新約・妖狐伝

作者:白鳥美鳥

●新約・妖狐伝
 街の郊外……その近くには広い森が広がっている。ここの森は常緑樹の様で、月明かりに照らされた姿は、どこか不気味な何かを物を感じさせた。
「いやいやいや、ここで怖がっていたらダメだ! 探すと決めたんだから、俺は行く! そして、見つけるんだ!」
 弘樹は懐中電灯を手に持って、暗い森の中を進んでいく。
「……確か、この先に川が流れていて……そこに狐が現れる。その狐の尻尾は7。妖怪の九尾狐は聞いたことがあるけど……それが7。ラッキー7と一緒だ。本当にどんな狐なんだろう。出来たら写真も撮りたいな。本当に7なのか見ただけでは分からないかもしれないし……」
 川の流れる水音が聞こえてくる。弘樹は急いでそこへと向かい、身を隠して川を見ていた。
 そんな弘樹の前に、第五の魔女・アウゲイアスが現れ、彼の心臓を鍵で一突きにする。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 崩れ落ちる弘樹。そして、彼から白銀の妖狐が現れたのだった。

●ヘリオライダーより
「妖怪って、みんな興味があるかな?」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう切り出しながら、事件の概要を話し始めた。
「不思議な物事に強い『興味』を持って、自分で調査をしようとしている人がドリームイーターに襲われて、その『興味』を奪われてしまう事件が起きてしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているみたいなんだけど、奪われた『興味』を元にしたドリームイーターが生まれて、事件を起こそうとしているみたいで、みんなには被害が出る前に、このドリームイーターを倒して欲しい。お願いできるかな? それと、無事に倒せたら、被害者の人も目を覚ましてくれると思うよ」
 デュアルは状況を伝える。
「場所は、街の郊外にある森の中にある川辺の近く。そこに妖狐のドリームイーターが現れるらしい。森は暗いけど、川の辺りは月の光で川の水も光で反射しているから、場所は分かりやすいかなって思う。妖狐のドリームイーターも真っ白で、ほんのり光っているから、見分けがつくと思うよ。それで、このドリームイーターは『自分が何者?』みたいな問いかけをしてくる。それで正しい対応が出来なければ殺してしまうみたいなんだ。でも、このドリームイーターって、自分の事を信じていたり、噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるんだ。だから、この事を上手く利用すれば有利に戦えると思うよ」
 デュアルの話をミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)も聞いていた。
「えっと、狐ちゃんで、妖狐ちゃんで、尻尾が7つ? 何だかとっても不思議な妖狐ちゃんなの。見てみたいって気持ち、凄く分かるの! でも、そんな不思議な妖狐ちゃんが悪さをするのは嫌なの。ミーミアもお手伝いするから、妖狐ちゃんが悪さをする前に倒すの! みんな、力を貸してほしいの!」


参加者
奏真・一十(あくがれ百景・e03433)
屋川・標(声を聴くもの・e05796)
滝・仁志(みそら・e11759)
エルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095)
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)
レギンヒルド・カスマティシア(輝盾の極光騎・e24821)
猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454)

■リプレイ

●新約・妖狐伝
 場所は郊外の近くにある広い森の中。その森の先に川が流れている。月明かりが照らすけれど、常緑樹の森である木々に狭まれて薄暗い。しかし、流れる川の水面には月の光が柔らかく反射していて、不思議な雰囲気を醸し出していた。
 今回は、噂話をする班と潜んで奇襲を狙う班に分かれる作戦だ。
 エルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095)は、白手袋の黒のウィングキャットのロウジーと共に身を潜めている。話を聞いただけでさぞ綺麗だろうなと思う光景だから、うっかり見惚れないようにしないといけない、そんな気持ちに、どうしてもなってしまうのだけれど。
