黒き聖夜の使いは運ぶ

作者:幾夜緋琉

●黒き聖夜の使いは運ぶ
 12月24日、クリスマスイブ。
 聖夜が間近に迫り、子供達としては、クリスマスプレゼントを貰える日、と楽しみな日。
 ……しかし、そんなクリスマスイブの夜に、眠る少年が見るは、黒いサンタクロースの夢。
 ブラックサンタクロース……ドイツを中心に広まっている伝承。
 嬉しい嬉しいプレゼントを渡すサンタクロースに対し、嫌なお仕置きを持ってくるブラックサンタクロースが……自分を、大きな大きな袋を持って追いかけてくる夢。
 ……間近に迫り、捕まりそうになった、その瞬間……はっ、と夢から醒める少年。
『はぁ、はぁ……い、今の何……夢、だったの……?』
 と言うと、そんな少年の傍らに、そっと現れる第三の魔女・ケリュネイア。
 彼女は、起きたばかりの少年の心臓を、手に持った鍵で一突き……心臓を貫くと共に、気絶する少年。
 そして、そんな少年を見下ろしながら。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 と言うと、それと共に、現れる真っ黒なブラックサンタ。
 そして、ブラックサンタは、ほっほっほ、と笑いながら、家を出て行くのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まって頂けたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスらに元気よく挨拶すると、早速説明を始めていく。
「間もなくクリスマスって事で、ケルベロスの皆さんも磯がアシイって思うんッスけど、クリスマスに伝わる一つの話、ブラックサンタって話知ってるッスか?」
 と言いつつ、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)に視線を配る。
「今回、このブラックサンタの夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われて、その驚きを奪われる事件が起きている様なんッス」
「この驚きを奪ったドリームイーターは、既に姿を消してしまってるんッスけど、この驚きを元にして、現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしてるッス」
「そこでケルベロスの皆さんには、このドリームイーターによる被害が出る前に、撃破してきて欲しいッス。ドリームイーターを倒す事が出来れば、驚きを奪われた被害者も目を覚ましてくれる筈ッスから!」
 と、更に続けてダンテが。
「このブラックサンタっすけど、攻撃手段もやっぱりブラックサンタらしいッス」
「悪い子に渡すプレゼントとして、石炭とかジャガイモを投げつけてきたり、豚の臓物をぶちまけてきたり、攻撃を躱しつつ、その背中に背負ったサンタの袋に人一人をぶち込んできたりするみたいッス」
「……特にサンタの袋に入れられると、脱出するまで行動不可能になる上、捕まっている最中は、防御不可能でボッコボコにされる様ッスから、ブラックサンタに捕まらないように要注意ッス!!」
「又、このドリームイーターは夜の市街地を歩いていて、驚かない相手を特に集中的に狙う様ッス。クリスマスイブの夜、暗い夜道にブラックサンタってのは、ある意味一番目立たなさそうな格好ッスけど、彼は人を驚かせたくってしょうが無いッスから、町を歩いていれば、きっと向こうから仕掛けてくると思うッス!」
 そして、ダンテは最後に。
「子供達のクリスマスに対する夢をぶちこわしにするドリームイーターは絶対に許せないッスよね! ケルベロスの皆さん、どうか子供が幸せになれるよう、宜しく頼むッス!!」
 と、皆を元気づけるのであった。


参加者
フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)
白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)
ユグゴト・ツァン(凹凸普遍な脳深蕩・e23397)
山内・源三郎(姜子牙・e24606)
キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)
アルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)
ヨハネ・メルキオール(マギ・e31816)

