ミッション破壊作戦~光の小剣へ想いを託して

作者:質種剰

●降下作戦
「皆さん、クリスマスパーティーの際は、ゴッドサンタの撃破、お疲れ様でした♪」
 小檻・かけら(鉄球ヘリオライダー・en0031)が、ぺこりとお辞儀してから説明を始める。
「そのゴッドサンタを撃破した時に手に入れた『グラディウス』の使い方が判明したでありますよ」
 『グラディウス』は、長さ70cm程の『光る小剣型の兵器』だが、通常の武器としては使用できない。
「その代わり、魔空回廊を攻撃して破壊する事ができるのであります!」
 通常の魔空回廊は時間が経てば消失する為、グラディウスで破壊するまでもないのだが、固定型の魔空回廊なら、グラディウスでの破壊がとても有効となるに違いない。
「特に、現在日本各地の『ミッション』の拠点となっている、『強襲型魔空回廊』を破壊する事が可能となりますから、デウスエクスの地上侵攻に大きな楔を打ち込めるのでありますよ」
 かけらはそう断言した。
「とはいえ、強襲型魔空回廊があるのはミッション地域の中枢でありますから、通常の方法で辿りつくのは難しいでありましょう」
 と、補足して告げるは今回の作戦。
「場合によっては、敵に貴重なグラディウスを奪われる危険もある為、『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』を行うでありますよ」
 強襲型魔空回廊の周囲は半径30mにも及ぶドーム型のバリアで囲われていて、このバリアへグラディウスを触れさせれば破壊できる。
「それ故、高空からの降下であっても、充分に攻撃が可能であります」
 8人のケルベロスが、グラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用し、強襲型魔空回廊に攻撃を集中したなら、場合によっては一撃で強襲型魔空回廊を破壊する事すら可能だという。
「1回の降下作戦で破壊できなくてもダメージは蓄積するでありますから、最大でも10回程度の降下作戦を行えば、強襲型魔空回廊を確実に破壊できると思うであります」
 強襲型魔空回廊の周囲には、強力な護衛戦力が存在しますが、高高度からの降下攻撃を防ぐ事はできない。
「グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させるのでありますが、この雷光と爆炎はグラディウスの所持者以外へ無差別に襲いかかる為、強襲型魔空回廊の防衛を担っている精鋭部隊であっても防ぐ手段はないでしょう」
 かけらは自信を見せて言う。
「皆さんは、この雷光と爆炎によって発生するスモークを利用して、その場から撤退を行ってくださいませ。貴重な武器であるグラディウスを持ち帰る事も、今回の作戦の重要な目的でありますから……」
 そんな訳で、魔空回廊の護衛部隊は、グラディウスの攻撃の余波である程度無力化できる。
「ただ、完全に無力化するのは不可能でありますから、強力な敵との戦闘は免れないであります……」
 幸い、混乱する敵が連携をとって攻撃してくる事は無いので、素早く目の前の強敵を倒して撤退を目指すのが良いだろう。
「倒すのへ時間が掛かりすぎて、脱出する前に敵が態勢を整えてしまった場合は、降伏するか暴走して撤退するしか手が無くなるやもしれないであります。お気をつけくださいね」
 攻撃するミッション地域毎に特色ある敵が現れるので、攻撃する場所を選ぶ時の参考にするのもお薦めだ。
「降下攻撃後は、無事に撤退するのが重要になるであります。敵は混乱状態ですが、強敵ほど混乱状態から抜け出すのは早いでありますよ。強敵との戦いは必ず発生すると思って、準備を整えてくださいませね。宜しくお願いします!」
 かけらはそう締め括って、ケルベロス達を激励した。


参加者
クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)
グラディウス・レイソン(黄鮫のお母さん・e01063)
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
妹島・宴(彼岸の契り・e16219)
富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)

■リプレイ


 千葉県の上空。
