世界は岩絵具の彩へ

作者:刑部

「あなた達に使命を与えます。この村に、岩絵具という日本画に使う絵具を作る職人が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認・可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
 マスクにシルクハット姿のスタイルの良い女性がそう命を下すと、その眼前に控える2名が、
「承知しましたミス・バタフライ。一見、意味の無いこの出来事も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのですね」
 命を下す女性……ミス・バタフライの衣装を簡素化した感じの、同じ模様の衣装を纏った女性が顔を上げると、ミス・バタフライは鷹揚に頷く。
 傍らのサスペンダーに幾つもナイフを刺した男は、頭を垂れたままであった。

「ミス・バタフライちゅー螺旋忍軍も動いとる様やな」
 杠・千尋(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0044)は、そう言って手帳の頁をめくる。
「ミス・バタフライが起こそうとしとる事件は、直接的には全然大した事あれへんねんけど、その小さい事が巡り巡って、大きな影響が出るかもしれへんっちゅー、面倒くさい厄介な事件や」
 千尋の説明に首を傾げるケルベロス達。
「今回の事件は、岩絵具師って珍しい仕事を生業としとる人の所に現れて、その仕事の情報や技術を得て、習得した後に殺害するっちゅー事件になる。
 よう分からへんねんけど、この事件を阻止せーへんと、風が吹けば桶屋が儲かるみたいな理論で、自分らケルベロスに不利な状況が発生してまう可能性が高いみたいなんや。
 もちろん、そーやなくても螺旋忍軍に狙われる人をほっとく訳にはいかへんわな。せやから、この岩絵具職人を保護して、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍を撃破して欲しいんや」
「岩絵具というのは、どういう物なのか?」
 説明を続ける千尋が一息ついたタイミングで、佐久田・煉三(直情径行・e26915) が質問すると、
「日本画の材料になる絵具で、ラピスラズリとか半貴石や鉱石を潰して作る絵具やそうや。今は人工的なんが普及しとるけど、今回目を付けられたんは、昔ながらの作り方で岩絵具を作っとる職人さんや」
 聞きかじった情報なのだろう、煉三の質問に手帳をめくりながら答える千尋。

「事前に避難させると、敵が目標を変えてまう可能性があって、そうなったら被害を防がれへん。せやから職人さんを事前避難させんのは無理なんやけど、幸いにも事件が起きるのは4日後や」
「という事は?」
 千尋の説明に先を促す煉三。
「螺旋忍軍はいきなり職人さんを殺そうとする訳やない。その技術を持ち帰ろうとするので、職人さんに事情を話して仕事を教えてもらえば、後から来た奴さんらは自分らの弟弟子になるやろ? ほら、十分な技能を習得したら奴さんらの標的が自分らに替わると思えへん?」
 悪戯っぽく笑う千尋は真顔になり、
「もっとも、実質3日である程度仕事を覚えなあかんから、頑張って修行せなあかんけどな」
 と付け加える。

「職人さんの工房は村はずれの庵や。ヒールで直せるとは言え、庵はなるべく戦いに巻き込みたないわな。自分らが囮になる事に成功したら、鉱石を取りに行くとか言うて、離れた場所で戦えるかもしれん」
 そこまで言って考える仕草をする千尋。
「あ、螺旋忍軍は2人なんやけど、市松模様の道化師っぽい女性と、サーカスのナイフ使いっぽい男性や。囮が上手い事いったら2人を引き離して攻撃する事も出来るかもしれへんな。こりゃ修行頑張ってもらわなあかんわ」
 と千尋が笑う。

「バタフライ効果……ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきは、テキサスで竜巻を引き起こすか? と言うやつだったかな? ま、最初の羽ばたきさえ止めてしまえばいいだけの事だ」
 表情も変えずに煉三が言うと、周りのケルベロス達も頷いたのである。


参加者
クィル・リカ(星還・e00189)
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)
罪咎・憂女(捧げる者・e03355)
秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)
ヴィルベル・ルイーネ(綴りて候・e21840)
佐久田・煉三(直情径行・e26915)

