聖夜の甘くて白いドラゴン

作者:天木一

「今年もクリスマスがやってきちまった……」
 クリスマスソングが流れる中、青年が俯いて華やかにライトアップされた店の前を素通りしていく。商店街は今が売り時と、どこもかしこもクリスマス一色だった。
「どいつもこいつもカップルばっかり、俺だって彼女と別れてなければ……くそっ」
 周囲はいちゃいちゃするカップル達が仲睦まじい様子でショッピングを楽しんでいた。それに悪態をつく青年。
「クリスマスなんて無ければいいのに……」
 カップルを見ないように青年は俯き、とぼとぼとスマフォを弄りながら道を歩く。
「ここか……」
 青年が人通りの少ない路地裏で足を止めた。
「カップルを襲うクリスマスケーキのドラゴンが召喚できるっていう噂……頼む、出てきてくれ!」
 足元に蝋燭を立て火をつける。だが虚しく時間だけが経過し、やがて火は消え去った。
「はぁ~、やっぱりなんも起きないか……」
 深い溜息と共に青年が肩を落とす。その時だった、青年の胸に背後から鍵が突き立てられる。
「な?」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 驚いた顔のまま意識を失い青年が崩れ落ちる。鍵を引き抜いた魔女はそのまま姿を消す。
 倒れた青年の上に、真っ白な生クリームにイチゴをあしらった巨大なホールケーキが現れる。そのケーキから長い首に尻尾が飛び出し、そして最後に翼を生やすと、ケーキで出来たドラゴンの姿となった。
 
「もうすぐクリスマスね。でもそんな日にドリームイーターが暴れる事件が起きてしまうわ」
 落ち着いた様子の月海・汐音(紅心サクシード・e01276)がケルベロス達に新しい事件の情報を伝える。
「第五の魔女・アウゲイアスが『興味』を奪い、それを元に怪物型のドリームイーターを生み出して事件を起こしてしまいます」
 隣に立ったセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が事件の詳細を話し始める。
「生み出されたドリームイーターが人々を襲う前に、撃破してもらいたいのです」
 事件が起きるのはクリスマスイヴ、人通りも多く甚大な被害が出てしまう。
「敵が現れる場所は横浜にある商店街の路地裏です。表通りに出さないようにしなければ、人を巻き込んでしまうでしょう」
 人が多く一般人の避難には時間がかかる。出来るだけ路地裏から出さないように戦う必要があるだろう。
「敵の姿はドラゴンの形をしたケーキです。クリスマス用のイチゴと生クリームのホールケーキを元にしているようで、イチゴや生クリームにふわふわのスポンジ生地で攻撃してくるようです」
 甘くて美味しいケーキだが、ドリームイーターと化したそれは心と体に悪影響を及ぼす。
「クリスマスに一人が寂しいからといって、人の邪魔をする理由にはなりません。この迷惑なケーキドラゴンを倒し、人々が楽しいクリスマスを過ごせるようにしてください」
 お願いしますとセリカが頭を下げ、ヘリオンの準備を行う。
「クリスマスにケーキはつきものだけど、人を襲うようなケーキに用はないわね。ケーキらしくバラバラに斬り分けてしまおうかしら?」
 冷たい表情で汐音がケーキを等分に切り分けた姿を想像する。ケルベロス達も何等分にしようかと話しながら作戦の準備に向かうのだった。


参加者
月海・汐音(紅心サクシード・e01276)
千手・明子(雷の天稟・e02471)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
シャルロッテ・リースフェルト(お姉さん系の男の娘・e09272)
明空・護朗(二匹狼・e11656)
除・神月(猛拳・e16846)
フィアルリィン・ウィーデーウダート(死盟の戦闘医術士・e25594)
三城・あるま(転がる月・e28799)

