ミッション破壊作戦～小剣の刃が斬り拓く未来

■リプレイ

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　重力に従い降下してゆくケルベロス達。
　既に彼らが乗って来たヘリオンは、機首を返し離脱を図りつつあった。
「先ずは一刀……油断するならさせておけばいい。その油断を逆手に取って、後ろから首を刈り取るのが忍びの仕事だ」
　最初に『それ』に到達したのは風魔・遊鬼（風鎖・e08021）。黒ずくめの装束から覗く紅い瞳で見据え、グラディウスの切っ先を突き付けたその刹那。
　轟音が響き迸った雷光が飫肥城を撃つ。
「吼えろグラディウス！　至高の神を名乗る愚者どもに地球の人々の怒りを知らしめろ！　我らケルベロスの牙は貴様らに届くのだと奴等に教えてやれ！」
　雷光に晒される飫肥城を睨んだ白嶺・雪兎（斬竜焔閃・e14308）が続くと、
「連携して悪事を働くあんた達は本当に厄介なのよね！　飫肥城をまた平和に観光できる場所にする為にも、今日必ずこの地は解放するわ！」
「『宇宙の諸国家を再編統合し、第一次銀河帝国を樹立する』その時までは！　……皇帝の座に就くまではッ。負けるものですかぁぁぁぁぁ！」
　間髪入れずに汎平和的な誓を込めたジェミ・フロート（紅蓮風姫・e20983）と、己の野望を込めたズミネ・ヴィヴィ（ケルベロスブレイド・e02294）の切っ先が触れ、被せる様に轟音が響いて雷光が爆ぜ、城周囲の木々をも撃ち燻った白煙が上がると、敵襲を察知したデュランダル騎士達が飫肥城から現れる。
「『グラディウス』、魔空回廊を破壊する兵器、か……面白い。新年の初依頼、ならばそれに相応しい盛大な花火を奴等の拠点に撃ち込んでやろう！　狂いしエインヘリアルの集うその矮小なる世界を！　我が名においていざ、蹂躙せん！」
「わらわらと……どけ、我らの未来のために……！」
　だが、続けてクオン・ライアート（緋の巨獣・e24469）と楡金・澄華（氷刃・e01056）の持つグラディウスの切っ先が『それ』に触れて、巻き起こった雷撃が騎士達に降り注ぎ、生じた白煙にその姿が掻き消される。
「対神組織デュランダル……奴らの持つ剣……弟の持つ物と似ているが……いや、今は目の前の事だ。大勢で寄ってたかって袋叩きにするとか……この外道！　人でなし！　悪魔がぁああああ！！」
　そして皇・絶華（影月・e04491）の一撃。巨躯を誇るエインヘリアルで構成されたデュランダル騎士団が、地球人を仲間に加えるとは考え難い。揺らぐ心を押えた絶華の一撃に続き、
「結婚してえぇぇぇんだよぉぉぉぉぉ！！！！」
　ステイン・カツオ（クソメイド・e04948）の力の籠った一撃が叩き付けられた。
（「酒でぶっつぶれるとか年増はやだ！　子供はヤバいとか良くないことを企むやつは嫌いです……とか！　そういうのもうウンザリなんだよ！　それでもよぉ……結婚がしてえんだよ……憧れを……家族の暖かさを……夢を捨て切れねえんだよ！」）
　ステインの魂を込めた一撃に、轟音を響かせ亀裂が入った様に雷光が奔る……が、『それ』は割れなかった……。
「だめだったか……」
　澄華が、雪兎にグラディウスを渡しながら白煙漂う上空を見上げる。
「はい、８本全部預かり……」
「危ない」
　アイテムポケットに皆のグラディウスを収納しようとした雪兎目掛け、白煙の中から伸びた黒き槍を叩き落としたのは遊鬼。
「許さんぞ貴様らっ！」
　次の瞬間、白煙を切り拓き３ｍの体躯を誇るエインヘリアル『デュランダル騎士』が踏み出し、振り被っていた巨剣を絶華目掛けて振り下ろした。

