血のクリスマス事件~機械サンタの贈り物

作者:東雲ゆう

●イブの悲劇
 12月24日、埼玉県所沢市。
 まだ日も昇りきっていない時間だが、その家に住む兄弟は明日のクリスマスが待ちきれないのか、早くに目を覚まし2人で窓の外を眺めていた。
 そんな時。
「あ、サンタさんだ!」
「えっ?!」
 弟の声につられて兄が見上げると、確かにそこには大きな白いものを背負った赤い影が、トナカイらしきものと一緒に飛んでいる。
 2人は一斉に歓声を上げたが、その異形のサンタとトナカイがものすごい勢いで近づくにつれ、その歓声は悲鳴へと一変した。
 
●ゴッドサンタの企み
「リヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)さんたちの調査によって、VRゲーム型ダモクレスの事件が、大侵略期の地球で『血のクリスマス』と呼ばれる大虐殺を引き起こした侵略型超巨大ダモクレス、『ゴッドサンタ』復活の予兆であったことが分かったわ」
 レナ・グルーバー(ドワーフのヘリオライダー・en0209)の話に、ケルベロスたちは静かに耳を傾ける。どうやら、最近頻発していたVRゲーム機型ダモクレスの真相は、ゴッドサンタの配下によって、少し早いクリスマスプレゼントとして子どもたちに届けられた、ということのようだ。
 レナは少し顔をしかめて続ける。
「悪いことに、『ゴッドサンタ』は自分が復活するための更なるグラビティ・チェインを得るために、クリスマスを楽しみにする人々を血祭りに上げようと企んでいるみたいなの」
 穏やかではない言葉にケルベロスたちがざわめく。それが落ち着くのを待って、レナは言葉を繋げた。
「襲撃が発生するのは、12月24日の早朝。この襲撃が成功し、グラビティ・チェインがゴッドサンタの元に集まれば、クリスマスの夜にゴッドサンタが完全復活して、大惨事は免れないわ。
 そんなことは絶対に避けなければならない。……みんな、力を貸してくれるかしら?」
 力強く頷くケルベロスたちに軽く頷き返すと、レナは手元のタブレットに目を走らせる。
「『ゴッドサンタ』の配下として実際に襲撃を行うのは、『ヴィクトリーサンタ』と『ヴァンガードレイン』という2体ひと組の量産型ダモクレスよ。彼らは12月24日の早朝に、日本各地に一斉に現れ、クリスマスを楽しみにしている人々を襲ってグラビティ・チェインを奪い取ろうとしているわ」
 続いて、レナは、ここに集まったケルベロスには埼玉県所沢市の住宅街に出没するヴィクトリーサンタとヴァンガードレインの迎撃に向かってほしいことを伝える。
「敵の強さについてだけれど、ヴィクトリーサンタとヴァンガードレインの2体でケルベロス8人と互角、といったくらいよ」
 さらに、敵の情報を検索してレナは説明を続ける。
「ヴィクトリーサンタは、背中に背負った巨大なバスタービームから、『プレゼント』と称して様々なものを発射してくるみたいよ。
 1つ目は、『死のプレゼント』と称したエネルギー光線。
 2つ目は、『煙のプレゼント』と称した、敵のグラビティを中和し弱体化する効果のある煙幕。
 そして3つ目は、『雪のプレゼント』と称した凍結光線よ」
 いずれもあまり欲しくない贈り物である。
「ヴァンガードレインの方は、角から放つ電撃攻撃を得意としているわ。その他にも大きな角を利用した突き上げ攻撃や、突進攻撃を仕掛けてくるから注意してね」
 一通りの説明を終えると、レナは改めてケルベロスたちを見回す。
「この襲撃を阻止する事が出来れば、グラビティ・チェインの枯渇したゴッドサンタを撃破するチャンスがあるかもしれないわ。そういう意味でも、ここが頑張りどころよ」
 そして、何より――。
「クリスマスを楽しみにしている皆を、とんでもないサンタとトナカイから守らなくちゃね!」
 勢いよく拳を上げたレナは、ケルベロスたちに微笑んだ。


