砂漠の義賊、町を救う!(予定)

作者:森下映

「うおー! すっげー!」
 電源を入れた瞬間、少年の目の前には砂漠が広がっていた。遠くにはオアシスが見え、さらに遠くには蜃気楼のように、目指すべき、そして救うべき、今は悪に支配されている町の姿も浮かんでいる。
「まずはあそこにたどり着かなければ! おっと」
『ソウハサセナイゾ!』
「出たな! 砂のゴーレム!」
 砂が盛り上がるように現れた怪物。少年はひるまず、手元のナイフで斬りつけた。するとゴーレムはざっと崩れたが、また別の方向に、今度は3体が出現する!
「お前たちは一気にやっつけてやる! 風の精霊召喚!」
 少年の前に、半透明の女性が精霊が現れた。
『お呼びでしょうか、マスター』
「いっけええええ! あいつらをやっつけろーーー!」
『承知しました』
 精霊は自らを旋風と変え、
『ギャアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!』
 次々とゴーレムを薙ぎ払う。
「やったー! でもまだまだ油断できないな!」
 颯爽とターバンをなびかせて進む少年。
 しかし現実では、ここは砂漠ではなかった。
 ここは河川敷。
 当然砂のゴーレムなどいない。いたのはサッカーの練習をしていた子どもたちとそのコーチだ。
 上下スウェットに裸足、バーチャルゲームのゴーグルをつけた少年と、そのイメージ映像らしき砂漠の盗賊といった姿の少年。実際の少年が動けば、その映像の少年も動き、剣を振るい、魔法を使い、次々と無抵抗の子どもたちが血飛沫をあげて倒れていく。止めようとしたコーチに対しても、
「お前は悪の一味の1人、『毒サソリ』と言われている男だな! このナイフで勝負だ!」
「や、やめろ、うわーーーッ!」
 少年は真剣に、かつ楽しそうに、人々を殺しまくるのだった。

「都内の河川敷に、VRゲーム機型のダモクレスを装備した少年が現れ、たくさんの人々を殺してしまう事件が予知されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が言った。セリカの説明によれば、VRゲーム機型ダモクレスを装備した少年ナオキは、現実をゲームであるように感じているようで、河川敷のサッカー場にいる一般人を、砂漠に現れる怪物か何かのように殺し回ってしまう。
「ナオキさんのすぐ近くにはVRゲーム機型ダモクレスが実体化した少年のアバターが現れています。皆さんが実際に攻撃を行うのはこのアバターです」
 アバターは一定のダメージを与えると消失する。が、ナオキのゲームを続ける意志が尽きない限り、ナオキがゲーム画面でコンティニューを選んだというイメージで、すぐに新たなアバターが戦闘開始時と同じ状態(それまでに与えたダメージやバッドステータスがない状態)で復活する。
「ですが、『ナオキさんのゲームを続ける意志を折るような形でアバターを撃破』すれば、VRゲーム機型ダモクレスも撃破され、ナオキさんを救出することができます」
 また、ナオキ(VRゲーム機部分含む)を攻撃した場合、ナオキは身を守るためにアバターと合体して戦う。アバターと合体した場合は、戦闘力は強化されるものの、一度倒せば復活させずに撃破することができるが、少年の救出はできない。
「ナオキさんはケルベロスやデウスエクスと同様、通常ダメージは無効となっているようなので、ナオキさんに対してグラビティによる攻撃を行わない限りは、アバターと合体することはありません」
 逆に言えば、1度でもグラビティによる攻撃を行えば合体する。
「今回の目的はVRゲーム機型ダモクレスの撃破ですが、できれば、ナオキさんも救出してあげて下さい」

 今回は河川敷の避難は済んでいるため無人。ナオキは河川敷のサッカーコートを横断して進み、橋を渡って川の反対側へ行こうとしているため、サッカーコートで待ち伏せ、戦闘に持ち込むのが妥当だろう。十分な広さと明かりがある。
 ナオキのアバターは剣での攻撃の他、魔法、回復のグラビティも使用。ポジションはクラッシャー。

「VRゲーム機の入手経路は不明ですが、こんな危険な機械が広まればとんでもないことになってしまいます。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします」


