血のクリスマス事件~猟奇サンタ!

作者:柊暮葉


 セリカ・リュミエールが集めたケルベロス達に説明を開始した。
「リヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)さんらの調査によって、VRゲーム型ダモクレスの事件が、大侵略期の地球で『血のクリスマス』と呼ばれる大虐殺を引き起こした侵略型超巨大ダモクレス、『ゴッドサンタ』復活の予兆であったことが判明しました。VRゲーム機型ダモクレスは、ゴッドサンタの配下によって、少し早いクリスマスプレゼントとして子供たちに届けられたもののようなのです。更に『ゴッドサンタ』は、クリスマスを楽しみにする人々を血祭りに上げる事で、自らが復活するグラビティ・チェインを得ようと動き出したのです。襲撃が発生するのは、12月24日の午前中です。この襲撃が成功し、グラビティ・チェインがゴッドサンタの元に集まれば、クリスマスの夜にゴッドサンタが完全復活し、世界に大破壊を招く事になってしまうでしょう。それを阻止する為に、皆さんの力が必要なのです」


「『ゴッドサンタ』の配下として実際に襲撃を行うのは、『ヴィクトリーサンタ』と『ヴァンガードレイン』という2体一組の量産型ダモクレスです。彼らは12月24日の早朝に、日本各地に一斉に現れ、クリスマスを楽しみにしている人々を襲ってグラビティ・チェインを奪い取ろうとしています。敵の戦闘力は、ヴァンガードレインとヴィクトリーサンタの2体でケルベロス8人と互角程度です。ヴァンガードレインは、角から放つ電撃攻撃を得意としています。ヴィクトリーサンタについては、チェーンソー剣を得意とする模様です」


「クリスマスを楽しみにしている人々を虐殺して、グラビティ・チェインを奪い取るなんて、そんなサンタとトナカイは絶対に許せません。撃破してください!」


参加者
シルフィリアス・セレナーデ(魔法少女ウィスタリアシルフィ・e00583)
塚原・宗近(地獄の重撃・e02426)
神籬・聖厳(日下開山・e10402)
レイナ・デモダイシン(シェカーテ・e14316)
西院・玉緒(深淵ノ緋・e15589)
スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)
ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)

