血のクリスマス事件~優しいサンタ

作者:一条もえる

「みんな、大事件よ。『ゴッドサンタ』っていう凶悪なダモクレスが、復活しようとしてるの!」
 真剣な面持ちで席に着いた崎須賀・凛(ハラヘリオライダー・en0205)は、抱えていた箱から小ぶりのホールケーキを取り出すと、なんとそのままフォークを突き立て、口に運び始めた。
 クリスマスにしては気が早い。
「え? 違うよ。クリスマスケーキはクリスマスケーキ。これは日常的に食べるケーキ」
 あっけらかんと言った凛は、紙ナプキンで口元を拭い、事件について説明を始めた。
「もぐもぐ……。
 近頃、VRゲーム機型ダモクレスが事件を起こしてるの、知ってる?
 その事件は、『ゴッドサンタ』を復活させるグラビティ・チェインを手に入れるために起こされたものだったみたいなの」
 ゴッドサンタとは、大侵略期に「血のクリスマス」と呼ばれる大虐殺を起こした侵略型超巨大ダモクレスである。
 そのゴッドサンタが配下を使い、新たな行動を起こす。
 凛は、イチゴにフォークをブスリと突き立て、
「事件が起こるのは、12月24日の午前。
 配下のダモクレスが、各地で一斉に人々に襲いかかるわ」
 そう言って、大きなイチゴを口に放り込む。
「もぐもぐ……絶対に、阻止しないとね」
 敵の思惑通りにグラビティ・チェインが集まれば、クリスマスの夜には蘇ったゴッドサンタによって、かつてのような災厄に見舞われるだろう。
「みんなに担当してもらうのは、ここ」
 凛がフォークの先で指し示したのは、とある幼稚園だ。
「ほら、見てよ。この壁に貼ったサンタやらツリーの絵。
 この子たちが楽しみにしてるのが、クリスマス会なの」
 凛は参考資料として映像を見せると、残った生クリームも残すことなく、フォークですくってぺろりと食べ尽くした。
 でっぷりと太った体型がまさしくサンタ。園長のアズマ先生は毎年、サンタクロースに扮してプレゼントを配って回るのだという。
 今年は週末になっているが、わざわざ臨時登園の日程を作ってまで、園長先生は準備に余念がない。
 もちろん子供たちは、サンタの正体がいつも優しいアズマ先生だということを知っている。
 だからこそクリスマスは素敵な1日なのだろうと、現地の情報を調べてきた凛は笑った。
 その、クリスマス会を楽しみにしている幼稚園を、ダモクレスが襲う。
「もぐもぐ……。
 襲撃してくるのは、『ヴィクトリーサンタ』と『ヴァンガードレイン』っていう2人組……1人と1頭よ」
 チョコレートクリームを口に運びながら、凛が指し示したのはまるでサンタとトナカイのようなダモクレス。
 幼稚園は平屋建て。敵は屋根の上に降り立ち、床を突き破って突入してくる。
 幸い、その下は倉庫になっていて、怪我人は出ないが。
 廊下に出た敵は、次々と人々に襲いかかっていくという。
 最初に狙われる教室には、年長組の子供たちが。

「このままじゃ、クリスマスケーキどころじゃなくなっちゃうわね。
 悪いサンタさんには、退場願いましょ」
 唇についたチョコクリームをナプキンでぬぐい、凛は「ごちそうさま」と手を合わせた。


参加者
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)
楚・思江(楽都在爾生中・e01131)
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)
アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)
響・澪(神魔滅殺・e07629)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
アルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)

