にゃんにゃん猫又・にゃんにゃんにゃん

作者:あずまや

「どうもこんばんは、ホーティーティーヴィーのケイです!」
 少年は赤いランプの点灯するカメラに向かって、ひとりで大声をあげている。
「今日の動画なんですけど、最近ぼくの周りで噂になっている事の検証動画になりますねえ。なんでも、猫の群れの中に猫又がいるんだとか。さっそく、行ってみよう!」
 彼の声が陽気にそう言った瞬間、何かが彼に突き刺さる。
「猫又、ねえ。わたしのモザイクは晴れなかったけど、その『興味』、とっても興味深いね」
 彼の心臓に、第五の魔女・アウゲイアスの鍵が突き刺さっている。
「猫又って、こんな見た目なのね」
 猫又は、おああ、と一声鳴いた。

 高松・蒼(ヘリオライダー・en0244)は口先を尖らせる。
「動画サイトに自分で撮った動画を投稿していた少年が襲われたみたいやな。1人で夜中に危険なところに行くもんやないなあ……」
 蒼はゆっくりと息を整える。
「ティティス・オリヴィエ(蜜毒のアムリタ・e32987)さんが予測した通り、猫の群れの中に猫又がおってん。……いや、実際にいたかどうかは分らんけどもやな、アウゲイアス言うドリームイーターによって具現化されたんや。アウゲイアスは魔女集団『パッチワーク』のメンバーなんやが、そいつは既に帰ったあとや。猫又を倒せば、ドリームイーターに襲われた少年は目を覚ますはずや」

 蒼は頬杖を突く。
「少年が襲われたんは廃墟街の一角や。昼ならまだしも、夜は人の気配なんぞありやせん。不意の通行人に気を付けておく必要はあるかも知れへんが、基本的には気にせんでも良さそうや。派手にやったってくれ」
「猫又は、本人が猫にしてはデカいことに気付いているらしい。この手の未確認動物型のドリームイーターは、おのれが何者かを知りたいがために、噂をしている奴のところに行って、自分の正体を確認しようとする習性があるみたいなんや。なんかの作戦の役に立つとええけど……あいつ、ことば分かるんかいな」
「猫又の攻撃についてはよう分かれへん……見た限りでは、猫とだらだら戯れていただけや。一般人が犠牲になってへんかったら、こっちから出向いて倒すまでのこともないかもしれんと思うくらいや。せやけど、ドリームイーターはドリームイーター。撃破して、少年を助けるんや」

「猫又言うんは、想像上のバケモンや。温厚そうにしとるが、キレたらどないなるか、想像もでけへん。どんなにかわいい顔しとっても、猫又は猫又、敵は敵や。そのことだけは、忘れんといてくれ」


参加者
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
小鳥遊・優雨(優しい雨・e01598)
シェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)
アイル・フェーリス(黒狼とラブラブ・e02094)
柊・乙女(黄泉路・e03350)
アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
ティティス・オリヴィエ(蜜毒のアムリタ・e32987)

■リプレイ

●ケルベロス・ティーヴィー
「最近この辺に猫又が現れるらしいぜ」
 草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)はシェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)とアイル・フェーリス(黒狼とラブラブ・e02094)に語り掛ける。ケイ少年がやっていたのを似せた、まったく架空の番組撮影だ。小鳥遊・優雨(優しい雨・e01598)はカメラを構えてはいるが、あくまでもこれはポーズ、映像記録に残すつもりはないらしい。
「猫さんじゃなくて、猫又さんですか」
 シェナは「あらあら」と笑う。
「そういうわけで、猫には猫で、猫の専門家、アイル」
「私は猫の専門家じゃなくて猫のウェアライダーにゃんだけど……」
「でも、オラトリオよりは猫に詳しいだろ」
 まあ、とアイルは額を掻いた。
「猫は夜集会を開くっていうの、アレは一体、なんなんですか」
「あれは井戸端会議にゃ」
 シェナの疑問に、アイルは流れるように話し始めた。
「猫っていうのは、昼間はその辺でごろごろしてるでしょ? そんで、夜はみんなで集まってごろごろするのにゃ」
「結局ごろごろしてるのかよ」
 あぽろは、ふっ、と噴き出した。
 4人のやや後ろで、アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)も猫談義をしている。だがこちらは猫又の話ではなく、家で飼っている猫の話らしい。
「なあリューデ、いいよね、猫拾って行ってもさ」
「うちにはくろたまがいるだろ」
 リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)は頭をがしがしと掻いた。
「でもさ、僕たちがこうやって戦いに来ているときも、猫がいっぱい居れば寂しくない」
「んー……」
 アルベルトのことばに、リューデはやや気おされながら、それでも難色を示しているらしい。
「猫は猫でも、猫又。猫又は猫又でも、デウスエクス……」
 柊・乙女(黄泉路・e03350)は「人を攻撃するものが、人を想うものの形をするとは」と首を傾げた。ティティス・オリヴィエ(蜜毒のアムリタ・e32987)は「見つけたら、写真撮ろうよ、一緒に」と乙女に持ち掛けたが、小さく「私は結構」と一言で抑え込まれてむくれた。