■リプレイ


 越前和紙職人の朝は早い。
「いやー、もう年ですからねぇ。目はちゃんと覚めるんですが、この時期はなかなか布団から出るのが……」
 そう言ってくしゃくしゃの顔で目を細める。
「悩み? やっぱり後継者不足ですね。若い頃、この辺で石を投げたら和紙職人に当たったもんだが、もう今やっているのは両手の指で数える程。やっぱりしんどい仕事だからねぇ」
 漉き舟を操る職人の瞳が遠くを見る様に細められる。
 その深い瞳は、和紙職人の未来を見通そうとしているかの様であった。
「あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 岩絵具職人の話だと思って読み始めたら、越前和紙職人の話が始まった。な……何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何が始まったのかわからなかった……」
「なんだってー!」
 ……ここはその和紙職人が取材を受けている町から、山1つ越えた村のはずれ。
「ふざけとらんで、動かすのは口ではなく手じゃ」
 岩絵具職人の長岡孝蔵は、手を動かしながら急遽弟子になって3日目の7人を叱る。
 今日の一行は、秋田県の荒川鉱山から運ばれてきた岩緑青……孔雀石を砕く作業をしていた。
「なぁ、師匠、今師匠が砕いたこの岩絵具触ってみてもいいか?」
「構わんぞ」
 佐久田・煉三(直情径行・e26915)の問に、ぶっきらぼうに答える長岡。
「同じ鉱石でも砕き方で色が……どう砕けばこんな色彩が……」
 その煉三の隣から罪咎・憂女(捧げる者・e03355)が覗き込み、感嘆の声を上げる。
 長岡はぶっきらぼうながら、こちらの申し出に真摯に応えてくれ、短い間だけにも関わらず真剣にその技を教えてくれている。
「お主ら二人が、一番筋がいいな」
 それぞれが砕いた岩緑青を、親指と人差し指で擦り合わせた長岡の頬が少しだけ緩む。
「最初上から砕いてみようと思ったの、けど横から砕いた方がいい気がして……」
「私はローザマリアさんがしているのを真似してみただけです」
 その二人、ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)とリモーネ・アプリコット(銀閃・e14900)が口々に言うと、
「それが大事じゃ。石はちゃんと語り掛けておるのだから、それに耳を傾けるんじゃ。見て覚え、体で覚え、そして考えて自分のものとせねばならん」
 深く頷き、2人にそう言葉を贈る長岡。
「お主は荒い粒子が残ったままじゃ。撫でて指先に違和感を抱くなら均れてない。反対にお主は丁寧に砕き過ぎじゃ」
「―ム、綺麗に砕いたつもりなんだが」
「砕き過ぎてもダメなのですか?」
 そう評した長岡に、こめかみを叩いたバーヴェン・ルース(復讐者・e00819)とクィル・リカ(星還・e00189)が小首を傾げ、互いに触って見ろと言いながら長岡は、
「秋空、お主もちょっと来い」
 少し離れた場所で黙々と作業を続けていた秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)も呼んで、細かい説明を加えて道具を扱って見せる。
「なるほど、ふるいを揺らすのではなく回すのですね?」
「そうじゃ、このふるいは網目が細かい。自然に下に……」
 瞳を輝かせる彼方に長岡が応じていると、
「お取込み中のところ邪魔するけど、お客さんが来た様だよ」
 1人だけ修行に参加せず、周辺の確認と戦闘場所の選定を行っていたヴィルベル・ルイーネ(綴りて候・e21840)が、来訪者の訪れを告げる。
 そう、今日は千尋が言っていた、螺旋忍軍が現れる日であった。


「はーい。私、岩絵具に興味があってー、いろいろ技を教えて欲しいなって♪」
「以下同文だ」
 白と黒……市松模様の道化師姿の女性がウインクしてかわいく首を傾げると、サスペンダーに沢山のナイフを刺した男が、口をへの字に曲げたまま続く。
 それを見た長岡が、ちらりとバーヴェン達の方を見る。
(「こいつらはデウスエクスで、わしの技術を盗んだ後に殺害する目的で、とりあえず大人しく弟子入りしてくるという話だったよな?」)
 長岡の眼がそう語っており、コクコクと頷くローザマリア達。
(「大人しく弟子入りする気がある格好か? もう少し……例えば作務衣に着替えて来るとかぐらいせんか?」)
 僅かに眉に寄る皺に、長岡が言いたい事を理解したリモーネ達だったが、リモーネ達にしても『知らんがな』としか言いようがなく、ねー、と同意を示す様に頷く。
「ゴホン! おぉそうかそうか。志を持つ若者はいつでも歓迎じゃ。では、弟子たちと一緒に修行を始めるとしよう」
 咳払いした長岡が若干棒読み気味ではあったが、歓迎の意を示して2人を招き入れ、目配せし合った2人はそこに居るのがケルベロスだと知らずに、
「ペルメリアと申します。色々教えて下さいー♪」
「俺はミケロット、以下同文だ」
 と挨拶し、暫くの間かすかな緊張感を漂わせつつ、岩緑青を砕く作業を続けたところで、
「そ、そうじゃの、人数も増えた事だし石を取って来てもらおうかの」
「裏の崖ですね。わかりました」
 ヴィルベルに合図を出され、また棒読み気味に長岡がそう口にすると、彼方が元気よく立ち上がり他の者が続く。そうなると螺旋忍軍の2人も追従しない訳にはいかず立ち上がった。
「どこへ行くのですか?」
「裏手の崖に材料となる鉱石を採りに行く。教えてやるから一緒に行こう」
 尋ねるペルメリアに煉三が応えると、2人は目配せし合って一行の後を歩き始め、暫く歩くと切り立った崖が見えてきた。
「纏まって行くより、手分けして効率よく探しましょう」
「そうね。じゃああっちとこっちで分れましょう」
 クィルの提案にローザマリアが賛同すると、
「ではこっちは広いから2か所いけるから、ここで線引きでいいよな?」
 バーヴェンが自分の横の地面に線を引く。線の向こうに居るのは憂女とクィル、そしてミケロットだ。線のこっち側はヴィルベルを除き、ペルメリアを加えたそれ以外の6名が居た。
「問題ないです。では師匠に怒られない内にさっさと採取しましょう」
「では行きましょう。ミケロットさん」
 憂女が踵を返すと、クィルに促されミケロットが後をついて離れてゆく。
「では私達も掛りましょう」
 リモーネが銀色の髪を躍らせて振り返り、クィル達とは逆側に歩き始める。
「……材料も自分達で採取するのですね」
「そうなのよ。だからこんな辺鄙なところに庵を構えてるの」
 歩きながら問うペルメリアに応えるローザマリア。……螺旋忍軍の2人は疑う事無く、引き離されてゆく。