 屋川・標(声を聴くもの・e05796)は、真鍮とブリキ風の迷彩シートを被って身を潜め、同じくレティシア・アークライト(月燈・e22396)、レギンヒルド・カスマティシア(輝盾の極光騎・e24821)、滝・仁志(みそら・e11759)も、ドリームイーターの襲来に備えた。
 招きよせる為に、噂話が始まる。
「この森には、七ツの尾を持つ狐が現れルという。もし見られれば、幸運を得られルのだろうか」
 君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の言葉に、猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454)、奏真・一十(あくがれ百景・e03433)は、頷く。
「九尾の狐ってよく聞きますけど、今日探してるのは7なんですね? ちょっと珍しいですよねー」
「七尾狐とは初耳である。僕は願掛けはしない主義であるが、興味深いことには違いない!」
 一十の言葉に、眸は尋ねる。
「狐に願イを叶えてもらえルとしたら、どのよウなことを願う?」
「出会えるなら、それそのものが幸運と言えるやも知れん。つかまえてやろう……などと考えてはバチアタリであろうか」
 確かに、出会える事自体が幸運と言えるだろう。探しても見つかるとは限らないのだから。勿論、今回はドリームイーターなので、作戦が上手くいけば出会える筈である。その姿を見られる事を一十は少しわくわくしているのだけれど。
 身を潜めている仁志は、招きよせ班の言葉を聞きながら、現れるドリームイーターへと思いを馳せる。
(「ラッキー7な妖狐かぁ。確かに見つけたら願いくらい叶えてくれそうだな。願い事をするなら、ようじょを……」)
 そこまで思った時、相棒のテレビウム、カポが仁志向かってバールを構えていた。それに仁志は慌てる。
「……カポ、その構えてるバールを下ろそうか。俺、今日は口に出してないから! 変なことなんて考えてないよ!」
 一生懸命弁解する仁志に、カポはどこか納得がいかなそうだが、バールは下してくれたのを確認し、ホッと安堵の息をついた。
 その時、川の近くの岩の上に、淡く輝く白銀の狐が現れる。その尾は広げられて、そちらにまず目を惹かれた。尾の数は7。それは凄く綺麗で……幻想的で。
「あなた達に問います」
 その声は、とても澄んでいて美しい声色。それはとても不思議な感じで……。
「私が何者だと思われますか?」
 その問いかけにエルムが答える。
「ふさふさで綺麗な毛並みのお狐様」
 その回答に、七尾の狐は上品に微笑む。満足いく答えだったようだ。
 そして、七尾狐が穏やかに頷き、去ろうとする瞬間、隠れていたケルベロス達が飛びかかった。

●七尾狐のドリームイーター
 最初に仕掛けるのは仁志。
「きれいでしょ、あげるよ」
 氷の粒が青い橋を描きながら、ドリームイーターを凍てつかせる。続けてカポのバールによる一撃が入った。
 その間に、エルムの藍の天幕による光の粒、レシティアのオウガ粒子が放たれて、一十達の集中力を上げていく。エルムのウィングキャット、ロウジーは標達に加護の風を送り、レシティアのウィングキャット、ルーチェはリングを飛ばしてドリームイーターへと攻撃した。
 攻撃を受けたドリームイーターは、直ぐに体勢を整える。ふわりと、美しい七つの尾をなびかせて跳ぶ。その尾は一つ一つが輝き、虹を思わせる光が妖狐の身体を覆う。その幻想的な光は、攻撃の要である標の視界へと輝いて映り、思考を奪っていった。
「なんと、本当に七つ尾! ――まあ、夢喰いのまやかしゆえ当然よなあ」
 一十は妖狐のドリームイーターの尾の数に驚きつつも、自らの行動に入る。一十の黄金の光が眸達を包み込み、ボクスドラゴンのサキミは標へと属性インストールを行って癒しを施していった。
「フィールド生成……これより戦果ノ向上に貢献すル」
 眸はコアエネルギーを拡散させて、自身の周囲に光の回路を展開させていく。キリノは念を込めた物をドリームイーターへと放つが、それを妖狐はひらりと跳びながらかわした。
 標は斧の蒸気機関をふかしつつ、何とか意識を保たせながら妖狐のドリームイーターへと斧を振り下ろす。しかし、その攻撃も、しなやかな動きでかわされてしまった。
「標さん、回復します!」
 愛楽礼は纏っているオーラを飛ばして標を治癒していく。その間にオルトロスの火無はドリームイーターを睨み、炎で捕らえようとするが、失敗に終わった。
 レギンヒルドはドラゴニックハンマーを変形させて構える。そしてドリームイーターへと砲弾を放った。攻撃は命中したのだが、レギンヒルドは使い慣れていないドラゴニックハンマーでの轟音にビクッとしてしまう。
