ミッション破壊作戦～魂の叫びを以って

■リプレイ

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　ヘリオン内にて、ケルベロス達にグラディウスが貸与された。
「はて、なかなか面白い機能をもったアイテムでありますなあこれ」
　フィーア・フリート（レプリカントのウィッチドクター・e00315）は、手にしたグラディウスをじっと眺める。
「グラディウス、まあ大事に使わせて貰うであります」
　各々、配られたグラディウスの感触を確かめながら頷く。
「今までにいろんなタイプのデウスエクスとやり合ってきたけど、まさかダンジョンを直接叩ける日が来るとはね……」
　音無・凪（片端のキツツキ・e16182）は、隣に座るガルフ・ウォールド（欠け耳の大犬・e16297）を見上げた。
「面白い、やってやろうじゃん？」
「そうか」
　背を丸めて座っていたガルフが頷く。
　彼は多くは語らない。だが、仲間は大切だと思うし、中でも凪は特に大切な存在だと思うし、万一の時は命を捨ててでも守り抜く覚悟だ。
「撤退条件を確認しよう」
　エフイー・ゼノ（希望と絶望を司る機人・e08092）の掛け声で、撤退の条件や退路、降下後の合流方法などが確認される。
「複数回ぶちかませば楽に壊せるかもしれねぇ。けど、待ってる側も襲ってる側も待ってはくれねぇ」
　そろそろ降下ポイントに到着する。
　陶・流石（撃鉄歯・e00001）が皆を促すように立ち上がった。
「なら、今回のチャンスに全部賭けて、勝負に勝ちにいくしかねぇよな」
「フィーアの宿敵もいるみたいだし頑張っていってみよう」
　ルヴィル・コールディ（黒翼の祓刀・e00824）もゆっくりと立ち上がる。
「まあアレとは昔の仲間とパーティーを組んだときに合ったのでありますが……」
　ま、過ぎた事でありますよと、フィーアは言った。
「Pensee……魔空回廊を破壊すればここの攻性植物達は撤退してくれるのでしょうか？」
　下から吹き上げてくる風を受けながら、シエナ・ジャルディニエ（攻性植物を愛する人形娘・e00858）が攻性植物のヴィオロンテに手を添える。
　彼女は攻性植物を愛している。ミッション依頼で討伐される攻性植物を減らす為にも、今回の依頼は必ず成功させねばならないと考えていた。
　結果的に討伐される攻性植物を減らせるなら、自身にとって価値のある事だと言う。
「ついたようでち」
　準備は出来たかと、パティ・ポップ（溝鼠行進曲・e11320）が皆を見る。
　グラディウスを手にしたケルベロス達が、それぞれ頷いて見せた。
「準備は良い様だ、行くぞ」
　エフイーが声をかけると、皆一斉にドアの縁に足をかけ、力を込めて飛び出した。

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「魂の叫びか～……頑張ってみるよ！」
　降下しながら、ルヴィルはグラディウスを構えた。
　想いが力になるのなら、と、気合を入れて息を吸い込む。
「いっくぞおおおおお！」
　頬に当たる風が、一層降下の勢いを感じさせた。
「帰ったら良いお酒飲むぞおおおおおおおおおおおお！！」
　酒、酒、酒だッ。
　帰ったら大好きなお酒を飲む、その思いの丈を、思い切り叫んだ。
「はて当機、基本くーるなのが売りでありますが……」
　フィーアも風に煽られながら、それでも一直線に降下していく。
　まあ因縁くらいはある。
　以前対峙していた際に仕留め切れておけば、貴重な仲間を失わずにすんだのだから。
「ここで、落とし前は付けさせて貰うであります」
　これまでのフィーアの苦労……もとい悔しさ的なあれだ。
　目標を定め、グラディウスを振りかぶる。
「Declaration！　あなた達を守る為にも壊させてもらうですの！」
　くるくると、ヴィオロンテと共に回りながら降下していたシエナも、グラディウスを構えた。
　風圧に負けそうになりながら、暴風の音に声を打ち消されそうになりながら、それでも。
「Je suis vraiment desole！！！！」
　シエナは、叫んだ。
　近くで、少し離れたところから、仲間の叫び声が聞こえる。
　エフイーも、同じく降下しながらグラディウスを握り締めた。
「これ以上、貴方達デウスエクスの侵略は許さん」
　数多くの人々と、戦争で亡くなった仲間の無念、ここで返す。
　地に引かれる感覚なのか、飛び出した勢いで加速しているのか、落下する力を全て乗せる気持ちでグラディウスを回廊に向けた。
「今ここで、消え去れ……永劫に！」
　エフイーの叫びが響く。
「前々からかなりきつかった覚えがあるでちから！！」
　色々邪魔なくせして、植物の分際で動くんじゃないと、パティも叫ぶ。
　回廊はもう目の前だ。
「ちょれにちても、最近の大阪の件も含めて植物に好き勝手ちゃちぇてたまるでちかなー！！」
　落ちて落ちて、グラディウスを持つ手を返し、また落ちる。
　パティは、自分が落ちていく先を真っ直ぐ見据えた。
「あたしにゃ帰ってやることがあるんだ、ダンジョンだか魔空回廊だか知ったことじゃねぇ」
　急降下しながら凪も叫んでいた。
「叩いて潰す、それだけだよ！」
　一緒に降下したガルフはどうなったのだろう。きっと、勢いをつけて落下しているはずだ。彼に良いところを見せようと、凪は気持ちを奮い立たせる。
「そこらじゅうに増えやがって、好き勝手やったしっぺ返しの覚悟は出来てんだろうなぁ！」
　力と叫びを込めて、グラディウスを振り上げた。
　攻性植物とは何度も戦ったと、思いを胸にガルフは落下する。
　辛夷も時計草も、散っていった姿を覚えてる。
（「誰かが大事にしてきた木や花を操って化物にして……、人間の隣で、綺麗に生きてたのに」）
　自然や虫が大好きだ。
　それを、攻性植物はいつも、いつも操って壊していく。
「ぅ、おおおお――ッ！！」
　ガルフは唸り、大きく咆哮を上げた。
　あんなのは、もう見たくない……！
　見たくないのだ！！
　ガルフの思いと叫びが力となってグラディウスに乗る。
　この辺は森と共にずっと歩んできたのだろうし、大切な場所を奪われたまま、ちょっと待ってろなどと言うわけにもいかないよなと、流石は思う。
　デウスエクスをぶっ倒すのはケルベロスの使命。
「なら全部背負って、力の限りぶん殴るだけだ」
　回廊に手が届く。
　きっと、仲間達も辿り着いただろう。
「あたしらでぶっ壊しちまおうぜ！」
　流石は気合と喝を入れて、グラディウスを叩き込んだ。

