どこともしれぬ、ビルの一室。
部屋の電気もつけないまま、ソファに深く腰掛けている者がいる。
「……お呼びですか」
いつの間にか、ソファの背後には巨大でカラフルなボールが転がっていて、その上で玉乗りをしている女の道化がひとり。
ボール? いや。よく見ればそれは、赤白の縞模様の服を着た、まるまると肥え太った女だ。
「あなたたちに指令を与えます」
ソファに腰掛けていた者が、立ち上がる。こちらはいっそう派手な衣装に身を包んだ女だった。
ミス・バタフライ。螺旋忍軍である。
その女が、一枚の写真を指で弾いた。
それは、配下のもとに音もなく滑ってくる。
「これは?」
「ごらんなさい。この女は、数々のクリスマスリースを作っているというハンドクラフト作家です。
この女と接触し、その仕事内容を確認……可能ならば習得したのち、殺害しなさい」
「グラビティ・チェインは、いかが致しましょう?」
「略奪してもしなくても、どちらでもいいわ」
「なるほど……この事件が、地球の支配権を大きく揺るがすとお考えなのですね」
「えぇ。どうやらこの地では、クリスマスツリー以外にもこれを飾ることが増えている様子。
これを失えば、クリスマスの盛り上がりは半減し、沈鬱な気持ちになった男女の中に、争って別れる者が出るでしょう。その中には、自暴自棄となって凶悪犯罪を犯す者が現れるに違いありません。
……つけ込む隙が増すというものです」
「承知しました。わたくし、『弾むガリ』」
「わたくし、『転がるデブ』。我々にお任せを!」
ボールとそれに乗る道化師……いや、2人の螺旋忍軍は跳躍して、姿を消した。
「もぐもぐ……。
クリスマスリース作家の、ヒョウドウさんが狙われるらしいの」
凛はテンポよく、一粒の米もこぼさず口の端にもつけず、大盛りの牛丼を口に運ぶ。
「クリスマスムードに、水を差してくれるな」
宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)はため息をつきながら、
「詳しい話、続けてくれ」
と、促す。
凛は、今度はチーズ入り牛丼を口に運びつつ、話を続けた。
「もぐもぐ……。
動き出したのは、ミス・バタフライっていう螺旋忍軍ね。
どうして狙われるのかって? うん、そこだけ聞くとよくわからないんだけどね。
どうも、この事件が巡り巡って、大きな影響を生んでしまうかもしれないの。あり得ないくらいの偶然でね」
「風が吹けば、桶屋が儲かるってやつだな」
「そう、それそれ。
で、敵は配下の螺旋忍軍2人。そいつらはヒョウドウさんに接触して、その情報を得ようとするの。得た後は……『おまえは用済みだ』ってやつね。勝手な話よね」
そう言いながら凛は、「牛丼ばかりじゃ飽きるでしょ?」などとのたまいながら(そんなことないくせに)、同じチェーンの鉄火丼に箸をつけた。
「もぐもぐ……。
ヒョウドウさんを警護してもらう訳なんだけど、避難させるのはNGよ。予知の意味がなくなるから。
事件が起こるまでには3日ほどはあるから、その間に接触して事情を話してしまうのは、大丈夫。
あ……!」
ゴクン、と飲み込んだ凛が、思いつきを口にする。
その間に、仕事を教えてもらうのもいいかもしれないわね。敵が誤解して、ヒョウドウさんから狙いをそらすことができるかも。
敵を引きつけることができれば、うまく口車に乗せて隙を作ったり、分断したりできるかもね。
囮になれるくらいだから、頑張って修行して、せめて見習いくらいに見えるようにはなってないといけないけど」
敵も、ヒョウドウ氏の技術を盗もうと正体を隠して接触してくるわけだ。
「俺たちが怪しまれたりはしないかな?」
「たぶん、それは大丈夫。普通の人間より強いことはわかるだろうけど、『一芸に秀でてる人間ならおかしくないかな』って思うんじゃない?
