血のクリスマス事件~雷撃トナカイと肉弾サンタ

作者:柊透胡

「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 ヘリポートに集まったケルベロス達を前に、粛々と口を開く都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)。
「最近、世間を騒がせていたVRゲーム型ダモクレスの事件に進展が見られました」
 件の事件は、大侵略期の地球で『血のクリスマス』と呼ばれる大虐殺を引き起こした侵略型超巨大ダモクレス、『ゴッドサンタ』復活の予兆であったという。リヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)、リー・ペア(ペインキラー・e20474)、アーリィ・レッドローズ(ぽんこつジーニアス・e27913)らが行った調査の大きな成果だ。
「VRゲーム機型ダモクレスは……ゴッドサンタの配下によって、少し早いクリスマスプレゼントとして子供達に届けられたようですね」
 更に『ゴッドサンタ』は、クリスマスを楽しみにする人々を血祭りに上げる事で、自らが復活するグラビティ・チェインを得ようと動き出している。
「襲撃が発生するのは、12月24日の午前中。この襲撃によってグラビティ・チェインがゴッドサンタの元に集まれば……クリスマスの夜に完全復活し、世界に大破壊を招く事になってしまうでしょう」
 ゴッドサンタの復活と大破壊を阻止するには、ケルベロス達の力が必要だ。
「どうか、皆さんの力をお貸し下さい」
 実際に襲撃してくるのは『ゴッドサンタ』の配下で、『ヴィクトリーサンタ』と『ヴァンガードレイン』という二体一組の量産型ダモクレスだ。
「彼らは12月24日の早朝に日本各地に一斉に現れ、クリスマスを楽しみにしている人々を襲ってグラビティ・チェインを奪い取ろうとしています」
 創がタブレット画面に示したのは、横浜市の下町にある小さなケーキ屋さん。家族ぐるみで作るケーキは周辺住民にも愛されており、当日はクリスマスケーキの為、朝早くから働いている。
「敵の戦闘力は、ヴァンガードレインとヴィクトリーサンタの2体でケルベロス8人と互角程度です」
 ヴァンガードレインは角から放つ電撃攻撃が、ヴィクトリーサンタは肉弾戦が得意なようだ。
「超硬度のパンチやキックの他に、背中の袋、というかロケット発射口からはプレゼント型爆弾を噴射するようです」
 ゴッドサンタがかつて封印された地点は、丁度、東京でクリスマスパーティが行われる場所だという。もしも、ゴッドサンタが完全復活してしまえば大惨事は免れない。
「逆に、襲撃を阻止出来れば、グラビティ・チェインが枯渇したゴッドサンタを撃破する機会も訪れるかもしれません。何より、クリスマスを楽しみにしている人々を虐殺して、グラビティ・チェインを奪い取るなど、サンタとトナカイの風上にも置けませんので」
 意気軒昂に頷くケルベロス達を見回し、創は「では、宜しくお願いします」と慇懃に会釈した。


参加者
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
ニケ・セン(六花ノ空・e02547)
ルードヴィヒ・フォントルロイ(キングフィッシャー・e03455)
イピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513)
ティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
古牧・玉穂(残雪・e19990)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)

■リプレイ

●クリスマスを護る者達
 12月24日早朝――海風と寒気が身に滲みる。
(「クリスマスの為に、朝早くから一生懸命頑張っている方を狙うなんて……許せません」)
 ケーキ屋さんから外に出れば、吐く息が白く棚引いた。冷える身体を温めようと、軽くジャンプする羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)。