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　ケルベロス達の持つグラディウスが次々に回廊と接触する。
　このチャンスにかける流石の思いが、宿敵との落とし前をつけに来たフィーアが、出来る限りのことをすると思いの丈を叫んだルヴィルが、回廊にグラディウスを叩きつける。
　回廊にダメージが蓄積されていく。
　シエナはヴィオロンテ達と一緒に、エフイーは冷静に狙いを定めて、パティは気合十分に、グラディウスを繰り出した。
　着地しながら仲間を探す。
　皆はどうなったのだろうか。
　叩いて潰す、それだけだと凪がグラディウスを振るう。
　過去の依頼を思い出しながら、思いの丈を咆哮に乗せガルフも回廊にグラディウスをぶつけた。
　強襲型魔空回廊は――、崩れない。
「っ、崩しきれねぇか」
　流石が舌打ちをした。周辺に敵の影はない。グラディウスが発生させた雷光と爆炎のおかげか、聞いていた通り、魔空回廊の護衛部隊は混乱している様子だ。
　流石の近くに着地したのはエフイーだった。
「それでも、次に繋がるはずだ」
「まあ、そうだな。次ぎ行くぜ」
　二人は急いで体勢を立て直し、仲間達の元へと走った。
「こっちでち。念のためグラディウスを回収するでちよ」
　最初にパティと出会う。
「頼んだぞ。必ず持ち帰る」
　一人、二人と仲間達と合流をした。
「大体揃ったか？」
　グラディウスをパティに預けながら流石が仲間の顔を見る。
「ちょっと待って、フィーアがいないぜ」
　ルヴィルが気付き、表情を引き締めた。はっと、ケルベロス達が顔を上げる。その時、近くの角から声がした。
「当機はここであります」
　フィーアは近くに居た。
　だが、仲間達の元へは走れなかった。
　目の前に現れた敵を見上げる。
　花粉の入り混じったブレスがすぐにでも襲い掛かってきそうだった。
「当機、目標を発見。これより決着を付けるであります」
　全てを察し、ケルベロス達はフィーアの戦闘領域に飛び込んだ。
　立ちふさがったのはやはり蔓龍。それも、かなり強化されている様子だ。
　蔓龍が咆哮をあげる。
　すぐにフィーアが動いた。二本のライトニングロッドを構え、敵の懐へと詰めていく。飛び込んだと思った瞬間、武器を敵に叩き付けた。その場所から、強力な雷を流し込んでやる。
「Emprunts！　ラジン、眷属を借りますの！　En avant！　全軍突撃なの！」
　続いてシエナが叫んだ。
　ボクスドラゴンのラジンシーガンの封印箱に住まわせている蜂達が飛び出し、一斉に特攻を仕掛ける。多種多様な蜂達が、様々な毒で蔓龍を侵して行った。
　よろめく蔓龍を見て、凪は二振りの刀を構える。
「良いモン貰ってんだ、結果を残さなきゃねぇ！」
　これらは誕生日に貰った大切なものだ。
　地面を蹴り、敵に向かって走る。
　背後にはガルフの気配があった。より一層、気合が入る。
　凪は研ぎ澄まされた達人の一撃を敵に叩き込んだ。
「――お、おお！」
　猛々しくガルフは吼えた。
　全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、仲間達の超感覚を覚醒させるのだ。視界に凪を捉える。前衛で身体を張る彼女は、きっと傷をためる事だろう。
　仲間達も次々に攻撃を叩き込む。
　素早く撃破して、撤退しなければならないのだから。
　蔓龍が吼えた。まだ倒れていない、と叫んでいるようだった。