だから、囮になってない人は接触しないほうがいいかもね」
ヒョウドウ氏の工房は、自宅と兼用になっている。
ごく普通の一戸建てで、郊外にあるため、隣近所の家には庭もあって、少し距離がある。
彼女は「自然物と粘土(樹脂)、金属の融合」が作風の特徴で、「森の小人」などをシリーズとしている。
「もぐもぐ……。これとか、そうね」
チーズ牛丼を食べる手を休めて凛がスマートフォンで見せた画像は、ベースの上に枝や木の実が配され、その中に隠れるように、樹脂で作った小さな家がある。まさに、小人の家だ。枝や家の所々に銀で作られた星が飾られていた。
なるほど、これならクリスマスリース作りはお手の物だろう。
庭や裏山で材料を採集することも多いのだろうし、製作するときには音もでる。少し辺鄙な場所ではあるが、こういった場所の方が便利なのであろう。
「クリスマスにはおいしいモノもいっぱいあるんだから、そのムードに水を差すわけにはいかないわね」
「蝶の羽ばたき、ここで止めておこうか」
季由は愛猫の喉を撫で、目を細めた。
参加者 | |
---|---|
コーデリア・オルブライト(地球人の鹵獲術士・e00627) |
クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651) |
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080) |
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574) |
ベルカナ・ブラギドゥン(心詩の詠唱姫・e24612) |
ヒストリア・レーヴン(鳥籠の騎士・e24846) |
フィオナ・オブライエン(ゆうしゃっぽい・e27935) |
リリー・リー(輝石の花・e28999) |
●修行……というには和やかに
事情を聞かされたヒョウドウ氏は、騒然と言えば当然だが、顔色を変えてよろめいた。
その手をヒストリア・レーヴン(鳥籠の騎士・e24846)が握りしめて支え、
「恐ろしいのも仕方がない。だが、この私がお守りしよう。必ず」
と、年齢からは不相応に、しかし誇り高き騎士としてはふさわしい力強さで頷いてみせる。
「ふふ……よろしくお願いします」
自分より背の低い少年に言われたヒョウドウ氏は、微笑ましさ半分ながらも悪い気はしなかったようだ。
そもそも、彼は歴戦のケルベロス。頼もしいことは間違いない。
「大船に乗ったつもりでおってな。おばちゃん、がんばるさかい」
背の低さで言えばさらに小さいが、正真正銘ヒョウドウ氏より年上。小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)が平べったい胸を叩く。
「それにしても……」
真奈と同じくロリババァ……もとい、少女のような愛らしさを保ち続けているアーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)が困惑した表情でかぶりを振る。
「クリスマスリースごときで、支配がどうとかできるもんなのじゃろうか?
えらい迂遠というか……地道というか。これが螺旋忍軍のやりくちなのかのう?」
それはおそらく、皆の心の内にある疑問であるが。敵が確信を持って行動しているあたり、それなりの根拠はあるのだろう。
「余人には伺いしれぬことじゃな」
一行は方針を話し合い、まとまったそれをクロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)が確認する。
「で、では……ヒョウドウさんを危険から遠ざけるため、わたしたちで囮になりましょう」
許された時間で出来うる限り技術を習得し、敵を欺くのだ。
「自分用なら、気持ちがこもっていればいいけど……せめて見習いに見えるようにするには、技術も伴ってないといけないわね」
「頑張って修行するわ! 自分で作ったリースをクリスマスに飾る……なんて素敵なの」
コーデリア・オルブライト(地球人の鹵獲術士・e00627)とベルカナ・ブラギドゥン(心詩の詠唱姫・e24612)はさっそく、指導のもと修行に入る。
フィオナ・オブライエン(ゆうしゃっぽい・e27935)にとっても、クリスマスは重要だ。
「これでも、カトリックの端くれだからね」
「あ、リィもリース作れるようになりたいのね。仲間に入れてほしいの。
不器用だけど、頑張るのよ」
リリー・リー(輝石の花・e28999)が愛らしく挙手すると、ヒョウドウ氏も笑いながら工房の準備を始めた。
ハンドクラフト作家であるヒョウドウ氏だが、制作の依頼や作品の販売だけではなく、この自宅兼工房で不定期に教室も開いていたようだ。
だからケルベロスたちがリースづくりに勤しんでいても、さほど不審さはないのだった。
「どうかしら? まずは自分で考えたように作ってみたのだけれど……ちょっと、色合いが単調かしら?」
コーデリアが、自身の作品を見せに来る。
「なら、枝葉に雪を降らせてもいいかもしれません。緑と白とで、見栄えがしますよ。
こうやって木工用の接着剤を混ぜた水を枝葉にスプレーして、上から重曹を茶漉しで……」
「あ、すごい。雪っぽい。よし、僕もやってみよう」
「可愛い! リィも、この枝をくっつけたらやるの! あ……、折れちゃったの」
フィオナとリリーも、ヒョウドウ氏が手本を見せたように真似てみる。出来はそれぞれだが。
「……」
一方でベルカナはといえば黙々と、銀粘土を使って星を形作っていた。
「コンセプトは『星月夜の樹氷』なの。自然の素材を活かしてね」
と、体を起こして大きく息を吐く。
『修行』は真剣なものとはいえ、敵が現れるまでは和気藹々としたものだ。
せっかくなんで、クロコも参加してみた。
「クリスマスなんて、リア充がヒャッハーしだす鬱な時期でしたけど……。やっぱりリースはいいですね!