 総武本線市川駅にも強襲型魔空回廊の存在を示す、ドーム型バリアがあった。
 ケルベロス達は、その厚いバリアを破壊すべく、今まさにヘリオンから飛び降りんとしていた。
「どこへでもノーリスクで攻めることが出来る魔空回廊……ですか……魔空回廊ってことはやっぱり周りにデウスエクスさんも一杯いるんですよね……しかも、あ、あの……オークさんなんですよね……」
 クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)は、相変わらず気弱な性格故かおどおど視線を彷徨わせている。
 赤々と美しく煌めく髪に真っ白なツノが清楚さを添えた、大人しそうなドラゴニアンの少女。
「ううん……でも怖がってなんか居られません……ここで、失敗したら…もっと怖い目に合うことになるんですから……!」
 とはいえ、戦闘ともなれば武人然とした本性を見せるクロコだけに、光の剣グラディウスを握り締めて意識を集中する様は、充分頼もしい。
「この大きな作戦……ボク達に勝利を!」
 と、プロメスチェーンに祈りを捧げているのは、ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)。
 キリッとした童顔と長い黒髪から女性に間違われる事もしばしばの彼は、左腕と涙を地獄化したブレイズキャリバー。
 この日はチェインドライヴ【蒼焔】を身につけ、バリア攻撃後の撤退へバイオガスを使おうと備えていた。
「ミッションの破壊、か。考えればミッションにはワシらも常に苦戦させられてたな……」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)は、市川駅構内と周辺の地図を広げて、撤退時のシミュレーションに余念がない。
 意思の強そうな黒い瞳と褐色の肌が印象的なドワーフで、地獄化した右腕を持つコクマ。
 ドワーフ故の若々しい童顔は生気に満ち、その性格は年齢を感じさせる落ち着きと豊富な経験が作り上げたものか、実に軽妙洒脱である。
「それじゃ「鎧装天使エーデルワイス、いっきまーす!」
 ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)は、元気に叫んで翼を広げ、グラディウスを手にふわりと飛び降りていく。
 臙脂色のジャージが浮き立たせるメリハリあるボディラインや愛用の赤い眼鏡、緩く纏めた三つ編み等が可愛らしいジューン。
「たまたま最初に発見したのがボクってだけで、あいつらには特に深い因縁はないんだけど」
 降下前、彼女は小檻へ胸中を語っていた。
「オークには色々とぶつけたい気持ちがあるからさ、パーッとぶちまけてくるよ……そんで帰ったらあっついシャワーとか浴びたいよね!」
 それと言うのも、市川駅の魔空回廊へ集うオークの中に、ジューン曰く最初に見つけた個体——オークアサシンがいるからだ。
「標的確認、行きますっ!」
 トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)もまた、気迫の篭った声で宣言するや、ヘリオンの床を蹴って空へ飛び出した。
 鋭い目つきと整えられた顎髭が生来の厳つさをいや増しているが、そんな強面からは意外に思えるぐらい穏やかで優しい性格をしたトリスタン。 実際、可愛い娘の育児に励むとても良いパパである。
「……よし、消し炭にしてきます」
 妹島・宴(彼岸の契り・e16219)は、何故だが怒りを噴出させて空へ踏み出す。
 老若男女のべつ幕なしに食指を動かせる彼だが、それでも一途な恋を貫くと決めているのか、
「オークアサシンに痴漢されたであります、ってぼくに言ってください」
 降下前はヘリオンの操縦席へ向かって妙な懇願をしていた。
 これが激怒の正体であり、彼のグラディウスへ籠める熱い魂でもある。
「……」
 仲間を見守っていたグラディウス・レイソン(黄鮫のお母さん・e01063)は、こいつ何言ってんだ、と冷ややかな視線を向けた。
 グラディウス自身は、自他共に厳しい高潔さと、仲間を母親のような包容力で受け止める鷹揚さを兼ね備えた少年。
 ゴッドサンタの遺物が己の名と同じグラディウスだったのへ対し、その胸中はいかばかりか。
 結局、宴は想い人から望みの言葉を貰って降下した。