参加者
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)
市松・重臣(爺児・e03058)
ラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)
新条・あかり(点灯夫・e04291)
黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)
上里・藤(レッドデータ・e27726)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)

■リプレイ

●クリスマスイブの異変
 12月24日、その早朝。
 まだ薄暗いなか、一匹のブチ猫がひらりと屋根に飛び乗ると、ぐるりと辺りを見渡す。――実はこのブチ猫、黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)である。
 今回、予知のあった家は、敷地の南側が庭と駐車場で、庭に面した1階がリビング、2階が寝室になっている。ただし、事前に家族を避難させてしまうと予知が外れてしまう恐れがあるため、ケルベロスたちはダモクレスの飛来する南側から死角になる家の陰や庭の木の中に潜んで襲来を待ち構えることにしたのだ。
(「うん、今のところは大丈夫そうっすね、物九郎さん」)
 切妻屋根の北側の傾斜にやってきて伏せった友人に、上里・藤(レッドデータ・e27726)が小声で話しかける。その横には、二人と同じように屋根に腹ばいになっている比良坂・陸也(化け狸・e28489)がいる。
(「ヒメちゃんと共にイブを過ごすために、手間取るわけにも、夜に新たな戦いが起きるようなこともさせる訳にはいかない!」)
 決意を胸に、上空から見えないよう木陰に身を隠したギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)の傍には、同じように庭の木に登り息を潜めているラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)と新条・あかり(点灯夫・e04291)がいる。
「む……!」
 停めてあるワゴン車の陰で双眼鏡を覗きこんでいた市松・重臣(爺児・e03058)が南の空に小さな2つの点を見つけて低いうなり声を上げたのに気づいた鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)が、手を振って合図をする。他のケルベロスたちは心得たように目配せし、辺りの空気が張り詰めたものになる。
「あ、サンタさんだ!」
「えっ?!」
 窓の内側から無邪気な兄弟の声が聞こえる。
 ――まだ、まだだ。
「……3、2、1……今っス!」
 サンタ衣装に身を包んだ物九郎のかけ声と共に飛び出したケルベロスたちは、ちょうど庭の真上に到着した異形のサンタとトナカイと鉢合わせする格好になった。
 屋根の上に仁王立ちになった物九郎は、びし、と人差し指をヴィクトリーサンタに突きつける。
「真のデキるサンタは、いつの間にかスッと屋根上に降り立ってるモンなんスよ。24の朝にカチコミ掛けて来るような、あわてんぼのボンクラ風情が! ヤキ入れてやりまさ!」
「ああ。デキるサンタは悲鳴じゃなく、歓声を振りまくモンなんだ」
 同じくサンタ衣装の藤も続くと、
「「ブチ落とす!!」」
 2人でヴィクトリーサンタへと飛びかかる、その一方で。
「皆が楽しみにしているイブ……。ごついダモクレスのサンタなんて、誰もお呼びじゃないですからね!」
「ええ。クリスマスの夜をゴッドサンタなどというデウスエクスの好きにさせる訳にはいきません。必ずやその野望を打ち砕き、楽しいクリスマスをプレゼント、と行きましょうか」
「そう願いたいぜ。俺、今日は孫と遊びに行く約束してんだよ」
 ラピスとギルボーク、そして陸也は一呼吸置くと、ギロリとヴァンガードレインを睨みつけ、容赦なく技を叩き込んだ。

 その物音に驚き、何事かとベランダに両親と兄弟が慌てて出てくる。
「あなたたちは、なるべく庭から遠い部屋に隠れてください!」
 敵の注意が仲間に向いていることを横目で確認しながら、ラピスが隣人力を使いつつ家族に避難を促す。
「朝っぱらから騒がせてすまんのう、すぐ片付けるで暫し中に隠れとってくれ!」
「此処は必ず護るから、ちょいと待っててくれな」
「……お願いします」
 青ざめつつも、重臣と雅貴に力強く頷いてみせると、両親は子どもたちの手を引き奥の部屋へと逃げていく。
 それを確認したあかりと雅貴は、家族が戦場に巻き込まれないように殺界形成を発動し、敵を囲んでいる仲間の輪に急いで加わる。
 ――機械サンタ討伐の舞台は整った。

