空回廊を守るバリアは健在であった。
ケルベロス達のグラビティの高まりが不足していたのか、出来得る最高威力でもこの一度での破壊は不可能であったのか、そうした考察は今回が初めての試みである故に結論を導くことは出来ない。
破壊には至らなかったものの、今回はこれ以上の攻撃を仕掛ける事は出来ない。素早く意識を切り替え、ケルベロス達は予め打ち合わせていた通りの方角へと脱兎の如く駆け出した。
●夜葬華ノクス
敵地の中を走り抜けようとするケルベロス達の前に、1体の死神が立ちはだかった。黒衣の人魚のような姿の死神、夜葬華ノクスだ。
「こんな大胆な事をしておいて、そのまま逃げようなんてムシが良過ぎないかしら?」
夜の闇に光る三日月を思わせる短刀を構え、ノクスはケルベロスに襲い掛った。
ノクスが両手に携えた短刀から繰り出される連斬が、里桜の纏った武装ジャケットの緋色よりも鮮やかな血飛沫が舞わせる。
けれど、その負傷はノクスの想定よりも浅かった。
「ヌルいね。この程度じゃ、私の求める死合には全然足りないんだよ!」
ノクスが攻撃の態勢から戻る間を与えず、里桜の蹴りが急所を貫く。
敵の力量からすれば、この初手で誰かが倒れるという最悪のケースもあり得ただろう。それを凌いだという点では、戦闘の立ち上がりはケルベロスにとって悪くない展開だと言える。
「レンちゃん、みんなを守って! あ、でもあまり無理はしないでね」
あえて負傷した里桜の治療よりも、鈴は煉の守りを強化を行った。
「任せとけっ。俺が立ってる間は、誰もやらせやしないぜ!」
煉にとって、鈴の意図は言われるまでもなく理解できている。地獄の炎弾を放ちはするが、それは牽制としての意味合いが強い。
姉が仲間を癒すように、煉は仲間を護る役割を己に課していた。
「鈴も言ってるけど、無茶は駄目よ。無理だと思ったら、みんなに頼っていいんだから」
前衛の仲間達の感覚をオウガ粒子で覚醒させるメリルディから見ると、煉の様子は気が逸り過ぎているように映ったのだろう。つい忠告が口から出たのは、メリルディにも弟がいるからなのかも知れない。
「若いってのはいいねぇ。……俺も年長者の威厳を見せるとするかな」
言葉の途中で銜えていた長楊枝を吐き捨た梓は、瞬時にノクスとの間合いを詰め虚の力を纏わせた刃で斬り付ける。その出で立ちには先刻までの気の抜けた風情は消えており、まるで人が変わったかのようですらある。
「私を見ているような、別の何かを見ているような。失礼な連中ね、ケルベロス」
目の前のケルベロスの大半が、自分ではなく死神という種族や、別の死神を視ているのだと、ノクスは感じ取っていた。対面し命の遣り取りをしていながらそれでは、少し癪に触るというものだ。
「その通りだ。私にとって、死神で一絡げだからな。これが義憤に駆られてか八つ当たりかは自分でも判然としないが、不運だったと思うんだな」
竜砲弾を発射するティーシャとノクスという死神の間には、因縁などは無いし必要も無い。ただ、死神というだけで憂さ晴らしの対象として十分なのだから。
「当然だ。俺達にとって、お前は通過点でしかないからな」
ウィセンが撃った黒色の魔力弾を躱そうと身を翻すノクスだが、間に合わない。
「小癪な……」
忌々しいと漏らすノクスは、次の瞬間には予想外の事態に目を見開くことになった。
「そら、追撃だ」
「そうですとも! どこまでも合わせて、響かせていきます!」
次に攻撃が来るとすれば、そこから以外であったはずだ。だがノクスの想定に反して、次撃は身体を逸らしたウィセンの後方からであった。
「刃を持って咲かせるべきは血の華でなくその者の業で有れ。それが粒微子塵の刻み方なり」
僅かな隙間を縫って接近した春は、仲間が刻み付けたノクスの傷を狙って刃を突き立て切り開く。
ほんの少しでもウィセンに春を気にする素振りがあれば、ノクスはこの連携を看破していただろう。それ以前に、メリルディの支援とティーシャの攻撃の影響がなければ、この連撃がどちらも命中という結果は得られなかった可能性が高い。
「野良犬でも群れれば厄介なものね」
ケルベロスへ侮蔑の言葉を吐き捨てるノクスだが、それこそがまさに実力で遥かに勝る自身の優位を覆す要素であると気付いていた。
●脱出