「お、驚いてなんかないわよっ!」
 周囲の仲間達に強がってみせて、その姿に微笑まれてしまった。
 フローネ・グラネットが応援にかけつけてくれ、後方への攻撃を防ぐために、備えてくれている。
「仁志ちゃん、頑張るの!」
 ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)が、雷の力で仁志の力の底上げをする。一方、ウィングキャットのシフォンは、加護の風を眸達に重ねる様にかけていった。
 トントンッと華麗なステップを踏む妖狐。舞うように飛び上がると、そのまま一気に一十に向かって突進して噛みついた。それに耐えながら、一十は反撃に転じる。蔓がドリームイーターを襲うが、ひらりとバク宙をして避けて見せた。
「うむむ、やはり、まだ当たりにくい……」
 そんな一十の傍で、無愛想な顔をしたサキミが属性インストールによる回復を行ってくれる。普段、冷たくあしらわれている身としては、その行動が嬉しくも感じられた。
「……やはり、その動きも仕草も綺麗だな」
 攻撃が当たりにくいという困った現状なのだが、幻想的かつ華麗に動く妖狐のドリームイーターはやはり美しいとエルムは思う。ただ、この調子ではまだまだ攻撃が当たりにくい事は確かなので、もう一度、藍の天幕を重ねる事にする。
「いつか夢見た夜明けのために」
 エルムの地獄化した翼から、癒しの力を持つ炎の一欠けらを空へ向かって投げる。それは無数の藍色の光の粒と化して、愛楽礼達の神経を研ぎ澄ませていった。ロウジーの方はレギンヒルド達に加護の風を送って、護りを固めていく。
「力も上げて貰ったし、確実に狙っていくよ。カポも続いてね」
 仁志はバスターライフルを構える。そして、凍結の光線をドリームイーターへと放った。続けてカポも顔から閃光を放つ。
 レシティアも、再び纏っているオウガメタルからオウガ粒子を標達に放ち、集中力を高めていく。ルーチェはドリームイーターへと爪で思いっきり引っ掻いた。
 眸はオウガメタルを鋼と化し、思いっきりドリームイーターへと殴りつける。続けてキリノの金縛りによる攻撃が襲い掛かった。
「入ったナ」
 眸の言葉に、仲間達は少し安堵する。これで、少しは当たりやすい状態になったという事だからだ。
「僕の攻撃も、上手く入ると良いんだけど。頼りにしているからね」
 標は斧の蒸気機関、スモーキン・サンセットに語りかけると、攻撃に移る。
「行くよ、相棒!」
 標は、スモーキン・サンセットの声を聞き、心を通わせる。そして、身体の一部の様になった斧を使ってドリームイーターを斬り付けた。
「私も上手くいくと良いのですが……火無、一緒に行きますよ」
 愛楽礼はドリームイーターの足元を狙って輝きを放つ重い蹴りを叩き込む。そこに火無の西洋剣が青白い炎と共に駆け抜け、切り裂いた。
「うぅ、素早すぎてピントが合わない……」
 レギンヒルドは、この珍しい妖狐のドリームイーターをカメラに収めたいのだが、流石に少々動きが鈍ったとはいえ、残念ながら厳しそうだ。
「もう一度、足止め行くわよ!」
 気を取り直して、レギンヒルドはドリームイーターの足元を狙い重たい蹴りを放つ。
「次は標ちゃんね! 頑張るの!」
 ミーミアは雷の力を使って、標の力の底上げを図る。シフォンはエルムに対して加護の力を送っていった。
 多少素早さは落ちて来たとはいえ、妖狐の動きは十分に早い。身を翻すと、ある程度の距離を取り、その真紅の瞳でレティシアを睨みつける。
「ここはお任せを! アメジスト・ヴェール、展開!」
 サポートに回ってくれていたフローネが、紫水晶の盾を展開させて守ってくれた。
「ありがとうございます。では、私は私の出来る事を……」
 ピンヒールを履いているとは思えない滑らかな動きのレティシアは、オメガ粒子を放って、一十達の集中力を更に高めていく。ルーチェは、ドリームイーターへとリングを叩きつけた。
「今度こそは当たってくれる筈。サキミ、君も宜しく頼む」
 相棒の一十の言葉に、サキミは無愛想な顔をしながら標へと向かって属性インストールを行いに行く。それを確認してから、一十は纏っているオーラの弾丸をドリームイーターへと放った。妖狐は逃げようとするが、避け切れずに命中する。
「おお、無事に命中したぞ!」
 中々、攻撃が当たってくれなかった一十は喜びの声を上げた。
「僕は、もう一度、命中率を上げてみようか。まだ、安心できる域じゃない感じだ」
 エルムは藍の天幕を、更に愛楽礼達に重ねる。これで、命中率に関しては安心できる範囲になっただろうか?