■リプレイ

●聖夜の黒き使い
 12月24日、クリスマスイブ。
 愉しい愉しいクリスマスの日……その夜に眠る少年が見るは、黒いサンタクロース、ブラックサンタクロース。
「んー……ブラックサンタって、悪い事をした子供のところに来る奴だろう? 無差別に襲ってるんじゃ、全く効果無いし、意味ないじゃないか……」
「有無。黒き臓物は不要だ豚の臓物を齎すならば『奴』の脳を抽出すべき。素敵な彼への手土産にな」
 ヨハネ・メルキオール(マギ・e31816)とユグゴト・ツァン(凹凸普遍な脳深蕩・e23397)の言う様に、勿論求められていないブラックサンタクロース。
 子供達の嫌がるものをプレゼントしてくるという……誰だって臓物なんてプレゼントされても嬉しい訳が無い。
 そして、そんなブラックサンタクロースは、第三の魔女・ケリュネイアの生み出したドリームイーターと言うから、尚更性質が悪いと言えるだろう。
「世界にはいろいろなお話しがあるのですわね。でも、あまり良く無い事が起るお話しであっても、教訓があったりしそうですのに……」
「ええ。サンタさんの伝承は、聞き習ってはいましたけど……黒いサンタさんは、出来れば子供達にはのーせんきゅー? で、ありたいですよ、ね?」
「ええ。ブラックサンタさんがこのような狂暴なものに……デウスエクスにはちゃんとしたサンタさんがいらっしゃらないのですわね」
「全くだ。やれやれ……悪夢一つでデウスエクスが産まれるとは厄介な事この上ないが……ま、それで子供の悪夢を防げるのなら頑張ろうじゃないか」
 霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)、白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)、フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)らの交わす会話。
 そして、アルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)と山内・源三郎(姜子牙・e24606)も。
「どちらにせよ、ブラックサンタも、返り血で染まってる系のサンタもご遠慮願いてぇんだけどな……ま、仕方ねえか……」
「そうじゃな。子供達にとっては大事な大事なクリスマスじゃろうし、幸福なクリスマスを取り戻してやらねばのう?」
 そしてちさは。
「ええ。日本では、サンタさんには夢を配って欲しいですわねっ。我が家にくるサンタさんもとても優しいですのに……プレゼントも酷いものらしいですから……このブラックサンタを倒して、楽しいクリスマスを取り返しますわっ!」
 拳をぎゅっと握りしめたちさの気合いに、こくこく、と頷く有璃。
「ええ。じんぐるへるに、させないように……クリスマス前に、討っちゃいましょう……」
 そして、キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)が。
「……それでは、皆様、準備は宜しいでしょうか……? では、参りましょう」
 と皆を促すと共に、ケルベロス達はブラックサンタが現れる街角へ繰急ぎ向かうのである。

