楽しく引き起こされる惨劇……?

作者:なちゅい

●少年が狩っている相手は……
 ゲームというものは進化したもので。
 VR(ヴァーチャル・リアリティ)ゲームなるものが登場し、大きなゴーグルの形の機器を装着することで、ゲームの世界をあたかも現実であるかのように感じることができるようになった。
「すっげーなあ!」
 寝巻き姿の井ノ口・岳彦少年もVR型のゲーム機を装着していた。それは、狩りゲーと言われる種類のもので、現れる敵を自らの武器で倒すと言う趣旨のゲームだ。
 ゲーム内で見える画像はリアルなものに感知され、歩いていると様々な敵キャラが襲いかかってくる。
 街に群がる野党の群れ。街道では、大型モンスターが疾走している。これらが全て倒すべき敵だと知覚した岳彦のテンションは高まる。
「おーし、早速いくぜ!」
 岳彦は楽しそうに大剣を振り回す。手始めに、彼は集団で歩く凶悪なスケルトンの群れを目下の敵と見定めていた。
 一方、現実世界では……。
 VR型ゲーム機を装着した岳彦のそばに、ゲームキャラらしきアバターが現れている。それは、岳彦がゲームで操作する少年騎士の姿をしていた。それは岳彦の動きに合わせて、飲み屋帰りのサラリーマンの集団へと切りかかる。
「あはは、次、次だっ!」
 嬉しそうに少年が叫ぶ度、アバターがサラリーマンを1人、また1人と斬って行く。逃げるサラリーマンをアバターは追いかけ、無残にもその背から切り裂いてしまうのである……。
 
 ヘリポートにやってきたケルベロス達。そこでは、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が神妙な顔でケルベロス達を待っていた。
「来てくれてありがとう」
 ケルベロスの来訪に彼女は笑顔を見せはしたが、すぐに険しい顔に戻って説明を始める。
「千葉県松戸市で、VRギア型のダモクレスを装着した少年が現れて、一般人を虐殺する事件が視えたんだよ」
 VRギア型ダモクレスを装備した少年は現実をゲームのように知覚し、街中の一般人をまるでモンスターのように見定めて殺し回るようだ。
「実際には少年の傍にいる、VRギアが実体化した少年のアバターが攻撃を行うようだね」
 アバターは一定のダメージを与えると消失するが、少年にゲームを続ける意志がある限り、すぐに新たなアバターが現れてしまう。
 これはゲーム上で、少年がコンティニューを選んだからだと思われる。アバターが完全回復した状態で再度現れるから実に厄介だ。
「少年がゲームを続ける意志をなくした状態で、アバターが撃破できればいいのだけれど……」
 そうすることでVR型ダモクレスは撃破され、少年を救い出すことが可能となる。
 また、VR機器部分を含み、少年を直接グラビティで攻撃した場合、少年は身を守る為にアバターと合体して戦うことになる。なお、少年は他のデウスエクスと同様、グラビティ以外の攻撃は利かない状態となっているようだ。
「少年がアバターと合体した場合は、戦闘力が強化されるけれど、一度倒せばアバターを復活させずに撃破が可能だよ。だけど……」
 この場合、少年を救出は不可能となってしまうので、留意しておきたい。
 敵……、アバターは騎士鎧を纏った少年の姿をしており、鉄塊剣のような西洋剣風の大剣を扱う。行使するグラビティも鉄塊剣と同様だ。
「場所は、千葉県松戸市の松戸駅から10分程歩いた場所だね」
 その近辺に住む少年、井ノ口・岳彦は、とある飲み屋の入り口に集まるサラリーマンを最初に狙う。この為、その店の人々を事前避難させ、店前で待つことで、少年の対処に専念できるはずだ。
「あと……、VRゲーム機型ダモクレスは、ゲーム世界に相応しく無い現実を、ゲームの設定に合わせて修整して認識させているようだね」
 ケルベロスについてはボス敵のように認識させる為、優しい言葉や、ケルベロスとしての説得の言葉は、ダモクレスによって都合の良い敵のセリフに変換されてしまう。
「でも、皆が最初から、ゲーム世界の設定に相応しいボス敵のような格好や演出をしたなら、言葉や行動をそのまま伝えることが出来るよ」
 これを利用すれば、ゲームが面白くないと思わせ、少年がゲーム進行を止めるかもしれない。
「真面目な少年のようだから、理不尽な状況であることを示すといいのかな」
 リーゼリットはそんな考えを示す。上手く対処することで、少年救出の可能性は高くなるはずだ。
 少年がVRゲーム機を入手した経緯などは不明だが……、この機会が広まると大変な状況になってしまいかねない。
「ゲーム機のことも気にはなるけれど、今は少年を止めて欲しい」
 リーゼリットは最後に、ケルベロス達へとそう訴えるのだった。


