ヘリポートに集まったケルベロス達を前にして、玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)はゴッドサンタ撃破の労をねぎらった。
「キミ達のおかげで、『血のクリスマス事件』は完全に阻止することができたよ。それと、ゴッドサンタを倒して入手した『グラディウス』の使い方も判明したよ」
『グラディウス』は長さ70cm程の『光る小剣型の兵器』だが、通常の武器としては使用できない。その代わり、魔空回廊を攻撃して破壊することが可能だという。
通常の魔空回廊は時間が経てば消失する為、グラディウスで破壊するまでもない。一方で固定型の魔空回廊には、グラディウスでの破壊が大変有効的になりそうだ。
特に、現在日本各地の『ミッション』の拠点となっている、『強襲型魔空回廊』を破壊すれば、デウスエクスの地上侵攻に大きな楔を打ち込むことができるだろう。
グラデイウスは一度その力を用いると、グラビティ・チェインの吸収が必要となる。その為、再使用するにはかなりの時間が掛かるようだが、今回手に入れたグラディウスには『すぐに使用可能な物』が多数ある。
そこでそれらを使い、一気にミッション地域を解放する『ミッション破壊作戦』を行なうのが、今回の目的となる。
「キミ達にはグラディウスの力を使用してもらい、ミッション地域をデウスエクスの手から取り戻してほしいんだ」
ただしどの場所のミッションを攻撃するかは、皆の判断に委ねられることになる。だから説明をよく確認した上で決断してほしいと、シュリは念を押すように注釈を付ける。
強襲型魔空回廊がある場所は、ミッション地域の中枢だ。通常の方法で辿り着くのは困難で、場合によっては、敵に貴重なグラディウスを奪われる危険も想定される。
そこで今回は『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』を行なうことになる。
魔空回廊の周囲は、半径30mのドーム型バリアで囲まれている。しかしグラディウスがあればバリアを通過できる為、高空からの降下でも、攻撃は充分可能という計算だ。
八人のケルベロスが、グラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用して、強襲型魔空回廊に攻撃を集中させる。そうすれば、一撃で強襲型魔空回廊を破壊することも不可能ではない。
もし一回の降下作戦で破壊し切れなかった場合でも、ダメージは蓄積し続ける。そうして作戦を繰り返し、最大でも10回程度の降下作戦を行えば、破壊はほぼ確実にできる。
「そしてグラディウスだけど、攻撃時には雷光と爆炎が発生する仕組みになってるよ」
この雷光と爆炎は、グラディウスの所持者以外に無差別に襲い掛かる性質がある。強襲型魔空回廊の周囲には、強力な護衛戦力が存在するが、その精鋭部隊であってもグラディウスの攻撃は防げない。
高空からの降下で魔空回廊を直接襲撃し、グラディウスの雷光と爆炎によって発生するスモークを利用して、混乱に乗じて撤退を行なうのが作戦の概要である。それと貴重な武器であるグラディウスを持ち帰ることも、作戦の重要な目的だ。
「魔空回廊の護衛部隊は、グラディウスの攻撃の余波である程度無力化できるけど、全てというわけにはいかないんだ」
つまり、残った強敵との戦闘は避けられない。その強敵を倒して撤退を成功させるまでが今回の作戦となる。
幸いにして、混乱した敵が連携を図って攻撃してくることはない。戦闘では目の前の強敵だけに専念し、素早く撃破さえすれば問題ない。
出現する敵は、攻撃するミッション地域毎に特色がある。その点も考慮して、攻撃場所を選ぶ時の参考にすると良いだろう。
デウスエクス達は今も尚、ミッション地域を増やし続けている。こうした敵の侵攻を食い止めるには、ケルベロス達の強い気持ちが必要不可欠だ。
