ミッション破壊作戦～グラディウスに魂を込めて！

■リプレイ

●福岡県福岡市
「大丈夫、なんとかなるさ！」
　ヘリオン降下口で仲間達にそう言うのは、山田・ビート（コスプレ刀剣士・e05625）。
『ミッション破壊作戦』と言う初めての任務に、ビート自身も不安が無い訳では無い。
　けれど、自身を奮い立たせ、仲間達にも安心を届けられる様に、ビートは、敢えてそう口にしていた。
「福岡市民の皆様にご迷惑をおかけしている『モヒー族』の被害を減らせるチャンスです。必ずこの作戦成功させます！」
『モヒー退散』と書かれた鉢巻きをしっかりと額に締め、空舟・法華（モヒー対策係・e25433）が気合いを込めて呟く。
「そろそろ、降下地点だな。皆、準備はいいな？」
　萃・楼芳（枯れ井戸・e01298）が仲間達に問えば、仲間達は強い瞳で一つ頷く。
「では、行こう。先陣を切ることは、戦いに生きる者として最高の誉れである。そして、これから続く者達の為に私達に出来る最大限の一撃を加えよう。狙うは勿論『一撃粉砕』」
　言葉と共に、グラディウスを手に楼芳がヘリオンから飛び降りる。
　楼芳の持つグラディウスは、楼芳の強い意志を受けエネルギーを高めていく。
（「……何の罪も無い人達をエンヘリアルにして利用しようとする、シャイターンは絶対に許せない。……だから」）
　軽やかに宙を舞いながら、リーナ・スノーライト（マギアアサシン・e16540）は、変わらぬ表情とは別の強い決意を持って、グラディウスを振りかざす。
「……絶対に……破壊するっ……！！」
　リーナが手にしたグラディウスが強襲型魔空回廊のバリアに触れると同時に、宙にバリアが浮かび上がり、雷光と爆炎が発生する。
（「……エインヘリアルは嫌い。……それに従うシャイターンも嫌い。……ここでエインヘリアルを増やされる……そんなのは絶対に嫌」）
　青いツインテールを風に靡かせながら、カティア・エイルノート（ヴァルキュリアのミュージックファイター・e25831）もバリアにグラディウスを突き立てる。
（「……ボクみたいに、エインヘリアルに無理矢理戦わされる人が増えるのは本当に嫌。……だから、ここでボクが絶対に食い止める」）
　ヴァルキュリアであるカティアは、エインヘリアルの尖兵として生きてきた時間がある。
　だからこそ、エインヘリアルも、それに従属するシャイターンも許す事は出来ない。
（「……ここで魔空回廊を破壊出来れば、デウスエクスの犠牲になる人を減らせるんだ……やるんだ、やるしかない！」）
　相棒のライドキャリバー『こがらす丸』に騎乗したまま降下した、北條・計都（凶兆の鋼鴉・e28570）は、強く握ったハンドルから手を放すと『こがらす丸』を前傾にして、グラディウスを逆手に持つ。
「モヒー族……てめえ等に今日を生きる資格はねえ！！　地球は……お前達の来るところじゃない！　出て行けぇぇぇっ！！」
　強く叫ぶ計都のグラディウスが、爆音を発ててバリアに突き刺さる。
「集団の中からエインヘリアルを作る……中々効率的やな。だからこそ、これ以上させへんで～！」
　いささか緩い表情の中にも、強い決意の炎を瞳に秘め、佐々木・照彦（レプリカントの住所不定無職・e08003）が軌道計算した角度から、グラディウスを振り被る。
「若者が殺されるのも、シャイターンが力持つんも、全部潰したる！　ようやっと、この時が来たっちゅう感じや！　世紀末にはまだ早いで！」
『パッションとは何か？』ヘリオンで移動中も照彦は考え続けていた。
　自分の出した答えが正解かは分からない……けれど、照彦は自身の『心』に従い、熱い心意気……そして、熱い思いをグラディウスにありったけ込めていく。
「『モヒー族』奴らは法じゃ裁けない。……補導できる警察も居やしない。……そんなら、不良は不良らしく、シマを賭けて喧嘩と洒落込もうじゃないか！」
　自身が悪だとは思ってはいないが、敵が悪なのであれば、その流儀にのっとって、戦うことも辞さない、皆川・隠岐乃（銃闘士・e31744）は、唇の端をニヤリと笑みの形に変えて、グラディウスをナイフの様にバリアに斬りこませる。
　福岡市内の地上に雷鳴と轟音が響き始めた。