参加者
ミライ・トリカラード(三鎖三彩の未来・e00193)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
皇・絶華(影月・e04491)
虹・藍(蒼穹の刃・e14133)
ウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)
弓曳・天鵞絨(イミテイションオートマタ・e20370)
シトラス・エイルノート(ヴァルキュリアの降魔拳士・e25869)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の双銃猿忍・e29164)

■リプレイ

●少年を振り回すゲーム機
「……ったく、オモチャをオモチャでなくしてどうすんだっての」
 今回現れる敵に対して、ウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)は悪態づく。
 VRゲーム機型のダモクレスの出現を聞いたメンバー達は、千葉県の松戸市にやってきていた。
「ぶいあーるげーむ……、あれは楽しいものなのか?」
「今流行りらしいですけど、悲しきかな、それ以上にリアルに戦うケルベロス的にいまいち魅力が……」
 依頼に当たり、皇・絶華(影月・e04491)はVRゲームに手をつけてみたようだが、霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が彼の気持ちを代弁する。普段から実戦を行うケルベロスにとって、ゲームでは刺激が足らないのかもしれない。
「こういう遣り口が、拙者は一番腹が立つのでござる」
 羽織と赤い忍装束姿の岩櫃・風太郎(閃光螺旋の双銃猿忍・e29164)は赤い螺旋の仮面を被り、怒りを抑えている。子供を使って刃傷沙汰を引き起こそうとしているダモクレスに、風太郎は大激怒していたのだ。
「騙されているだけの少年には、罪はないのですが……」
 対して、シトラス・エイルノート(ヴァルキュリアの降魔拳士・e25869)は笑みを絶やすことなく告げる。
「少年がやっているのは、あくまでゲーム。後味が悪くなるようなことにはさせませんよ」
「遊び気分で気が付いたら、現実に人を傷つけてたなんてとんでもない」
 蒼い髪と翼が印象的な虹・藍(蒼穹の刃・e14133)だが、今回の作戦に当たり、それらを黒いローブで覆っている。
「……止めないとね!」
 現場となる飲み屋前で意気込む彼女に続き、メンバー達はこくりと頷き合った。