「キミ達の意思が強ければ、グラディウスもきっとそれに応えてくれると思うんだ。重要な任務を任せることになるけど……」
――それでも、必ず乗り越えられると信じてるから。
シュリは真剣な眼差しでケルベロス達を見つめ、全てを彼等に託すのだった。
参加者 | |
---|---|
暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443) |
ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306) |
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893) |
茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258) |
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313) |
ティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392) |
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756) |
ミカ・ミソギ(未祓・e24420) |
●剣に捧ぐ想い
魔空回廊破壊の命を受け、全国各地に飛び立ったケルベロス達。その拠点の一つである、北アルプスは五龍嶽を襲撃せんと、八人の番犬達がヘリオン上空から見下ろしていた。
薄らと雪化粧に覆われた山の景色は、正に壮観だった。しかし山頂には、この美しい景観には不似合いな、禍々しく黒い塔が聳え立っている。
ドラグナーに占拠されたこの地を解放すべく、魔空回廊を砕く光の剣を握り締め、番犬達が塔を目指してヘリオンから急降下する。
「化猫任侠黒斑一家、家長・茶斑三毛乃。このシマ、返させて頂きやすぜ」
先陣を切って颯爽と飛び降りた女侠、茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258)がグラディウスを腰溜めに構えて狙いを定め、魔空回廊目掛けて垂直に落下する。
剣に込めた想いは彼女の分だけではない。三毛乃の心に常にあるのは、故人となった男性の魂だ。合わせて二人分の念を背負い、想いを魔空回廊へとぶつけるのであった。
「行きやすぜ……カチコミじゃオラァ!!」
三毛乃の気合に呼応するように、グラディウスから雷光と爆炎が発生し、確かな手応えを感じて魔空回廊に突き刺さる。襲撃を待ち伏せていた敵達は、グラディウスの攻撃に巻き込まれて次々に無力化されていく。
「……掛け替えの無い文化を、そこに息づく人を、また蹂躙するつもりですか」
歴史ある文化を破壊して、人々の命を弄ぶ。ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)がドラグナー達の非道な所業に憤怒を抱く。
魔空回廊がこの地に留まり続けるということは、半永久的に惨劇が繰り返されてしまう。そのような事態を食い止める為、ビスマスが光の剣に想いを乗せる。
「グラディウス……遍く命と、命が築いた物を護る為の力を貸して」
するとグラディウスは眩く光り輝いて、ビスマスは迷いのない一振りを魔空回廊に打ち込んだ。更に暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)が、気炎を上げながら剣を振るう。
「僕の、一番強い気持ち……使いこなしてみせる!」
輝凛の心の中に燻る思い――ケルベロスになりたての頃、一人の女性を救えず自戒の念に囚われていた。
守れなかったもの、助けられなかった人、大切な人を奪われる悲しみ……それを防げない無力感に苛まれる自分に、嫌気が差していた。
しかし、心に負った痛みはいつまでも忘れない。二度とあんな涙は見たくないから。
「だから、もう誰も泣かせない! 泣かせるもんかぁぁっ!!」