これさえあれば、クリスマスが近づいても鬱にならずにすみそうです!」
「……大丈夫かのう、あやつは」
囮は任せたと決めたら、やることのないアーティラリィはソファに寝ころび、工房の騒ぎに耳を傾けている。
一方でヒストリアは、少し興味ありげに、そちらを伺っているが。
「興味があるなら、やってきたらどうじゃ?」
「そうだな……いや、敵に後れをとらないよう構えておくよ」
いよいよ、予知の日がやってくる。
ピンポーン!
工房のチャイムが鳴った。ヒストリアはヒョウドウ氏を庇って工房から家の奥へと潜ませ、仲間たちと頷き合ったコーデリアは、ドアを開く。ベルカナも、後に続いた。
「あらあらあらあら、こちら、ヒョウドウ先生のお宅ですやろか?」
「いやいやいやいや、うちら、先生のお名前を耳にしまして!」
ガリガリで背の低い女と、まるまると肥えた女とが、ドアが開くなり騒がしく詰め寄ってきた。
「うわー、こりゃまた、『濃い』のが来たなぁ」
「……お笑いコンビみたいやな。大阪の」
奥から様子をうかがっていたフィオナと真奈とが、顔を見合わせる。
女どもはいかにもオバチャン(実年齢は、意外と若いのかもしれないが)といった雰囲気で、ぐいぐいと迫ってくる。
虚を突かれたコーデリアだったが、気を取り直して。
「あいにくと、先生はお留守よ。弟子入りを希望するのなら……」
「ひとまず、『兄弟子』の私たちが指導するわ。それでいいかしら?」
ベルカナが後を受ける。
そのとき、女どもが目を細め、互いに視線を交錯させた。
本人ではないようだが。だが、この女たちもそれなりの『技術』を持っているようだ。ひとまず、こいつらから技術を盗むことにするか。よし。
女どもの表情が変じたのは一瞬だけだったが、2人のケルベロスはそれに見逃さず、警戒を強めた。
「じゃあ、一緒に材料を取りに行くの!
ヒョウドウ先生のようなリース作りには、自然の材料がいっぱい必要なのね」
リリーが姿を見せて、女どもを先導するように庭に、そして裏山へと歩みを進めた。
女どもが視線を交わらせる。
不器用そうだが……こいつも? 近所の子供じゃないのか? いや、それなりのものは感じるが……。人は、見かけによらないな。
リリーが知れば「ひどい!」と憤慨しそうなやりとりをしつつ、女どもはほくそ笑みながら『兄弟子』たちの後に付いていった。
それが、罠だとも気づかず。
●玉乗り道化
「さて、ようやく出番じゃのう!」
人家からは十分に離れたと判断するや、アーティラリィは大鎌を閃かせて木陰から飛び出した。
「アーティラリィ殿、まずは巨体の女から!」
「応!」
声を張り上げたヒストリアは槍を小脇に構えて、地を蹴る。
「どこまでも続く蒼穹の空、青く蒼く澄み渡り……!」
ベルカナの祈り、『そらの詩』。祈りは祝福となって、ヒストリアたちを包む。
ヒストリアの槍が女を貫き、雷撃が敵を襲う。アーティラリィの大鎌に裂かれた脇腹からは、生命力が奪われていった。
普通の人間であるなら、こんな一撃を受けて絶命しないはずはない。しかし女は血を流しつつも大きく跳躍し、体勢を整えてみせた。
相方の小柄な女も並んで跳躍し、ふたりは、まさに変じたという素早さで、螺旋の仮面を付けた、ピエロのような風体の正体を明らかにする。
「ケルベロスか!」
「おのれ、我らを欺いたか!」
螺旋忍軍は憎々しげに怒鳴り、ともに分身を生み出してケルベロスを幻惑する。
「ひぃ!」
怒鳴られたクロコが、首をすくめる。しかし、
「と、突然すいません。でも、クリスマスはリア充でも螺旋忍軍でもなくて……楽しみにしてる皆のためのものなので!」
と、鉄塊剣に地獄の炎を込め、渾身の力で振り下ろした。