 作戦を開始に当たり、まずは飲み屋内の人々を避難させねばならない。
 弓曳・天鵞絨(イミテイションオートマタ・e20370)と藍がケルベロスを名乗った上で、ウィリアムが店主、スタッフと客にさっくりと事情を話し、店じまいと河岸変えを依頼する。
「楽しく飲んでる最中にごめんね? 協力してくれてありがとう!」
 ミライ・トリカラード(三鎖三彩の未来・e00193)は交渉の間も和やかに語り、人々と交流していた。
 程なく店から人が去り、藍が周囲へとキープアウトテープを張り巡らせる。
 店の前に散開するように潜むケルベロス達。
 しばらくして……。
「さて、少年騎士様のお出ましみたいだぜ。いっちょ悪役やりますかねェ」
 ウィリアムが仲間へと小声で呼びかけてタイミングを図っていると、そこに人影が現れた。
「な、なんだ!?」
 突然、光で照らされたのは、VRゲーム機を装着した寝巻き姿の井ノ口・岳彦少年。彼が周囲を見回すと、そばにいる騎士の姿のアバターもまた岳彦と同じ動きをした。
「来たな、次は俺らが相手ですよ、っと!」
「ここは通さないでございます」
 ウィリアムが少年へと呼びかけると、天鵞絨も他メンバーの取り巻き風に前へと現れる。
 そして、この場に霧が現れ、花吹雪が舞う。颯爽と頭上から現れたのは、黒く刺々しい衣装に暗殺者の仮面を被った絶華だ。
「我は悪魔四天王の一人……悪魔忍者の絶華だ! 我らの一族を虐殺する貴様を捨ておくわけにはいかん!」
 絶華は大仰な仕草で、構えを取って見せた。
「いきなりボスかよぉ」
 それでも、やる気の岳彦。アバターは大きな西洋剣を構えて見せた。
「よく来た勇者よ! 互いの正義を賭け、ぶつかり合おうぞ!」
 続々と現れるケルベロス達。裁一はサバト服を纏い、悪の敵をノリノリで演じる。
「私は、黒魔女藍!」
「魔王様の命を狙う愚か者め! 四天王全員と裏四天王全員が相手だよ!」
 光源となるハンズフリーライトを所持していた藍、そして、「悪の王女」風の衣装に着替えたミライが岳彦の前に現れる。
「う……」
 一度に現れる強敵に、岳彦の表情が少しずつ歪み始めた。
 そこへ、隠密気流で潜んでいた風太郎がバスタービームを発射する。アバターはそれをさらりと躱したものの、仮面を被ったままの風太郎は気にすることなく、両手を合わせてお辞儀をした。
「ドーモ、勇者さん。ハジメマシテ、エイプニンジャでござる」
「こ、ここを通したら、僕の姉さんが……。絶対に負けるもんか!」
 ドラキュラ風の衣装に身を包んだシトラスも、被害者を装いながら少年へと呼びかける。
「こうなったら、全部ぶっ倒してやる!」
 違和感を覚えてはいたものの、岳彦はアバターを操作する。すると、アバターは大剣を構え、ケルベロス達へと斬りかかってきたのだった。

●戦意を削ぐ為に……
 ケルベロスの相手は、VRゲーム機から実体化したアバターだ。
 大剣を振り上げた相手に対して絶華が大きく跳躍し、鋭い隠し刃を仕込んだ彼の手製の靴『斬狼』を叩き込む。
 その一撃でやや態勢を崩しかけたアバターに、シトラスが迫る。
「僕達がやられたら、皆殺されてしまう……!」
 シトラスは再び、被害者のように振舞ってみせるが、アバターは攻撃の手を止めない。
「何を言ってんだよ!」
 しかし、少年は果敢に攻める。腕力で叩きつけて来るアバターの大剣を前に出た裁一が受け止めた。
「我々ボス連合、勇者を袋叩きにしてくれよう! お前の邪悪さが招いた事態と思え!」
 裁一はそう叫びかけてから、反撃の為に飛び上がる。
「勇者覚悟ぉおお! サバトキック!」
 アバターの上体に炸裂する、流星の如き蹴り。その腹には、シトラスが電光石火の蹴りを食らわせていた。
「暴力は暴力よ! 私達を狩って楽しいの?」
 前線メンバーの地面にケルベロスチェインを展開した藍。彼女が少年に向けて呼びかけるものの、岳彦は反応を見せない。
 アバターの動きを封じ、ゲーム進行をグダつかせれば、彼がゲームを続行する意志を削ぐことが出来るかもしれない。天鵞絨は日本刀で緩やかな斬撃を浴びせ、アバターの脚部を断とうとする。
「天鵞絨もこれ以上、仲間を斃される訳にはいかないのでございます……」
 彼女の演出する設定は、すでに、勇者によって多くの仲間を失っているというものらしい。
 動揺を誘うことが出来ればよいが、今なおゲームを楽しむ岳彦には変化が見られない。
「こっちだって、仲間をたくさん殺されてんだ。必死で怒って当然だろ」
 次なる敵の攻撃に備えて前に出たウィリアムは、空の霊力を纏わせたルーンアックスでアバターの傷を斬り広げる。
 続いて、風太郎が仕掛ける。彼は岳彦の装着するゲーム機型のダモクレスに怒りを覚えながらも、付けている仮面で冷静さを維持しつつ作戦に臨む。
「ぼっち勇者とかナイわー。友達いないの?」
 相手を挑発する風太郎は立ち位置を活かし、身軽な動きで敵を翻弄しようとしながら、『携帯型回転式鎮圧専用閃光螺旋擲弾銃TSUKUYOMI』を携えた。
 砲口から発射された凍結光線。それはアバターへと命中し、腰部を氷で包む。
 体が凍ったのを気にするアバターへとミライも迫った。
「キミもまた大剣の使い手か。けど、こっちは二刀流さ!」
 彼女は2本の鉄塊剣を操る素振りを見せるが……。
「必殺、十文字斬り!」
 その言葉に反し、剣を降ろしたミライは回し蹴りを繰り出す。狙い通り、正々堂々と戦ってこない敵に少年は苛立っていた。
「うっとうしいなぁ、もう!」
 アバターは次に、大剣を横薙ぎに振るって来る。それによって生じる旋風を、今度はウィリアムが受け止めた。
「か弱いモンスターを倒して回って喜ぶ姿は、狩りに興じる魔物と何ら変わらないぜ?」
 にやける彼を目にした少年は、歯噛みしつつ一歩後退してしまうのだった。