これ以上、悲劇を繰り返させない決意を叫び、輝凛が自身の全てを込めて回廊を砕く。
「私は願う。奪われし幾億の死に報いて、神々を屠らんと――」
呟くように意志を込めるのは、ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)。
「私は誓う。蠍座の騎士の名に於いて、遍く命を護らんと――」
ドローテアの言葉は静かだが、秘めた覚悟を示さんとする、気高い強さが備わっていた。
「我が意に応えよ――グラディウス」
呼び掛けに応えるように、光の剣が蒼く煌めいた。淑女らしさを漂わせ、荘厳な光を纏った剣を手に、ドローテアが力を込めて刃を突き立てる。
「グラディウスお願い……想いに応えて。守りたいの、みんなを……もう失うのは嫌!」
ティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392)は思い詰めたような真剣な表情で、携えたグラディウスに言葉を掛ける。
人々が傷付き苦しむことのないように。平穏な日常を守るべく、剣に願いを捧げて振り下ろす。
「もう絶対に大切なものを失わない、失わせないためにっ……!!」
ティスキィの一撃が、回廊に更なる傷を刻み込む。今ここで魔空回廊を確実に破壊する為に、ケルベロス達は想いを一つに合わせて、グラディウスによる攻撃を集中させる。
コギトエルゴスムとして永く封印されていたミカ・ミソギ(未祓・e24420)には、貫く意志も徹す願いも、まだ形にできる程持ち合わせていなかった。
だがそんな自分にあるのは、叫ぶことのみだとミカは割り切って。理屈では説明できない魂の衝動が、それを名付ける明日を、未来を寄越せと気合を滾らせる。
「思いが力になるのなら、今の在り方、この未形でいく。応えてみせろ、グラディウス!」
未来を切り拓かんとするミカの攻撃は、塔の中から現れた竜牙兵達を纏めて吹き飛ばす。
今までドラグナー達に蹂躙されてきた大地。その支配から救うべく、渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が渾身の想いと力をグラディウスに注ぐ。
「輝け、俺のグラビティ!」
この地に希望の光を齎さんとする数汰の一撃が、回廊への傷を大きく重ねて斬り裂いた。
「僕は全部失った。僕を救ってくれた人も、彼女との思い出も」
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)は抑揚のない口調で囁くように、グラディウスに向けて語りかけていた。
「だから、彼女が最後にくれた『約束』だけは失くさない。失くしたくない」
表情には出さずとも、ウェインの心の中は静かな闘志が燃えている。心を知らなかった自分に、感情を与えてくれた大切な人。別れの際に交わした約束を果たすのが、彼の戦う意義だった。
「『人の夢を守る』――僕の命も。グラディウス、君も、その為に使う」
グラディウスがウェインの魂に反応し、強烈な光を放つ。この攻撃で決着を付けるべく、ウェインが最大限に高めたグラビティを回廊に叩き込む。
八人の攻撃によって雷光と爆炎が激しく生じ、黒い煙が巻き起こって周囲を包み込む。
「やった、か……?」
手応えの感触はある。ケルベロス達は破壊に成功したか確認しようと、魔空回廊に目を凝らしてみるが――回廊は未だ存在し、惜しくも消滅させるまでには至っていなかった。
●吼え猛る金色の竜
「……よもやグラディウスで魔空回廊を破壊しようとは。だが残念だったな、ケルベロス。ここからは生かして帰さんぞ!!」
ケルベロス達の逃走を阻もうと、ドラグナーが行く手を遮るように立ち塞がった。ドラグナーの身体は大きく膨らみ、金色に輝く竜の姿に変形してケルベロス達を威圧する。
「上等じゃいワレ、土手っ腹にどデカい風穴開けてやりまさァ!」
