青い鳥を探して

作者:絲上ゆいこ

●ウォンテッド・ブルーバード
 夕日色の鮮やかな紅葉に染まった森の中。
 大きな網。しっかり着込んだコートの腰に下げた鳥かごに、双眼鏡。
 深い秋の風は、冷たく吹き抜ける。
 青年が長い柄のついた網を振り下ろすと、一匹の鳩がその中に収められた。
「くそっ、コイツじゃない!」 
 苛立ちながら鳩を逃し、彼は大きく大きく息を吐いた。
 ポケットの中から写真を取り出し、眺める。
 白いベッドに腰掛けて笑う少女。
 そして、その裏面。
 ――青い鳥をその手にした者は、幸せが手に入ると言う。
 ただし、物事には対価がつきもの。
 ――誰かがその幸せを得た分、誰かが不幸になるのだ。
 彼は書き留めた文字を噛み締めるように眺め、呟く。
「絶対に見つけて、オレは彼女を……」
 言い終える前に。背より巨大な鍵が生え、彼は膝から崩れ落ちる。
「私のモザイクは晴れそうに無いけれど、――あなたの『興味』にとても興味があります」
 ボロボロのフードに、白い白い髪に肌。
 第五の魔女・アウゲイアスは地に落ちた写真を拾い上げ、彼の手に収めさせてやるとクスクスと笑った。
 
●チルチルミチル
「おまえらはしあわせの青い鳥ってお話をしってるか? その鳥を捕まえるとしあわせになれるらしいぞう!」
 バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)がヘリオライダーに託された資料と絵本を手に、集まったケルベロスたちへ問いかける。
「そのしあわせの青い鳥を探して森に行ったやつがドリームイーターに『興味』をうばわれて、しあわせの青い鳥がゲンジツ化してしまったんだ!」
 ぴょんと跳ねたバレンタインが絵本の表紙を指差す。
 青い鳥のイラストは幸せの象徴といった様子で森を心地よさそうに悠々と飛んでいる。
 ただし、彼の探していた青い鳥は絵本のようにただ人を幸せにする訳では無い。
 触れた者が幸せになった分、近くにいる者がその分不幸になり。しかもとっても凶暴らしい。
 その青い鳥は一匹だけで行動する。
 人間を見つけると青い鳥はわざと一度姿を現して、相手が自分を捕まえようとしているか試そうとするようだ。
「そこで興味を示すと青い鳥は怒ってヒトを襲うんだ。ウウム、でも森で珍しい色の鳥をみかけたら興味をひかれてしまうよなあ」
 珍しさに声を上げるだけで人を襲う青い鳥は、ケルベロスたちはまだしも一般人にとっては恐ろしい脅威となる。
 その上青い鳥は戦う際も、直接触れた相手をどんどん幸せにして周りをどんどん不幸にするのだ。
 バレンタインは顎先に掌を添えて、思案顔で少し天井を見上げる。
「青い鳥を倒すと『興味』を奪われてしまったヒトも目を覚ますみたいだ。この時期の森は冷えるからな、目を覚ますまでにカゼをひかなきゃあいいんだけどなあ」
 一つ頷いたバレンタインは耳をぴんと立てて飛び跳ねて、ケルベロスたちに言った。
「ようし、『興味』を奪われたヒトがカゼをひく前に青い鳥を倒してしまおう! いこう、おまえら!」


参加者
バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)
エピ・バラード(安全第一・e01793)
花筐・ユル(メロウマインド・e03772)
百鬼・澪(癒しの御手・e03871)
カリーナ・ブラック(黒豚カリー・e07985)
ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)
シーレン・ネー(玄刃之風・e13079)
ウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)