 アバターとの交戦は続く。
 決して弱い敵ではないが、数で攻め立てるケルベロス達は徐々にアバターを追い込む。劣勢に立たされた敵は大剣に力を込め、力を高めていたようだ。
「ただ歩いているだけの骨民族さえ殺そうとするとは……。この悪魔! 殺戮者!! 我らが何をしたというのだ!」
 絶華が言う骨民族は、予知で少年が襲った相手を刺す。己の体に魔獣の力を宿す彼は全身の筋力を増強させ、狂ったように2本のカタールをアバターへと突き刺していく。
「――散った仲間の仇、身命を賭してでもとらせて貰うでございます」
 動きを封じられて身動きの取れぬアバターへ、天鵞絨は弓矢を構える。それは、とあるエインヘリアルから鹵獲した奥義だ。
「――Code:Mergen、起動。神の矢よ、敵を穿て」
 彼女の射抜く雷の如き矢は、アバターの胸を射抜いてしまう。崩れ落ちるアバターはその場から消えてしまった。
「くそっ、もう1回!」
 だが、岳彦の戦意はまだなくなっていない。彼が叫ぶと、すぐに新たなアバターが現れた。天鵞絨は気を抜くことなく、再度現れたアバターに刃を差し向ける。
 全くダメージのない敵。ケルベロスは再び一から攻め立てることとなるが、皆、ダメージが積もっている状況。早めに攻略の糸口を掴まねば、ジリ損になってしまう。
「魔王様の命を狙う愚か者め! 四天王全員と裏四天王全員が相手だよ!」
 ミライは最初に発した言葉をここで繰り返す。これが負けイベントでないことを岳彦へと強調する為だ。
 それに対し、アバターは大剣を叩きつけて来る。ディフェンダー陣のカバーが間に合わず、中衛メンバーが強風に煽られてしまっていた。
「お、おい、大丈夫か!?」
「まさか、封印を解くことになるとはね……! 聖魔剣、抜刀!」
 総一がミライを気遣うと、彼女は自らの鉄塊剣に地獄を注ぎ込むことで、自身の強化と回復を同時に行う。
「悪逆非道な勇者め。所詮、我々と同じ奪う側の存在か。よくも……」
 恨みがましい視線を少年へと向けた裁一は攻撃の手を止め、翼を広げる。
「心配するな、下賎な勇者などにやられさせぬ」
 オーロラの光を発した裁一は、傷つく仲間を癒していく。
 藍もまた仲間へとオウガ粒子を飛ばすことで、支援と回復を行っていた。
「結局、見た目で判断するのね。好きで魔物に生まれた訳じゃないわ!」
 アバターを操る岳彦が攻撃の手を鈍らせるようにと、藍は嘆き叫ぶ。
「私達にだって、心や痛みがあるのよ!」
 被害者はこちらであって、少年の方が悪者だとケルベロス達は演出しながら交戦する。
 そして、再び、メンバー達は足止め、捕縛と、満足にアバターが動けぬ状態を作り上げていく。
 凍結光線を発した風太郎がさらなる攻撃をと、燃え盛る太陽光の螺旋を籠めたエネルギー光球を発し、巨大な螺旋手裏剣を生み出す。
「喰らえ! サンライトォッ! フレイムゥッ! ニンジャヒュージシュリケェーンッ!」
 アバターに着弾した手裏剣が爆破四散して燃え上がると、敵は再び姿をかき消していく。
 これが2度目の討伐。アバターが消えたタイミングで、裁一と風太郎が岳彦告げる。
「ツヅケルニハ カキンシテクダサイ」
「復活1回で5千円の課金が後日請求されます」
 まるでリトライが課金必須とでも言うように、2人は繰り返す。
「なんだこれ……」
 岳彦は再度アバターを復活させたものの、明らかにゲームをプレイする意欲を失ってきている様子。操作するアバターも怪我はなくなっていたが、心なしか動きに精彩さがなくなっているようにも見えた。
 ケルベロス達は根気強く、先ほどと同様にアバターを攻め立てる。
「ハッハー、俺らは強すぎるか? 倒したかったらちゃあんと本編購入してから来るんだな!」
 これがまるで、体験版であるかのように告げたウィリアムは一言、合図する。
「――Fiat lux.」
 声に応じて、無数の白く透き通った女性の腕がアバターの体を捕らえていく。
「我々の怒りを思い知れ! その身でなぁ!」
 刹那動きを止めた敵へ、裁一は嫉妬を纏わせた掌底を叩き込む。怒りを覚えたアバターは彼を狙って大剣を叩き込んでくる。もはや、回復を考えずに攻撃一辺倒で攻めてきていた。
 それならとミライは降魔の拳を叩きつけ、絶華もカタールに雷を纏わせて突撃する。
「この外道なる侵略者がぁああ!! 我らは貴様の様な人でなしに負けるか!」
 深々と突き刺さる刃から発せられた雷の闘気がアバターの体を駆け巡り、アバターの騎士鎧を砕いていく。
「ククク、逃れられるとお思いですか?」
 少年が戦意を失っているのは明らか。それを見たシトラスは前方へと、毒に汚染されて正気を失った巨大な龍を召喚する。荒れ狂う龍はアバターの周囲を暴れ回り、そのまま消えていった。
「はぁー……」
 溜息をつく岳彦。アバターが消えた直後、VRゲーム機から煙から出て小さな爆発が起きる。
 直後に少年は頭からVRゲーム機を取り去り、事件は解決を見たのだった。