参加者
マニフィカト・マクロー(ヒータヘーブ・e00820)
月枷・澄佳(天舞月華・e01311)
不破野・翼(参番・e04393)
平坂・穣子(ウェアライダーの巫術士・e25580)
スライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)
ルビー・グレイディ(曇り空・e27831)
リノ・リンデル(傷跡の羅針盤・e31167)
龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)

■リプレイ


「……出来れば無用な犠牲は出したくないな……」
 上着のフードかぶり、ナオキがくる方向を見つめるスライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)。やむを得ない場合を想定してはいる。が、できることなら。
「VRゲーム機型のダモクレスだなんて、こわいよね」
 リノ・リンデル(傷跡の羅針盤・e31167)はナオキとかわらない年頃。がんばって助けたいと言えば、大事な妹のテレビウム、マヒナも頷く。
「そうね、ゲームは楽しいものじゃないとね」
 今にもあくびをしそうな気怠げな様子はさすが自宅警備員。赤い髪に大きな灰色のリボンを結んだルビー・グレイディ(曇り空・e27831)。傍らにはミミックのダンボールちゃん。と、
「ダモクレスも手を変え品を変え、色々小賢しく立ち回ってくれる」
 ぼろきれを纏った何かが言った。隣にも同じようにぼろきれにくるまった、一回り小さい何かがいる。よくみれば大きいほうは平坂・穣子(ウェアライダーの巫術士・e25580)、小さいほうはテレビウムの田中くん。穣子の狼耳も尻尾も隠れ、目だけ出ている。イメージは女魔法使いとその使い魔だ。
(「でもそのゲーム、ちょっとやってみたい気もする」)
 とも思ってしまう穣子だが。
「一般人を騙して事件を起こすとは、厄介な事をしてきましたね」
 こちらは緋袴姿の月枷・澄佳(天舞月華・e01311)。と、
「ククク」
 黒い軍服に黒い手袋。片手で顔を覆い隠すように構えて立っている男……龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)は、
「我にかかれば、操られた少年を助けることなど造作もないことよ」
 と言っておもむろにツタンカーメンのマスクを装着。通販で買ったのだろうか、恐らくプラスチック製。軍服に顔だけファラオと直視するのが非常に困難だが、そこはダモクレスの補正に期待だ。
「来たようですよ」
 不破野・翼(参番・e04393)が言った。銀と光る身体と鋭い爪持つボクスドラゴン、シュタールを肩にのせ、まさに砂漠の番人風。
「うおー! すっげー!」
 ナオキは橋の向こうを見ると、
「あの町を救うんだよな!」
「盗賊風情が笑止千万」
「……出たな! そのキンキラな趣味の悪いカッコ、さては中ボス!」
 本人も気にしていることを言われ、マニフィカト・マクロー(ヒータヘーブ・e00820)の片眉が僅かに動く。だが我慢してわかりやすい砂漠の王様コスプレをしてきた甲斐あって、そのまま伝わっているようだ。
「はーい、義賊様の行く手を塞ぐ番人の登場だよ」
 ルビーもダンボールちゃんとともに前に出る。
「この先に進みたければ試練を受けるがいいよ。もし受けずに進もうとすれば、町の人が死んでしまうからね」
 リノが言った。
「試練て……えっと、戦えばいいのかな。よーし、風の精霊召か」
「あ、マイナス100点ね」
 ルビーが言う。
「なにそれ!」
「町を救うのなら武力だけではなく知識も必要。試練を受け、納得できる結果を見せて下さい」
 澄佳も番人らしく毅然と言った。が、内心、
(「あのダモクレス越しに、私の姿はどう写っているのですかね?」)
 気にはなるものの、知りたくないような気もする澄佳である。
