血のクリスマス事件~ストレンジャークリスマス!

作者:沙羅衝

「最近、VRゲーム機のダモクレス事件が発生してるのは知ってるかな?」
 集まったケルベロス達の前で、宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が依頼の説明を始めていた。
「実はあの事件やねんけど、大侵略期の地球で『血のクリスマス』と呼ばれる大虐殺を引き起こした侵略型超巨大ダモクレス、『ゴッドサンタ』復活の予兆であったことが、リヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)さん達の調査で分かったんよ」
 その物騒な名前を聞き、ケルベロス達は思い思いの反応をする。
「そのVRダモクレスは、どうやらゴッドサンタが配下を使て少し早いクリスマスプレゼントを、子供達に届けていた。というのが事件の真相や。
 んでな、そのゴッドサンタがクリスマスを楽しみにする人々を血祭りに上げる事で、自らが復活するグラビティ・チェインを得ようと動き出したようや。
 襲撃が発生するのは、12月24日の午前中。それを阻止して欲しいんよ」
 ケルベロス達は、絹の説明に、成る程と反応する。
「皆に行って貰うんは、名古屋市の一つの公園や。子供会でクリスマス会が行われる予定みたいでな、そこに『ヴィクトリーサンタ』と『ヴァンガードレイン』という2体ひと組の量産型ダモクレスが現れる。そいつらは12月24日の早朝に日本各地に一斉に現れ、クリスマスを楽しみにしている人々を襲ってグラビティ・チェインを奪い取ろうとしてる。
 戦闘力はその2体とうちら8人で互角くらい。ヴァンガードレインちゅうトナカイ型のダモクレスは、角から電撃攻撃が得意で、サンタは後ろに背負ってる巨大な白い円柱型のバックパックから、巨大な砲撃を放ってくる。両方とも範囲攻撃で、ダメージもでかい。気をつけてな」
 クリスマスは子供達にとって、とっておきのイベントの一つでもある。絹の話では、公園を封鎖してしまうと、他の箇所に敵が現れてしまう事になる為、前もって封鎖も出来ないようであった。
「サンタが現れるのは、このイベントの一つになってる大きなツリーや。何より、楽しみにしている人たちの為にうちらがおる。しっかり頼むで!」
 絹の話を聞き、ケルベロス達は気合を入れるのだった。


参加者
御子神・宵一(御先稲荷・e02829)
神崎・晟(剛毅直諒・e02896)
黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)
ケドウィン・アルカニクス(劇場の怪人を演じる地獄の番犬・e12510)
東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)
深海・小熊(旅館の看板娘・e24239)
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)