三毛乃が威勢良く啖呵を切って、黄金竜と化したゴールドグリードを迎え撃つ。大砲に変化させた竜の槌を軽々と取り回し、突貫して強引に捻じ込んで、至近距離から躊躇うことなく竜砲弾を撃ち込んだ。
「確かに破壊まではできなかったけど、僕達の想いは届けられたから。後はお前を倒して、ここから脱出するだけだ!」
回廊を完全には打ち砕けなかったが、それでもダメージは蓄積し続ける。輝凛は己を奮い立たせるように、青き暁天の想星剣に獅子座の力を纏わせて、超重力の一撃を見舞わせる。
「フフッ……輝凛くんも随分立派になったものね。アタシも若い子達に負けてられないワ」
ドローテアは騎士団の同僚たる少年の、溢れんばかりの躍動感を眩しく感じて微笑んだ。と同時にそれは対抗心となり、年配者の威厳を誇示するように、熟達した剣技を振るって黄金竜を押し退ける。
「わたしだって負けません。さあクロガさん、わたし達も行きますよ」
ビスマスが杖を掲げると、手にした杖がサングラスをした黒い針鼠に姿を変えて、黄金竜目掛けて勇猛果敢に体当たりする。
「おのれ小賢しい真似を! 我が力、思い知るが良い!」
ゴールドグリードが雄叫びを上げながら、目も眩むような閃光を全身から放つ。閃光を直視したケルベロス達は視界を奪われて、敵の姿を見失ってしまう。
「そうはさせない! この戦い、私が全力で癒すよ!」
この力で守れるものは、全て零さず守り抜く。ティスキィが強く念じて加護を齎す星座を描き、仲間にすかさず治癒を施した。
「有難う、ティスキィ。ここで人生終わらせたくないからね。悪いけど、通してもらうよ」
ミカにとって地球の一員として、今まで過ごした月日はまだ短いものの。人類として重ねた時間はとても鮮烈で。識り得た世界は狭くとも、己の生を全うするには十分値する。
だからこそ、これから生きる未来を守ろうと。ミカの迸る闘気が火花のように弾け飛び、紫電の如き速度で雷纏いし拳を繰り出した。
「お前は確かに強い。だが俺達は、お前より強大な相手と幾度も戦ってきたんだ」
数汰は敵の実力を認める半面、自分達には苦しい戦いを乗り越えてきた自負がある。そうした揺るがぬ自信が数汰の気迫を漲らせ、斬り裂く刃は黄金竜の生命力を啜り喰らう。
「大切なものを失くすのは、僕だけで十分だ。往くぞ、偽りの神――懺悔の時間だ」
ウェインが一瞬だけ昂る感情を口にして。しかしすぐに普段の淡々とした口調に戻って、黄金竜と真っ向から対峙した。発する言葉は、これから命を殺める自分への戒めであり。
チェーンソー剣が唸り声を上げ、敵の装甲を物ともせずに、一片の慈悲もなく黄金竜の血肉を貪るように斬り刻む。
ケルベロス達の士気は作戦決行時から些かも衰えず。グラディウスを持ち帰り、必ず生還するという強靭な意思が、強化されたゴールドグリードをも圧倒していた。
「クッ、忌々しい番犬共が無駄な足掻きを!」
ゴールドグリードが獰猛な牙を剥き出して襲い掛かるが、三毛乃が身を挺して盾となり、被害を最小限に食い止める。
「この程度の傷なんざ、掠り傷でございやす。仲間には、指一本たりとも触れさせやせん」
牙が身体に食い込み滴り落ちる血も構わずに、三毛乃は凛然として眉一つ動かさず。右眼に灯した紅蓮の炎で、討つべき敵を射殺すように睨め付ける。
「オウガ粒子とご当地の気を携えて、我が身は『蒼沿の鬼』とならん……」
ボクスドラゴンのナメビスからご当地の力を取り込んで、ビスマスの纏った鎧装が蒼魚の如き砲塔と化す。そして力を昂らせると、砲口に光の粒子が集束されていく。
「蒼沿の鬼は穿ち吼えん……大切な絆を奪われんが為にっ!」
全速力で間合いを詰めて、ビスマスが蒼き巨砲を黄金竜に穿ち込む。その瞬間、凝縮された気の塊が射出され、物理と気の二重の一撃が黄金竜に大打撃を与えるのだった。
●激闘からの帰還
火力重視の布陣で臨んだケルベロス達の勢いと。強敵を前にしても尚、怯むことなく立ち向かう信念が、戦いの流れを引き寄せる。
「チェイン接続開始。術式回路オールリンク。封印魔術式、二番から十五番まで解放――」