●機械サンタと、雷のトナカイ
 目的を邪魔されたヴィクトリーサンタとヴァンガードレインは、表情は読み取れないものの、明らかに怒り心頭といった様子だった。
 ぶるる、とトナカイが身を震わせると、角に溜まった電撃が前衛のメンバーに襲い掛かる。続けざま、サンタの巨大な白いバズーカから凍結光線が陸也に向かって放たれるが、これは防具のおかげでダメージが軽減された。
「僕が立っている限り、誰も倒れさせやしない――っ!」
 白衣を纏ったあかりが、耳をぴん、と立て集中すると、前衛の仲間を護る雷の壁を構築する。あまり表情には出ないが、「人を護る」役割で皆をサポートしたい、という気持ちは人一倍のようだ。
「ボクはヒメちゃんの為にも頑張るよ! だから待っててね!」
 あかりとはまた違う方向で気合いの入ったギルボークが、仲間のBS耐性を高めるべく、辺りに大量の紙兵をばら撒く。
「だいたい、何が悲しくてイブにダモクレスと戦わなきゃいけんです! こういうときくらい空気読んで、大人しくしててくださいよね!」
 桜吹雪が舞ったかと思うと、ラピスの怒りを飲み込んだ一刀がサンタとダモクレスを斬り裂き、よろめいたサンタを物九郎のハンマーが叩き潰す。その横からは、雅貴が日本刀を手に一気に間合いを詰めていた。
「テメーらはサンタなんかじゃねー、タダの不法侵入者だ。この家……この星に、これ以上踏み入らせて堪るかよ」
 緩やかな、しかし容赦ない斬撃がサンタの右腕に当たる。敵の撹乱を狙って重臣が洗脳電波を放つと、オルトロス・八雲も地獄の瘴気で追撃した。
「わざわざクリスマス楽しみにしてる子供を襲うとか趣味が悪いぜ。てめーらがサンタで悪夢見せるつもりならこっちはケルベロスサンタでぶちのめしてやる」
 言うと、藤は飛び蹴りを喰らわせる。生じた敵の隙を利用して、陸也は氷の騎士を召喚する。
「ハレの日だからこそ、効率よくグラビティを集めれるってゆーんだろうけどな、お前ら?  間違っちゃねーよ。俺もお前らの立場ならそーする、けどな――楽しみにしてっ時に無粋なことされるとすげー気分悪くなるんだわ」
 騎士の槍が偽サンタを貫く。
 だが、ヴィクトリーサンタたちもやられっぱなしではない。サンタはバズーカを構え直すと、一番小さなあかりを狙う、が。
「あくまで子どもを狙うとは……実に無粋な連中よ」
 彼女を庇い、強烈な一撃を受けたのは、重臣だった。
「重臣さん!」
 急ぎあかりは重臣に手当てを行う。
 そんな彼らと敵の間に素早く割り込み、ラピスは回し蹴りを放つ。
「裁きの閃きを!」
 雷の息を吐き出したギルボークが2体を牽制している隙に、物九郎はサンタの傷口から生命力を奪う一撃を与える。
 と、サンタの横のトナカイが低く身構えたかと思うと、一気に雅貴との距離を詰めて、その金色に輝く角で彼を放り投げた。
「……ったく、物騒なプレゼントだな! お返しに、テメーらにゃ、キツイお灸をプレゼントしてやる」
 ふ、と冷たい表情に変化したかと思うと、サンタの周りに影より生じた鋭刃が迫り、敵を斬り裂く。
「ふむ。では儂も本気を見せてしんぜよう」
 回復した重臣が、おもむろに羽織りの袂から金色の小判のようなものを取り出し次々に投げつける。予想外の攻撃にあっけに取られるサンタたちを、藤の召喚した「ランページ・マシーン」が轢いた、その上からは――。
「我、今この身に大いなる御業を宿さん。――急急如律令」
 陸也が行使した禁縄禁縛呪が迫り、敵を鷲掴みにする。
 ――戦いは激しさを増していた。