■リプレイ

●クリスマス会と子供達
「え、よろしいのですか? こんな地域の子供会に……」
「良いんです。地域貢献の一環と思っていただければ。それに、子供達の為のケルベロスです」
 御子神・宵一(御先稲荷・e02829)は狐の耳をぱたぱたさせながら、子供会の責任者の男性に答えていた。
 ここは名古屋市にある、市街地の公園である。絹の話を聞いたケルベロス達は、まず真っ先に、子供達の安全を考えた。しかし、それだけでは子供達に与える精神的なダメージを拭い去ることは出来ない。このことから、前もって子供会に参加し、盛り上げることで、それを防ごうと考えたのだ。
「お邪魔かもしれないけど、参加させてもらうわね。それに、サプライズゲストって感じで、いいんじゃないかしら?」
 まだ戸惑う責任者の男性に向かい、黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)がファミリアロッドから鶏のメイを呼び出し、子供達の輪の中に突入させる。
「そ、そういうことなら。でもまだ準備中でして……」
「手伝いますよ。御子神くん、そっち宜しくねぇ」
 ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)が、宵一からキープアウトテープを受け取り、公園中央にあるツリーに向かった。ガロンドの後ろをミミックの『アドウィクス』が、ガッションガションと跳ねながら着いていく。ガロンドはアドウィクスの力を借り、トナカイの角宜しく、自前の角に棒状うのものをくくりつけていた。最も、アドウィクスは武具を生成したので、金色の銃がいびつな形でついているだけであったのだが、雰囲気は出すことに成功していた。四肢で立てば、黄金のトナカイには見える、かもしれない。
「高さ3メートルくらい、直径は50センチくらいでしょうか。これなら、持ってきたテープで足りそうです。」
 宵一が目の前の木を見て言う。木は、ある程度クリスマスツリーのように飾りつけがされており、きらきらと輝いていた。
「こうしてっと……簡単なもんだねぇ」
「以外とそれっぽくは見えますか」
 宵一とガロンドは、気を取り囲むように、テープを張り巡らせ、ペグを打ち込む。そこへ、金銀の折り紙で星や雪の結晶を作り、貼り付ける。
「ケドウィンさん、これを木の上に……」
 宵一が装飾の貼り終えた一つのテープをケドウィン・アルカニクス(劇場の怪人を演じる地獄の番犬・e12510)に渡す。
「ふふ、任せろ」
 ケドウィンは軽々と大きく木を飛び越え、柔らかくテープを貼り付けた。
 そこへ、綺麗な歌声が響いてきた。白い上着に、ロングのスカートをはいたルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)が、クリスマスソングを歌い始めたのだ。
「おねえちゃん、きれえ……」
 その声に惹かれた、幼稚園から小学生の低学年くらいの子供達が集まってくる。
「さあ皆、準備が出来るまで、わたしたちと遊びましょう。何しようか?」
 深海・小熊(旅館の看板娘・e24239)が集まってきた子供達に話しかける。
「んーと……あ、にわとりさんだー!」
「オレ、知ってるぜ、クリスマスは鶏を食べるんだ!」
「追っかけろ!」
「捕まえろ!」
 子供達、特に男子が小熊のテレビウムの『鉄くん』と一緒に見つけたメイを追いかけ始める。その気配を察知したメイが驚き、逃げ出す。
「いじめたりはダメよ? 仲間を呼ばれて、反撃されちゃうから。なんてね」
 舞彩の言葉にも、子供達は平気だよと言いながら、公園を走り回った。
 そうこうしながら、着々と準備は整い、人もかなりの数が集まっていった。
「今のところ、ツリー周辺には、人がいないのです。テープのおかげなのです」
 東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)は周りをきょろきょろと確認しながら、警戒を怠らない。そして、ついに禍々しいグラビティが、ツリーの上から現れ始めた。

●偽サンタと偽トナカイ
「何だ……あれ?」
「あーサンタさんだ! トナカイさんもいるー! 金色だ!」
「でも、何か、ロボット……ぽいぞ?」
「ロボサンタ! すげえ!」
 戸惑いざわつく大人達とは、違う反応を見せる子供達。
「現れたのです! 皆さん!」
 菜々乃の声に、すぐさま反応して、非難誘導を始めるケルベロス達。ケドウィンがラブフェロモンを放出させ、朗々と歌い上げるように、声を出す。
「皆様落ち着いて。あちらのお嬢様方の誘導に従ってくれ」
 その声は公園全体へと響き、歌を歌い、子供達を集めていたルチアナを指す。
「さあ他の皆も、こっちへ!」
 力を持ったルチアナの言葉に、子供達が反応する。
「でも、あれ、サンタさんだよ?」
「プレゼント、くれないの?」
 クリスマスにツリーの上から、サンタとトナカイが現れたのだ。子供達はデウスエクスだとは、微塵も思っていない。
「ううん。アレは、悪いサンタ。偽サンタなのです。皆に痛いことをするのです」
「ええ!? じゃ、じゃあサンタさんじゃないの?」
 大人達は、直ぐに状況を把握していた。ケルベロスが現れた理由といえば、想像はつく。だが、子供達はそうは行かない。少しパニック気味になる子供達。
「はっはっは!」
 突如頭上から笑い声が落ちてくる。
 ドォン!
「子供達よ! 本物のサンタはこの私だ! 私に任せろ!」
 コンクリート製の山の上に、サンタの格好をした神崎・晟(剛毅直諒・e02896)が、上空から着地した。付け髭に付け眉毛。それに白手袋をはめ、腹に詰め物で更にボリュームアップした姿に人々は目を奪われる。
「そこに居るケルベロス達。偽サンタをやっつけるぞ。手伝って欲しい。とぅっ」
 そのまま地面に降り立つ晟。晟はそのままサンタに成りきるつもりだった。子供達の夢を壊さぬように。
「成る程……。あくまでも私達はサンタに協力したケルベロスってわけね」
 舞彩が頷きながら、パンパンと手を叩いて、子供達の注意をこちらに向ける。
「さあ皆、逃げるわよ」
「いい子のクリスマスに灰と石炭を持ってくるような悪いサンタは追い払ってあげる」
 ルチアナもそれに続く。
「皆、ここはお姉さんたちがなんとかするから早く安全な所にいきましょう! こっちだよ!」
 小熊は自分の武装を、きらびやかなプリンセスに変身させ、子供達を集めていく。
「落ち着いて避難するのです」
 菜々乃が、ウイングキャットの『プリン』と共に、小熊が先導する一団の周りを一定距離で誘導する。
「ウガ……」
 シュイーンと音を立てながら、その一団を確認するサンタ。そして、そのまま大きくジャンプした。
『メリークリスマス!』
 ドォン!
 ガロンドがアドウィクスから取り出した、ちーさいガロンドくん人形を空中でサンタに直撃させ、派手な爆発音を響かせた。
「あなた達の好きにはさせません!」
 バリバリバリ!
 宵一が飛び上がり、黄金のトナカイに雷の霊力を帯びた高速の突きを繰り出し、その背に傷をつけた。そこへ、ラグナルのグラビティチェインを纏った晟が、巨大な剛腕をトナカイに叩き付ける。
『貴様の力はこの程度か?随分と無様で滑稽な姿だな。』
 トナカイを地面に叩きつけながら、そのまま挑発を行う晟。すると、トナカイは晟に向かって低い体勢をとり、ガルル……と機械的な唸り声を上げた。