「そういえばこれはグラディウスでここにグラディウスがいるな? 普通に呼んだら訳が分からなくなりそうだが、グラディウス、がんばれ」
 すると、グラディウスの気持ちを慮ってか、富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)が優しい言葉をかける。
 尤も当人は当人で、小剣と仲間の名前を混同して内心わけがわからない様子。
 ふわふわウェーブした白い髪や赤い猫目が可愛い白猫のウェアライダーで、性格も気まぐれな猫そのまんま。
 無表情で感情を面に表さない代わりに、猫耳の動きが大変感情豊かだ。
 冷たく素っ気ない態度の裏では、仲間を何より大事に想っている。
「今までどうしようもなかったところから敵を追っ払えるってことだな——さっさと壊してざまぁみろって言ってやる」
 兎に角気を取り直し、白亜はしなやかな動きでヘリオンから飛び降りた。


 グラディウスを構えた姿勢で寒空を流れ、バリアへ真っ直ぐ突っ込んでいく8人。
「デウスエクスさんたちとの戦いは怖いです……正直、戦わなくていいというなら戦いたくはありません……」
 まず、落下の恐怖や回廊を守るオーク達に怯える気持ちを抑え込み、グラディウスへ強い意思を伝えんと叫ぶのはクロコだ。
「だけど……魔空回廊から出てくるデウスエクスさんたちに故郷を奪われ逃げ惑うしかない市川市の皆さんはもっと怖かったはずです! その人達を守るため……光の小剣よ……、わたしに勇気と……力を貸してください!!」
 クロコの確固たる想いはグラディウスに通じて、刀身にグラビティがどんどん溜まっていく。
「パワーを集中する。鎖の力……思い知れ! 変身ッ……!」
 次いで、クラヴィクに跨るライゼルがライゼファクターへチェーンキー【紫炎】を差し込み、戦闘形態に変身。
「オーク……お前達の行動とグラビティチェインの回収方法には前々から嫌悪感を抱いていた。全ての女性の敵め」
 ライゼルの深い憤りは打倒オークを誓う闘志となって、
「この星を穢すな! もう侵略できないようにまずはここからぶち殺す!!」
 グラディウスになみなみとグラビティを注いだ。
「愚かなり豚共よ! 所詮貴様らの劣情など三流以下よ! 欲望のはけ口としか見ないから受け止められた時の安らぎを理解できぬのだ!」
 コクマもグラディウスを掲げ持ち、彼らしい語り口でオークを糾弾する。
「貴様らは此処で散れぇぇぇぇぇ!!!」
 落下と同時に振りかざしたグラディウスの柄から、刃先へ渡ってグラビティが満たされていく。
 そして、ジューンの脳裡をよぎったのは、例のオークアサシンに触手で絡みつかれたりぬるぬるした粘液塗れにされた己が姿。
 あまつさえ、口にするのも憚られる下品な嘲罵を浴びせられ、股間まで押しつけられた時の恐さと嫌悪の入り混じった気持ちは、例えようもない。
「触手も! オークも! くっころも! 二次元だけで十分なんだよバッキャローッ!!」
 バリアへ叩きつけたジューンのグラディウスがグラビティで充満していたのも当然といえよう。
「お前たちに与えるものは何もない! 地球も女も諦めて消えろっ!!」
 トリスタンは、無骨で寡黙な彼らしく叫んだ言葉こそ短いが、オークへの嫌悪感や、被害者の事を考えると収まる筈もない義憤がはっきり看て取れる。
 その為、グラディウスも彼の意識に共鳴してグラビティを蓄えた。
「被害に遭われた女性の事を考えると決して笑えません」
 宴もまた、鋭い目でバリアを見据えるや、
「貴方がたのような存在が許されるのはお話の中だけなんです! よくもかけらにあんな事やこんな事を!」
 妄想全開の絶叫と共に、グラビティに充ちたグラディウスを力いっぱい振り下ろした。
「ぼくだってまだ触ったことないのにー!」
 理不尽な怒りをぶつけて慟哭する宴の眼には、オークに嬲られる小檻のあられもない姿が見えているに違いない。
「ぶっ壊れろぉ!!!!!」
 全力で小剣をバリアへぶつけるグラディウスの咆哮はシンプルだ。叫びに篭った魂が全く判然とせず、光の剣は呼応しない。
「ここは私達の場所だ。これは邪魔、どけ」
 白亜は、硬く握った拳をグラディウスごとバリアへ叩きつける。
 その叫びは簡潔ながらも、彼女が市川駅を人々の為に取り戻したいという気持ちが明確に伝わってくる。
 なればこそ、小剣グラディウスもグラビティを充分に湛えて、強い光を放った。
 ——ドォォォオオン!!