「おおい」
 低い声がした。
「んにゃっ!?」
 先頭を行っていたアイルが、真っ先にその存在に気が付いた。
「いたーっ!」
「うるさいのぅ、でかい声出すんじゃにゃあて……すっかり夜じゃぞ、もう」
 猫又のあまりの落ち着きぶりに、並んでいたシェナが「ごめんなさい」と頭を下げる。
「なあ、ちょっとお尋ねしたいんじゃが」
「はい、なんでしょう」とアルベルトが前に出る。さらに控えめに、リューデがそこについて、うつむき気味に前に出た。ぞろぞろとケルベロスが現れたのを見て、猫又はいたく驚いたらしい。
「おうおう、えらい人数じゃのう。祭かや」
「祭ではありません」
 優雨はカメラを下げて、猫又を見た。腰の高さほどのところに顔がある。猫にしては随分大きいが、ドリームイーターだと思えば可愛い大きさだ。興味のレベルは大きかったのかもしれないがサイズは優しくなっていて、ケルベロスたちは胸をなでおろす。
「みんな、あなたを探していたのです」
「わしを?」
 猫又が、へへ、と笑った。
「そりゃあ、ご苦労なこって」
 おああ、と鳴く。
「聞いて、いいかの」
 彼はぎょろりとした目玉で、ケルベロスたちを見た。
「どうぞ」
 リューデのことばに、猫又は「わしは、何者なのかの」と聞いた。
「猫、だな」
 ティティスは自分自身を納得させるようにうなずいた。
「そうですね、猫さんでしょう」
 シェナもそれに同意した。
「せっかくなんで、撫でても、いいですか?」
「おい」
 前に進み出たシェナの腕を、乙女がつかんだ。そして耳元で「デウスエクスだぞ」とささやいた。「大丈夫ですよ」とシェナは笑う。優雨のボクスドラゴンであるイチイなど、彼の背の上をすべり台のようにして遊び始めている。猫又は、それでも妖怪らしく肝の据わった顔で、ケルベロスたちを見下ろしている。
「しかしのう、猫にしては、ちと大きすぎんかの」
 彼が首をかしげると、毛がもふりと揺れる。
「それ、猫又っていうんでしょ? 僕知ってるよ、二十年以上生きた猫がなる妖怪なんだって」
 アルベルトの声に「猫又かあ」と彼はうなって見せた。
「そんなに生きたかのう、記憶も、ないのう」
「尻尾が二股に分かれているだろう。それが猫又の証。不思議な霊力を持つと聞いている」
 リューデのことばに、猫又の尻尾が左右ばらばらの動きを取る。
「ほうほう、そうかそうか……」
 猫又は何かに納得したように、うなずいた。
「そりゃあ、そこいらの猫とは違うわいな」
「かっこいいにゃ……」
 アイルは二十歳越えの猫とは思えないその猫又の毛艶を、じっと見ていた。
「おう、嬢ちゃん、見る目あるのう」
 猫又は愉快そうに笑うと、ふう、と息をついた。
「猫又、猫又」
 彼はそういって満足そうに振り返る。
「ありがとさん」
「ちょっと待ってほしい」
 リューデは声をかけた。
「なんだいな、若いの」
「その高い霊力のあなたに、ぜひ手合わせを願いたい」
「手合わせ」
 猫又は、首を傾げた。イチイが滑り落ちて、優雨の元へと帰っていく。乙女は少年を岩陰へと運び出すことに成功している。あたりには、猫又とケルベロスだけだ。たむろしていた猫は、一瞬で湧き上がった彼らの闘志を感じてか、そそくさと解散している。
「面白い。それでわしを探しとったのか」
「そういうことだな」
 あぽろはそういうと、GODLIGHTを構える。
「よかろ」
 猫又はもう一度ケルベロスたちに向き直った。
「お前さん方全員が、相手かえ」
「はい」
 優雨のことばに、猫又は笑った。
「お前さん方が何なのかはわからんが、妖怪猫又なら、退治せにゃあ、ならんじゃろなあ」
 はっはっは、という大きな声が、あたりに響き渡る。
「わしも、死にたくはない。本気で行かせてもらお」
 彼はそういうと、むくむくとその体を大きくさせた。どうやら、今までは何らかの、猫又が持つ霊力で体を小さくしていたに過ぎなかったようだ。彼はケルベロスたちの2倍ほどの大きさになった。こうなってしまうと、大口を開けて丸呑みされれば、ひとたまりもない。
「これでも、やるというかの」
「当然っ!」
 アルベルトは猫又の眉間にリボルバーを向けた。