「そうだよ。ルールはきっちり守ってよね。そうしないと点数がさがるよ」
 ルビーが言う。
「点数がさがる……」
 ナオキの顔がみるみる暗くなった。その様子に、
(「勉強に追われる子どもというのは大変そうだ」)
 マニフィカトが呟いた。と、
「やる前から諦めているのか。カッコ悪いからマイナス121点な」
「わっ! しゃべった! すごい棒読みだけど! しかも点数ハンパだし!」 
 一体穣子はどう見えているのか。
「だいたい来るのも遅かった。待ちくたびれたぞー、マイナス40点な」
「ぐずぐずしているとまた減点になるぞ」
 スライも煽る。
「一定の点数がとれなかった場合には、試練は始めからやり直しだ」
「ええー! ……早く思いっきり戦いたいのになあ」
 ぼそっとナオキが言えば、
「だめだよー、ルール守らないと減点だよ?」
 リノが言った。ナオキは、
「子どもの敵もいるんだ……わかったよ、試練やるよ」
「君は敵ながら聡明な勇士だな」
 翼が言う。
「アタマ良さそうな人だ……魔道士かな。連れてる竜もカッコイイ…」
 うらやましそうに見るナオキに、シュタールはどことなく得意げ。翼は笑って、かけている眼鏡を軽く直すと、
「始めようか」
 ノートを取り出した。ナオキには古文書でも取り出したように見えているだろう。少し気弱な普段の翼からはかけ離れた態度、悪役らしく振る舞っているのがわかる。
「それから試練を受けるに当たってもう1つルールがあります」
 澄佳が言うと、
「後出しだー! ずっこい!」
「それです」
「ええっ?!」
「『ずっこい』というのは正しい日本語ではありませんね。そんな言葉を答案に書いたら間違いなく不合格でしょう」
「不合格……」
 またナオキの顔が暗くなる。が、
「げ、ゲームだし関係ないじゃん!」
「『じゃん』も正しい日本語とは言えません。もう1つのルールとは正しい日本語を使って受け答えをすること。私からの試練は国語です」
「うう、この人見た目は踊り子みたいなのに、言うことは塾の先生だよ……」
「貴方の歳なら正しい言葉遣いができて然るべきでしょう。とりあえず今までのところ……どれくらいの減点でしょうか?」
「マイナス1074点だな」
「高っ! あっ、た、高すぎませんか」
 抗議するが、隠者穣子とその連れ田中くんは譲らない。
「それでは行くぞ。俺からの試練は砂漠にまつわる地理の問題だ」
 翼が言う。と、ナオキはまたも顔をくもらせ、
「地理?!」
「そうだ。この程度の問題など軽いものだろう」
「……ここまできて勉強かあ」
「何か言いましたか?」
 澄佳が聞き咎めると、
「いえっ! 何でもありません!」
「では第1問。砂漠と呼ばれる地域の年間平均雨量は約何mmだ?」
「え、えっと、図書館で読んだ本にあった気がするな……うーんとうーんと、250!」
「正解だ」
「やったー!」
「言葉遣いは今ひとつでしたので減点で」
「今回はオマケしてマイナス74点な」
「えーっ!」
 すかさず減点する澄佳と穣子。
「第2問。砂漠地域で育てることができる作物は?」
「こ、小麦。です」
「正解。第3問。砂漠で文明が形成されるために必要なものは?」
「文明……み、水だと思うけど、思います」
「他には」
「?! む、難しすぎるよー!」
「減点ですね」
「減点だな」
 踊り子と隠者、容赦ない。翼は眼鏡を直しながら溜息をつき、
「この程度の事も分からず村を救おうとは片腹痛い。貴様が万が一、力で彼の街を救ったとしても、低能には民衆はついては来ないぞ」
 シュタールも溜息ブレス。
「仕方ないね。次の試練いくよ」
 ルビーが言った。
「あたしからはこれ」
 ダンボールちゃんがナオキの所へぴょんぴょんはねていく。頭には紙。
「計算問題。頭の良い義賊様なら朝飯前だよね。10秒以内に答えをどうぞ。」
「ええと、Xが整数の時xは、Xが偶数ならXプラス4を表し、奇数なら」
