忍軍の屍隷兵~我が研究の礎

作者:あき缶

●バブルの跡地にて
 作りこそ豪勢だが、非常に寂れている、山際に建つ高級そうな邸宅。この豪邸は、おおかた主が経済の波に乗り切れずに打ち捨ててしまったのだろう。
 見捨てられた邸宅の地下で、恐ろしい実験が行われていることを、まだヘリオライダー以外の誰も知らない――。

 遠雷が聞こえる中、男の低い笑い声が地下室に響く。
 彼が対峙していたテーブルにシーツを引いたような手術台の上に寝ているのは、人間だったもののようだ。
「……よし。……既に屍隷兵作成方法については確立出来たと言えよう……。知性がなくなってしまうのは……良し悪しだが」
 ぶつぶつと男は呟きつつ、血まみれのゴム手袋のまま、なにやらノートに書き込む。ノートを持つ手は無骨な機械で出来ていた。
「……だが、目的はあくまで機械人形兵士の完成だ……。今はアダムス男爵の指示に従ってはいるが、私はこんな屍隷兵ごときで満足できないな」
 血染めの白衣に、深緑の手術着を着て、さながら外科医の彼の表情は、眼鏡が蛍光灯に反射してよく見えない。だが、笑っているようだ。
 彼の周りにごろごろと何かが転がっている……否、これは彼が作り上げた屍隷兵――!!

●冥龍は死して屍隷兵を残す
 死んだ冥龍ハーデスが残したヘカトンケイレスを倒し、ようやくハーデスの遺物たる屍隷兵はすべてケルベロスで処理したと思われていた。
 香久山・いかる(天降り付くヘリオライダー・en0042)が新たなる屍隷兵の情報を持ち込んだのは、その矢先であった。
「螺旋忍軍の仕業や」
 いかるは眼鏡を光らせ、指をくるくると螺旋に振った。
「螺旋忍軍は、ヘカトンケイレスを鹵獲して、新たな屍隷兵を作り出す技術を会得したらしい。……まぁ、月喰島におったような、知性のあるタイプは作れてないみたいやけど……」
 ただ闇雲に暴れるタイプであれば、既に作り出せているという。
「僕らは、作った屍隷兵が運用に耐えうるかの最終テストとして、襲撃事件を計画してる情報をキャッチしたんや。それから、この屍隷兵の材料として拉致られた一般人の居場所とか、研究を行ってる螺旋忍軍の情報も予知できてる」
 これ以上、螺旋忍軍に屍隷兵を量産させるわけにはいかない。このまま研究を放置しておけば、螺旋忍軍は、より強い兵の製造も可能にしてしまう。
 メモを見ながら、いかるは続ける。
「……僕からの依頼は、ドール・マスターっちゅう名前の螺旋忍軍の撃破や。こいつは研究者で、廃屋を研究施設にしてるから、研究施設の破壊もお願いしたい」
 ドール・マスターは打ち捨てられた豪勢な洋館の地下――昔はガレージに使用していたであろう空間――を改造し、研究施設にしているようだ。
 あくまで研究施設は地下なので、廃墟となっている豪邸の外見からは露見しないようになっている。
「場所は高級住宅街になってる地域の山の上。住宅街の中でも一番高いところにあって、周囲に民家はないから、周囲への影響は考えなくても大丈夫やで」
 標的であるドール・マスターは、自らも機械の左腕をメインに戦うことができるが、あくまで研究職のためか四体ほどの屍隷兵を護衛につけている。
「屍隷兵はかなり弱いし知性もないさかい、タイマンで戦っても押し負けることは無いし、策を弄することもないと思うわ」
 せやけど、といかるは忠告する。
「ドール・マスターに君らと戦う義理はない。最も大事なものは研究の結実やからね。奴は何とかして逃げようとするやろうから、そこらへんは気をつけてや」
 研究所はドール・マスターが作り上げたもの。ヘリオライダーも気づかなかったような場所に脱出口を作っている可能性はゼロではない。
 彼の逃走には十二分に気を使うべきだろう。
「屍隷兵の材料は生きた人間……こんな酷い計画放って置けるわけあらへんよな。もし今回の企てがうまくいってしまったら、螺旋忍軍は屍隷兵を他の陣営にも売り込む気かもしれんけど、これ以上、デウスエクスの戦力増強なんてさせられん。皆、頑張ってや!」
 いかるはいつも以上に真剣な面持ちで、ヘリオンに乗り込むケルベロスを励ますのだった。