■リプレイ


 東京都郊外のショッピングセンター。
 イブの早朝に、ケルベロス達は現場に到着していた。
 クリスマスイブということで、そのショッピングセンターは午前七時から営業している。そのための広告も打っていたので、駐車場にも車が何台か止まっている。だが、凄く混んでいるという様子ではない。
 ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)は真っ先にショッピングセンターの中に入っていった。
 まばらにいる客がカートを押している。店員達は既にレジなどに配置している様子だ。
 ゲリンは近くにいる客を呼び止めた。
「もうすぐデウスエクスが来るよ! 早く逃げて!」
 そう告げてケルベロスカードを見せると、客はぎょっとして立ちすくんだ。
 ちょうどそのとき、館内放送が流れた。
「デウスエクスが来襲--隣のコンビニの更地へ--」
 神籬・聖厳(日下開山・e10402)がショッピングセンターの店長に事情を話し、ショッピングセンターに隣接しているコンビニを潰した更地へ客が逃げるように放送したのだった。
 襲撃に備え、駐車場に面する出入り口を避けて裏手から逃げてもらうことにした。その誘導は店員の手も借り、ゲリンも手伝った。
 西院・玉緒(深淵ノ緋・e15589)は更地の手前で隣人力を振るう。
「事情は把握出来てるわね? そういう訳だから……少しの間、ここに待っていて頂戴。わたしの戦う姿を見たいでしょうけど、危ないから……ね」
 玉緒は逃げてきた店員達をうまく更地へ避難させていく。
「戦場に一般人を近寄らせない……」
 レイナ・デモダイシン(シェカーテ・e14316)がショッピングセンター付近に殺界形成を張り巡らせた。
(「サンタの文化は子供たちに人気と聞いたわ。その楽しみを血で染める存在は平穏のために早く仕留めましょう」)
 レイナの決意は硬い。
「キヒヒヒッ、グラビティ・チェインはどこ~だ~」
「ギギギギ……」
 駐車場にヴィクトリーサンタとヴァンガードレインが現れたのは、避難誘導を終えた後だった。
 赤い服を着たサンタクロースに見えるが、ヴィクトリーサンタはれっきとしたダモクレスである。手にはチェーンソー剣を構えている。
 ヴァンガードレインは黄金のトナカイに見えるが、特に角の部分はまるで派手なイルミネーションのようにギラギラと輝いていた。
「人間は~ど~こ~だ~」
 凄惨な笑みを浮かべながら、ヴィクトリーサンタは周囲を見回し、やがてコンビニの更地の方を向いて歩き出そうとした。
「ようこそ我が家へ。プレゼントは何かな?」
 その前にいたのは自宅警備術を発動するために、店から延長コードで繋いだこたつの中に入っている聖厳であった。
 どてらを着込みこたつに足を突っ込んだままダモクレスを見上げている。
「なんだ……?」
「ここから先に行きたければあちしたちを倒してから行くといいっす!」
 そこにシルフィリアス・セレナーデ(魔法少女ウィスタリアシルフィ・e00583)がそう声を上げて立ちふさがった。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 可愛くキメポーズである。
「被害が出る前に撃破させてもらうよ」
 塚原・宗近(地獄の重撃・e02426)もダモクレス達の行く手を阻む。
 風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)は手に汗握って緊張の面持ちだ。
 スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)はヴィクトリーサンタとヴァンガードレインをじっと見比べている。
「なんだァ……貴様ら、ケルベロスか!?」
 ヴィクトリーサンタはそのことに気がついたようだった。
「早朝に襲撃。――って、随分と間抜けなんじゃない?」
 玉緒が眼鏡をクイッ。
「あなた達が間抜けで良かったわ。昼過ぎとかだったら、対応出来なかったかもだし」
 さらりとディスる。
「地獄の重撃塚原宗近、キミたちを倒す!」
 名乗りを上げると同時に宗近は鋼刃重撃(ハガネノジュウゲキ)をヴィクトリーサンタにお見舞いした。
 自身の全てをこめた重い一撃がヴィクトリーサンタに命中する。
「ぬ……ガッ……」
 宗近の後ろから、スヴァリンは隊列確認のためにマルチプルミサイルを撃ち放った。
「サンタクロースは子供達の夢、それを守ってこそ紳士だよね!」
 ヴィクトリーサンタが前、ヴァンガードレインが後ろに飛び退く。
(「このサンタ……クラッシャーか!?」)
 スヴァリンは動きを見極めようとする。
 ヴィクトリーサンタはチェーンソー剣を振り上げて宗近に向かいズタズタラッシュを行おうとする。
 宗近はすんでのところでかわしたが、服が裂けて胸にかすり傷を負っている。
「隙ありっすよー」
 シルフィリアスがズタズタラッシュの直後を狙ってライトニングボルトをヴィクトリーサンタに放った。
「ぐっ……」
 体が麻痺するヴィクトリーサンタ。
 聖厳はこたつの中から洗脳電波でヴィクトリーサンタに催眠を与えようとする。しかしヴィクトリーサンタは振り切った。
「子どもの夢を守る……!」
 レイナは螺旋氷縛波でヴィクトリーサンタを氷漬けにしようとする。
 その後ろから玉緒がグラインドファイアで炎の蹴りを撃ち放つ。さらに禁縄禁縛呪。
 後列からゲリンがホーミングアロー、錆次郎がクイックドロウを使いヴィクトリーサンタを攻撃した。
「グウっ……下等生物どもがァッ……!」
 悔しげに叫ぶヴィクトリーサンタ。
 そのとき、後ろに控えていたヴァンガードレインの角が目映く輝き始めた。
 やがてその角から強烈な電流が、ケルベロス全員に向かって撃ち放たれる。
 電撃イルミネーション。