■リプレイ

●ヴィクトリーサンタ、襲来
 12月24日、朝。
 幼稚園の正面玄関には大きなクリスマスツリーが飾られ、園内のあちこちにリースをはじめ、色鮮やかな飾り付けがされている。
 園内には子供たちのざわめきが聞こえ、予定では、そろそろ遊戯室でクリスマス会が始まる頃合いだが……。
 そのとき、招かれざるサンタが姿を見せた。
「ヒィッハァ~ッ! クリスマスの歌が聞こえてくるぜぇ! クリスマスの歌が聞こえてきたぜぇ!」
「ヒィホーッ!」
 2体のダモクレス、ヴィクトリーサンタとヴァンガードレインが歌声、叫び声もけたたましく、園舎の屋根に降りたったのだ。
 ダモクレスは足を高々と上げ、その屋根を突き破り……!
「そうはさせまセーン!」
 園舎の脇に、なんだかビニールシートがあるなぁと思ったが、そこからアップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)が跳ね起きた。
「我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて、貴殿を倒します!」
 同じく姿を現したセレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)が名乗りとともに気合いを込め、精神の力を炸裂させる。
 ケルベロスたちは、敵が現れるなり先制攻撃を仕掛けた。
「ヒィッハァ~ッ! ケルベロスだぜ、ケルベロスが俺を返り血で真っ赤に染めに来たぜぇ~!」
「ヒィホーッ!」
 だが敵は身をよじってその炸裂を避け、こちらを振り返った。
「サンタの赤は返り血の赤ってか……どこのダークネスサンタだ!」
 アルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)は身を起こし、遠距離から古代語を詠唱した。
「食らえ、トナカイ野郎ッ!」
 光線がヴァンガードレイン……トナカイを襲う。敵の動きを止めるには至らなかったが、光線は確実に敵に傷を負わせた。
「貴方に愛のプレゼント! ゴット・アイ・ラブ・ユーッ!」
 幻兎変身。猛る情熱の炎を纏ったアップルは大きく跳躍して屋根に飛び上がると、巨大なハンマーを振りかぶってトナカイに叩きつけた!
 すさまじい破壊力、まともに食らえばいかにダモクレスといえども……いや、浅い!
 命中こそしたものの、敵はその瞬間に身を翻し、致命傷を避けたのだ。
「ヒィッハァ~ッ!」
「ヒィホーッ!」
 サンタとトナカイとは甲高い声で叫ぶと、ケルベロスに向けて殺気を向けてくる。
 両者の体の、各所が扉のように開く。そこから顔を出したミサイルが、白煙を引きつつ雨のようにケルベロスに襲いかかった。
「みなさん、伏せてください!」
 割って入ったのは倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)。セレナと共に仲間たちを庇い、その身を盾としてミサイルを受け止める。
 しかし、雨霰と襲い来るミサイルにはさすがによろめき、柚子は膝をついた。
「これくらい……まだ戦いは始まったばかりです」
 気丈に言うと、全身の装甲からオウガ粒子を放出して仲間たちを支援する。
「みんな、外に出ないようにして隠れていてね!」
 子供や先生たちに言いおいたアストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)は園庭に飛び出して、柚子を『ジョブレスオーラ』で包んだ。
 子供たちがまだ遊戯室に向かっていなかったのは、アストラたちがダモクレスの襲来を告げ、皆を待機させていたからである。
 彼らを、一刻も早く安心させてやりたい。
「そこにいられては、やりにくいわ」
「偽サンタにゃあ、屋根は似合わないぜ! 降りな!」
 雨樋のところで伏せていた黒猫は、円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)だった。
 人の姿に戻ったキアリが掌を突きだし、そして翼を広げた楚・思江(楽都在爾生中・e01131)が背後から襲いかかる。
 氷結の螺旋、そして雷撃とが敵に襲いかかる。
「子供を狙うたぁ、ふざけやがって!」
 鼻を鳴らした思江は園庭に降りたって、敵を睨み据えた。挑発に応じたか、いや。目障りなケルベロスどもを蹴散らしてやろうと思ってか、サンタとトナカイも園庭に降り立つ。
「あぁ……サンタさんは量産されてたんだ。だから世界中にプレゼントを配れるんだね……」
 おそらく、各所でも同様のダモクレスとの戦いが始まっているであろう。
 のんきな冗談を口にした響・澪(神魔滅殺・e07629)は表情を引き締め、
「さて、子供たちにトラウマが発生しないように、さっさと倒してあげる!
 龍王、天王! 起きろッ!」
 かすかに唸りをあげる両手の腕甲を打ち鳴らし、澪は敵に躍り掛かった。