 ロウジーは、レティシア達に加護の風を送っていく。少しでも護りが固まるように。
 仁志は空にかける青の橋を使って、氷の粒をドリームイーターへと放つ。続いて、カポのバールによる攻撃が打ちのめした。
「……次の攻撃は、選択が難しイ」
 眸は次の一手に迷う。攻撃が当たるか当たらないか、丁度、半々といった所だからだ。だが、ここは仲間達の事を信じてバスターライフルを構える。眸が攻撃に入る直前、キリノが攻撃に入った。ポルターガイストによる足止めを更に付け加えてくれたのだ。それに感謝しつつ、眸は攻撃を弱体化させるエネルギー光線をドリームイーターへと確実に当てる事に成功する事が出来た。眸は仲間達やキリノに心から感謝する。
 力の底上げを貰った標も、ドリームイーターへと狙いを定める。
「しっかりと妖狐を倒さないとね」
 愛用の斧を構えながら、妖狐のドリームイーターへと向かって上から下へと斬り下ろす。流石の妖狐もかわしきれず、その攻撃をまともに受けた。
「火無、一緒に行きますよ!」
 愛楽礼は、火無に声をかけると、全身にオーラを纏い、ドリームイーターへと強烈な一撃で殴り飛ばす。そこに火無の放つ瘴気がドリームイーターを包み込み、毒を与えていった。
「遥か凍てつく氷星の夜空よ! 我が敵をその月白の腕で抱き給え!」
 レギンヒルドは赤く輝く極北のオーロラを呼び出し、凍てつく吹雪をドリームイーターへと叩きつけた。
「次は一十ちゃん、頑張るの!」
 ミーミアは一十へと雷の力を使って底上げを図る。シフォンは愛楽礼達に加護の力を送り護りの力を高めた。
 トントンッと軽くステップを踏む妖狐。再び、七つの尾が不思議な光に覆われていく。幻想的なその光。気が付けば、エルムはその光の美しさに飲まれていっていた。
「惑わされそうになったら尻尾の数でも数えて気を取り直そう。……狐の七本の他にもロウジーのとか尻尾はいっぱいあるけれど」
 エルムは正気を取り戻すために、尻尾の数を数えている。妖狐の尾は七本、それにボクスドラゴンにオルトロスにウィングキャットに……羊を数えている状態だ。
「エルムさん、しっかりしてください!」
 確実に眠りに向かっているエルムにレティシアが薔薇の香りの真白の霧をエルムに放ち正気を取り戻させる。
「そろそろ、決着をつけねばな」
 一十は蔓を放ち、ドリームイーターを縛り上げ、妖狐の素早い動きを封じる。そこに仁志がバスターライフルによる凍結光線を放った。その間に、サキミはエルムへと属性インストールを行い、カポはドリームイーターへと光線を放った。
 眸はオウガメタルを鋼鉄化し、ドリームイーターへと重い一撃を与える。更にキリノの金縛りが動きを奪っていった。
 エルムは青目の白猫のファミリアをドリームイーターへと放つ。ロウジーはもう一度、標達に加護の風を送って護りを固めていった。
 標はシンクロナイズド・ファイターを使ってドリームイーターへと強烈な一撃を放つ。
「火無、連携していきますよ!」
 愛楽礼はドリームイーターの足元を狙い、火無は睨みつけることで上半身を燃え上がらせた。そこにレギンヒルドのドラゴニックハンマーが思いっきり叩きつけられる。
「エルムちゃん、頑張るの!」
 ミーミアがエルムの力の底上げを行う。シフォンは同じくエルムへと加護の力を送った。
 一十のオーラの弾丸が放たれ、仁志はナイフで切り刻み、レティシアは攻撃に転じて氷の重い一撃を加える。眸は中和するエネルギー光線を放った。カポはバールで殴りつけ、ルーチェは引っかき攻撃を行う。キリノはドリームイーターの動きを麻痺させていった。