●爆発と雷光
 舞彩、小熊、ルチアナ達のおかげで、無事に公園の外まで人々を誘導することに成功したケルベロス達。
「さて、わたし達も、あの偽サンタをやっつけてくるね」
 小熊が子供達に話しかけながら、公園の様子を確認する。公園では、菜々乃の蹴りが、トナカイの脚を払っていた。
「……おねえちゃん。行っちゃうの?」
 そこに、少し泣き顔の少女が、舞彩の袖を掴んで呟く。
「大丈夫、すぐに続きができるようにするわ。だから安全なところで、待っていてくれる?」
 コクリと頷く少女。そっとその袖を離す。
「……がんばって」
 その姿に、力強く頷く3人が、再び戦場へと駆け出した。

 バリバリバリ!
 トナカイが角から雷光をほとばしらせる。
「ふ、これしき! 私はサンタなのだからな!」
 晟と、アドウィクス、それに鉄くんが、その雷光を受ける。
『我が同胞よ 『真の』人殺しを捕えろ』
 その攻撃を見たケドウィンが、ブラックスライムを霧状にして空中に散布する。そのブラックスライムは、その攻撃の雷撃の効果を跳ね返しつつ、傷を塞ぐ。
「アドウィクス。ほーらあれが本物のサンタらしい」
 ガロンドがそう言うと、サンタが背後に背負ったバックパックから、巨大なミサイルが現れ、その言葉を放ったガロンド目掛けて飛んできた。
「ほーら……ミサイルのプレゼントだぞ」
 ドォン!!
 巨大な爆発が起り、ガロンドの目の前で、プスプスと煙を上げてゆらりと揺れるアドウィクス。
『傷つき者達に希望を、戦う者達に力を与えるのですっ』
 菜々乃の妄想エネルギーを受けて、金色に輝くアドウィクス。
「鉄くん、ぶったたけ!」
 後方から小熊の声が響き、サンタに鉄パイプを叩きつける鉄くん。
「アドウィクスこき使いすぎじゃない?」
 舞彩がガロンドの横を通過し、尋ねながら片腕から力を放出させる。
「あ、避難終わった? ご苦労さま」
『追い追われ、倒すはどちらになるか。勝負しましょう?』
 そこに超鋼金属製の鎖を出現た舞彩が、己とサンタの腕をつなぎとめる。
「小さな傷から、大きな傷に……」
 ルチアナがマインドリングから光の剣を生み出し、トナカイを払った。すると、そこから氷が発生する。
「グガ……」
 トナカイが無理やり動こうとすると、その氷が更に傷を広げていく。
『……捉えました。』
 そして宵一がその隙を付き、斬霊刀『若宮』を一閃した。
「ガ……ガアア」
 ハウリングのようなうめき声を残して、黄金のトナカイは倒れた。