●赤く染まる
 ところがサンタは、その拳を避けて飛びかかってきた。
「弾幕薄いよ、なにやってんの!」
 アストラは目にも留まらぬスピードで、スマートフォンからコメントを送信していく。その助言は、仲間たちの狙いを正確にしていくだろう。
「早く終わらせて、クリスマス会をしよう。ケーキも食べなきゃ!」
「ふふ、せっかくのクリスマス、台無しにされるわけにはいきませんからね!」
「オウ、それは楽しみデース。やる気が増しマスネ!」
 セレナとアップルとが、剣を構えて間合いを詰める。
「あいつ等の親玉がどんな奴か知らないが、企みもろとも叩き潰してやらぁな!」
 思江が構築した雷の壁が、彼女らの前にそびえ立った。
 セレナの『達人の一撃』、そしてアップルの『マインドソード』が、左右からトナカイの胴を割った。とりわけアップルの剣は深々と食い込み、バチバチと火花が散り、オイルが滝のように流れ出る。
「畳みかけるぜ!」
「わかった」
 アルトに声をかけられたキアリはうなずき、2人は並ぶようにトナカイへ襲いかかる。
「行くぜ!」
 アルトは高々と跳躍し、流星の煌めきを込めた跳び蹴りで、トナカイを蹴り飛ばした。勢いよく転がったトナカイが園庭にある滑り台にぶつかり、それを大きくねじ曲げた。
 一方で澪は、サンタの前に立ちはだかる。
「当たってなんかやんないよ♪」
 ドリルのように腕を回転させたサンタの攻撃を、腕の外側に回り込むようにして避ける。言うほどゆとりのある回避ではないが、澪は挑発するように嘯いた。
 炎を纏った反撃の蹴りが、サンタの腿に命中する。炎はそこから勢いを増し、敵を包んだ。
 しかし相手は、侮ってはいけない相手だ。
「ヒィッハァ~ッ! クリスマスが今年もやってきたぜぇ、楽しかった出来事を引き裂くよぉに!」
「ヒィホーッ!」
 嘲るように歌うように叫ぶと、深手を負ったトナカイも立ち上がり、見事な両角がバチバチと電気を帯びる。
 強力な電撃が、敵を取り囲むように展開していたケルベロスたちを襲った。
「く……すさまじい、攻撃ですね」
 柚子が顔をしかめる。全身の血が泡だったかのようだ。痺れで動けない者もいるだろう。
「澪! 敵が来るデースッ!」
 アップルが必死の声で叫んだが、間に合わない。サンタは間合いを詰め、よろめく澪の眼前に迫っていた。
「ヒィッハァ~ッ! 真っ赤なお肌のケルベロスさんよぉ!」
「ヒィホーッ!」
 目の前で、サンタが両手を向けた。両袖からのぞく、無数の銃口。至近距離から放たれた銃弾のことごとくが澪の全身で弾けていく。
「澪さん!」
 悲鳴のような声を上げ、柚子が駆けよった。
 ウイングキャット『カイロ』は主を護るべく敵の前に立ちはだかって、攻撃を防ぐ。『清浄の翼』が、ケルベロスたちの傷を塞いでいく。
 その間に柚子は、『サキュバスミスト』を放った。桃色の霧が全身を包み、澪の傷を癒していく。深手ではあるが、
「大丈夫……」
 と、頭を振りつつ起きあがった。
「こんなふざけた奴らにやられてる場合じゃねえぜ! なにがゴッドサンタだ!」
 思江が杖をサンタの方に突きつける。その先から放たれた電撃を浴びたサンタが、うなり声を上げてよろめいた。
「だいたい、サンタは聖人が由来だろうが! それがゴッドってどういうことだ! いい加減すぎるだろうが、ネーミングが!」
「オゥ、名前に文句言われテモ。私が『なんでアップルなの? あなた食べるとシャリッとしてるの?』って言われるようなものデース」
「『柚子』もそうね」
 ともあれ、アップルは敵を幻惑するように大きく横っ飛びすると、園庭の小山の頂上に立った。さらに、跳ぶ。