「ぐ……!」
巨体の女……『転がるデブ』が肩を砕かれ、悲鳴を押し殺す。
「リースのないクリスマスなんて、駄目なの!」
リリーは拳を握りしめ翼を広げて跳躍した。『転がるデブ』に襲いかかる。
「リィパンチ!」
名前はともかく、降魔の一撃は敵の魂を食らい尽くしていく。
だが、敵もまだまだ怯まず、
「我こそは、『弾むガリ』!」
「我こそは、『転がるデブ』!」
「その力を思い知るがいいッ!」
『転がるデブ』が身を丸め、猛烈な体当たりで襲いかかってきた。螺旋忍軍を取り囲んでいた者たちが次々と、その重さに薙ぎ倒されていく。
「く……!」
顔をしかめた真奈はバールのようなモノを振り回すが、大地に深々とめり込ませただけで終わる。
さらに『弾むガリ』は相方の体を踏みつけて跳躍すると、間合いを詰めて飛びかかろうとしていたコーデリアに向けて、螺旋手裏剣を放った。
身に纏ったオウガメタルが飛び散り、コーデリアの一撃は威力を失う。拳は、分厚い腹の肉に阻まれた。
「やってくれるわね……」
受けた傷を押さえ、呻く。
「さすが、奇襲したとはいえそう簡単に倒させてはもらえないね」
左手に構えた剣を、フィオナが緩やかに振るう。
「其は勇者スレンによりて奪われしもの!」
彼女が右手にはめた、エリンの神が失った腕の代わりとしたそれを思わせる籠手から光が放たれ、ベルカナを包んでいく。
さらなる癒しの力を得たベルカナは仲間たちの背後で色とりどりの爆発を起こし、彼らを奮起させた。
「ど、どうしても退いてはもらえませんか……?」
この期に及んで及び腰のクロコだが、その蹴りに迷いはない。鋭い蹴りが、『転がるデブ』を襲う。
しかし、そこに『弾むガリ』が飛び乗ってくると、両者はまるでボールがぶつかったようにてんでに飛び、クロコの蹴りは避けられてしまった。
「えええッ?」
そこに『弾むガリ』が間合いを詰め、螺旋を込めた掌で胸に、軽くふれる。それだけでクロコはすさまじい衝撃を受け、よろめいた。
さらには、『転がるデブ』もまた。
「ひぃぃ! それはいじめですよぅ!」
「なに、弱気になってるんだよ!」
怒鳴ったヒストリアが、その身を盾として攻撃を受け止めた。
顔をしかめるが、この程度で倒れたとあっては。
「騎士の名折れだよ!」
ケルベロスチェインを地面に展開し、魔法陣を描く。癒えた傷はわずかだが、守護する力が彼らを包む。
「癒えぬ分は……お主からもらい受ければよいことよ!」
アーティラリィは体をぶつけるように、『転がるデブ』に飛び込んでいった。
いや。その手に握られているのは妖しく光るナイフ。腿から腹へと斬り上げられた傷口から、おびただしい鮮血が吹き出る。
「ぐおおおおおッ!」
「ははは、それよ。道化は道化らしく、そのように踊っておればよい!」
のたうち回る敵を指さし、全身に返り血を浴びたアーティラリィが凄絶に笑う。
「おのれ!」
「細いのも太いのも、困っちゃうのよね。ちょうどいいのが、リィは一番いいと思うの!」
螺旋手裏剣が、リリーに襲いかかる。構えたナイフを取り落としたリリーだったが、慌てて掴んだそれの刀身には、敵を苛む忘れがたい記憶が映し出された。
それに襲われることはなかったが、『弾むガリ』は魔法の攻撃を受けてたたらを踏む。
「ミス・バタフライだかなんだか知らないけれど……ノレグの邪魔は、絶対にさせない!」
祖国の言葉でクリスマスを呼んだフィオナは、支援の手を休めて長剣を振るう。
「もちろん、リース作りもだ!」
傷口をさらに切り裂かれ、『弾むガリ』はよろめいて膝をついた。
「くくく、それができようか!」
嘯いた『弾むガリ』は相方に目配せすると、再び呼吸を合わせ、まるで玉乗りでもするかのように奇怪な動きで襲いかかってきた。