参加者
ペテス・アイティオ(また笑顔を取りもどすといいな・e01194)
シヲン・コナー(清月蓮・e02018)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)
ヒエン・レーエン(火守・e05826)
アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)
葛西・藤次郎(シュヴァルツシルト・e22212)
宵騎・ミカルド(水葬グリムリーパー・e33529)

■リプレイ

●眼中にない
 ケルベロスは豪邸に突入するやいなや、地下室へと続く階段を駆け下りる。
 そして厳重に鍵がかかった鉄扉を前に、
「行きましょうか」
 と宵騎・ミカルド(水葬グリムリーパー・e33529)は仲間に振り向き、声をかけた。
 頷きと同時に鉄扉は破壊される。
「たまにゃ螺旋忍者らしいコトやっとくかぁ。ってなワケでボコりに来たぜ、螺旋忍軍!」
 巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)の大音声に、
「ちっ」
 舌打ちとともに螺旋忍軍のレブナント研究者、ドール・マスターは血しぶきを飛び散らかせながら、入り口へと振り向いた。
「もう一体くらいはなんとか記録できると思ったが……。思ったより、早かったな」
 手術台の上に乗っている肉塊は、施術途中の屍隷兵か――まだ人間かもしれないが、もう手遅れの状態か。
「一般の人を拉致して改造……いかにも螺旋忍軍ぽいですよね」
 巨大なカーディア・クローウィの取り回しに苦労しつつ、ペテス・アイティオ(また笑顔を取りもどすといいな・e01194)は冷ややかにそれを見た。
 ケルベロスは冷静に、鉄扉を背に半円状の陣形を取る。ドール・マスターを逃すまいという姿勢を露わにする。
「はぁ、流石に玄関から出してくれるわけもないか」
 ドール・マスターはため息を吐くと、血まみれのラテックス手袋を脱ぎ捨てた。
 そして機械の手から重力振動波をケルベロスに浴びせた後、悠々と資料をまとめ始める。
「相手をしておけ、時間くらい稼げるように作ったはずだ」 
 指令を受け、うずくまっていた屍隷兵がのっそりと立ち上がり始めた。
 呻き声と共に、屍隷兵はケルベロスに牙をむく。
「私利私欲の為に生命を弄ぶ様には反吐が出そうだ。全知全能の神にでもなったつもりか?」
 唾棄すべき敵の様子に、シヲン・コナー(清月蓮・e02018)はオウガメタルの輝きと同時に不快感をあからさまに放つも、ドール・マスターはこちらを気にもしてくれない。
 ボクスドラゴンのポラリスは自分自身に属性をインストールし、これから始まる戦いに備える。
「逃げても無駄だ。貴様の逃走ルートは既に把握済みだ。逃走先にも別部隊の仲間が待機している、諦めるんだな」
「何処に逃げる気だい? 逃走経路を俺達が把握していないとでも?」
 シヲンや葛西・藤次郎(シュヴァルツシルト・e22212)が言ってみるが、せせら笑いだけが返ってきた。随分自分の逃走ルートに自信があるようだ。
「叩き潰します、欠片も残さず!」
 アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)は厳しく言い、イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)へと鎧となりし御業をまとわせた。
 イブはドラゴニックハンマーから弾をバラ撒いた。
「おいで、お人形遊びに付き合ってあげる」
 レブナントの足に多数の穴が開く。
「キミの運命もこれまでだ、人形遣い。観念してくれるなら話は早いんだけどね?」
 エアシューズにて炎をレブナントに与えながら、藤次郎は更にドール・マスターを挑発、否、降伏を促してみる。
「無駄な会話をする趣味はない。観念などするはずもないと思いながら、そんな事を言うのは、無駄の極みだとは思わないのか?」
「……最後の時の幕を引くとしようか」
 ドール・マスターの指摘は間違っていない。藤次郎は肩をすくめた。ボクスドラゴンのヴァイスリッターのブレスがレブナントを灼く。
 ペテスが投擲したバールがレブナントを強かに打つ。
 レブナントは近くにあったらしきレンチを投げ返してきた。
「うぶッ!」
 ペテスの顔面にクリーンヒットするレンチ。続けてトンカチ。
「か、かおはダメです……かおは……」
 激痛に鼻を押さえて俯くペテス。すごく痛いし鼻血が出た。
 次々にレブナントは工具や手術道具を投げてくる。アイヴォリーと藤次郎が体を張って受け止め、次の鼻血被害者は出ずに済んだ。
 ぶぉんと風を切って、レブナントの手足が真紀の体を殴打する。
「ぐ……、じゃあ、お返し行くぜ! オレのダンス、見てけよっ」
 真紀は指輪から戦輪を具現化し、レブナントの身を切り裂く。
「行かせてもらおうか」
 初めの丁寧な口調はどこへやら、厳しくミカルドは宣言し、ブラックスライムでレブナントを嚥む。
 部屋を回って資料をカバンに詰め込んでいくドール・マスターの手を、掴んだ資料ごと轟竜が砕く。
「危ないな」
 ひらひらと機械の手を振り、ドール・マスターは砲撃の方向に首を巡らせた。
「危なくしてるからな」
 ドラゴニックハンマーを担ぎ、ヒエン・レーエン(火守・e05826)はドール・マスターと真正面に睨み合った。
 ヒエンの尻尾を地獄にしたのも『研究者』だった。
 だからヒエンは『研究者』というものに良い感情がない。
(「どいつもこいつも被験体にした相手のことなんてどうでもいい、自分の研究成果しか考えてない奴ばかりだ」)
 ヒエンの目に怒りの炎が宿る。
 ここで叩き潰さなくては。