●強襲型魔空回廊
「アルティメットモード展開！　人々をエインヘリアルに、変えさせはしない！　この降下作戦は地球に住む人達の反撃の狼煙になる！」
　両の手に握ったグラディウスに魂を込める様に叫ぶ、ビート。
「これ以上、シャイターンの……モヒー族の好きには、させない！　モヒー族からこの地を必ず取り返す！」
「モヒーを恐れない！　モヒーに魂を提供しない！　モヒーを利用しない！　強襲型魔空回廊を設置させない！　私は自分の為では無く、人々の為にモヒーを排除します！」
　モヒー族と浅からぬ因縁のある法華だが、自身の因縁より、この地で暮らす人々の平和の為に、グラディウスに力を込める。
「皆、想いを力に！　グラディウスに全てを込めるのだ！」
　楼芳が宙でバリアと拮抗する仲間達に強く言葉をかける。
　ケルベロス達の魂を燃やし尽くす様な叫びが、大きく木魂する。
『No more モヒー！！』
　モヒー族を拒絶する言葉が響くと、雷光と爆炎は最高潮に達し、爆煙をあげてケルベロス達を吹き飛ばす。
　ケルベロス達がグラディウスを突き刺した直下では、爆煙がスモークとなり辺りを真っ白にしていた。
　ケルベロス達が地上に落下して、１分程経っただろうか……最初に言葉を発したのは、隠岐乃だった。
「……魔空回廊は、どうなったんだい？」
　隠岐乃が周りを見やれば、仲間達は遠い者でも５０ｍも離れていない所に着地していた……照彦などは頭から落下していたが。
「……バリアへダメージは与えられたようだが……まだ、魔空回廊は残っているみたいだな」
　計都が渋顔で言う。
「……魔空回廊……破壊できなかった……悔しい……」
　唇を噛み締めながら、カティアも呟く。
「……結果としては口惜しいですが、直ぐに撤退しましょう。爆煙が晴れる前に撤退しなければ、グラディウスを奪われては、元も子も有りません」
　手にしたグラディウスを懐にしまいつつ、ビートが仲間達に言う。
「そうですね……と言いたい所ですが、倒さなければいけない『モヒー』が現れた様です」
『蟷螂飛刃【苅切】』を構えながら、法華が仲間達に言う。
「てめえラー！　何してくれやがったー！　ココがモヒー様の縄張りと分かってて来やがったのか―！」
　派手なモヒカンに世紀末的衣装を着こんだ『ヤングモヒー』が甲高い声でケルベロス達に叫ぶ。
「……あなたに構ってる暇はないの。……魔空回廊が破壊出来なかった以上……私達は離脱しなければいけないの」
　スモークに紛れてヤングモヒーに近づくと、リーナはそう呟きながら空を斬る様に『霊刀『鳴月』』を横に薙ぐ。
「次に繋ぐ為に、私達は帰還しなければいけないんです！」
　流星の軌跡を描きながら蹴りを放ち、ビートが叫ぶ。
「行くぞ、こがらす丸！」
　ライドキャリバーで突進しつつ、計都は『リボルバニッシャー』を砲撃形態に変形させ、竜砲弾を撃ち出す。
「テレ坊、援護頼んだで！」
　テレビウムのテレ坊が強烈な閃光を放つと、照彦はその光に溶け込むように直進しながら、ゲシュタルトグレイブをヤングモヒーに突き刺す。
「クッソ！　テメエラ、好き勝手しやがって！　これでもクラエ―！　ヒャッハー！！」
　ヤングモヒーの狂気の叫びが隠岐乃目掛けて襲いかかる……だが、その悪しき絶叫は、隠岐乃に届く事無く、寸前で楼芳が自身の身体で防いでいた。
「その程度の魂の叫びで私達を挫けると思っているのか」
　喝を入れる様に言うと、楼芳は堅き装甲すら破壊する一撃をヤングモヒーに決める。
　傍らでは、ボクスドラゴンの『ウル』が己が属性を楼芳に注ぎ込んでいる。
「……今回は破壊出来なかった。……けど、シャイターンを止める為、ボクはこの歌で皆を守る」
　秘めたる決意を口にしながら、カティアは、失われた面影を悼む歌を紡ぎ、仲間達の攻撃的グラビティの威力を増強する。
「モヒーをこのままにしておく気はありません。最後には全て消えてもらいますよ……だから、今は通してもらいます。舞い立ち昇る龍の鳴き声をお聞かせします」
　法華の奏でる龍笛は、龍の囁きとなって隠岐乃の集中力を研ぎ澄ませていく。
「喧嘩と言えど戦いは戦い……手段は選ばないよ。これがアタシの『鉄拳制裁』だ！」
　赤い瞳を細めながら隠岐乃は、ショットガンの引鉄を引き銃弾をばら撒く。
「クソッ！　クソッ！　テメエラ、もう泣いても許してやんねー！！」
　ヤングモヒーは怒りに満ちた瞳でケルベロス達を睨むと、背に生える黒きタールの翼を大きく開いた。