 ケルベロス達が突き立てたグラディウスの輝く刀身は、バリアへヒビを入れると同時に大きな爆音を生じさせ、雷光と爆炎を広げていく。
 残念ながら魔空回廊の破壊には至らなかったが、バリアに確かなダメージを与えた。


 魔空回廊の護衛をしていた精鋭痴漢オーク達が、光の小剣グラディウスの起こした雷光と爆炎に襲われ、次々倒れていく様は圧巻であった。
「長居は無用、囲まれる前に撤退しましょう」
 それでも態勢を立て直してケルベロス達を追い詰めんとする痴漢オークは、僅かにでも存在している。
「さぁ早くっ」
 トリスタンは、我から殿を務めて、仲間を追い立てるように逃げ出す。
 グラビティが空になった小剣グラディウスは、宴とグラディウス、白亜がそれぞれ2~3本ずつアイテムポケットに仕舞っている。
「こっちが近道だよ!」
 先頭切って駆けるのはジューン。コクマの地図にスーパーGPSで現在地を照らし合わせ、駅構内から外へ出られる最短ルートを把握したのだ。
 そこへ。
「アジトの平和を破る奴は許さんブヒッ!」
 オークアサシンが走る8人の前に立ちはだかった。
 グラディウスの無差別攻撃にもビクともしない、他の痴漢オークよりしぶとい個体だ。
「痴漢の楽園を侵す奴等には、痴漢プレイの恐ろしさを思い知らせてやるブヒッ!」
 オークアサシンはそう言い放つや、ジューンへ向かってヌメヌメした触手をスナイプしてきた。
「おぬしにグラディウスを渡してなるものか!」
 早速、がらりと口調の変わったクロコが巨大な鉄塊剣を腕力だけで軽々操り、勢い任せに斬りかかる。
 単純かつ重厚無比の一撃を見舞って、オークアサシンをグシャァと叩き潰し、怒りを煽り立てた。
「なんか失ったような気分にさせられたボクの純情を返せ……!」
 ジューンも、服の中を蠢く触手の気持ち悪さに耐えながら、ドラゴニックハンマーを振り上げて超重の一打を浴びせる。
 生命の『進化可能性』を奪う事で、オークアサシンの体をみるみるうちに凍らせた。
「愛しき子に加護を。そして、魔を払え。心を許すな」
 地獄化した腕から鎖を巻いた小動物を顕現させるのはライゼル。
 小動物は癒しのイメージを振り巻いて駆け巡り、ライゼル自身に魔を打ち破る気力を漲らせた。
 クラヴィクは激しいスピンでオークアサシンの足を轢き潰している。
「貴様らもグラディウスを持っているのか? いや貴様ら如きでは持ってるはずはないか」
 コクマはオークアサシンを挑発しつつ鉄塊剣を振り下ろす。
 ドゴォッ!