■リプレイ


 爽やかな風が紅葉を揺らし、橙色の髪がぴょこぴょこと跳ねる。
「どこですかっ♪ どこですかっ♪ しあわせのっ! 青い鳥さんーっ!」
 わくわくしながら森を行くピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)の後ろをボクスドラゴンのプリムが歩く。
「あっ、あっ、おいしそうなキノコを発見ですっ!」
「わあ、立派な毒キノコだなあ! あのサイズはなかなかお目にかかれないぞう」
「あっ、あっ、ケルベロスだしレプリカントならワンチャンありませんかっ!?」
 双眼鏡を覗いたエピ・バラード(安全第一・e01793)が赤いキノコを指差し、マントを外したバレンタイン・バレット(ひかり・e00669)がその大きさに驚く。
 その様子を主と同じく双眼鏡をかけたテレビウムのチャンネルが見守る横で、バレンタインの頭の上では彼のファミリアロッドの青い鳥がふてぶてしくうむうむと頷いていた。
 前を歩く仲間たちの微笑ましいやり取りに目を細めたのは、花筐・ユル(メロウマインド・e03772)だ。
 彼女は気怠げにも見えるその瞳を鮮やかな色に揺らし、鳥仮面のシャーマンズゴーストの助手に一度視線を向ける。
「見慣れていた黄葉とはまた違った美しさで、ほんとうに見事なものね」
 こっくりと頷く助手。空は高く冴え冴えと、そしてなにより鮮やかな紅葉。
「こんな見事な紅葉の森に映える青い翼……、きっととても美しいのでしょうね」
 ユルの呟きに同じく頷いた百鬼・澪(癒しの御手・e03871)は、ボクスドラゴンの花嵐を抱きしめて紅葉に目を凝らす。
 その瞬間、羽音が響いた。
「あら」
 穏やかに言った澪の腕の中で花嵐が身構える。
 ぴょんと木に登り移ったシーレン・ネー(玄刃之風・e13079)の放つ濃い殺気を感じ取ったのか、木々の間から一羽の鳥が飛び立つ姿が見えた。
「やっ、アレは……」
 シーレンが枝の上から掌を当てて見上げる。
「スズメなの」
 頭にはウィングキャットのかまぼこ。
 腕には黒ブタのぬいぐるみを抱きしめたカリーナ・ブラック(黒豚カリー・e07985)が瞳を細めて、飛ぶスズメを目線だけで追った。
「でも、幸運の青い鳥かぁ……。浪漫があっていいねー」
 シーレンの言葉にコクコクと頷くカリーナ。
「カリーナ、具体的には思い浮かばないけど、幸せにはなりたいの。美味しいご飯がお腹いっぱい食べられる、とか……」
 頭の上のかまぼこに尋ねるようにカリーナは首を傾げ、続ける。
「かまぼこは、さんまが食べたいみたいなの」
「私もしあわせになりたいですよっ! ぎぶみーらーっく!」
 ピリカが拳を突き上げて、元気いっぱいに跳ねた。
「しかし対価を求めるってェんですから。対価を求める青い鳥なんて、ロマンも何も無えじゃねェの」
 やれやれと双眼鏡を片手にウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)がぼやく様に呟く。
「ウウム。やっぱりね、だれかが不幸になるならホンモノのしあわせじゃないと、おれはおもうなあ」
 木の棒のような形のファミリアロッドでぐるりと空気をかき混ぜてバレンタインは大きな耳を小さく倒す。
 ユルは、一つだけ頷いた。
 ――事を幸か不幸かとするのは各々の主観次第。
 欲を満たす幸福感を求めてしまうから生じる不幸。
「本当は、幸福こそが不幸なのかもしれないわね」
「しあわせは……ふこう……ウムウム? ユルはむずかしいことをいうのだなあ。しあわせはしあわせじゃないのか?」
「ふふ、そうねぇ」
 ユルは肩を竦めて、バレンタインに微笑みかける。
 弟のような彼の言葉はいつも真っ直ぐで、とても眩しい。
「むむむ、あたしだけでは視界の確保がいまいちですね。ウィリアム様ー! 肩車してくださーい!」
「よーし折角だ、――っ!?」
 エピがウィリアムをよじ登り初めた所で、ウィリアムは誤算に気がついた。
 エピはレプリカントの少女。見た目は少女、しかしその重量は屈強な成人男性ばりだ。
 身を低くしたまま静止するウィリアム。
「チャンネルは低いところを探してくださいね!」
「大丈夫……、ですか?」
 無邪気なエピ。動かないウィリアム。何かを察した澪が尋ねる。
「おっ……、もくない……ッ! 重くないから、まだ大丈夫だから」
 ゆっくりと動き出すウィリアム・シャーウッド、24歳。
 その背は女性を重たいなどと決して口にはしない漢の背であった。