●心中にない
 ドール・マスターは己を分身させ、ケルベロスを撹乱しようとしてくる。
 アイヴォリーは冷静にメタルの輝きを前衛に分け与える。
 シヲンはぺテスに祝福を与えて、鼻血を止めてやる。
「鼻血が一番出血の中ではダサいですから、助かりましたよぅ」
 ペテスはゴシゴシと鼻を拭いて、人心地ついたらしく、微笑んだ。
 次に飛んできた巨大ナットをポラリスが受ける。
 予想以上に痛かったらしく、ポラリスはキュッと悲鳴をあげて、地面に落ちた。
「あっ、ポラリス!」
「きゅぅ~」
 ポラリスは目を回しているが消えてはいないから、まだ戦えるようだ。
 魔導書を開き、ペテスはレブナントを石に変えた。
 藤次郎の蹴りとヴァイスリッターの封印箱がレブナントの骨身を砕く。
 イブが、引き出しを漁るドール・マスターの背を強かに蹴った。
「随分と余裕だね」
 無表情で見下ろすイブに、ドール・マスターはせせら笑いを返し、なにやら言おうとしたが、ヒエンの竜の爪が彼の分身を薙ぎ払ったので、興を削がれたように憮然とする。
 真紀の冷凍光線がレブナントを凍らせ、ミカルドの螺旋が凍りついたレブナントを破砕した。
「っし、これで二体やっつけたな!」
 真紀がグッと拳を握る。
 ドール・マスターは、イライラと髪を掻き回し、怒鳴った。
「えぇい脆い!!! 使えない連中だ。やはり屍隷兵という存在は出来損ないなのだ。やはり、私が目指す機械人形のほうが数段優れている!」
 そして八つ当たりのように氷結螺旋をヒエンに打ち込まんと投げる。
 しかし、アイヴォリーが馳せてヒエンの前に立ちはだかり、代わりに螺旋をその身に受けた。
「此方にも、譲れないものがあるのです。さあ、続けましょう?」
 凍りつくような激痛を押し殺し、鮮やかに微笑んだアイヴォリーは優雅に言ってみせる。
 畳み掛けようとアイヴォリーにレブナントが雪崩うって殴り掛かる。
「それはこっちだ」
 全て藤次郎が受け止めた。ヴァイスリッターのブレスが、主に狼藉を働いた敵にかかる。
 藤次郎は偉大なる魔女を喚び、戦線を支える。
「星に棲む魔女、次元を超越せし者よ、その御業を持って我らに癒しを与え給え」
「ハウリングフィストぉ!」
 ペテスは技名を叫びながら、レブナントに音速ドロップキックをかました。実状と台詞が違うが、ご愛嬌である。
 続いてポラリスの封印箱がレブナントの頭蓋をへこませた。
 シヲンの撒き散らす紙兵はアイヴォリー達を取り巻いて、優しく傷を癒やす。
「おら、トドメだ、たっぷり食らいな!」
 真紀は鋼の鬼と化し、踊るようなステップでレブナントに拳を叩き込み、砕ききった。
(「これで、ディフェンダーの屍隷兵は全滅……」)
 ならば、本丸を叩く時。
「ねえ」
 イブは淡々と感情無く、ドール・マスターに声を駆け、そっと手を伸ばす。
「お人形遊びがご趣味のマッドサイエンティストさん。その唇、食べちゃってもいい?」
 白薔薇の毒の唾液を流し込む、死の口づけ――。
「良い訳がない!」
 だが、キャスターたるドール・マスターはその危険なキスを拒絶した。
 飛び退き、ドール・マスターは視線を走らせる。
「どこへいくつもりだ」
 螺旋忍軍の視線には注意を払っていたミカルドが、視線の先にあった壁の前に立つ。
 ミカルドが解き放ったブラックスライムの大口をかいくぐり、ドール・マスターはカバンを背負う。
「ここで終わるわけには行かない。科学は進歩する! その歩みを止めるわけには!」
「逃げれば名は墜ち、立場も悪化。屍隷兵の研究、下手すれば前線に駆り出され、機械人形兵士の研究どころではなくなるだろうな。それでも逃げるか?」
 轟竜砲でミカルドの背の向こうにあったスイッチをヒエンは砕き、言うと。
「ハ、知ったような口を利くな!」
 と怒声が返った。