 大地をも断ち割るかの如き強烈な太刀筋でオークアサシンの肩を打ち砕くと、その豚足を竦ませた。
「食らえっ!」
 トリスタンも勢いよく殴りかかって、まさに達人の域に在る一撃を浴びせる。
 卓越した技量の打撃がオークアサシンに命中、その醜い体をビキビキと凍てつかせた。
 戦闘開始から1分が過ぎて。
「気の強い女を屈服させるのも痴漢プレイの楽しみブヒッ!」
 オークアサシンは勝手に悦に入りながら、触手トラップを仕掛けてきた。
「誰が女だ? あ?」
 マジ切れしたグラディウスは、恐ろしい殺気と雷の霊力篭った斬霊刀を抜いて、オークアサシンへ神速の突きを繰り出す。
 だが。
 太い触手に捕縛されたせいで、元々6割弱だった命中率が更に下がった為、グラディウス渾身の一撃は避けられてしまった。
「さあ、使い物にならなくして差し上げますね」
 宴もゾディアックソードを振るい、怒りの雷刃突でオークアサシンの厚い脂肪を容赦なく貫き破る。
「ん、すぐに従うといい」
 ボス猫しか持ち得ぬような威厳を放って、瞬間的に怯ませるのは白亜。
 さらには軽やかな動きでオークへ肉薄、攻撃とは思えぬほど優雅な所作で容赦なく踏みつけた。
「お前こそ女ブヒな!? 触手で可愛がってやるブヒ!」
 反撃とばかりにクロコを触手で打ち払ってくるオークアサシン。デストロイブレイドで怒らせたせいだが、幾ら体力が削られても性欲は依然衰え知らずらしい。
「苦しいのは、最初だけですから……我慢、してくださいね?」
 すぐに宴が様々な毒や呪いに対する抗体を精製し、魔術回路を通して投与。
 クロコやジューンの怪我を癒すと同時に、前衛陣の異常耐性をも高めた。
「右腕を失えど龍王と呼ばれし我が闘気に一片の衰え無きことをその身で味わうがいい!」
 地獄化した右腕へ龍王の闘気の渦を纏わせるのはクロコ。
 全身全霊で殴りつけた龍王烈震撃は、正確無比な狙いでオークアサシンの顔面を破壊するのだった。
「許せないのはこっちだ、女性の敵め! 覚悟!!」9
 ライゼルもバーンソレイユを手に、達人の域に入った一閃を見舞う。
 素人には真似できないレベルの斬撃がオークアサシンを襲い、神経を苛む鋭い苦痛と恐怖に寒気すら覚えた。
「貴様らを此処に送った連中は誰だ? 言っておけばもうすぐ楽にしてやるぞ」
 選択の余地などない脅しをかけたコクマは、鉄塊剣の刀身に青白い水晶の刃を纏わせ、巨大化させる。
 そのままオーク目掛けて突進し、ズバッと真横に薙ぎ払う事で、戦艦をも切断する一刀を丸い腹へ打ち込んだ。
「フンッ!」
 忌まわしき沼の巨人より鹵獲した力を腕に込め、一気に距離を詰めて殴りかかるのはトリスタン。
「一気に潰します!」
 力強い拳は毎夜一人ずつ食らうとされる邪悪な巨人の如く、確実にオークを捉えて打ちのめした。
「唄え、闇結鴉」
 グラディウスの声へ呼応するように、周りを漂う青き燐光が黒き羽根へ姿を変える。
 穏やかに迎えた静寂は終焉を告げ、オークアサシンへ死の淵が近づく癒しを与えた。
 それらを齎した黒き翼は、音もなく静かに光へ変じて、世界へ溶けるように消えていく。
「幾ら普通のオークより強くても関係ない。消えろ」
 惨殺ナイフの刃をジグザグに変形させ、直球な罵倒を浴びせながら斬りつけるのは白亜。
 オークアサシンの腹肉を、ヒールですら回復し難い形状に斬り刻んだ。
「最強の一撃を創造する、あの英雄たちの様に!」
 ジューンが力強い口上と共に繰り出すのは、自分がかつて憧れて真似た、ヒーローやヒロイン達の必殺技。
 溢れるロマンでその一撃を忠実に再現、オークアサシンの胸部へ見事ぶち当てて、遂にトドメを刺した。
 その後、8人は消えゆくスモークの中を駆け抜け、無事撤退したのだった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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