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　戦いは続いていた。幾度も撃ち合い、護り、癒しながらケルベロス達は敵を少しずつ追い詰めていった。
　だが、敵も簡単に倒れはしない。
　蔓龍は、鋭い刃に変えた蔓をしなやかに伸ばす。
　それが、パティ目掛けて一斉に襲い掛かってきた。
「！」
　パティは身構えるが、それよりも早く凪が間に割って入ってくる。
　刃となった蔓が凪の身体を斬り、裂いていった。
「オイ、こんなとこで倒れんじゃねーぞ」
　凪は背後に庇ったパティを見る。
　自分の傷もそうだが、仲間達も相応の傷を負い始めていた。
「まだ、いけるか？　大丈夫か？！」
　ルヴィルが急ぎ近づいてきて、凪の傷の状態を見る。
「光よ、来い」
　すぐに判断し、ルヴィルは夕暮れ時の色のような、一瞬の光を放った。赤の光は炎にも似ている。だが、それは焼かない。ただ仲間を癒すために放たれた光だ。ルヴィルは光を収束させ、凪の傷を癒してやった。
「櫛々」
　さらにテレビウムの櫛々を呼び寄せ、回復を重ねる。
　凪の様子を見て、ガルフはほっと胸をなでおろした。
「助かったぜ！　てめぇもまだまだやれるだろ？」
「もちろん、まだ頑張るでち。庇ってくれて、ありがとうでち」
　立ち上がった凪がパティを見る。パティは頷き、凪の脇をすり抜けるように敵へと駆けた。蔓龍は、まだ蔓を自身に手繰り寄せている途中のようだ。
「喰らうでちゅ！」
　この、一瞬の隙だ。
　敵の身体を駆け上がり、後頭部の付け根に衝撃を与えた。パティの放ったショックドライヴに、敵の身体が傾ぐ。
「おら、この辺がら空きだぜ？」
　反対側から、流石も走りこんできた。
　超近距離から、スターゲイザーを叩き込む。勢いのある飛び蹴りが、流石の逆へと敵の身体を吹き飛ばした。
「ここだ、行くぞ」
　エフイーの掛け声と共に、動ける仲間が一斉に攻撃を仕掛ける。
「組んで仕事をすると効率が良かったんでありますがなー……」
　あと一息で終わる事を感じ取り、フィーアがブラックスライムを捕食モードに変形させる。
　蔓龍は、苦しげに、速い息を吐き出していた。
　ブラックスライムが伸び、敵を丸呑みにする。
「捕まえておきます故、あとは任せましたであります」
「entendu!　行きますの、ヴィオロンテ」
　シエナはヴィオロンテを捕食形態に変形させ、蔓龍を喰らった。攻性捕食の毒が敵に回るのが分かる。
「……かたいものほど、脆いもの」
　蔓龍はもう満足に動けないようだ。
　ガルフは、敵の一点を狙い済まし、地獄の炎弾を放った。
　綻びを狙い、鋭く研ぎ澄ました地獄の炎弾は、蔓龍の亀裂を広げていく。氷穿の蒼い地獄が、毒の周りを加速させた。
　上手く動けない蔓龍が咆哮を上げる。
　その威圧に気圧されぬよう、しっかりと地に立ち、エフイーは敵を見据えた。
「全を破断せし、乾坤一擲之一撃也！」
　フォトンエネルギーを武器に集束し、巨大な長剣を形成する。
　その暴力とも言える強大な破壊エネルギーを、迷い無き神速の一撃として敵に叩きつける。これは正に全てを破断するに相応しい性能を誇る一撃だ。
　荒神の断罪剣が蔓龍の身体を大きく破壊した。
　蔓龍の身体が崩れていく。
「グラディウスは揃ってるな？」
「あるでち、大丈夫」
　流石とパティが確認し、ケルベロス達は急いで走り始めた。
「フィーア、大丈夫？」
　崩れいく蔓龍を見ていたフィーアを気遣うように、ルヴィルが声をかける。
　仲間達は庇いあい、最短の退路を確認しながら撤退を始めていた。
　フィーアは振り向き、仲間達の後に続く。
「当機、こう見えて経験豊富である故」
　その頷きを以って、この仕事の完了を見た。

作者：陵かなめ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年1月11日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 7／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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