 エピが双眼鏡を瞳に当てたまま、右肩へ体重をかけて空を指差した。
「あっ、あっ! 不思議なもようの鳥がいます!」
「青色じゃないけど綺麗だね、何という鳥だろう?」
「あれは……、ヤマガラかな」
 シーレンが尋ねると、ウィリアムが何時もより低めの声で応える。
「あっ、あっ! ウサギと青い鳥です!」
 エピの双眼鏡に映り込む大きな耳。左肩に体重をかけて下を指差した。
「それはおれだぞう」
 バレンタインがエピを指差し返し、笑う。
「あ」
 かまぼこがたしたしと頭を叩き、カリーナが空を見上げる。
「きれいな、青い鳥」
 見れば、それだけで嬉しくて幸せな気持ちになりそうな綺麗な翼。
 カリーナは少しうれしくなり、ぎゅっと黒ブタのぬいぐるみを抱きしめた。
「わあ! わあ! 青い鳥ですよウィリアム様!」
「ワーーーーッ!! ほんとうだぞう! 綺麗な青い鳥だ!」
 バレンタインとエピがわあと喜び、肩の上でぴょんぴょんされたウィリアムが苦しげにエピを降ろしながら言う。
「ありゃ捕まえなくっちゃいけねェな!」
「青い鳥さんって捕まえるとしあわせになっちゃうんでしょうっ!? こんちはーーっ!!」
 ピリカが手をぶんぶんと振るってアピールすると、悠々と空を泳ぐ青い鳥の雰囲気がピリと切り替わったように感じた。
「Guten tag。素敵な翼をお持ちね、良ければもっと見せていただけないかしら?」
 ユルが柔らかく尋ねたその瞬間。くちばしを大きく開いて青い鳥は急降下。
 跳ねるようにプリムがユルの前に出て、その尾で軌道を受け流す。
「そうはさせませんよ!」
 揺れる赤い髪。
 一気に距離を詰めたエピが流星の重力を纏った蹴りを繰り出し、勢い良く飛んだ青い鳥をチャンネルが手に持ったバールのようなもので打ち返す!
 鳥がモザイクをばらまきながら跳ね、エピの頬を掠めて木へと叩きつけられた。
「ふふん、あたしは不幸なんて怖くありませんよ、だってあたしお財布もお金も持ってな……、あっ、おいしいです!」
 大きくたわんだ枝から美味しい木の実がそのままエピの口に放り込まれる。甘くて酸っぱくてとてもおいしい。
「――……!!」
 そして同時にウィリアムの酷使された腰に突然の限界が訪れた。
 ガクガクと震える脚。
 星を纏うエアシューズで駆け抜けたバレンタインが、異変に気がつき目を丸くする。
「さあ、わるい青い鳥をやっつけるぜ! ……ってワー!? ウィリアム!? だいじょうぶ!?」
「くっ! 見えない攻撃をされたのですねっ!? おのれ、青い鳥さん!」
 てーれってれーっ!
 加護を持つ強烈な赤と青に点滅する光を放つピリカ。重ねてユルが瞳を閉じた。
「――そう、もっともっと。燃やして、焦がして」
 ユルより赤々と咲き乱れる真紅のバラ。
 嘯く赤い花。望む幸福を源に甘い甘い幻想の花は前衛に加護を与える。
 加護を受け、なんとか崩れ落ちる事は回避したウィリアム。
「いいや、……何とも無ェよ!」
 肺から絞り出すように息を吐き、身を低くしたウィリアムは斬霊刀で空を薙ぐ。
 吐き出された斬撃は、霊体のみを裂く鋭い一撃だ。
 女性の重さで腰を痛めたなどと、言える訳も無い。彼は紛れもなく漢なのだから。
 それに、溺れる者にとっちゃ藁なのだろうが――。
「俺らはそうですかと見過ごすワケにゃいかねェんですよ、残念ながらね」
 ――幸せになりたい人の気持ちを壊す事は許せない。
「不幸をばらまくのは、ダメなの」
「紅葉の赤に青い羽根は、映えてとっても綺麗なんだけれどね」
 カリーナが地を蹴ると同時に、シーレンがタイミングをずらしてエクスカリバールを投げた。
 翼を大きく広げた青い鳥が何とか蹴りを避けるが、その先にはシーレンの一撃が待っている。
「幸せの対価、ですか」
 微笑ましい肩車と言う光景が一瞬で地獄に変えられた姿に、澪は小さく胸を痛めながらも囁く。
 澪がきゅうと強く大弓を握り直した瞬間に、青い鳥からモザイクが吐き出された。
「っ!」
 攻撃を庇った花嵐が地に叩きつけられ、ニーレンベルギアの花弁が散る。
 たおやかな笑みは絶やさず、澪は青い鳥を睨めつける。
「少しだけ、痺れますよ……!」
 紫電がピリと弾け、神をも殺すウィルスが吐き出された。