●胸中にない
 ドール・マスターの生身の方の掌が、ミカルドに触れる。
「がはっ!?」
 軽く触れただけなのに、内臓が破裂したような激痛がミカルドを襲う。たまらず大量に吐血し、体をくの字に折るミカルド。
「邪魔だ」
 ドール・マスターはそのまま、ヒエンが砕いたスイッチの奥に手を伸ばそうとする。まだ回路は生きているのか。
 だが、
「させませんよぉ!」
 ペテスが音速で殴り砕いた天井により、壁を瓦礫が埋める。
「小賢しいマネを……」
 ギリギリとドール・マスターの歯がきしる。
「貴様はただの人でなし。あの世で犠牲者に詫びでも入れるがいい。最も貴様が行くのは地獄だろうがな」
 シヲンはミカルドに祝福の矢を打ち、ドール・マスターを睨む。
「ハ、詫びなど……礼を言ってほしいくらいだ。研究の礎になれて光栄でしたとな」
 一体残ったレブナントが、ドール・マスターに取り付こうとしたポラリスを殴りつける。
「逃さないぜ。堕としてあげる」
 イブの足がドール・マスターを地面に叩きつける。
 いつの間にかケルベロスは螺旋忍軍を取り囲むような陣形に変わっていた。
 アイヴォリーの輝くオウガ粒子がケルベロスの感覚を研ぎ澄ませる。
「それ、砲撃開始だ」
 藤次郎とヴァイスリッターも竜砲弾とブレスのコンビネーションでドール・マスターの動きを封じていく。
「備えろよ。格上ブッ殺すにゃまずは命中率だ」
 ミカルドめがけ、真紀はガンメタリックパープルのミストを放った。快楽エネルギーがミカルドを癒やしながら、支援する。
 数々の支援を受け、ミカルドが投げた螺旋はドール・マスターの左肩を穿った。
 ヒエンの竜化し、朱色の鱗に包まれた腕が、敵の傷ついた肩を抉り裂く。
 ガランと大きな音がして、ドール・マスターの機械の腕が落ちた。
「くっ……! 格下が、生意気な真似を……!」
「この身もまた竜、という事さ」
 ヒエンは満足げに目を細めた。
「あの腕は傑作だった……それを!」
 低く唸り、ドール・マスターは螺旋を再び放った。
 重い音がして、ヒエンの胸に深々と螺旋が埋まる。
「これでも医者だ。一矢も報いさせるわけにはいかないな」
 シヲンの祝福の矢がヒエンを支え、アイヴォリーも御業でヒエンを包み護る。
「アルミ缶の上にあるミカン! アスパラ食べれば、明日パラダイス!」
 ペテスの『心あたたまるオラトリオの名言』が、ドール・マスターの内部固有振動数と共振。
 ドール・マスターは内から崩壊していく。まさか寒いギャグで死ぬなんて。
「こ、こんな……阿呆みたいな終わり方があるか……あってたまるか……!」
 目を見開き、心底悔しげな螺旋忍軍に、イブはキスで引導を渡す。
「恋人よ、枯れ落ちろ」
 唇を伝って猛毒がドール・マスターの生物部分に染み渡り、崩壊を促進させる。
 ぐずぐずと溶け落ちるドール・マスター。虚しい最期であった。
「地獄にすら、行けたのか疑わしいな……」
 シヲンは憐れむように、液状化したデウスエクスを見やった。
 たった一体残った屍隷兵は、知性が無いゆえに悲しくも撤退という考えに及ばない。
 猪突猛進、愚直に暴力を真紀へと向ける。
 それを華麗に側転で避けると、真紀はトンボを切って、くるりとバスターライフルの銃口をレブナントに押し付ける。真紀が扱うと、バスターライフルという長物もまるでダンスの道具のように見える。
「そら、ラストダンスだ!」
 引き金を引くと同時に、猛烈な冷凍光線がレブナントの活動を永遠に止めた。