 家族や恋人と、或いは友人と。クリスマスの楽しい1日を邪魔しようなど、言語道断。大切な1日を守る為に、全力で戦おう――紺は意気軒昂に拳を握る。
「サンタさんはいい子にしている子供にステキな贈り物をしてくれる人だよ」
 サンタクロースの存在を、純粋に信じているティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392)。
「ええ、サンタさんは人々に夢を配り歩く立派なお仕事をされているのです! 偽物は退治しなくては!」
 ボクスドラゴンのヘルを撫でながら、ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)は力一杯頷く。ヴァルキュリアのラグナシセロにとって、今年は初のクリスマス。台無しにしようとする敵は許せない。サンタさんも偽物を撃破すれば来てくれる筈、と信じて止まない。
「偽物にはクリスマスのクの字も言わせない、から。みんなの楽しみは壊させないよ」
「後、ケーキも気になりますし!」
 サンタさんを信じる友達同士、楽しげに頷き合った2人は念の為、ケーキ屋さんの入口もキープアウトテープで塞ぐ。ケーキ屋さん一家には店内に篭って貰っている。ケルベロスが敗北しない限り、彼らが戦闘の巻添えになる事は無いだろう。
(「ゴッドサンタ復活は、絶対に阻止しませんと」)
 古牧・玉穂(残雪・e19990)は油断なく頭を巡らせる。ポケットに忍ばせた紙片を思えば、自然と唇が綻んだ。
(「クリスマスを楽しみにしている人を襲うだなんて、見過ごせませんもの」)
 敢えて口に出さずとも、ケルベロス達の決意は同じ。年に1度のクリスマスを、デウスエクスの惨劇の日にさせやしない!
(「クリスマスって楽しいわくわくなもんだよね。血の雨なんていらないんだよ」)
 帽子の下から、真剣な眼差しが周囲を警戒する。だが、駐車場に駆け込んできた人影と箱影に、ルードヴィヒ・フォントルロイ(キングフィッシャー・e03455)は思わず表情を緩めた。
「まだ来てないよ、ニケ。きりちゃんもご苦労さん」
「良かった、遅刻しないで済んだようだね」
 最後にやって来たニケ・セン(六花ノ空・e02547)は軽く息を弾ませている。和柄の桐箱のようなミミックと駐車場に臨む通りを、キープアウトテープで封鎖していたので、遅くなった。
「助けに来たよ、危ないからお店の中にいてね」
 ニケが店内のケーキ屋さん家族に声を掛ける暇があればこそ。
 ガションガション――。
 耳障りな金属音が響き渡るや、ケルベロス達の目の前に現れたのは、メタルっぽい金色トナカイと厳ついメカサンタ。
「これが、デウスエクス式のサンタさんですか」
 ダモクレスとの遭遇は初めてというエルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)。好奇心一杯の面持ちも束の間、不満げに唇を尖らせる。
「私の知ってるサンタさんとトナカイは、こんなんじゃないの」
 サンタさんはふわふわで、ぷにぷにで、まんまるくて。トナカイのピカピカもお鼻だけで十分だ。何より、ケーキ屋さんに手を出すなんて、絶対許せない!
「ダモクレスサンタは、倒してからプレゼントを貰おうね」
 愛らしい面を凜と引き締め、エルスは敵を睨み据える。
(「サンタに、トナカイ……デウスエクスが地球のイベントに因んだ姿で現れる事に、何か理由でもあるのでしょうか?」)
 空から警戒していたイピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513)も、疑問は尽きないが、今は敵を倒す事が最優先。ダモクレスの行く手を遮るように降り立ち、身構える。
「早く終わらせて、この街にクリスマスを取り戻しましょう!」

●雷撃トナカイと肉弾サンタ
 ――進攻妨害確認。排除開始。
 重低音の宣戦布告と共に、ガションとヴィクトリーサンタの袋、もとい砲塔がケルベロス達へ向けられる。
 ファイア!!
