雪覆われし大地より

■リプレイ

●肥沃の地に
　北海道は道東部に広がる、大きな大きな釧路湿原。
　釧路川を湛えた、広大な大湿原地帯……そこに潜みし死神が、テイネコロカムイ。
「釧路湿原……またこの地に屍が釣れて来られたんだね」
「ん、だなぁ。今回の死神は……あー、テイネなんとかだったか。俺の大好きな黒衣のクソ女神じゃねぇけど、あいつに浮気だと嫉妬でもされるのかねぇ」
　と、リョウ・カリン（蓮華・e29534）に肩を竦める綺堂・暗慈（奏者・e04801）。
　それに源・瑠璃（月光の貴公子・e05524）が。
「テイネコロカムイ、北海道で眠ってていいはずの命を無理矢理起こし、手駒として使う相手……命を冒涜する奴らは僕にとって不倶戴天の敵だ。それが狂暴なオークであろうと、眠ってていいはずの命なんだ」
　と軽く、拳を握りしめた瑠璃。そして暗慈も加えて。
「ま、どのみち死神はどいつもこいつも気にくわねえ。邪魔する理由はそれで充分だろ」
「うん。オークが被害を及ぼす前に、せめて僕たちの手で止めて上げよう。とても苦しそうな様子だから」
　そう……今回、テイネコロカムイに使われるコマとなったのは、狂気に包まれしオーク。
　元から女性陣を辱めたり、触手で絡め取ったり、と……そんな元々狂ったような行動をしている奴らではある。
「ん……理性の無いオークって通常運転なんじゃ……？　と思ったけど、これは全然普通じゃなさそうだよね」
「そうだな。オークかぁ……生前も婦女子に対して厄介な奴だけど、死んでからもまた面倒な奴だよなぁ……それに本能のままに暴れるってことは、婦女子を優先的に狙ってたりするんだろうか？」
「どうだろなぁ。まぁ、普段は女女ってうっせぇオークも、こうなっちまうと何処となく憐れな気ぃすんなぁ」
「クククク……醜く汚らわしい豚が相手か。余り近寄りたい相手ではないが、これも力あるものの努めというものよ。我が葬り去ってくれるわ！」
　ルビー・グレイディ（曇り空・e27831）、セルリアン・エクレール（スターリヴォア・e01686）、不知火・梓（酔虎・e00528）に龍造寺・天征（自称天才術士・e32737）らの会話。
　と、そんな仲間達の言葉を聞きつつ、仙道・風（しゃべくり鎌鼬・e31694）が。
「うー……寒い、寒いでござるよ。早いところ終わらせて炬燵で暖まりたいでござるよ……」
　軽く震えている。
　そんな彼女の言葉に瑠璃が。
「北海道ですしね……寒いのも無理は無いと思います。もし宜しければ、手袋なら貸せますけど……？」
「いや、大丈夫でござる。ありがとうでござるよ」
　にこっ、と笑みを浮かべる風、そしてリョウは頷きながら。
「まぁこれ、良く無い企みがありそうだけど……先ずはこの死神達をどうにかしないとね」
　と言い、そしてセルリアン、梓も。
「ああ。しっかしまぁ、サルベージされた相手と戦うのはまだ二回目だけどさ、死して尚安寧が得られないって言うのは可哀想だよね。さっさと眠らせてあげようか」
「んだな。とりま、このオークを成仏させてやるとしようかねぇ」
　と言うと共に、長楊枝を銜える梓。
　そしてケルベロス達は、釧路湿原の狭間へと急ぐのであった。