「……ん、自分で磨く鉱石を現場で選ぶのも仕事の一環だ」
「なるほど! ッ……なっ!」
 煉三との会話に気を取られたペルメリア。完全にその不意を突いて放たれたリモーネの一閃。
「流石は螺旋忍軍、反応が早い!」
 それを喰らいながらも致命傷を避け跳び退さる様に、悔しげな瞳を向けるリモーネ。
「何故それを……」
「……答えるまでもないだろう」
 目を見開くペルメリアに、煉三の振るった仕掛け杖『道摩煉獄』から飛び出した諸刃の刃が、地獄の炎を纏って振るわれる。
「くっ……読まれていたと言うの……」
 裂かれながらも煉三に螺旋掌を叩き込むペルメリアに対し、
「その通り、悪の計画は全部潰される。……もう、あんな光景を繰り返す訳にはいかないんだ!」
「もう一人も今頃あの世に旅立ってるわよ」
 彼方が地に描いた星座が光り煉三達を癒して穢れへの耐性を増す中、動揺させる為、ブラフを吐いたローザマリアの双刃……『因果之劒【Answerer】』『応報之劒【Fragarach】』がペルメリアを裂く。その間に全身を地獄の炎で覆ったバーヴェンが、
「職人の業師……現代では貴重な人材を失う訳にはいかぬのだ」
 踏鳴を起こして迅雷の如き突きを繰り出す。
「くっ……ミケロットッ、ミケローット! まさか読まれていたとはね。でも詰めが甘いわよあなた達……」
 傷口を押えながら相棒の名を叫んだペルメリアは、そうほくそ笑むと、包囲網の緩い箇所……彼方の左側を突っ切ろうと地面を蹴る。
「やらせない!」
「どきな、小僧! よし、抜け……」
 押し留めようと動いた彼方にトラウマボールを飛ばし、脇を抜けるペルメリアだったが、その茂みから駆動音を響かせ、炎を纏って飛び出して来たのは、彼方のライドキャリバー『ヤタガラス』。
 完全に不意を突かれたペルメリアは、その吶喊で包囲網の中へと押し戻される。
「何が甘いと?」
「甘く見たのはあなたの方です」
 素早く仕寄ったバーヴェンとリモーネが、ペルメリアが体勢を立て直すより速く斬撃を叩き込み、
「過去を振り返る暇はない! 未来に向かって踏み出さないと!」
 現れたトラウマを振り払った彼方も、ヤタガラスと共にペルメリアを強襲する。
「くっ……こんな……ミケロットは……」
 最初の奇襲で受けたダメージが大きいのか、白黒の衣装を自分の血で赤黒に変えながら、相棒の方を見遣るペルメリア。
「無駄だ。異変を知っても向こうにも仲間がいる」
 その首筋目掛け振り下ろされる煉三の刃を、ギリギリのところで袖口から出した苦無で受けたペルメリアだったが、
「劒の媛たる天上の御遣いが奉じ献る。北辺の真武、東方の蒼帝、其は極光と豪風を統べ、万物斬り裂く刃とならん――月下に舞散れ花吹雪よ!」
 その煉三の逆側、ローザマリアの腕から無数に繰り出される刃の残像が、花吹雪の様に光乱れ、舞い散る鮮血と破れた衣装が血染めの紙吹雪の如く舞い散る。
「ミス……バタフライ……申し訳……」
 ペルメリアはそこで事切れ、己の血で染まった大地に崩れ落ちる。