 鳥仮面の助手の白衣がはためき、どこからか飛来した綺麗な花束がその腕の中に抱かれる。
 カリーナがステップを踏んだその瞬間、口金が壊れて中身がぶち撒けられる財布。
 辺りには割れたウィリアムの新品の双眼鏡。どこかから落ちてきた恐らく当たりのくじ券。
 美味しい木の実や、美味しい焼き魚も散乱している。――ケルベロスたちと青い鳥の戦いは、熾烈を極めていた。
「……これはかまぼこと美味しいごはんを食べるためのお小遣いなのに……」
 稲妻の如く駆けたカリーナの突き。
 かまぼこが魚を美味しく頂く横で、はじけ飛んだ小銭に一瞬だけ悲しい視線をカリーナは送る。
 戦闘はお金を拾い集める暇も与えてはくれない。
 小さな獲物を狙い、樹の幹を蹴って跳ねる。突きに合わせる形で螺旋掌を叩き込んだシーレンは、はたと気づいた。
「……あれ? コレってもしかしなくても後衛で射撃してると触れなくて不幸ばかり来ちゃう感じ?」
 そのまま彼女は綺麗な虹を見つけ、空中で一回転して着地する。
 事実。攻撃を庇うディフェンダーのピリカとサーヴァントたちは良い事が沢山訪れていた。
 ピリカを覆うオウガメタルが硬化し、一歩踏み込んで振り抜いた拳。
 青い鳥からモザイクが吹き出し、ピリカはそのまま踏ん張り損なうまま転倒する。
 しかし何故か森の動物さん達が集まって葉っぱのクッションを作り出して貰い、衝撃を軽減されたピリカが紅葉の中から顔を出し、驚いた表情を浮かべた。
「あっ、本当です! 私にはっぴーかむかむしていいます……っ!?」
「青い鳥さんも疲れてきている様ですし、倒してしまえば不幸の連鎖も終わるはずです……!」
 そう言ったメディックの澪は、避けた先で石を踏んで転んだりと散々な姿だ。
 ――花車、賦活。
 ピリカに掌底を叩き込んだ澪の掌より白い花弁が散る。
「じゃあ、そろそろ終わらせましょうかね」
 ウィリアムが掌にグラビティを揺らめかせて言った。
 的は小さいが、こちらには仲間という手数がある。合わせた目線はぴたりとエピと交わされる。
「日本じゃ、こう言うんだろ? 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ってさ。さあ、下手な鉄砲を乱射してやろうじゃねェの」
「わかりました! ウィリアム様の下手な鉄砲を合わせて下さいね!」
 エピがにんまりと笑い、やればできると信じる心が膨れ上がった。
 ウィリアムの携えた二本差しが光を纏い、エピの拳に将来性が高まる。
「――Truth, the daughter of Time!」
「いきますよっ!」
 光が薙いだ。同時に叩きつけられる伸びしろを感じられる強い一撃。
 叩き込まれざまに青い鳥がピィと鳴くが、チャンネルが服裾をはためかせてエピに抱きつき庇った。
「ようし、これで最後にしてやろう!」
「ええ、さあアナタも。――紅葉にも負けない鮮烈な赤、幸せの使者さんにもうつして差し上げて」
 ユルの言葉に助手が頷く。
 ぴいんと伸びた大きなウサギの耳。手に握られた銃の四葉マークが夕陽に映える。
 吹き抜ける風は追い風。
「臆病風に、吹かれろよ!」
「――おやすみなさい」
 ユルの放った紫電が青い鳥を捕らえ、吹き抜ける風はバレンタインの弾と成る。
 重ねて燃える炎はごうと音を立て。
「ぴ……っ」
 力つきて落ちた青い鳥は、バラバラとモザイクとなり溶け消える。
 後に残るのは、風の音だけだ。
「わるい青い鳥をやっつけたぞう! みんな、おつかれさま!」
 わあと跳ねたバレンタインの頭の上で、ファミリアの青い鳥がふてぶてしく頷いて見せた。