■リプレイ

●噂のドラゴン
 商店街にはカラフルなクリスマスの飾りつけがされ、カップルや家族連れといった多くの人々で賑わっていた。
「ケーキで出来たドラゴン、ね。甘いものは好きだけど、人を襲うドラゴンになったケーキに用なんかないわ。処分させてもらいましょう」
 たとえ見た目が美味しいケーキでも容赦はしないと、月海・汐音(紅心サクシード・e01276)は平和そうな人々の隣を通り抜ける。
「ふむ、なんとクリスマスケーキのドラゴンとはのう……」
 付け髭をつけたウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)はその可愛らしい姿を想像する。
「お菓子属性のクリスマスケーキドラゴンとはドラゴンの者達もなんでもありじゃな」
 そんな勘違いをしながらウィゼは雑踏を進み、暗い路地裏へと出た。
「凄い噂です。クリスマスケーキとは一体なんだ? って感じですね。まあ噂でしたと終わらせるですよ」
 被害は出させないとフィアルリィン・ウィーデーウダート(死盟の戦闘医術士・e25594)は敵の姿を探す。すると冷たいアスファルトに倒れた一人の青年、そしてその傍に全長4mにもなる、巨大な生クリームケーキで出来たドラゴンの姿があった。
「まあ、可愛らしいドラゴンさん! 絵本の中から出てきたみたい、この可愛い外見でおびき寄せたカップルマジコロス感がすごいわ……」
 ケーキで出来た巨大なドラゴンを眺め、千手・明子(雷の天稟・e02471)は感嘆の声を上げて頬を緩ませた。
「よし、これで大丈夫なのです。準備は出来たのでいつでも始められます」
 立入禁止テープを張り巡らせた三城・あるま(転がる月・e28799)が、周囲を見渡して一般人の姿が無い事を確認する。
「私は囮役には向いていませんから……よろしくお願いします」
 女の子にしか見えないシャルロッテ・リースフェルト(お姉さん系の男の娘・e09272)は、囮が出来ない分も頑張ろうとぐっと拳を握る。
「どうやったら男らしくなるのでしょう……」
 そして可愛い女性の服装がぴったり似合っている自身の姿を見下ろし首を傾げた。
 敵の気を引こうと、明空・護朗(二匹狼・e11656)と除・神月(猛拳・e16846)の2人がカップルの振りをして歩き出す。
「ほらほら次は何処行くヨ? あたしそろそろケーキ食べたいナァ」
「え、えっとそうだね、じゃあケーキを食べようか」
 腕を組んで積極的に引っ張るドレス姿の神月に、護朗は照れながら翻弄されるようについていく。
『アギャー!』
 その前に可愛らしい声で吠えながら巨大なケーキのドラゴンが立ち塞がった。
「か、彼女に手を出すなんて僕がゆ、ゆるさないぞ」
 どもりながらも男として守ろうと護朗が前に出る。ドラゴンは不機嫌そうに見下ろし、口から白いクリームを放った。
「ぼ、僕が彼女を守るんだ」
 両腕を広げた護朗は一身に生クリームを浴びて真っ白になる。こっそりと後ろについていたオルトロスのタマも前に出てクリームの被害を食い止める。
「なかなか男らしージャン! こっちも負けてられないナ!」
『ミギャッ』
 軽やかにスカートを靡かせて跳躍した神月がドラゴンの顔に蹴りを浴びせて怯ませた。