 ご丁寧にリボンまで掛けられたギフトボックスが、前衛の3人+2体に浴びせられるや次々と爆ぜ、粉塵がもうもうを立ち込めた。
「メリークリスマス。折角の楽しいクリスマス、邪魔をさせる訳にはいきません」
 破壊の衝撃に、防具はよく耐えた。玉穂はスカートの端をちょいと上げてご挨拶。そのまま、ヴァンガードレインに独自の居合切りを放とうとするも、サンタに接近を阻まれ届かぬと知る。代わりのサイコフォースは、僅かな身動ぎでかわされた。
「ありがとっ、きりちゃん!」
 後で御礼の菓子は忘れずに――ニケのミミックに庇われたルードヴィヒも、妖精の加護を宿した矢でトナカイを狙う。キャスターで無い限り、基本は命中率に差異は出ないが、取り敢えず当たらなくて困る事は無さそうだ。
 ギィィッ!
 果たして、トナカイを貫くホーミングアロー。だが、イピナのハートクエイクアローは金色の体躯を掠めたのみ。どうやら、爆発の粉塵が視界を遮っている様子。顔を顰めたエルスが禁縄禁縛呪を編むも、雷撃と相殺された。
 どんな強力な攻撃も、命中しなければ始まらない。すぐさま、ティスキィは地面に守護星座を描く。
「……?」
 粉塵も幾許か晴れたが……相棒のヘルが怪訝そうなのを見て取り、ラグナシセロは確信する。メディックのヒールをして、厄が掃い切れぬなら。
「範囲型のヒールは使い所が難しいね」
「いいえ、ティスキィ様の力不足ではありません。サンタは、ジャマーです」
「大丈夫、ジャマーのキュアはジャマーに任せて」
 困惑するティスキィに、メタリックバーストで前衛の超感覚を覚醒させるラグナシセロのフォローとエルスの言葉が心強い。
「わかった。必ず癒すから、全力でいこうね!」
 再び敵の動向に目を凝らすティスキィを頼もしげに一瞥し、紺はドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させる。
 ――――!!
 敵が視界を塞いで命中率を下げるなら、上回る手数でその動きを鈍らせれば良い。紺の竜砲弾がトナカイを穿ち、ニケはドラゴニックミラージュをサンタへ叩き付ける。同時にミミックも、贋の大判小判をばら撒いた。
 バチバチィッ!
 サンタへのダメージはトナカイの電気ショックが帳消しにしたが、その身に燻る炎まで消した事で、トナカイのポジションも判明する。
「サンタの後ろに隠れるトナカイ、メディックだね」
 沈着に紫の双眸を細めたニケの声音は穏やかなままだが、苦笑を浮かべたようだ。
「『将を射んとする者はまず馬を射よ』、とは少し違いますが。予定通り、トナカイから」
 イピナの言葉に否やは無い。数人でサンタを抑える間にトナカイから倒す、それがケルベロスの作戦だった。
 ニケとミミックがサンタに張り付き、その間に遠距離攻撃がトナカイを狙う。エルスもサンタの動きを鈍らせんとグラビティを操る。
 尤も、ケルベロスが戦力をサンタとトナカイに分けた所で、敵も律儀に合わせてくれるとは限らない。
「っ!」
 ダモクレスの攻撃は、専らエルスに浴びせられた。打たれ弱さとジャマーの脅威を鑑みてか。
「私が、盾がある限り……負けない!」
 エルスを襲う拳を、イピナのブラックスライム『ノワール』が滑らかに受け流す。その間に、ティスキィのヒールが集中攻撃の威を和らげる。
「負けないで! きっと癒すからっ!」
 光の幻影が描くガーベラの花籠。その花の香りは優しい思い出を呼び起こし、花籠を彩る赤いリボンは想い人への絆を結ぶ――淡く感謝の笑みを浮かべたエルスは、稲妻突きをサンタへ敢行する。
「早く片付けてくれると、嬉しいかな」
「了解」
 やはりサンタへケイオスランサーを投げながらのニケの遠慮ない言葉に、思わずにやりとするルートヴィヒ。一転、真剣な眼差しがトナカイを射抜く。
 雨垂れ雫とて、岩をもくだく――小さな羽根が、翔ける。どんな壁をも貫き砕く一雫の如き一撃が。
 続いて、軽やかに、涼やかに、まるで散歩でもするように身を翻す玉穂より、氷結の螺旋が煌く。
 ギィィィッ!