●野望、潰える時
 攻撃的な位置取りでグラビティを繰り出してくるヴァンガードレインの技の威力は油断できないものであったし、ディフェンダーにいるヴィクトリーサンタはしぶとく粘り、重い一撃を放ってくる。
 しかし、「まずはディフェンダーを倒す」という作戦のもと、ケルベロスたちが積み重ねた攻撃は、確実にヴィクトリーサンタの体力を削り、その動きを鈍らせていた。
 ヴィクトリーサンタがバスーカを構え、藤に向けて発射するが、藤はそれを身を屈めて避けた。その様子を見ていた重臣は、スマホを手に構えると、敵をキッと睨みつける。
「『さんた』は夢や笑顔を届けてこそ――彼奴らに代わって儂らが務めてしんぜよう。紛い物は消え去るが良い!」
 放たれた電波に続いて、おどろおどろしい無数の影絵の蛇がサンタに接近していた。見ると、藤が右手でケルベロスカードを握りつぶしている。
「――畏れろ」
 それは、小さな呟きだった。だが、その言葉が引き金になったかのように、蛇の目が怪しく赤く光り、ヴィクトリーサンタに殺到する。
「カミサマカミサマオイノリモウシアゲマス……オレラノメセンマデオリテクレ」
 陸也の祈りは霧へと形を変えなり、サンタに纏わり付く。そこへ、獣化させた物九郎の右の拳がずしり、と命中する。
 相方の危機を察したのか、ヴァンガードレインが角をギラリと輝かせ、前方にいるメンバーに雷撃を放つ、が。
「僕にも手伝えることは、ある……!」
 エルピス――「希望」の名を持つオウガメタルから放出されたオウガ粒子が、その輝きで仲間を癒し、敵撃破へ向け皆を後押しする。
「私からの贈り物……しっかり受け取って下さいね!」
 ラピスの斬霊刀に、グラビティ・チェインが集まっていく。それがヴィクトリーサンタに振り下ろされたとき、ギルボークの吐き出した炎の息と相まって、猛烈な破壊の衝撃となって敵の動きを完全に止め、そして――。
「――オヤスミ」
 雅貴が雷の霊力を帯びた刀を鞘に戻したと同時に、ヴィクトリーサンタは絶命し、霧散した。

「さて、残りはあなただけ、ですね……」
 斬霊刀に手をかけたギルボークをはじめ、皆がじり、じり、と残る敵との間合いを詰めていく。
 ヴィクトリーサンタ撃破までの牽制攻撃や列攻撃によって、ヴァンガードレインも相当のダメージを負っていたが、まだ戦意は失っていない。右前足で地面をガリ、とひっかくと、猛烈な勢いで雅貴へと突進してくる――。
「思い通りには、させませんから!」
 自分の体への痛みを顧みず、ラピスが攻撃を受け止める。すぐにあかりが駆け寄り治癒しようとするが、自身でオーラを溜め始めていたラピスは首を横に振る。
「私は、大丈夫。それより――」
 目の前の敵を叩くための力を皆に、というラピスの言葉に頷くと、あかりはふわり、ふわりとカランコエの花を空中に投げていく。
「今を切り拓く力を。前だけ見て進む力を。みんなに」
 『scent of yesterday』。真っ赤な花びらが舞い落ち、花吹雪となって前列の仲間に降り注ぐ。
 一方、トナカイと対峙していたギルボークは、ふと呟く。
「トナカイの角は電撃を放つようですが、いかにも避雷針のようなその形。電流は一方向に流れるもの……。僕の雷で押し切ってその動き、止めさせてもらいましょう」
 雷を刀に纏わせると、一気に斬り裂く。その痛みにもだえるヴァンガードレインに追い討ちをかけるように、雅貴の斬撃と重臣のバール、そして八雲の剣が襲いかかる。
「瀕死の相手といえども、容赦も慢心もしねー。……オチな」
 急急如律令、と陸也が詠唱を締めくくると、出現した半透明の巨大な手が、トナカイを締め上げる。
 満身創痍のヴァンガードレイン。そこに、サンタ服の2つの人影が急接近する。
「ウラー! 今っスよ、藤きゅん!」
「おう、遅れんなよ!」
 物九郎と藤のダブルパンチが、ヴァンガードレインの急所を貫く。それがトドメの一撃となり、雷のトナカイは一瞬眩しく輝いたかと思うと、あっという間に滅失した。