●ケーキドラゴン
 ごくりと、敵の姿を見たあるまが唾を飲み込む。
「……おなかすいてきました。別腹の方が。さっと終わらせてケーキ食べに行きましょう。ホールで」
 ホールケーキにフォークを突き刺すのを想像し、あるまの纏った鋼からがおーっと音が響くと、オウガ粒子が放出され仲間の超感覚を研ぎ澄まさせる。
「ふぇ、なんとドラゴンではあるがドリームイーターじゃったか、じゃがどちらにしても成敗することに変わりはないのじゃ」
 ウィゼはまずは一般人の救出が優先だと、ひっそりと近づき青年の体を引きずって竜から離れる。
『アギィー!』
「ここから先は通しません」
 竜がその動きに視線を向けたところへ、柳眉を跳ね上げた明子は二尺三寸の刀を抜き打ち、踏み出す竜の足を斬りつけ凍りつかせた。
「囮役が出来ないなら、こちらでしっかりと役目を果たします」
 ライフルを構えたシャルロッテが狙いを定めて引き金を引く。放たれた光線が竜の顔を掠める。
 じろりと竜の視線がシャルロッテへと向けられた。
 汐音は一般人が近づかぬように殺気を放ち、注意を引き付けるように正面から駆け出す。
「それじゃ、ケーキを切り分けるとしようかしら?」
 その手に緋色の刃を生み出し、竜とすれ違いざまに一閃、刃は変形しながら胴を斬り裂き深い傷を負わせ、スポンジ生地が溢れ白いクリームが飛び散った。
『ギギャゥッ』
 竜は甲高い声を上げながら汐音に向けて口を大きく開ける。
「こっちだよ、カップルを襲うんじゃなかったの?」
 護朗が神月の傍に寄り添いながらドラゴンの牙で出来た杖をかざし、雷の壁を敵との間に作り出し、オルトロスのタマが睨んでケーキを燃え上がらせた。
 方向を変えた竜は口から生クリームを放水のように飛ばし、護朗とオルトロスの体を真っ白に染めた。
 神月は胸の前で左の掌に右拳を打ち付け、音を響かせて戦意を昂らせる。
「サイキョーの力を見せてやるゼ!」
 地を蹴って踏み込み右拳を全力で打ち出す。砲弾のような一撃は竜の腹を穿った。
「うわ、これすげー美味そうジャン!」
 引き抜いた右手に残ったケーキの塊を凝視した神月は、思わずぱくりと食べた。
「ウメェー!」
 そして目を輝かせて更に頬張り夢中で食べ始める。
「カップルさんのケーキ入刀ですか? ではこちらもクラッカーを鳴らしましょう」
 フィアルリィンは巨大なハンマーを砲身へと変形させ砲弾をぶっ放し、竜の胴に穴を空けた。
「治療します」
 あるまは小さな声でメロディを紡ぐ。すると甘い生クリームに魅了されていた仲間の意識がはっきりとしてくる。
「綺麗に切り分けるのは難しそうね」
 汐音が短剣を抜くと腕から魔術回路が繋がり魔力が通る。その刃を竜の傷口に突き立て魔力を流し内部から破壊する。
「切り分けるとしたら護朗さんのタマちゃんを入れて九等分……難しいわね。10個で切り分けるとして、トドメをさした人が一つ多く食べるのはどう?」
 間合いに入った明子が刀を振り竜の体を斬り裂き仲間に視線を向けると、ケーキを食して体調を崩した姿が映る。
「……あら、ケーキドラゴン、食べるとBSなのね……あらそう……」
 残念そうに刀を振ってついたクリームを払った。
『アギャギャー!』
 竜が崩れた体を切り離し、子供程の巨大なイチゴのショートケーキの形となって落下してくる。
「美味しそうなケーキですけど、ごめんなさい!」
 シャルロッテはアームドフォートを展開し、ケーキに砲弾を叩き込んで四散させた。
「クリスマスケーキと戦うというのも凄い光景ですね」
 ロッドを構えたフィアルリィンが雷を飛ばすと、弾けたクリームの滴が頬に張り付く。それを拭いぺろりと舐めた。
「甘くて美味しい生クリームですね、もっと食べたくなるですよ……はっ!?」
 ケーキに魅了されたフィアルリィンは、咄嗟に薬液を飲んでクリームの効果を流してしまう。
「あんなに大きなケーキ、食べれたら幸せなんだろうな……腹壊したくないから食べないけど。食べない、けど……」
 普通ではお目に掛かれない巨大ケーキの魅力に抗い、護朗は周囲に雷を張り巡らせて仲間を活性化させる。
「腹いっぱい食べたいところだけド、食べるのに夢中になっちまうからナ、運動の後にするカ!」
 正気に戻った神月が跳躍し、回転しながら蹴りを放って竜を叩き伏せた。
『アンギャー!!』
 竜が跳ねるように突進してくるのを神月が受け止めようとするが、ずぼっと柔らかいケーキにめり込み体がスポンジに包まれ身動きを封じられる。
「安全な場所に避難させたのじゃ! これで全力で戦えるのじゃ、しかし甘い香りが匂うのう」
 戻ったウィゼは手を宙で細やかに動かし、魔力を伝わせて遠隔手術するようにスポンジを切り裂き神月の体を解放した。
「美味しくても、人を惑わすようなものは要らないわ」
 汐音は大鎌に魔力を込め、大きく振り下ろして竜の翼に斬り飛ばした。
「アイスケーキに変身させてやるわ」
 明子が刀で斬りつけ、柔らかなクリームを傷口から凍らせていく。
「アイスケーキも美味しそうです」
 続けてシャルロッテの構えたライフルから光線が放たれ、竜の凍結を加速させる。
『アギャ―!!』
「仲間に手を出すのは僕が許さないよ」
 竜が倒れ込むように圧し掛かって来るのを、割り込んだ護朗が受け止める。だが柔らかなスポンジは全身を覆い、口にぽんっとクリームのついたスポンジが飛び込むと、思わず租借して飲み込んでしまう。
「お、美味しい……」
 するとお腹が満腹感を覚えて動けなくなってしまう。
「まだ腹いっぱいになるには早いゼ!」
 地を蹴って飛び出した神月の右拳がそのスポンジ生地を打ち砕き、そのまま突進して竜の体にめり込む。
「むむ、皆がクリスマスケーキドラゴンの甘い攻撃に誘惑されかけておるのじゃ、ここはあたしの黄金の果実で皆の目を覚まさせるのじゃ」
 ウィゼの手元から植物が伸びて地に根を張る。
「そうじゃのう、糖分の分解には大根が良いらしいのう。黄金の大根、つまりたくあんの加護で正気を取り戻すのじゃ」
 そこから立派に実った黄金の大根が光を放ってケーキの汚染を浄化する。
「そのケーキは危険ですね。食べられないように潰してしまいましょう」
 勢いをつけて跳躍したフィアルリィンが飛び蹴りで、竜の顔に蹴り跡を残す。
「動きを止めるのです」
 更に背後からあるまがスライディングするように飛び蹴りで足を刈り、竜を横転させた。