「食らえッ!」
襲い来る巨体。しかし、ベルカナのボクスドラゴン『ウィアド』、ヒストリアのウイングキャット『リィク』が、立ちはだかって懸命に攻撃を受け止める。すさまじい一撃に吹き飛ばされた両者だったが、そのおかげで、主たちに怪我はない。
リリーのウイングキャット『リネット』が、翼を広げてその傷を癒してやった。
「助かった、リィク」
ヒストリアがねぎらうと、従者は「甘えたりはしませんよ」とばかりに、ツンとそっぽを向く。
『弾むガリ』の手裏剣が、さらに襲いかかってくる。
しかし。
「同じ手は、二度と食らわないわ! ミミック!」
コーデリアが声を張り上げると、従者はそれに応じるように足を踏み鳴らした。まるで、「もっと戦わせろ」とでも言いたげに。
「この3日間、よくおとなしく我慢したわね。存分に暴れなさい!」
言葉が終わるやいなや、ミミックは今にも放たれんとしていた螺旋手裏剣にかぶりつき、それを防ぐ。
一方のコーデリアは、『転がるデブ』の方を睨み据え。極限まで研ぎ澄まされた精神力で、敵を爆破した。
急所を確実にとらえた爆発は、脂肪を飛び散らせ内臓をまき散らし。『転がるデブ』は土埃をあげて地に伏し、動かなくなった。
●クリスマスが待ち遠しい
こうなっては、『弾むガリ』に勝機はない。
退くという選択はないらしく、再三螺旋手裏剣を放ってくるが。
「ダメよ、誰も殺させない」
ベルカナは『破壊のルーン』で、すかさずフィオナの受けた傷を癒やす。
「そう、守ってみせるよ! この剣が届くところまでは!」
敵に砕かれた剣も、癒やしの力で元通りにはなったが。あえて得物を持ち替え、具現化した光の剣でフィオナは斬りかかる。
「くッ!」
「悪あがきっちゅうもんやで」
攻撃を放とうとした敵の掌を受け止め、真奈は鼻を鳴らす。
「まぁ、お主らに目的はあるんじゃろうがの。じゃが、力なき者を巻き込もうとするならば、我らが剣となり盾となりて、立ち塞がろうぞ!」
「余に見惚れて、逝くがよいッ!」
眩い炎を身に纏い、アーティラリィが突進する。
目にも留まらぬ連打を食らった『弾むガリ』は、無様に転がって灌木に背を打ち付けた。
「悲しむ者を生み出さぬためならば、お主らを止めるのに理由は要らぬわ!」
「無念……ミス・バタフライの命を果たせぬとは」
頭を垂れるその前に、クロコが立つ。
「右腕を失えど、龍王と呼ばれし我が闘気に、一片の衰え無きことをその身で味わうがいい!」
地獄化した右腕に闘気が宿り、激しく渦巻いたそれを纏った拳は、『弾むガリ』の胸板を貫いて絶命させた。
「材料次第で、ずいぶんと印象も変わるのね。この世に1つしかないものだわ」
「えぇ。……素敵でしょ、ウィアド。あなたの身体に咲く白薔薇も、飾れたら素敵なんだけどなぁ」
などと、コーデリアやベルカナは出来上がったリースを手に、賑やかに笑いあった。
「悪くないですの、これはこれで個性的で」
と、リリーも満足な様子。
「片付いたし、私も作ってみたいな。まだ、教えてもらえるだろうか?
キラキラと綺麗なものだと嬉しいんだが」
ヒストリアは双子の弟の事を思い浮かべながら、問う。
「えぇ、もちろん喜んで」
ヒョウドウ氏は微笑んで、少年の手を取った。
作者:一条もえる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年12月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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