「……だいじょうぶ? 風邪はひいてないか? おれのマント、あたたかかったでしょう?」
 目覚めた青年に視界に一番に飛び込んできたのは、大きなうさぎの耳を持った少年。
 そして、次に目に入ったのは自らを温めるように座るサーヴァントたちと鳥籠であった。
 上半身を起こし、花嵐を膝の上に丸めたまま青年は首を揺する。
「……俺は……」
「――うーん、こういうのは、幸運に頼ったらいけないと思うんだけれどね」
 ううん、でも、色々事情があるんだろうけれど、とシーレンが首を傾げる。
「童話青い鳥の教訓は、自身の身近にある幸せを見つけられる目を持て、らしいですよ」
「幸せは何かに頼るんじゃなく、自分の力で掴み取るものですっ!」
 青年の手をひくウィリアム、どやっと言い切ったのはピリカだ。
 彼女は戦闘中に拾った美味しい木の実を大漁にその腕にかかえていた為、説得力は半分かもしれないが。
 サーヴァントたちにまで見上げられると、言葉を噛み殺して困ったように青年は笑った。
「……ああ、すまない。――ありがとう。それに、このマントも」
 バレンタインがマントを受け取り大きく頷き、にーっと笑った。
「どういたしましてだぞう! さあ、おうちにかえろうぜ!」
「苦しみは主観次第だと思いますよ。もちろん――幸運も、です」
 ユルが助手と一緒に歩きだし、頭の上に載せたかまぼこにカリーナは語りかける。
「帰り道は紅葉狩りとバードウォッチングしたいの。一緒にきれいな鳥をさがしてほしいの」
「おっけーっ! 綺麗な鳥さんを沢山捕まえちゃいますよっ!」
「あっ、つかまえるのはダメなの……!」
 真似をしてプリムを頭に載せたピリカが言い、少しだけ慌てたようにカリーナが言った。
「――本当に、綺麗な紅葉ですね」
 花嵐を抱いた澪は呟く。
 見上げる空は赤く。燃えるように葉を揺らす木々は森を照らす灯火のように見えた。
「真っ赤な葉を見ていると、炎みたいで……」
 ぐう、とエピのお腹がなった。
「焼き鳥がたべたくなりますねっ!」
「あっ、た、食べるのもダメなの……!」
 慌ててカリーナが言った。
「……では帰りに美味しい山の幸も探しながら帰りましょうっ!」
 元気に宣言したエピの横で、チャンネルはすでにキノコを拾いながら歩いている。頼れる寡黙なタフガイである。
「……」
 燃えるような木々を眺めて、バレンタインは思う。
 やっぱり、だれかが不幸になるなら、ホンモノのしあわせじゃないと。
「おれは、やっぱり、みんながしあわせになるのがよいなあ」
 マントをつけ直して、バレンタインは歩きだす。
 ぴいと頭の上の青い鳥が鳴いた。

作者:絲上ゆいこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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