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「あんたの剣、この腹筋が受け止めるッ！　どっせい！」
　その絶華の前に躍り出たジェミが、腹筋に力を込めその一撃を受け……鮮血を撒き散らしながら吹っ飛ばされた。
「なぜ、それで受けようと思ったのよ」
　天の鎖を手繰り、サークリットチェインを展開しようとしていたズミネが、慌てて吹っ飛ばされたジェミを追い、それを一瞬だけ目で追った絶華は、
「神を目指すなら勝手に目指せばいい……だがこの地を蹂躙する免罪符になると思うな！」
　騎士を見上げて焔を纏った蹴りを叩き込み、それに続いて鋼の鬼と化した遊鬼のオウガメタルの拳と、グラビティを双刃に乗せた澄華の攻撃が叩き込まれる。
「無茶すぎるわよ」
「ノリと勢いでなんとかなるかと思ったんだけど、今は反省してるわ」
　ウィッチオペレーションを施すズミネに対し、すまなさそうにそう返したジェミは、跳ねる様に起き上がると、釘を生やしたエクスカリバール振るうステインと、炎を纏ったロッドを振るうクオンを巨剣でいなす騎士に向かって再び地面を蹴る。
　そのジェミと心と刃を一体化させた雪兎が連携のとれた攻撃を見舞う直前、
「そう……居るはずない。此処に居るという事は、死んでヴァルキュリアに運ばれエインヘリアル化したという事になるのだから……」
　絶華は迷いを断ち切る様に跳躍すると、騎士の頭に重い跳び蹴りを見舞い、直後にジェミと雪兎が斬り抜けた。
「逃がしはせんぞ！」
　その攻撃を受けながらも咆えるデュランダル騎士。
「えぇ、こちらも壊せなかった以上、あなた一人ぐらい討ち取らないとね」
　ズミネはその咆哮に応じる様に妖しく笑い、地面に天の鎖を展開した。

「流石は私を手古摺らせたミッションの敵だけの事はありますね。あ、危ない！」
　叩きつられた地面から跳び散る砂礫から顔を守りつつ跳び退いた雪兎の赤い瞳には、振り下ろした巨剣をそのまま地面を削る様に薙ぎ、澄華に叩きつけられそうになったその刃を受けたステインが、大きく裂かれて大量の血を撒き散らす様が映り、駆け出そうとするのを遊鬼が掌を向けて制し首を左右に振る。複数のグラディウスを持つ彼に、無理をさせる訳にはいかない。
「……手練よ」
　ステインの回復に向うズミネと、立ち止まった雪兎から騎士に視線を戻した遊鬼は、ステインを庇う様に攻勢に出たジェミとクオンに気を取られる騎士の死角へと動き、不意打ちの蹴りを見舞う。
「ぐっ……他の者はまだ来ぬのか！」
　頭を振った騎士は、怒りを込めて飫肥城の方を見遣るが、未だ白煙は晴れ切っておらず、城の状況は分からない。その隙を突いたのは雪兎。
「数多の生き血と悲鳴を啜り、人々より忌み嫌われた紅蓮の波刃よ、今こそ我が手に来たれ。その美しき刃をもって、この地を絶叫で満たせ！」
　紅に染まる刃が騎士の身を斬って焼くと、絶華も続いて一撃を見舞う。
「小僧供っ！」
「……触れれば爆けるが鬼の腕」
　ギロリと雪兎を睨んだ騎士の首にあらぬ方向から棒苦無が突き立てられ、騎士がそれを取り除くより速く、黒影……遊鬼が跳び退さり、その苦無が爆ぜた。

「一撃一撃が重い……」
　光の粒子となって駆け抜けたクオンは、共に仕掛けたジェミと絶華を一閃で押し返す騎士を見て、そんな感想を漏らす。
「こっちですよ」
　だが次の瞬間、ステインがノーモーションで放った光の矢を受けて、その横薙ぎに振るわれた巨剣が一瞬止まる。
「刀たちよ、 私に力を……！」
　黒髪を躍らせ、その刃の上を滑る様に距離を詰めた澄華の振るう双刃……『凍雲』『黒夜叉姫』の眠る力が解放され、空間ごと騎士を断つと、ズミネが降らす薬液の雨を裂く様に遊鬼が一撃を見舞い、
「目覚めよ、ハル。緋の衣を脱ぎ去り……戦獣として、その本懐を果たせ！」
　その間に舞い上がり、騎士に向き直ったクオンが投擲した槍が、雪兎に気を取られる騎士の足元に突き刺さると、魔法陣が展開され現れた獣の咆哮にその獣の纏う緋色の影が晴れ、姿を現した熊の如き獣が騎士にその爪を振るう。
「なんだコレは！」
　突然現れた獣の振るう爪を煩わしそうに巨剣で払う騎士。
「嫁入り前のいたいけな乙女の体に傷を付けた報い……受けて貰うぜ」
「あまり長居する気はない、決めさせて貰うぞ」
　ステインの喚ぶ御業が炎弾を飛ばし、その炎弾と共に距離を詰めた澄華が、遊鬼、ジェミと共に一撃を叩き込むと、獣を打ち払ったものの、畳み掛ける波状攻撃に騎士の体がぐらりと揺らぎ、
「……なんのこれしき」
「ならば更に畳み掛けるまで！」
　片膝を付きそうになるのを、不滅の刃を以って自身を癒して踏み止まったところへ、クオンが再び光の粒子となって突っ込んだ。