「……ぬ?」
 ぴくぴくと耳を動かしたミケロットが、今来た道を振り返る。
「どうしたのですか?」
「名を呼ばれた気がする……あと悪い予感も……」
 同じ様に足を止めて尋ねるクィルにそう返したミケロットは、口をへの字に結んで今来た道を戻ろうとする。
「ちょっと、どうしたのです。鉱石採取は……」
「後回しだ、ぬ!」
 肩を掴んだ憂女の手を払ったミケロットが、そう言って振り返るとクィルの足。
 とっさに首を傾げ、かすっただけで着地するクィルを睨むミケロットだったが、その膝裏を崩す様に、憂女の蹴りが叩き込まれた。
「たばかったのか……」
 跳び退いてクィルと並ぶ憂女の動きに、状況を悟ったミケロットがナイフを抜く。
「さぁ、三人で楽しく鉱石採取しましょう」
「そうそう。向こうの事はほっといてね」
 道を遮る様に立ちながら、ミケロットと間合いをとる2人。
「たった2人で私を止めようとするとは……なめられたものだ」
「おっと残念、2人じゃないんだよね。もう少し先で戦いたかったけど……」
 鼻で笑うミケロットの言を否定する様に、愛用の魔導書『惺彩』を紐解きながら茂みをかき分けヴィルベルが現れ、螺旋を描く角に引っ掛かった枝を払う。
 ヴィルベルはもう少し先での戦いを想定していたが、カンの良いミケロットが踵を返した為、想定と異なる場所で対峙する事になる。
「……1人増えたところで同じ事、押し通る!」
 ミケロットは怯まず、カッ! と眼を見開くと、サスペンダーに差したナイフの柄を指の間に挟んで一気に掴んで其れを投じ、残った2本のナイフを諸手に構えて踊り掛って来る。
「数には数です」
「行かせはしないのです」
 憂女の元から幾つものドローンが飛び立ち飛来するナイフから味方を守る中、クィルがミケロットを阻む様に捕食モードに変形したブラックスライムを嗾けるが、十字を描く様にそのスライムを裂き、更に地面を蹴るミケロット。
「疾く咲き誇り、散り誇れ。君の存在は俺の書に綴るに値しないんだよ、ミケロット」
 ヴィルベルの声に呼応する様に、地面から湧き出た黒薔薇の蔓がミケロットの足に絡み付き、刺を食い込ませその動きを縛る。
「小賢しい……」
 だがミケロットはそれを一瞥すると、出血を厭わず強引に歩を進める。
 更に激しい攻撃を繰り出すミケロットと撃ち合う事数合。確かに強い敵ではあったが、負けぬ事に徹する3人はその突破を許さない。
「ええぃ、どけと言うに!」
「言われて、はいどうぞと通す訳あるまい」
 苛立たしげに振われたナイフに『緋華』を飛ばされた憂女は、赤い髪がはらはらと落ちる中、焔纏う蹴りを繰り出しミケロットを押し返し、
「捕らえ、捉え、幾重にも、まどろみの中にその魂を」
 クィルの声と共に地面からい出た黒い水が、ミケロットを取り囲む。
 後方から駆けてくる足音が聞こえて来たのはその時。ペルメリアを討った仲間達が駆けつけて来たのだ。
「死んだか……無様な」
「逃亡を図ろうとしているよ、気を付けて」
 バーヴェンらケルベロス側の増援に、ペルメリアが討たれた事を悟ったミケロットの視線が泳いだのを見て、ヴィルベルが声を上げると、ケルベロス達はそれを包囲する様に展開する。
 後は一方的な展開となり、ケルベロス達の波状攻撃を受けたミケロットは、ボロ雑巾の如くズタズタになって物言わぬ骸と化したのである。
「技術の模倣や盗むこと……そのものが悪いとは言わないが、『奪う』というのは面白くないな……先を見据えてこその技術だろう」
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
 ミケロットの骸を見下す憂女の嘆息を、バーヴェンの言葉がかき消した。

「……終わったのか」
「はい。な、なんとか無事に終わって良かったです」
 戻ってきた一行を出迎えた長岡が眼を細めて尋ねるのに、彼方が応じる。
「なんじゃ、ちゃんと取ってきたのか。もうここを離れるのじゃからよかったのに」
 律義に鉱石を採取してきたのを見た長岡が笑う。
「あ、あの。デウスエクスを倒すための囮として修行させて頂いておりましたが、岩絵具に興味がある気持ちに偽りはございません。差し支えなければ、もう暫く修行させていただいても構いませんか?」
 リモーナがおずおずと申し出ると、他の幾人かも今日やっていた仕事が終わるまではと、修行の継続を申し出る。
「お主らかわっとるの、まぁ気が済むまで好きにせぇ」
 まんまるな目をしたままそう言って踵を返した長岡の背中は、どこか少しだけ嬉しそうなのだった。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。