「ブブー。10秒たったから失格」
 ルビーが言い、ダンボールちゃんは戻ってしまった。穣子は、
「これはひどい。マイナス1345点な」
「もっと勉強したほうがいいんじゃないのか?」
 スライが言えば、ナオキはどんよりと、
「なんでゲームでまで勉強しろって言われるんだよ……」
「そんなに勉強が嫌か?」
 マニフィカトが言う。
「イヤだ!」
「減点。本当に国語ができないのですね」
 澄佳が言った。
「確かに苦手だけどそこまで言わなくても……」
「何か言いましたか?」
「イイエっ!」
「では勉強ではない試練を与えてやろう。感謝するがいい」
「あっ、ありがとうございます!」
「このパズルで3千点以上を出し 給え」
「パズル? ……うげ!」
「また減点ですよ」
「もう点数が下がりすぎて地中の水源に当たりそうだな」
 踊り子と隠者が軽蔑のまなざしを向ける。
「だってこれで3千点って!」
 ナオキが4コマ×4コマのゲーム盤を見下ろして途方にくれる。マニフィカトが与えた試練とは、ケルベロス達も大運動会で翻弄されたガネーシャパズルだったのだ。
「ねーねー」
 唇を噛んで動かないナオキの肩をリノがぽんと叩き、長く垂れたターバンの先をマヒナがちょいちょいと引っ張る。
「それじゃーまたまた気分を変えて、こんな試練はどうかな? 道端に生えている雑草を10個納品!」
「そんな……オアシスまで行かなきゃ草なんか生えてないじゃないか……」
 ナオキはしゃがみこんだ。と、
「ククク、後は我に任せたまえ」
「わっ、動いた!」
 天征を見たナオキが腰を抜かす。
「人だったんだ?! 変な像が立ってるなって思ってたけど!」
 変な像。
「我はこの『すごく難しい中学受験問題集』から出題する。とはいえ我にかかれば大したことはなかったがな! 見ろ! 昨日暇つぶしにやっていたのだが、」
「あれ、それダメだよ、だめです」
「何?」
「小学校で習ってない公式はつかっちゃいけないんだよ。だからこうやって……」
「ふむふむ」
「ってなんで僕が教えなきゃいけないの!」
「ククク、問題は108問あるぞ」
「あと108問も教えるってこと!?」
「当初の予定とは違うがそうなるな! 宜しく頼む! フハハハ!」
 高らかに笑う天征を前にナオキはがっくりと両手を地面につき、
「もう……こんなゲームやだ……」
「よし、今ならいけるだろう」
「ん?」
 ナオキが顔を上げると、両手に刀を持ったスライが立っていた。
「え、もう僕ゲームはやめ」
「その気持ちが大事よ」
 そう言ってルビーは全身を高速で回転させ、ナオキのアバターに突撃。盗賊の衣装が破れ、続きダンボールちゃんがガブリ、
「うわっ、離せっ!」
 手をぶんぶん振っても離さない。
「マヒナ、僕たちもいくよ!」
 ダン! と跳び上がったリノが大きなナックルガードを装着した腕を振り上げ、振り下ろす。こめられた竜の力が凄まじい重さの打撃とともに、ナオキを凍りつかせ、マヒナも武器で援護。とさらに半透明の巨大な手らしきものがナオキを鷲掴みにした。穣子の降ろした神の御業である。
「捕えた。あとは田中くん、よろしく」
「わ!」
 田中くんから放たれた閃光にナオキが目を瞑った。そして再び開いた時には、それは怒りに燃えており、
「わああーーっ!」
 斬りかかるナオキ。しかしその前には翼とシュタールが飛び込む。アバターに斬り裂かれつつも翼は怯まず、赤い瞳でナオキを見据え、
「『不破野の追の型からは逃しません』」
「!」
 翼の拳がアバターの喉元に当てられた。続き動きを止めた瞬間を狙いすました正確な蹴りの一撃――追の鵺。後ろへよろけたアバターへ、シュタールはブレスを吐きかける。続き、
「『白尾、黒音。来て下さい』」
 澄佳の呼び出しに応じ現れたのは白毛の狐と黒毛の狐。霊狐召喚。自身の霊力から生み出した対をなす狐型の式神のうち、呪詛の力を持つ黒音がナオキへ向かって駆けていき、傷を与えて舞い戻った。