 トナカイの脇に着地すると、電光石火の足払いを命中させた。トナカイの足が砕け、敵は内骨格を露わにしつつ、膝をつく。
「あの威力で同時攻撃とは厄介だからな。こっちから先に片づけてやる! いくぜ!」
「はい!」
 アルトと、応じたセレナとが正面から飛びかかる。
 気合いと共に突き出したセレナの掌に呼応するように、トナカイの頭部で激しい爆発が起こった。角の根本を砕かれたトナカイは、それをブラブラとさせながらよろめく。
「とどめだ!」
 アルトが肘の先を回転させる。ドリルのような一撃がヴァンガードレインの頭部を襲い、粉々に打ち砕いた。
「ヒィッハァ~ッ! そのザマじゃ、サイレントナカァ~イ! サイレントナカァ~イだぜぇ!」
 仲間の死が堪えているのかいないのか、サンタはゲタゲタと笑うように叫ぶと、再びミサイルポッドを露わにした。
「うわ」
 身を翻して離れようとしたアストラの頭に、サンタ帽を頭(?)にのせた彼女の従者、ミミック『ボックスナイト』がかぶりついた。
「ぎゃあ! わかったよ、面倒でも応戦するよ!
 ミサイルのプレゼントは、もういらないからね!」
 アストラの『明日から本気出す』という誓いの心が、溶岩となってサンタの足下から噴出した。それはちょうど射出されたミサイルを迎撃するような格好となり、互いにぶつかり合う。
「行けッ、アロン!」
 キアリの声に応じ、オルトロス『アロン』が敵を睨みつける。すると敵の赤い外装が砕け、さらにはそこが炎上した。
「先には行かせない。わたしのような下等な存在でも……子供たちの盾には、なれる」
 自虐的に呟いたキアリはサンタと園舎とを結ぶ直線に割り込み、再び螺旋の力を放つ。炎と氷とが、敵を苛んでいく。
「さぁ、そろそろおしまいにしましょう。これ以上遅くなっては、クリスマス会が中止になってしまいます」
 柚子は仲間たちの傷が深くないことを確認すると、鋼の鬼と化したオウガメタルで、サンタの胸を打った。
 澪が追撃する。グラビティを込めた拳を、なんとか受け止めたサンタがうめいた。
「くッ!」
「あれ、もう叫ばないの?
 あんた、見た目だけなら子供たちに人気出そうなんだから。これを気に、改心でもしたら?」
 呆れたように言われたサンタは、こめかみから熱風を排出しつつ、跳び下がった。
「逃がしはしないぜ! ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおああああああッ!」
 思江が天を仰ぎ、天地を振るわせるような大音声で雄叫びを上げる。
 サンタは呻き、よろめいたが。なおも間合いを詰めて蹴りを放とうとする思江に向け、
「ヒ、ヒィッ、ハァ~ッ!」
 けたたましく叫びつつ、再び両袖を突きつけた。
 無数の弾丸が、発射される。
「ぐぅぅぅぅぅッ!」
「下がっとけ、おっさん!」
 アルトが飛び蹴りを放つ。足を狙われたサンタは、たたらを踏んで追撃を諦めるしかない。
「そろそろ、偽サンタには退場してもらいたいな」
 アストラは思江の傷を治療し、ケルベロスたちは陣形を整え直す。
「こんな面白くないイベント、もうたくさん」
 まったく同意だ。
 無言で頷いたキアリは、オルトロスに合図して左右に散り、双方からサンタに襲いかかる。
 アップルの放ったオーラの弾丸も確実にサンタを捉え、ダモクレスの装甲が砕け、オイルが園庭に滴っていく。
「おのれ……!」
 サンタはなおもミサイルを放とうとしたが。
「偽りのサンタに、本物の騎士が負けるわけにはいきません!」
 セレナが、空の霊力を帯びた剣を振り下ろす。
 幾多もつけられた傷の上を、切っ先は正確になぞって切り開いていく。
 最後にもう一度、噴水のようにオイルをまき散らし、サンタは爆発した。