●真サンタと真トナカイ
「ガアアア!」
 舞彩を見据えて、震えるサンタ。目を煌かせ、そこから白いビームが放たれる。
 そのビームは舞彩の右肩を貫き、そこから氷が発生する。しかし、彼女は怯まない。
「その攻撃がプレゼント、というのなら……私も、プレゼントをあげましょうか!」
 肩に乗せたメイを、サンタに向かい射出する。そこへ宵一が炎の「御業」を合わせる。
 ドゥン!
 その炎がサンタを襲い、メイがその炎の効力を増大させる。
「御子神、それじゃメイが焼き鳥になっちゃうわよ」
 冗談を言いながら、笑う舞彩。
「そこで更に、炎のプレゼントだよ」
 ガロンドがエアシューズから炎を発生させ、更にサンタにぶつける。
「終わりだ。安心しろ、サンタはここに居るのだからな」
 サンタの格好のまま、晟がチェーンソー剣で切りつける。
「プリンは、舞彩さんの手当てをお願いするのね」
 菜々乃がプリンに指示を出しながら、縛霊手から網状の霊力を放射し、サンタを捕らえる。
 ケドウィンがプリンと共に、舞彩の傷を癒すと、その傷は完全に塞がり、発生していた氷が溶けていく。
『集え!灼熱の溶岩よ!』
 小熊が呼び出したマグマを両腕に装備したバトルガントレットで、殴りつける。
「ウガアアア!」
 噴出した炎により、一気に体力を奪われるサンタ。
『頑張ってぇ! ケルベロスー!』
 その時、後方から、子供達の声が聞こえてきた。その声に、ルチアナは目を瞑り、2つのマインドリングを合わせる。
「来たれ、光の天使よ」
 ルチアナが歌うように紡いだ言葉が、光の巨人を呼び出す。
 その巨人は翼を広げ、サンタに向かって突撃し、駆け抜けた。
 するとサンタは、炎を上げながらその場に崩れ落ち、バラバラと消滅していったのだった。

「皆、宮元が料理を持ってきてくれるそうよ」
 絹と連絡を取った舞彩が、全員に声をかける。会場は、戦闘によって破壊されたり、焼け焦げてしまった箇所もあったのだが、ケルベロス達のヒールにより、少し幻想的な形にはなったが、姿を取り戻したのだった。
「良かった、少しおなかが空いてしまったので、嬉しいです」
 宵一は、自分の紙兵をジンジャーブレッドマン型で浮かび上がらせてヒールを行っていた。
「わたし絹さんの料理、始めてなのです。楽しみなのです!」
「宮元の料理は、美味しいわよ。期待して良いんじゃない?」
 菜々乃の言葉に微笑み、頷く舞彩。
「それに……怖い事は忘れてしまうといいのですよ」
 菜々乃はそう言いながら、子供達を見る。子供達は先程の戦闘のことなど忘れたのか、元気良く遊んでいる。
「もう、怪しいものとかは、無いみたいです」
 小熊が一通り見終わった会場は、すっかりとクリスマス会場の準備が出来ていた。
「もうデウスエクスの心配は無い。寒かったろう」
 そう言いながら、心配な表情のお母さん達に、ミルクティーを勧めるケドウィン。
「おっと、サンタの登場だな。ふふ」
 わいわいとした声が更に大きくなっていった。そこの中心には、サンタとトナカイに扮したドラゴニアンが二人居た。
「ソリが引けない……? しょうがないな…よっと」
「神崎くんが重すぎるんだけど……」
 ガロンドがそう言いながら、ソリを担いだ晟を見る。晟は、子供会から受け取ったプレゼントを渡していた。
「よし、じゃあ僕はひとっとびかな。それ!」
 そう言ったガロンドが、背中の翼を広げて低空で人々を縫うように飛行する。子供達にすれ違いざまにタッチした身体と服は、彼のクリーニングによって、汚れが落とされていった。
 公園のあちらこちらから笑い声が聞こえてきた。その声を聞き、ケルベロス達は笑みを浮かべた。
 そして、ルチアナの透き通った声が、公園に響く。クリスマス定番の賛美歌だ。
「あ、この歌知ってるぅ」
「わたしも一緒に歌うー!」
 ルチアナの声に子供達の声が合わさっていく。
 その声に乗せ、クリスマス会が開催される。
 ケルベロス達は、またこの季節を迎えることが出来た喜びを共にし、一緒にクリスマスを楽しんだのであった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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