●意思無き狂者
　そして、周りがすっかり暗くなり、深夜の刻。
　周囲には幸いな事に人の気配も無く、静寂に包まれる空間……その中から聞こえてくるのが、獣の咆哮。
「グォオオオ……！！」
　と唸り声を上げるオークはどこか、狂気に陥り、完全に狂い墜ちている。
　そんなオークの侵攻先を待ち構え、暫し……。
『グ、ガアア……！！』
　と、更なる咆哮を上げて、視界へと入る。
　そんなオークの叫びに対峙し、真っ正面から立ち塞がるケルベロス。
「会話は不要……だよね。私達はケルベロスとして、人理を守る者たちとして、貴方を壊す」
「うむ。クククク……ふよふよと泳ぐだけの脳しかない死神め。我の一撃で葬り去ってくれるわ！」
　とリョウ、天征の宣告。勿論オークは、全く聞く耳は持たずして、暴れ回るばかり。
　その視線、動きを見極めながら。
「いい機会だし、じっくり研究させてもらうさ。サルベージの術式とか、キミの身体に残ってたりすると助かるんだけど……まぁ、しばらく自分の相手をしてくれるかな？　なーに、退屈はさせないよ。苛立ちはするかもしれないけどね？」
「斬り結ぶ、太刀の下こそ地獄なれ。踏み込みゆかば、後は極楽、ってなあ？」
　セルリアン、梓二人の力強く宣言し、戦闘開始。
　先陣を切って、オークの前に敢然と立ち塞がるのは、ディフェンダーについた暗慈、風と、ルビーのミミックのダンボールちゃん。
　対峙してきたケルベロス達に、オークは。
『グ、アア……！！』
　とその手に持った斧の様なモノをぐるん、と振り回してくる。
　強い勢いの、その一撃……咄嗟に飛び跳ねて回避するダンボールちゃん。咄嗟に瑠璃がサークリットチェインで前衛陣に盾アップを付与し、補助する。
　そして暗慈は自分に分身の術でＢＳ耐性を付与すると、一方風とダンボールちゃんがは。
「さあ、行くでござるよ。ひょいひょいひょーいと投げるでござる！！」
　とクナイを手に取り、スパパパパーン、と『クナイ投げ』に、愚者の黄金。
　更にセルリアンが、オークを足留めする為に稲妻突き。オークにパラライズを、ジャマー効果と共に叩き込んで行く。
　そんなディフェンダーとジャマー陣の攻撃で、確実にオークを足留めしておく一方、残るケルベロス達は、オークの後方でふよふよと浮遊する怪魚型死神達を打ち砕く為に動く。
　まずはスナイパーに配するルビー、天征二人。
「そこにちょこまか泳ぎ回ってるお魚さん達ー。少し、大人しくしててねー」
　とルビーのエスケープマインに加え、天征の武神の矢。
　続いてクラッシャーの梓とリョウが、オークを躱しつつ、怪魚型死神に接近して。
「クラッシャーてなぁ、敵を倒す事が役割だろってなぁ」
「そうだね。ほら、あたれっ！！」
　と絶空斬と、ケイオスランサーで連携攻撃を叩き込む。
　大ダメージを一匹に集中させ、早急に怪魚型死神を叩きつぶす作戦……オークを足留めしている仲間達も、いつまでも持つとは限らない。
　だから、急ぎ怪魚型死神を倒す為に、全力全開で攻撃をしていく。
「本当ふわふわ浮かんでるねー。しっかり狙ってー、えい！」
　と、ルビーがホーミングアローを撃ち抜けば、天征もペトリフィケイション。梓のデスサイズシュートに、リョウがドラゴニックミラージュ。
　怪魚型死神にダメージを積み重ねながら、一方セルリアンが縛霊撃で足留めのバッドステータスを多く積み重ねていくと、暗慈、風、ダンボールちゃんのディフェンダーで確実に足留め。
「我が身は鋼　我が心は空　天魔覆滅』
　と『天魔覆滅』に、風の黒影弾が撃ち抜かれ、そしてダンボールちゃんのガブリングで噛みついていく。
　オークは狂気のままに、ただただ攻撃するばかり。ただ、怪魚型死神達も、自分達のダメージの回復で忙しく、オークに対する回復は手隙になってしまう。
　そして、刻一刻と時が経過していく……５分程で、やっと怪魚一匹を打ち崩す。
　しかし一匹を打ち崩した後は、次第に怪魚型死神を倒すペースも上がっていく。
　そして、十数分経過し……全ての怪魚型死神を叩き伏せ、残るはオークのみ。
　しかしオークは、仲間達が死のうとも、狂気のままにただただ攻撃をしてくるばかり……そんなオークの動きを見ると、何だか、もの悲しさも覚えてしまう。
　とは言え、彼を殺さないという選択肢は無い。
　怪魚型死神を退治していた仲間達が仲間達に合流すると。
「さて、そろそろ終わりにしようか」
　とルビーの言葉に天征が。
「そうｊだな。オーク等に我が一族の秘技を使うなど勿体ないが、そうも言ってはおれんか。ならば受けてみよ！」
　と力強く宣言し、『機神竜オーバードライブスーパーノヴァ』の、渾身の一撃を叩き込む。
　その一撃が、オークの身体を劈く。
　そして……暗慈が。
「終を詠い、哭きを奏でる。冥土の土産に聞かせてやる。お前の為の葬送の旋律を」
　と暗慈は赤い琵琶を構え、奏でる。そして風もシャドウリッパーで多重に斬り付けていく。
　そして、梓、リョウの二人が接近。
「ほれほれ、どうだ？　もっと対抗してみろ！」」
　と梓が渾身の絶句斬の一撃を叩き込み、地面へと叩きつける。そして。
「その魂、どうか安らかに……」
　とリョウが放つ、ギロチンフィニッシュの一撃。
　フィニッシュ効果を伴うその一撃は、オークを完全に滅殺するのであった。

●凍える雪の下
　そして……オークと怪魚型死神を全て倒したケルベロス達。
「ふぅ……終わった終わったぁー……っとなぁ」
　と言いながら、長楊枝を再度銜える梓。
　そして倒したオーク、死神の死骸を見渡すが……既に死骸は無い。
　ただ、使っていた斧などの破片は所々、地面に転がっていて……それらを回収すると共に、リョウと暗慈が地面に穴を掘り、埋葬。
　……一通り埋葬すると共に、暗慈は弔いの祈りを捧げる。
　そして立ち上がると共に、暗慈は仲間達にひらひらと手を振って、早々に帰路につく。
「……待ってろ死神共。てめぇらが気付いた時は、既に俺たちの手の中だ」
　と呟く。
　そして……残ったケルベロス達は、周囲に残る気配を捜索。
　オークと死神の残した跡や、テイネコロカムイの手がかりが無いかを一つ一つ、しっかりと調べ上げようとする。
　だが……思う様に、テイネコロカムイの手がかりは余り得る事が出来ない。
「うーん……まぁ、この手がかりで、少しは調査が進むといいんだけどね」
「そうじゃな……」
　リョウとルビーが頷きつつ……肌寒い釧路湿原の冷たい空気を味わいながら。
「しかし、テイネコロカムイは何故、このような場所で、死者を復活させ続けているんでしょうね……何か、考えでもあるのでしょうか……」
　と瑠璃が小さく首を傾げる。
　ともあれ、テイネコロカムイの悲しい連鎖を止めたい……という気持ちは確か。
　そしてケルベロス達は、唇を噛みしめつつも、釧路湿原を後にするのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年12月23日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。