●ケルベロスサンタの贈り物
「ったく、ハレの日に無粋な奴だっつーの」
「本当に。まったく物騒なサンタとトナカイでしたね」
 武器を仕舞いながら毒づく陸也に、藍色の髪をかき上げながらギルボークは相槌を打つ。それぞれ、心の中では自分の大切な少女とのクリスマスを思い描くが、まずは目の前の片付けをしなくては、と辺りの修復に取り掛かるす。
 ヒールを使える他のメンバーも手伝って、辺りの戦いの跡が修復されたことを確認した雅貴は、コンコン、と庭に続くリビングの窓を叩いた。
 部屋の中から恐る恐る外を確認する住人たちに向かって、物九郎と藤はにい、と笑いながら、大きく両手でマルを作る。
 その意味を理解した家族は、急いでリビングの窓を開けた。
「驚かせてゴメンな、もう大丈夫だ」
 雅貴の言葉に、兄弟の両親は深く頭を下げて礼を言う。と、その時。
「「「メリークリスマス!」」」
 親子は思わず目の前の光景に息をのむ。
 庭の木々にはラピスが飾った小さな星たちが朝日を受けてキラキラと輝き、ヒールの効果と相まって、幻想的な雰囲気をかもし出している。その中心で、ケルベロスたちが手に手にプレゼントを持って出迎えていた。
 わあ! と歓声を上げながら庭に駆け下りた弟に、あかりは笑顔で微笑みながら、靴下に入ったお菓子の詰め合わせを渡す。
「悪いサンタはケルベロスが退治したから安心してね」
 ありがとう! という言葉に、あかりの耳が誇らしさでぴょこぴょこと動く。
 遅れてやってきた兄に近づいたのは、羽織りを脱ぎ、着こんだサンタ服姿になった重臣だった。
「一足早いが……良い聖夜を!」
 すると、八雲がふわりと近づき、兄の手にオルトロスソードを模したチョコレートを渡す。
 サンタさんがいっぱいいるよ! とはしゃぐ兄弟の頭を撫でながら、雅貴も雪猫の玩具箱に入ったお菓子を手渡す。
「改めて、良い夜になりますよーに。仲良く楽しんでな」
 こくこく、と大きく頷いた兄弟は、満面の笑みを浮かべると、大きく息を吸い、そして。
「ありがとう、けるべろすのおにいちゃん、おねえちゃん!」
 帰路につくケルベロスたちを、ぶんぶんと手を振って見送った。

「さて、と。頑張ったオレにも、サンタサン、頼むぜ?」
 期待を込めた目でチラチラと自分の方を見る雅貴に、重臣はすっとぼけた調子で答える。
「ん? 勿論雅貴には無いぞ! さ、儂らも帰って夜に備えよう」
「くっそ、はぐらかすなよ! 備えって、ケーキ食って寝るだけだろこの独り身!」
 ぎゃいぎゃいとつるむ2人に、周りの仲間から笑いが漏れる。

 いつの間にか朝日が昇り、平穏を取り戻した街並を温かく包んでいく。
 ――さあ、クリスマスを楽しもう!

作者:東雲ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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