●イチゴのケーキ
『アギィ!』
 竜を飾り付ける大きなイチゴがぽぽんと発射される。そのイチゴの一つが明子の口に入り、甘酸っぱい旨みが口に広がる。防ごうとしたタマも同じように口をイチゴで赤くしていた。
「このイチゴ……とっても甘くて美味しいわ!」
 明子が目を輝かせ次のイチゴを食べようと手を伸ばす。
「デケーイチゴだナ、味も大味じゃなければいいけド!」
 その前に立ち塞がった神月が蹴りでイチゴを打ち落としていく。
「大きくて美味しそうですが、食べないように気を付けてください」
 あるまがオウガ粒子を放ってイチゴで赤く染まった仲間を正気に戻す。
「大きなイチゴね。でも遠慮しておくわ」
 姿勢を低くして踏み込む汐音は短剣でイチゴを斬り捨てながら近づき、胸の傷口に突き刺した。
「よくもやってくれたわね」
 正気に戻った明子は、上段に構えた刀でイチゴを弾きながら踏み込み袈裟に斬りつける。
『ギャース!』
 翼を羽ばたかせて竜が宙に浮き、頭上からイチゴを降らせようと見下ろす。
「撃ち落とします」
 シャルロッテが凍った場所に銃口の狙いをつけ、光線が竜の翼を撃ち砕くと竜が落ちてくる。
「ケーキなら大人しく食べられておればいいのじゃ」
 ウィゼが伸ばす蔓が巻き付き落下した竜を締め上げ拘束する。
「美味しかった……けど、操られるのはゴメンだね。これ以上ケーキを見てるのは精神衛生上悪いからとっとと倒そう」
 頭を振ってクリームを払った護朗は、黒い液体を槍のように伸ばして竜を貫いた。
「ケーキ何個分でしょうか、ですが食べられないなら意味はないですね」
 フィアルリィンが砲身を抱えて引き金を引くと、放たれた砲弾が竜の腕を吹き飛ばす。
『アギャ―ス!』
 形を崩した竜は必死に口からどんどんクリームを飛ばしてくる。
「食べちゃいけないケーキなんて、消えてしまえ!」
 護朗が杖を向けると稲妻が走り、クリームを吹き飛ばしながら竜を打ち据える。
「全ッ力で、いっきますよーっ!!」
 アルマジロに変身したあるまは、丸まり高速回転しながら突進して体当たりをぶちかます。ぶつかった衝撃で変身が解け、距離を開けて着地した。
「いただきまース!!」
 よろめいた竜に取りついた神月が降魔の力を宿して肩に噛みついた。そして齧りとったケーキを美味しそうに頬張る。降魔の力によりケーキの魔力が中和され、美味しいケーキは体に活力を与えた。
『ギギギギィヤーーーーッ!』
 悲鳴のような声を上げて竜は体を切り離して神月を放り出し、ケルベロス達から距離を取ろうとする。
「アヒルちゃんミサイルで、大きな蝋燭が刺せる穴を空けてやるのじゃ」
 ウィゼがアヒル型ミサイルを発射し、そのドリルのような嘴が竜の体に大きな穴を空けた。
「クリスマスの邪魔にならないよう、そろそろ終わりにしましょう」
 シャルロッテがアームドフォートを向け、砲弾が脚を吹き飛ばしバランスを崩させる。
「そうですね、終わらせて楽しいクリスマスを迎えましょう」
 フィアルリィンが電撃を放ち、竜を感電させて動きを止めた。
「この刃は……よく通るわよ……!」
 塀を蹴って跳躍した汐音が上段に構えた緋色の刃を振り下し、竜の体を真っ二つに両断した。
『ィギャッ!?』
「等分に切り分けてあげるわ!」
 一度刀を鞘に納めた明子が、一気呵成に刀を幾重にも振るいケーキを分割した。
「どう? なかなかのものでしょう?」
 地面の上に切り分けられたケーキが並び、やがてそれも消滅すると竜は跡形もなく消えてしまった。