●黒き使いは悪夢を運ぶ
 そして……ブラックサンタクロースが蠢く街角を捜索するケルベロス達。
 夜の町、それもクリスマスイブの深夜……更に繁華街では無いからこそ、余り出歩いている人は少なかった。
 勿論、一般人が全く居ないという訳では無い為、警戒しつつ、歩いている人に対してはフリードリッヒが殺界形成を使用。
 そうして、一般人達を自然と其の場から足を遠ざけるように仕向けていく。
 ……そして、大体一時間程が経過した、その時……シャンシャンシャン、と言う鈴の音が聞こえてくる。
「……ん?」
 と、その鈴の音の方に顔を向けるが……何の姿も無い。
「何だ、誰も居ないじゃ無いか」
 とヨハネが呟いたその瞬間……頭上の方からするっと姿を表し、姿を現わす、ブラックサンタ。
 真っ黒なサンタ服に身を包んだ彼は、深夜の闇に紛れていて、注意深く見ていないと、判断出来ないような、そんな状態である。
 ともあれ、そんなブラックサンタに。
「って、わ、わ、わ、ほんとに、でまし、たーーっ!?」
「うわ! なんだこの闇に溶け込んでいるサンタは! おどろおどろしいにも程があるぞ!」
 と、大きく、大げさな位に驚く夕璃、ヨハネ。
 更にそんなブラックサンタが、ぴょんぴょんとジャンプしながら動き回る。
 その軽快な動きと共に、その背に抱えた袋からちらりとみえる、赤い臓物……。
「黒いサンタ!? ま、まさか本当にいるなんて!」
「それに……な、なんだよそれ……内蔵、かよっ!?」
「いああ! こないでっ!!」
「おぎゃぁ!! う、うう……こ、腰が抜けて動けぬ……腰が抜けたー。死ぬー、誰か運んでくれー、タスケテー……」
 と、フリードリッヒ、アルト、ユグゴト、源三郎らも次々と驚き、恐怖を覚えたフリで振る舞う。
 そんな仲間達の恐怖の言葉に対し、ブラックサンタは何処か嬉しげ。
 だがしかし、残るキャロラインとちさは。
「これはこれは、サンタクロースさんがいらっしゃいました!!」
「え……これ、何ですの? 黒いサンタクロース……今迄に見た事ありませんわね」
「でも、サンタクロースさんはサンタクロースさんでも、黒いサンタクロースさんは見た事はありませんわね?」
 ……と、驚くというよりは、嬉しそうにしている。
 そんなちさとキャロライン二人に、ブラックサンタスは、むぅ、と不満そうな表情を浮かべる。
 そして、二人を攻撃のターゲットに定めたブラックサンタは、そのポケットから黒く、堅い石炭を取り出して、投げつけてくる。
「危ないですわね。でも、その程度の攻撃、喰らいませんわ!」
 と、身を翻して攻撃回避。
 そして、ケルベロス達の攻撃。
 取りあえず、キャロラインはオートパーカッションを展開し、更にスモークグレネードとライブポールを展開し、其の場を即席のライブ会場へ。
 そして、サウンドディフューザーで、ギターを掻き鳴らし。
「聖夜の夜を飛び越えて、あの星を取りに行こうよ。ひとりぼっちの寂しさはもう、遥かに小さく見えるよ。トナカイのソリを貸し切って、陽気にステップを踏んで、さあ、今夜は踊り明かそう。キミと過ごす、今夜はパッパッパーティータイム!!」
 と、軽快かつ、何処か心の躍るリズムメロディを奏で、狙アップを付与していく。
 そして、命中率が上がったところで、更にスナイパーのフリードリッヒ、ヨハネが続く。
「さあ、覚悟したまえよ、ニセモノ君。ボクは本物のサンタとは友人でね!」
 とフリードリッヒが言いながら、『歩くびっくり箱』を展開。
 煙突から産まれた煙から、赤服のサンタクロースの姿をした使い魔を召喚し、そりで突撃させていく。
 更にヨハネも、レゾナンスグリードで捕縛効果を追加する。
 取りあえず、スナイパー効果により高命中率で穿った一撃の一巡。
 更にユグゴトが。
「悪質な臓物は塵箱に投擲し、素敵な聖夜を望み給え」
 と、ドラゴニックミラージュで炎を追加、ちさと夕璃のディフェンダー陣も。
「それでは、行きますの!」
「サンタさんは、幸せを運ぶものです……叱る事はしても、きっと、攻撃して誰かを不幸にさせることは……しませんっ!」
 とトラウマボールと、絶空斬で斬り込んでいく。
 ……そして、クラッシャーの源三郎と、アルトは。
「全く、人を驚かせて楽しむとは、全く性根ねじ曲がっとるぞい。その根性、叩いて真っ直ぐにしてやるぞ!」
「そうだな。袋に閉じ込められるなんてぜーったい嫌だ。臓物の入ってる袋に入れられるなんて鳥肌が立つわ」
 と、『WOLF-CLAW』と破鎧衝で連携攻撃を叩き込む。
 そんな多重攻撃に、ブラックサンタはちょっと驚きの表情を浮かべる。
 だが、すぐさま余裕の表情を再度浮かべ、その黒いふさふさの髭を撫でる。
 そして、次の刻。
 ブラックサンタは、またも素早く動き……ちさを、その背の袋に閉じ込めようとする。
 だが、それをさせない様、夕璃とユグゴトのミミック、エイクリィが立ち塞がる。
「させません! もっと鋭く、もっと……踏み込んでっ……!」
 と、至近距離に接近し、雷刃突と、愚者の黄金で迎撃する。
 妨害されたブラックサンタは、仕方なく一端距離を取り直す。
 ……そして、続くフリードリッヒがシャドウリッパー、ヨハネがスターゲイザーで、更なるバッドステータスを積み重ねる。
 ある程度、バッドステータスが積み重なった頃合いを見計らうと、ユグゴトが撲殺釘打法のジグザグで、そのバッドステータスを倍加させる。
『ウゥ……』
 苦しみ、片膝突くブラックサンタ。
 そんなブラックサンタへ、更にアルト、源三郎が。
「全く、臓物を投げつけて驚かしたり、子供達の嫌がるものを渡すなんて、そんなのサンタクロースの風上にもおけねえよな」
「うむ。幼い子供心にトラウマを残す様な輩をのさばらせておくわけには行かぬ。さあ……これでも喰らえい!」
「ああ。戒めるは焔気、刻むは遺恨の傷、滅ぼすは怨敵!『戒焔剣:焔讐』、斬り刻めェ!!」
 と、全力を込めた、降魔真拳と『戒焔剣:焔讐』の一撃。
 クラッシャー効果により、倍加されたダメージソースが、一気にブラックサンタを削りとっていく。
 そして、ブラックサンタの攻撃は、ちさと夕璃、エイクリィが交互にカバーリングし、捕らえられそうな時は別の者が、すぐにそこから退避出来るように補助。
 勿論、削れた体力は、ちさのウィングキャットのエクレアが速攻で清浄の翼で回復を行う。
 ……そして、経過する事、十数分。
 疲弊したブラックサンタは、最早立っているのでも精一杯。
「……そろそろ、限界の様ですね」
 と、後衛についていたキャロラインが仲間達へ告げると共に、全員による連続攻撃。
「無垢な子供にトラウマを植え付けるような輩は、全てが灰に帰るまで燃やしてやろう。思い出せ、己が罪を」
 とヨハネの宣言と共に放たれる『Queen of the Night Aria』が、ブラックサンタを業火に包み込み……その炎の中、彼は燃え尽きて行くのであった。