「妖怪だとか、超自然的な存在って好きなんだよね。自然の象徴だったり、誰かの気持ちの表れだったりするからね。感謝したり恐れたりしながら生きていく、みたいな価値観はいいなって思うんだよね。でも、人にイタズラに危害を加えるのはダメだよね?」
 標の斧の蒸気機関が強く動き出す。そして、標は飛び上がると、妖狐のドリームイーターを叩き割るように上から下へと振り下ろし……ドリームイーターは七色の光となって美しく幻想的に消えていった。

●一時の休息
 壊れた場所を、出来る限りヒールした後、倒れていた弘樹を見つけ出し、レティシアを中心に回復を施す。その治療の効果があり、弘樹は目を覚ましてくれた。
 大まかな事情を聞いた弘樹は残念そうな顔をしている。
「噂に心躍る気持ちはわかる。しかし……なんだ、災難であったな」
 一十は、弘樹を労う。
「君だけが見つけられる不思議があるはずだから、また探しに行けばいいよ。きっと見つかると思うからね」
 そう、標が励ましの声をかけると、弘樹は嬉しそうな顔をして頷いた。
「みんなー、お疲れ様なの!」
 ミーミアはそう言うと、持ってきた温かい飲み物と熱々のアップルパイを、ケルベロス達に配り始める。
「お手伝い、ありがとうなの」
 まずは、応援に来てくれたフローネに手渡す。それから弘樹にも。
「愛楽礼ちゃんもお疲れ様なの」
 温かい紅茶に、二人分のアップルパイ。それを愛楽礼に渡す。それに彼女は微笑んだ。
「ありがとうございます。火無、戴きましょう?」
 次は、レギンヒルドの所へと向かう。
「流石に冷えるわね……」
「これを飲めば温かくなると思うの!」
 ミーミアはレギンヒルドに紅茶とパイを手渡す。
「ミーミアさん、ありがとう。紅茶とパイ、頂くわ。美味しい…それに体の中から暖まるわ。生き返る気分……」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいの!」
 次に向かう先は、眸。月光に照らされて白金の髪がきらきらと輝いている。
「ありがとウ」
 ミーミアから手渡されたアップルパイを受け取った彼は、ほんの僅かに微笑んでいて、それがミーミアには嬉しかった。
 ストールをかけたレティシアの所にはルーチェもいる。
「じゃあ、二人分なの!」
 レティシアが受け取ったアップルパイを見て、ルーチェが彼女の周りをうろうろしている。
「貴方猫舌でしょう、冷ましてあげますから待って」
 そんなやり取りが可愛らしかった。
「標ちゃんもお疲れ様なの!」
「うん、ありがとう」
 標の笑顔を見てから、ミーミアは仁志の所に出かけていく。
「依頼の後のお菓子は甘いものっていいよなぁ」
「喜んでもらえて嬉しいの!」
 その後、アップルパイを巡って、仁志とカポの取り合いが起こるのだけれど。
「一十ちゃん、お疲れ様なの」
 一十は笑顔でミーミアから珈琲とパイを受け取る。
「君もお疲れさま。して、不思議な狐のご感想は?」
「えっとね、ふさふさで、あの尻尾をもふもふしてみたかったの!」
 その回答に、一十は微笑んでいた。
「エルムちゃんもお疲れ様なの」
「うん、ありがとう」
 ロウジーで暖を取っていたエルムは、紅茶とアップルパイを受け取ってくれる。
「シフォンを撫でてみても良いかな?」
「うん! じゃあ、ロウジーちゃんも撫でたいの!」
 お互いのウィングキャットを撫でて、幸せな気持ちに浸る。
 綺麗な景色を写真に収めていたレギンヒルドは、戦った仲間達に声をかける。
「皆も撮らない?」
 今日の、不思議な出来事の記念に、と――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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