 凍れる体躯を捩らせ、トナカイの雷撃はあくまでもエルスを狙う。
「ヘル、もう少し頑張って」
 射線を遮る相棒の奮闘を激励するラグナシセロ。夜空の如き濃紺のブーツが唸り、流星の軌跡を描く。
 イピナの轟竜砲にトナカイの脚がふらつくや、紺の血染めの戦記は戦いに散った者の怨嗟をおぞましい幻覚として描き出す。
「戦い争う者の宿命です。どこへ行こうと、決してあなたを逃しません」
 回復も許さぬ怒涛が、ヴァンガードレインの生命力を上回る。刹那首を巡らせて、四脚の体躯がどうと崩れ落ちる。最期の雷撃ヒールを置き土産に。
「さあ、後はサンタのみ! 仕上げといきましょう!」
 快哉を上げたイピナは、すぐさまヴィクトリーサンタに駆け寄る。
「クリスマスにケーキ屋襲撃って何してくれんじゃー! このどくされサンタ!」
 これで心置きなくサンタを殴れるというもの。浮いた話に縁の無い甘党にとって、ケーキ屋襲撃は万死に値する。
「ブラックサンタとてジャガイモだってのに、筋肉達磨にゃ用はねーんだ!」
 罵る勢いのまま、ルードヴィヒのグランドファイアが炸裂する!
「ニケ!」
「判ってるよ」
 今度はルードヴィヒの言葉に応じたニケが、束ねた妖精弓を引き漆黒の巨大矢を放った。同時に、ミミックのエクトプラズムが大鉈を具現化する。
 ヴァンガードレイン撃破で、1番苦しい峠は越えた。勢いに乗ったケルベロスの攻撃が、次々とサンタへ浴びせられる。
 ガキィッ!
 だが、猛攻も構わず、前衛をすり抜けたサンタの拳がバチバチと爆ぜた。
「っ!」
 華奢を抉る一撃に、エルスはカハッと息を吐き――辛うじて踏ん張る。すかさず、ティスキィの祝福の矢が癒しを注ぐ。
「お返し」
 少女の拳にバトルオーラが陽炎う。強かに殴り、トナカイの置き土産を吹き飛ばした。
 ――――!!
 しぶといサンタを、圧倒的な手数で穿ち続けるケルベロス達。
「汝、朱き者。その力を示せ」
 幾度となくばら撒かれる爆弾は、ニケの朱奪やエルスのオラトリオヴェールが。格闘の重撃はラグナシセロのユングヴィの実りやティスキィの凛花の祝福が――弛まず癒す。
「このっ!」
 特にプレゼント爆弾には怒りしか覚えない。ともすれば荒くなりそうな言動を抑え、紺のブラックスライムが牙を剥く。
「その背中の袋に、本物のプレゼントを入れてこなかった事、後悔しなさい!」
「ああ、袋に夢や希望詰められんならサンタ名乗るな!」
 紺に大いに同意したルードヴィヒは憤るまま、殺神ウイルスを叩き付ける。
「貴方だけに聖なる夜を贈りましょう」
 玉穂の技の名は、夜剣・月虹――タイミングを一瞬ずらした斬撃の空白に、デウスエクスは月光の虹を見る。
「終焉の幻、永劫の闇、かの罪深き魂を貪り尽くせ!」
 続くエルスの虚界闇喰衝が、ダモクレスを呑むもまだ倒れない。
「危ない!」
 オォォォッ!
 咄嗟に牽制のホーミングアローを放つティスキィ。僅かに減衰したサンタの蹴打に、ヘルは最後まで盾の役割を全うした。
「いい加減、サンタさんの偽物には退場して頂きます!」
 クリスマスを台無しにするものは、何であれけして許さない。ラグナシセロの轟竜砲に、ヴィクトリーサンタが棒立ちになったその瞬間。
「私が、剣がある限り……地球は負けない!」
 その連撃は夕立の如く――穿つ落涙、止まぬ切っ先。水の精霊の力を纏うイピナの刺突は、サンタが動きを止めるまで途切れる事は無かった。

●クリスマスの伝統菓子を
 ズシィィンッ!