●どこからVRゲーム機を……?
 ケルベロス達は戦いが終わったことで、事後対応を始める。
「ふう、やっと落ち着いた。慣れない格好はするものじゃないね!」
 ミライは戦いの後、すぐに普段着へと着替えていた。
 オウガ粒子を放出し、周辺のヒールに当たる藍。ある程度修復が終わったタイミングで、彼女も普段着に着替えていた。
「ゲームの『スタート地点』はすぐ近くのはず!」
 岳彦少年がやってくる方向を見ていたミライは調査に向かおうとしていたのだが、仲間が少年をフォローしているのを見守ってからにしたようだ。
「岳彦少年、大丈夫です~? 欠陥のあるクソゲーで大変でしたね」
「そのVRゲーム機はダモクレスでございます。やむを得ずとはいえ酷い言葉、申し訳ございませんでした」
 裁一が岳彦の状態を気遣うと、天鵞絨が簡単に状況説明した上で頭を下げた。
「貴方を救う為、ゲームから離れてもらう必要があったの。ごめんなさい」
 藍も重ねて謝罪の言葉を口にする。下手すれば人を手にかけるところだったと知った岳彦は落ち込んでいた。
「ふふ、中々の演技だったでしょう? 貴方がこう言った演技で止めてくれるような心の優しい人で助かりましたね」
 それを見て、シトラスも岳彦をフォローする。ケルベロス8人を相手にしての大立ち回りは、なかなかのゲームの腕だと褒めると、岳彦も若干照れていたようだ。
「俺ら怖かったろ? 悪かったな。しっかしこんなもん、どこで拾ったんだ?」
 謝罪の言葉から、ウィリアムが軽い調子で発した質問。それに、藍、風太郎、天鵞絨ら、メンバーの注目が集まる。
「気づいたら、ベッド脇に置かれてあって……」
 岳彦が朝起きると、例のVRゲーム機を見つけたらしい。学校、塾とあったので、その後、寝巻きに着替えてからプレイしてみた……とのことである。
「まあ、本物はもう少し大きくなってからだな」
 ウィリアムは発育の都合があって、年齢制限があると聞いた情報を伝える。
「……もういいや」
 しかしながら、岳彦は苦い顔をして首を横に振ったのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 10
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