ドローテアが幾重にも織り込まれた術式を起動させ、蠍座の星剣に魔力が注がれていく。ドローテアにとって奥義とも言える剣の技。秘める決意は、かつて届かなかった相手への雪辱の為。
「いくワよ。喰らいなさい――秘剣、“蠍の刻印”!」
膨大な魔力を宿した剣は鋭く研ぎ澄まされて、威力を増幅させた刺突の一撃が、赤い軌跡を描いて黄金竜の心窩を深々と貫いた。
「グッ……!? ガアアァァァッ!!」
痛手を負って苦痛に悶え、堪え切れず絶叫するゴールドグリード。ここが好機だと、ケルベロス達は一気に畳み掛けるべく攻勢を掛ける。
「振り切る、光閃の先へ――」
制御していた内なる力、ミカがその潜在能力を解き放つ。ミカの全身から溢れる光。それは肉体のみならず。精神や記憶など、彼を構成する全てを限界まで変換させて、光の波動となって黄金竜に撃ち当たる。
もう後が無いゴールドグリードは、形振り構わず荒れ狂うが侭に力を振り翳す。番犬達を死の淵に引き摺り込もうと、凶悪な顎門が咆哮と共に迫り来る。だがこの捨て身の攻撃を、輝凛が正面から捉えて身体を張って受け止めた。
「僕には見えてる! 聞こえてる! この輝きを、届かせる!」
輝凛の身体が金色の光を帯びていく。体内に宿した力を一つに紡ぎ、極限まで上昇させた膂力で黄金竜を締め上げて。全身から放たれる閃光が、牙の如く体躯を抉って引き裂いた。
「――花の想い、届けるから。舞うならどうか、全力で」
ティスキィが祈りを捧げるように、癒しの力を行使する。花を模した魔法陣が虚空に出現し、紅い光の花弁が舞い降りて。懐かしい温もりと優しい香りが仲間を包み、背中を後押しするように、眠れる戦意を呼び醒まさせる。
「Overcharge――Libra」
マフラーで隠したウェインの口から、電子の声が小さく響く。両手を突き出すと広げた掌が震動し、それは大気に伝播し、衝撃波となって黄金竜に圧し掛かる。
「その身に、終わりの始まりを――」
ウェインが二つの掌を重ね合わせると、重力の壁が黄金竜を押し潰し、瀕死の状態へと追い詰める。運命を載せた天秤は、ケルベロス達の勝利に向けて大きく傾いていく。
「これでお別れだ。貴様のまやかしの輝きでは、俺達の心まで奪えなかったということさ」
数汰が最後の言葉を宣告し、破滅を齎す負の魔力が掌の中から噴き上がる。生み出された無限の熱量は、絶対零度を超越して白い焔が渦を巻く。
「魂まで凍て付き、永劫に地獄の底で彷徨い続けろ――『氷屍雪魄(コキュートス)』!」
全てを静止させる無限獄。数汰が放った冷気は黄金竜を飲み込み、氷の柩に閉じ込めて――魂諸共打ち砕き、陽の光届かぬ冥府の底へと葬った。
「どうやら全員無事みたいね。誰も欠けることがなくて、良かったの……」
仲間の安否を確認し、ティスキィが安堵の溜め息を吐く。癒し手としての務めを果たせたのが何よりも嬉しかったのか、彼女の表情は、いつも以上に明るく綻んでいた。
しかし回廊が残存している現状においては、勝利の余韻に浸るのも束の間で。
「後はグラディウスを持ち帰るだけとなりやすか。敵の増援が来る前に、早くこの場を離脱いたしやしょう」
三毛乃が冷静な判断力で新たな敵を警戒し、早急の撤退を呼び掛ける。
「……回廊を破壊できなかったのは残念ですが。この地の文化を一時でも守れただけ、良しとしますか」
グラディウスを回収しながら立ち去る間際、ビスマスは屹立する漆黒の塔に目を向ける。
魔空回廊がある限り、ドラグナー達による支配は当面続く。だが最初の楔は打ち付けた。
自分達の役目は終わったが、後に向かう者達が成し遂げてくれればと。
八人の番犬達は、希望の光を灯す剣を握り締め――この地の解放を次に託して帰還した。
作者:朱乃天 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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