●クリスマス
「出来心だったんです! 申し訳ありませんでしたー!」
 目覚めて事情を説明された青年が頭を下げる。
「来年もその次も、クリスマスは来るんです。そのとき彼女がいて、今のあなたのようなひとがクリスマスを台無しにしようとしたら……どう思いますか?」
「そ、それは……本当にすみませんでした!」
 あるまの言葉に、軽い気持ちが大変な事になってしまったと男は深く頭を下げた。
「カップルでなくても、楽しいことはたくさんありますよ!」
 反省した青年を励まし、頭を何度も下げながら立ち去る青年を見送る。
「あー旨かっタ、けど食い足りないナァ」
 口の端についたクリームを拭い、神月は一口しか食べられなかったと不満そうにお腹を撫でる。
「ケーキ食べたいなぁ……」
 ケーキは食べるもので浴びるものではないと、全身から甘い香りをさせた護朗が愚痴る。
「そうね、本物のケーキが食べたくなったわね」
 明子がまだ口にイチゴの味が残っていると赤い色のついた舌をペロリと見せ、これから食べに行こうかと仲間達を誘う。
「ふむ、クリスマスにケーキは定番じゃからの」
「いいですねクリスマスケーキ!」
 せっかくならクリスマスを楽しんで帰ろうかとウィゼは頷き賛同し、シャルロッテもケーキと聞いてはしゃぐ。その姿は何処からどう見ても少女そのものだった。
「きちんとしたの皆で食べましょう」
 ここからが本当のクリスマスですと、フィアルリィンはクリスマスのメロディが流れる商店街へと歩き出す。
「メリークリスマス、ね」
 そんな皆の様子に口元を優しく綻ばせ、汐音は夜空に星のように輝くイルミネーションを見上げた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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