 重々しく倒れたヴィクトリーサンタは、忽ち霧散して跡形も残さない。そう言えば、先に倒されたヴァンガードレインの姿も既に無く、残ったのはアスファルトが抉れた戦の痕のみ。花壇が巻添えに遭っていたり、駐車場は些か荒れた呈だ。
「お疲れ様でした。酷いサンタさんでしたね、本当に」
 ホッと息を吐く玉穂。エルスは早速、オラトリオヴェールを編み始める。壊れた柵にヒールを掛ければ、忽ち赤と緑のクリスマスリースのような植物の輪が幾つも芽吹き、柵の代わりに連なり彩る。
「何だか、クリスマスっぽくなりましたね」
「クリスマスにファンタジーは合いそう? まあ、気にしないで」
 ヒールに若干のファンタジックはお約束。思わずクスリと笑んだ紺に、エルスも小さく肩を竦める。
「今日はどら焼きじゃなくて、クッキーな」
 折角のクリスマス・イヴだから、という訳で、カパッと大口開けたニケのミミックに、ポイポイと焼菓子を放り込むルードヴィヒ。バターたっぷりのクッキーは、勿論、護ったばかりのお店の品だ。
「うん、いい匂い。他にどんなお菓子があるのかなぁ」
 鼻腔を擽る甘い匂いに目を細め、ニケは戦闘時と変わらぬ穏やかな表情で店の方へ振り返る。
「――はい、もう大丈夫です。デウスエクスは倒しましたので」
「ありがとうございました」
 丁度、状況を説明したイピナに、ケーキ屋さんの家族が揃って頭を下げている所だった。店舗に被害が及ばずに済んだし、駐車場もヒールで綺麗に修復された。それで、ケルベロスカードの方は、丁重に辞退されたようだ。
「わぁ。ケーキ、買っても良いの?」
 紅の瞳を嬉しそうに輝かせるティスキィ。まだ朝も早い時間ではあるけれど、お礼代わりにと、ケルベロス達の為にお店を開けてくれたのだ。厨房の方はまだまだ大忙しの模様だが、店頭に並ぶ焼菓子とクリスマスのディスプレイが目にも楽しい。
「折角だし、何か買いましょうか。お勧めとかはあるの?」
 ワクワクとショーケースを覗くエルスの隣で、早速、ポケットから予約券を取り出す玉穂。
「こんな事もあろうかと、予約はばっちりです」
 逸早くシュトレンをゲットして、玉穂は嬉しそうに紙袋の中を覗く。セロファンに包まれて、赤いリボンを掛けられたケーキは、ドライフルーツやナッツを練り込んだ生地に粉砂糖が真っ白に塗されている。幼子が産着で包まれているように見えない事も無い。
「世界各地の伝統的なお菓子が並んでいるみたい。どれも美味しそう!」
「こっちがクグロフで、そっちがパンドーロ、ですか……微妙に、形が違うんですね」
 ちなみに、クグロフはフランスの菓子、パンドーロはイタリアの銘菓だ。
 ケルベロスはサンタさんじゃないけれど、大好きで大切な人達の為に、サンタさんの代わりに甘い贈り物を。歳も近そうなケーキ屋の娘さんに説明して貰いながら、ティスキィとラグナシセロは、楽しそうにお土産のケーキを選んでいる。
「よしっ。僕らもシュトレン買って帰ろうっ」
 クッキーを残らずミミックの大口に放り込み、ルードヴィヒはニケの肩をポンと叩く。親愛の仕草に頷き返し、シャドウエルフの青年はのんびりとケーキ屋へと足を向けた。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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