 攻撃をしかけてくるナオキだが、いってみれば戦いの素人。加えて、
「これくらい何てことないよ」
 ルビーがドワーフならではのタフさで盾役をこなす。
「砂漠には本来恵みの水か」
 皮肉なものだがと、マニフィカトの掌の上、魔術書がひとりでにパラパラとめくれる。
「『吾が海神の不滅の神話に、不滅なる祝福のあれ』」
 描かれる無数の魔法陣。アバターは形成された水球に閉じ込められ、強大な圧力で押しつぶされていった。
「ギャアーーー!」
 海若魔法、圧殺水牢。そして、
「『……見えた。そこがお前の死だな』」
 直葬魔眼。スライの灰色の瞳に映っているのはアバターを断つように走る緑の線。死を感じとる能力は、確実に敵へ破壊を捩じ込める軌道を映らせるグラビティと変質した。
 静かに、しかし力強く、『線』に沿って刀を滑らせるように斬り捨てるスライ。アバターが上下に分断され、ズッ、とずれをおこしたと同時、ナオキのつけているゴーグルにもピシリと亀裂が走った。
「ククク、我の出番か。我が名は龍造寺天征、機械の龍を従えて天を征する者よ!」
 顔だけファラオの天征がバッ! とコートの前を開ける。
「『ふはははは! 龍造寺家7千年の歴史にて引き継がれし研鑽の結晶! その身に受けてみよ! 顕現せよ! 機神竜ガルファイド!!』
 アームドフォートが機械龍へと変形。チャージしたグラビティを一気にアバターへ撃ちこんだ。
 機神竜オーバードライブスーパーノヴァ。長い。だが威力は抜群だ。アバターとゴーグルが同時に砕け散り、消えていく。
「因みにこの技はドラゴンの超越した力をダモクレスの科学技術で制御する、龍造寺家長年の歴史の結晶である。但し7千年は一桁以上鯖を読んでいるのだがな、ククク……また本来の名称は龍造寺家秘伝・機龍開闢之滅陣……おや皆は何処かな?」
「お姉ちゃんたちケルベロスだったんだね……」
「そうですよ。もう安心して下さい」
 澄佳が言った。
「このゲーム機はどうやって手に入れたのだ?」
 穣子がたずねると、
「起きたら枕元にあったんだ」
「なるほどね。あれ、あそこ陥没してる。『疲れたら、寝るのが一番。』」
「すっげー!」
 ルビーが『おやすみシェルター』の光でコートをヒールする姿や、労われ、嬉しそうにリノの回りを飛び跳ねるマヒナを見て、ナオキは目を輝かせる。
「ゲーム……か。詳しくはないが、ケルベロスになってデウスエクスを倒そう、そのような感じなものも出てくるのだろうか」
 スライが呟くと、
「お兄ちゃん冴えてる! そういうのやりたい!」
「そ、そうか」
「そうだ! あとでサインもらっていい?」
「……かまわないが」
「やったー! ありがとう!」
 喜ぶナオキにどう応えていいかわからず、か。スライは顔を隠すようにフードを指で引っ張った。
「ナオキ君」
 翼が声をかける。
「大変かもしれませんが、学べる場所があるのならば精一杯学ぶべきです。自分の未来に対する選択肢の多さにきっと後悔はしませんから。それに、」
 翼は何かを思い出すように間を置き、
「……強さだけでは救えないものの方が多いんですよ。闘いの、その後の事を考えるのならば、知恵は時に腕っぷしの強さ以上の力を発揮するのです」
「ケルベロスでも?」
「勿論です。そして貴方は今勉強を頑張れる立場にある……俺はそれが少し、羨ましい」
 小さい頃に両親を亡くし、皆を守る為降魔を身につけた翼。思いがこもった言葉に、
「うん! 僕いきたい学校あるんだ! 頑張る!」
「たまには身体を動かすのもいいぞ」
 そう言ってマニフィカトがコートを指すと、
「そうだね! 友達、誘ってみようかな」
 とそこへ、
「少年よ! 無事で何より!」
「わあっ! まだゲーム続いてたの?!」
 ナオキがスライの後ろに隠れた。天征、マスクマスク。 

作者:森下映 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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