 凄まじい電光がケルベロスを襲う。
 体が麻痺して地面に倒れ伏してしまうケルベロス達。
「許さんぞォ!!」
 駐車場に転がったレイナに対してヴィクトリーサンタはチェーンソー剣を大きく振り上げる。
 レイナに叩きつけられるチェーンソー斬り。
 息を飲む錆次郎。
 続いてヴィクトリーサンタはレイナの隣の玉緒に二振りのチェーンソー剣を構える。
「炎のお返しだ!」
 スカーレットシザーズで玉緒を切り裂き焼き尽くそうとするヴィクトリーサンタ。
 女性ばかりを狙ってチェーンソー剣を振り回し血塗れになるその姿は猟奇そのものである。サンタクロースのような格好をしているダモクレスだけに恐ろしい。
 さらにヴァンガードレインが角を振り上げ、再び電撃イルミネーションの構えに入る。
 レイナのボクスドラゴン、シュウフクが健気に属性インストールを行い、なんとか主人を立ち上がらせようとする。スヴァリンのボクスドラゴンのイージスは、ヴァンガードレインにボクスアタックを行い、電撃イルミネーションを食い止めようとした。
「そうはさせないんだよっ……」
 錆次郎はブレイブマインで一気に仲間の回復にかかる。息を吹き返すレイナと玉緒。
「頑張ってぇ……」
 錆次郎はレイナにジョブレスオーラを送り込み、彼女の傷を回復していく。
『さぁ、傷を見せてねぇ? 大丈夫、痛くしないからねぇ?』
 さらに玉緒の方にはFIRST AID(ザ・デブノイヤシ)で、機械腕をわきわきさせながら回復。
 たゆんたゆんの玉緒の胸にわきわきの手。
「勘違いするなよデブ」
 回復を受けながら玉緒は言い放った。
 そうこうしながら隊列を立て直すケルベロス。
「勝利するのは僕達の方だ!」
 宗近はデストロイブレイドを叩きつけてヴィクトリーサンタの怒りを招き、自分に攻撃を惹きつけようとする。
 ヴィクトリーサンタは目を赤く輝かせてチェーンソー斬りで宗近に斬りかかる。
「メリークリスマスかな。こちらも重い一撃をプレゼントさせてもらうよ」
 宗近は、再び鋼刃重撃(ハガネノジュウゲキ)でヴィクトリーサンタに重い一撃を与える。自分も傷を負うが、レイナが気力溜めで回復をする。
「今こそ自宅を……出る!」
 聖厳はそう宣言するとこたつから出て来て、ヴィクトリーサンタにニートヴォルケイノでプレッシャーを追加。
「プレゼントの代わりに、貴様の心臓を貰っておくぞ!」
 こたつから出るなりおもむろに脱いで、裸神活殺拳の五本貫手。猥褻は一切ないが寒そうである。
 ヴィクトリーサンタは度重なる攻撃に体をぶるぶる言わせながら、まだ宗近を狙おうとする。
 そこにシルフィリアスが魔法少女のようにくるくる周りながら近寄ってきて、必殺技のように杖を構える。
『これでもくらえっすー! グリューエンシュトラール!』
 マジカルロッドに魔力を集め、シルフィリアスは光とともにエネルギーの塊を放射。
「がはっ……」
 ヴィクトリーサンタは機械でありながら、吐血するような音を立ててその場に崩れ落ち、動かなくなった。
 残るは電撃トナカイである。
「……さて。ここからが本番よ」
 玉緒はポジショニングで自分を回復しながら銃を取り出す。
 そしてヴァンガードレインに銃を撃ち放って威嚇する。
「ひと踊り付き合ってくれるかしら?」
 エアシューズで重力の蹴りを撃ち放ち、玉緒はヴァンガードレインを完全に足止めにする。
 ヴァンガードレインはゼログラビトンで抵抗するが外した。
『……ふふ。随分と、滑稽に踊るのね。 面白いわ、あなた』
 玉緒は、緋閃ノ追(ヒセンノツイ)でヴァンガードレインの間合いに飛び込むと、銃底で殴打と刺突を繰り返し、接射すると御業で乱打した。始終ドヤ乳での攻撃である。
「ギギギ……」
 苦しげな声を立てるヴァンガードレイン。
 それでも再び電撃イルミネーションを使おうとする。
「君を放っておくつもりはないよ……何故なら、俺は紳士だからね!」
 スヴァリンはフォートレスキャノンを発射する。
 電光よりも先にヴァンガードレインを麻痺させてしまうと、ローラーダッシュの摩擦の炎でグラインドファイア。
 炎に燃え上がる電撃トナカイ。
 そのヴァンガードレインに向かい、ゲリンがヴァルキュリアブラストで光の粒子となり貫いていく。
 それからゲリンがは戻って来ると、詠唱を開始する。
『月光よ、彼の者の魂を照らしたまえ……願わくば苦果を憐れみ、天へと導くことのできる慈愛の力をこの手に……ゆっくり休んで、ね?』
 悪のトナカイに対して月光の愛撫(アイン・イシック・インメ)を使い、ゲリンは天国に昇るような心地を与える。
 炎にもがいていたヴァンガードレインはすっと体から力を抜き、そのまま倒れこんで二度と立ち上がる事はなかった。


 戦闘後、宗近は周囲にヒールを与えると、ヴィクトリーサンタの攻撃を受けたレイナや玉緒達の方へ行った。
 ゲリンも同じく、壊れた駐車場をヒールした。錆次郎は、破壊されたダモクレスの体を調べたが、特に目立った事柄は見つからなかった。
「ヒールグラビティは必要?」
「いえ、大丈夫よ。気にしないで」
「大丈夫なの」
 二人はすっかり回復しているようだった。
 玉緒は心配そうな宗近をよそに更地へと戻った。
「待たせちゃって悪いわね。もう安心よ。……それじゃあ、良いひとときを」
 頼もしいケルベロスの言葉に、更地で待っていた一般人達に笑顔が戻った。
 こうしてケルベロス達は人々のクリスマスイブを守ったのだった。デウスエクスから守られ、ごく普通のクリスマスを過ごせる事こそが、人々にとっては何よりのプレゼントだったかもしれない。

作者:柊暮葉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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