強大な力を持つデウスエクスに対抗する上で、ケルベロスにとって互いの連携は戦闘の基本であると同時に最大最高の奥義であると言えるだろう。
今まさに、強力な死神である夜葬華ノクスはケルベロスの連携によって斃れようとしていた。
「わたしには、追って、いつか辿りつかなければならない相手がいるの。ここで立ち止まることはできないわ」
メリルディが紡いだ半透明の御業が、ノクスを縛る。
ノクスはさらに追い詰められたものの、ケルベロス達にも余裕はない。この戦いに費やせる時間は、もうほとんど残されてはいないのだから。
「そろそろ通してもらいます」
すかさず混沌なる緑色の粘菌をノクスに侵食させる春は、相棒へと呼び掛けた。
「この間を逃す程、盟友は弱くはない。ですよね?」
「あぁ! これ位で止まる程、俺達を繋ぐモンは緩くねぇぞ!」
春からウィセンの連撃を予想していたノクスは、うんざりとした心境でそれを受ける。分かっていながら対処できないというのは、業腹なものだ。
「しぶといな」
だが、目論見通りに鮮やかな連携を決めたウィセンの表情も明るくはない。後方では、既にグラディウスの雷光と爆炎による混乱は収まりつつあるのだ。
「リューちゃん、頑張って。ズィフェルスちゃん、もう少しの我慢です」
煉やウィセン同様に、ここまで身を呈して仲間達を護ってくれたウィセンのボクスドラゴンを癒してあげたいという感情を抑え込み、鈴は自身のボクスドラゴンと共に攻勢に転じた。そうしなければ、間に合わない。
「ヴァルキュリアの死を辱めるてめぇは逃がさねぇっ! こいつで……燃え尽きろぉぉっ!!」
炎獄の魔獣の如き、燃え盛る蒼い地獄の炎が全身を覆った煉の絶え間ない乱撃。それでもなお、ノクスは倒れなかった。
「苛烈な魂ね。貴方達の魂を掬い上げるのが、楽しみでしょうがないわ」
ケルベロスの連携を崩す術は無く、敗北を確信したノクスは自らを癒しこの戦いを長引かせることに専念していた。独力で勝てないのなら、援軍を待てばいいのだと。
「冷静だな。お前が執り得る最善手に違いない。もっとも、己の最期を惨めなものにするだけだがな」
ティーシャの飛び蹴りが炸裂し、美しく整ったノクスの顔貌が歪む。けれど、歪んでなおノクスの表情は無駄な足掻きと侮蔑する嘲笑を崩さない。
「思ったよりいいツラしてるね。それじゃ根競べといこうか。地獄の焔を引き連れし鬼。我が怨敵を灰燼と化せ。――――――――ッ!!!」
里桜が召喚した紅蓮の焔を纏う鬼のエネルギー体は、ノクスのみならず里桜自身を焼き尽くすように荒れ狂う。その焔に包まれながら、里桜は絶叫のような咆哮を上げ、ノクスを殴打し続けた。
里桜が全力を尽くし焔が霧散した後に、黒衣の死神はなおも膝を折ってはいなかった。
耐え切ったという安堵が、ノクスの全身を弛緩させる。
「切り結ぶ、太刀の下こそ、地獄なれ。踏み込みゆかば、後は極楽。ってなぁ。つっても、こんなとこで死ぬつもりは無ぇのさ」
戦いの苦痛や流血でテンションが上がっている梓は、それでも的確に状況を把握していた。絶妙なタイミングで繰り出された卓越した技量による一撃は、ノクスに己の絶命を悟らせすらしなかった。
梓が握る運命と銘を与えられた黝い刀が、ケルベロス達の運命を切り開いたのだ。
「?」
傾く視界に疑念を抱いたノクスの思考はそこで途切れ、口からは一音たりとも発せず微かな吐息が零れただけだった。
弛緩したノクスの身体は地面に崩れ落ち、首は胴と離れ転がって行く。
勝利を掴んだケルベロス達だが、その喜びに喝采する暇はない。後方からは、敵デウスエクスが接近してくる気配が感じられる。
ほぼ全員が軽視できない傷を負い、春に至っては回復に数日を要する深刻な状態の一歩手前だが、自力で走るくらいの余力はある。
誰1人として欠けることなく帰還するべく、ケルベロス達は駆け出した。
今回での魔空回廊破壊こそ達成できなかったものの、この戦果は誇るに足るものだ。
神奈川県相模原市のこの地域は、近い将来に人類の手に取り戻されるだろう。
作者:流水清風 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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