●安息の聖夜
 そして、ブラックサンタを倒したケルベロス達。
 安堵の一息を吐くと共に、周囲を確認。
「……うむ、大きな被害も無さそうじゃのう。まずは一安心といった所か」
 と源三郎はにかっ、と笑う。
 そして、ちさが。
「そうですの。後は、悪夢の元になった子供の安否を確認したい所ですわね?」
 と提案すると、ユグゴトが。
「私が子に贈るべきは愉快痛快な宴。サンタに用事は皆無。総ての幸福は己の掌で、撒き散らすべきだ」
 と言うと共に、笑顔でその場から去って行く。
 そんなユグゴトの後ろ姿を見送りながら。
「んー……まぁ、ちさの言う事もそん通りだし。一応、一足早いケルベロスサンタでもしとくべきかねー? ……いや、流石に変なモン渡そうとしてたら止めっけどよ」
「そうだな。ま、ささやかなプレゼントって奴でも置いてくとしようか。アルトはどうすんだ?」
「俺? んー……無難なのでいーんじゃねぇの?」
 とアルト、ヨハネは会話しつつ、少年の家へ。
 ……そして、少年の元へと向かい、その枕元にグリーティングカードと、ケーキを入れたプレゼントボックスを用意。
 歩くびっくり箱でサンタ型使い魔を呼び出し、少年の元へと届けさせる。
 そして……少年の枕元に暫し居ると、少年は……目を覚ます。
 目を覚まし、ぼんやりとしている少年の目の前で……煙となって消えるサンタ使い魔。
『……あれ、サンタさん……?』
 煙となって消えたその姿に、ちょっと信じられないような、でも、信じたいような……そんな気持ち。
 ……そして、そんな少年を、窓越しで見ながらちさはくすりと微笑んで。
「ふふ……メリークリスマスですわねっ。さあ、私達も折角ですし、クリスマスをやり直しませんか?」
 と言うと、夕璃は。
「うん……あ、でも……少し、お買い物してから……でいいかな……? 千尋さまへクリスマスプレゼント、用意しなきゃ……」
 と言うと、ちさは。
「勿論ですわっ。それじゃあ、一度街に繰り出しましょう」
 と微笑む。
 そんな仲間達の言葉にアルトは頭をぽりぽりと掻きながら。
「あー……そうだな、解った。皆も行くならな」
 と頷き、そして遅くなったクリスマスを楽しみに、街へと向かうのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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