●ヤングモヒー
「貴方にはちょっと贅沢な技だけど……塵も残さず吹き飛ぶと良いよ……！　集え力……。わたしの全てを以て討ち滅ぼす……！　滅せよ……黒滅の閃光！！」
　リーナの詠唱が戦場に響けば、リーナの手に多大なる魔力が集束され、それは全てを滅する黒き閃光となって、ヤングモヒーを飲み込んでいく。
「……チッ……これくらいで死んでたまるかー！　俺達の時代なんだよ！！　これからはー！！」
　リーナの最大火力をもってしても、ヤングモヒーは息絶えること無くタールの翼を広げていた。
「確実にダメージは与えている筈だ。手を緩めるな」
　重力のエネルギー光弾を撃ち出しながら、仲間達の士気を上げる様に、楼芳が言う。
「シュウ君の言う通りや。モヒーの中でも強い個体言うても、倒せない訳じゃない筈や」
　炎を纏った蹴りを放ちながら照彦も楼芳と視線を交わす。
「ビート……今、癒しの盾を」
　光の盾を具現化し、ビートの護りの力としながら、カティアがウイングキャットの『ホワイトハート』に仲間達のカバーに入る様に指示を送る。
『ミッション破壊作戦』開始から６分が既に経過していた。
　優れた戦闘力を持った『ヤングモヒー』の個体とは言え、終始戦闘はケルベロス達優位に進んでいると言ってよかった。
　ただ『強襲型魔空回廊』の破壊が出来なかった以上、一刻も早くこの戦場から離脱する必要がケルベロス達にはあった。
　長くこの場に居ることは、敵の増援が来てしまうことを意味しており『グラディウス』と言う、敵の手に決して渡してはいけない『切り札』を所持しているケルベロス達にとっては、避けなければならない状況だからである。
「一気に行きます！　連撃で止めを刺して離脱しましょう！　凍える風を刃に纏え！　霊刀解放！」
　仲間達に叫ぶとビートはヤングモヒー迄駆け、全てを凍らせる魔神の魔力を『日本刀・童子切安綱』に纏わせ、氷と風……二つの力でヤングモヒーを袈裟に斬る。
「これが、俺の……俺達の！　精一杯だぁぁぁッ！！」
　計都が叫ぶと、騎乗していたライドキャリバーが計都の装甲となり、計都のグラビティ・チェインが急上昇する。
　計都の背には炎の翼が生まれ、宙に舞うと、計都は強烈な蹴りをヤングモヒーに決める。
「空舟さん！　今です！」
「はい！　モヒーには全て消えてもらいます！」
　計都の言葉に答えると、法華は雷を纏った突きでヤングモヒーを刺し貫く。
　法華が得物を引き抜けば、前にうずくまる様に倒れるヤングモヒー。
　その時、距離にして数百メートル先に新たなヤングモヒーの姿が映る。
「さっさと離脱するに限るね。その目でよーく見ときなよ」
　仲間達が離脱体勢に入ったのを確認すると、隠岐乃は閃光手榴弾を放ち、更なる追手がケルベロス達を追えぬ様に牽制する。
「じゃあね、チンピラ共！」
「……クソが……ケルベロス……モヒーは……俺達はまだ終わらねえんだ……」
　地に響くヤングモヒーの声が耳にまとわりつく様に、走るケルベロス達の後方から聞こえて来るのだった……。

●次に託す想い
「ここまで来れば、大丈夫だね」
　ウェアライダーの素早さで、仲間達を先導していた隠岐乃が振り返りながら呟く。
「モヒーの撲滅……今回は叶いませんでしたね」
　少しでも早く地球上から、モヒーの脅威を無くしたかった法華は、どうしても落胆してしまう。
「魔空回廊の破壊を成し遂げたかったのは事実だが、グラディウスも全て手元に残っている。再使用出来るまでグラビティ・チェインが貯まり次第、もう一度破壊作戦に赴こう」
　手の中のエネルギーを使い果たしたグラディウスを見つめながら、楼芳が言う。
「シュウ君の言う通りや。今回の攻撃でそれなりのダメージは与えられた筈やし、必ず破壊出来る筈や」
　テレ坊を抱き上げながら、照彦が緩く笑う。
「……そうだね。……モヒー族、勝てない相手じゃない。……強襲型魔空回廊さえ、壊せれば……」
「次に繋げられる戦果は残せたでしょう。これからもミッション破壊作戦は継続されます。……必ずやり遂げましょう」
　リーナの言葉を続ける様に、計都も言う。
「また、数週間後……数ヶ月後になるかもしれないけど……頑張る」
　カティアは風に靡く青髪を抑えながら、モヒー族の巣窟の方角を見つめ呟く。
「何時までも地球で好きな事は、させません。この土地は取り返します。今日の攻撃は反撃の第一歩です！　そして、いずれは……全ての土地を解放してみせます。……必ず！」
　ビートの言葉は決意に満ちていた。
　そして、その想いはこの場に居るケルベロス達全員の想いだった……。

作者：陸野蛍	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年1月11日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 8／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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