●メリークリスマス! すべてのひとへ
「ゴッドサンタの復活は防げたでしょうか……?」
 憂い顔で、柚子は呟く。
 皆さんが、楽しいクリスマスを過ごせますように。そう願わずにいられない。
「ほかのミンナを信じるしかないデスネ。
 ……やたらメルヘンになっちゃったデスガ、マァ、幼稚園にはちょうどいいデス!」
 アップルが指したのは、破壊された滑り台である。修復の結果、レンガ作りのお城のようになってしまったが。
 園舎などはさほど破壊されずにすんだが、それでも激闘の後。ケルベロスたちはそれらを修復していった。
 それもまもなく終わり、引き上げようかと思ったとき。
「せっかくだから見ていかないかって? いいね♪」
 澪は嬉々として、参加することにした。
「せっかくだから、手伝ってやるよ。ガキの扱いは本職ほどじゃねーけど……」
 などと言っていたアルトに、男の子たちが群がる群がる。変身ヒーローのような姿に、食いついたのだ。そして、よじ登るよじ登る!
「微笑ましいですよ」
 と、セレナが笑った。
「だったら代わってみるか?」
「いえ。みんなー、お姉さんがお話を聞かせてあげる!」
 そう言って、笑いながら逃げる。
「登るな! せめてひとりずつにしろ! 俺はジャングルジムじゃねぇ!」
「たくましいものね。さっきまでは、怖かっただろうに」
 アストラが感心したように頷いた。この分なら心配はいらないだろう。
「よーし、踊るか!」
 サンタ帽をかぶった彼女の従者が、音楽に合わせてぴょんぴょんと跳ねる。子供たちが手を叩いて、喜んだ。
 その遊戯室の前で、思江はサンタの扮装をした園長に、なにやら大きな袋と手紙を手渡していた。
「あー……、まぁ、馬鹿馬鹿しいことかもしれないが、な」
 その手紙には、「来年はいいサンタになって帰ってくるね!」と、『悪いサンタ』だった者からのメッセージが書かれていたのだ。そして袋は、お詫びのプレゼント。
 本物としか思えないほど似合っているアズマ先生は、白髭の下で目を細め、微笑む。
 子供たちの歓声が、ひときわ大きくなる。
「サンタさんだー!」
「サンタさーん!」
「えんちょうせんせーい!」
 思いっきり園長先生と言っている子供もいるが、ともあれアズマ先生がサンタの扮装をしてやってきた。並ぶ子供たちにひとつずつ、プレゼントを渡していく。
「ロボットのサンタさーん、らいねんはいいこにしてねー! ぼくたちもいいこでいるよー!」
 微笑ましい光景を目にしつつ、キアリは微笑んだ。少し、寂しげに。
「……いつか、わたしのもとにもサンタさんが来てくれるかしら」
「ほれ」
「え?」
 驚いて顔を上げると、思江がキャンディーをひとつ、差し出している。
「サンタというのはおこがましいが。オッサンからのプレゼントだ。いい子にしてたからな」
「キャンディーに喜ぶほど、子供じゃ……ないわ」
 そう言いつつも、キアリは微笑みを浮かべてキャンディーを口の中に放り込んだ。

作者:一条もえる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。