●手中にない
「どうやら終わったね」
 藤次郎が安堵の息を吐く。逃亡を阻止できて、上場の首尾である。
「さーてと。ここぶっ壊すまでが今回の仕事ってコトだよな」
 溶け切って生命のスープの残骸と化したデウスエクスの上を跳び越え、真紀はカバンからプリントを取り出し、目を通すも直ぐに放り出す。
「ダメだ、コレとか何書いてあんのか全然わかんねー」
 どれもケルベロスには理解できない研究内容であった。
「とっとと片しちまおうぜ」
 研究成果から何か読み取れないかと調べていたペテスやミカルド達も、目ぼしい情報は得られなかったようだ。
「ええ、完全な破壊を!」
 アイヴォリーが頷く。
「じゃ、始めるぜ」
 イブの轟竜砲をきっかけに、ケルベロスは一斉に研究所の施設を粉砕していった。
「屍隷兵技術の再現を試みるなんて無駄だと、ケルベロスが叩き潰しに来ると、思い知らせてやれたか」
 屍隷兵の作成には虐殺が伴う。ヒエンはこの成果によって状況が良い方向に続くことを願った。
「当面はこれで大丈夫かな?」
 藤次郎は呟くも、ぞわりと何か不穏を感じるのを否定できないでいた。

作者:あき缶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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