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　激しく刃を交えるデュランダル騎士とケルベロス達。
　戦いの趨勢は徐々にケルベロス達優位となりつつあったが、
「８分経過です。白煙も晴れてきました」
　天青の懐中時計で時刻を確認した雪兎が声を上げる。自らが設定したタイムリミットまであと２分。次の瞬間、目配せし合った澄華と遊鬼が騎士目掛けて一直線に駆け、降り下ろされた巨剣が脳天を砕く刹那……ぎりぎりのところで左右に散る。
「風を遊びて」
「征くは影……」
　騎士の右の耳朶を打つ遊鬼の声と、左の耳朶を打つ澄華の声。そして左右から叩き込まれる斬撃。
「魔鬼に惑いて」
「残るは残響……」
　再び左右の耳朶を打つ言葉を残し２つの黒影が斬り抜けた。
「くっ……今のは……」
　血の流れ出る脇腹を押え不滅の刃のオーラを纏う騎士だったが、
「そういうのを無駄な足掻きって言うのよ。グラビティをまとめて消し去る、之即ち泰平也」
　ズミネの右腕が銃に変じると、放たれた光の奔流が今しがた騎士の纏ったオーラを消し去った。その奔流の閃光と共に距離を詰めていたのはジェミとステイン。
「あたしの腹筋の仇、とらせて貰うわよ」
「さっさと英雄神にでも喧嘩を売って来てくださいませんねぇ！　うろうろされては迷惑なんですよ！」
　赤毛のツインテールが踊り叩き込まれたジェミの拳。そのジェミの肩を借りて跳躍しエプロンの裾を揺らしたステインが、思いっきり振り被ったエクスカリバールに釘を生やし、騎士の顔目掛けてフルスイングで叩き付けた。
「こ……う……」
　呻きながら蹈鞴を踏む騎士の足元に空から降った槍の穂先が突き刺さる
「四度現れ本懐を果たせ、ハル」
　上から響くクオンの声に呼応する様に咆哮する戦獣。その振るわれる爪に穿たれる騎士に、
「我が身……唯一の凶獣なり……四凶門……『窮奇』……開聞！　……ぐ……ガァアアアアアア！！」
　絶華が皇家に伝わる奥義を以って、古代の魔獣の力を宿す。その異様な気を察知した騎士がクオンの喚んだ獣を無理やり引き剥がし身構えようとするが、
「はい、残念でございます。絶華様、どうぞ！」
　死角から雪兎が振るった『斬竜刀・灰迅』の刃が、重ね掛けられた各種バッドステータスを増大させ、騎士の動きを封じる。
　動かぬ己の体に苛立ちながら見開いた騎士の眼に映ったのは、突風の如き勢いで獣の如く襲い掛かって来る絶華の姿。８回目までの痛みは感じたが、そこで騎士の意識は闇の中へと落ちたのである。
「……ふぅ」
　崩れ落ちた騎士を前に誰かが息を吐き、皆の緊張が緩む。
「こっちだ！」
　だがそれは、晴れつつある白煙の向こうからの声と、迫る十数名も騎士達の姿に再び引き締められた。
「少しだけ遅かった様だな」
「団体さんの到着ね」
　クオンとズミネがそうごち、
「これ以上戦う理由もない、速やかに退く。耳を押えろ」
　言うや否や澄華が投じたのは音響閃光弾。
　一呼吸後に閃光と轟音が周囲に轟く。無論グラビティではないので殺傷能力は皆無であるが、先程グラディウスにより生じた雷撃を受けたデュランダル騎士団の面々は明らかに怯みを見せた。
　その隙にケルベロス達は次こそ破壊してみせるとの決意を残し、飫肥城周囲……デュランダル騎士団の勢力圏から一気に離脱したのだった。

作者：刑部	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年1月11日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 3／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 4
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