●でかいにゃー
「どちらが先に沈むか……勝負しようか!」
 アルベルトの銃が火を噴く。猫又はそれを受け止めて、澄ました顔をしている。
「ちと痺れるのう、変わった弾じゃ」
 優雨は剣で地面に紋様を書くと、猫又に対峙する先頭集団にその光を浴びせる。
「おうおう、やる気まんまんじゃのう、ええのう、若いのは」
「無駄口叩いてんじゃねえぞっ!」
 あぽろの剣技が猫又の体を撫でるように斬る。
「ごめんなさいっ……でも、みんなのためなんですっ……」
 シェナは光弾を射出すると、猫又の右前脚に着弾する。
「にゃあ……痺れるのう……」
 猫又は不快そうに顔をしかめる。
「まだまだっ!」
 ティティスの電光石火の脚撃が、今度は猫又の左前脚にヒットする。リューデの放った氷結の弾丸は、猫又を震え上がらせた。
「ういー、寒いぃ……猫は寒いの苦手なんじゃ……知っとろうに……」
 彼は身体を縮こまらせて、小さく固まった。
「猫又さん、ごめんなさい!」
 アイルの一撃が、さらに猫又の足元を凍り付かせる。
「沈め」
 乙女の呼び出した亡骸が、その体を地へと引きずり込もうと猫又に絡みつく。
「おわあ」
 猫又が震えながら一声鳴けば、亡霊はその足の毛をぎっちり握り込んだまま、闇の底へと帰っていった。
「よし、今度は、こっちの番だな」
 彼はそういうと、痺れる前足でリューデに猫パンチを食らわせる。
「リューデ、大丈夫!?」とアルベルトは形相を変えて驚いた。優雨はすぐさま、リューデにヒールをかけるが、リューデは思った以上になんでもなさそうだ。
「いや、大丈夫だ……」
 そういう彼は、どこかぼんやりとしている。そして一言ぼつりと「肉球」とつぶやいた。
「ったく、なんなんだ今の技っ!」
 あぽろの御符が、猫又の体をつかむ。
「なんだも何も、ただのパンチじゃが」
 彼は全身を痺れさせ、氷漬けにされながら、それでも随分と余裕のある表情を浮かべている。傷も随分負わせているはずだが、苦しそうな表情は一切ない。シェナの重たい蹴りを食らっても、なお彼の表情は変わらなかった。
「痛くないのかい」
 ティティスの鎌が、猫又の体を傷つける。
「痛いぞ」
 猫又は余裕たっぷりにそう言った。
「だがの、猫にも戦わなきゃならんときがある。それが今じゃ」
「ぐう……いいこと言ってるにゃ……!」
 アイルはぎりりと歯ぎしりをして、それから意識を集中する。
「来るにゃあっ!」
 彼女がそういうと、さっきまでここで集会をしていたであろう、そして今この戦闘を固唾をのんで見つめていたであろう野良猫たちが集まってきた。
「行け、お前たち! もふもふをもふもふにしてやれ!」
 アイルの命令で、大きな毛玉が小さな幾つもの毛玉にまみれる。辺りが、にゃあ、という鳴き声で満たされる。
「にゃーっ」と、最後の子猫の一匹がいなくなって、ようやく戦闘が再開される。それまでは猫又も、またケルベロスたちも、互いが互いを攻撃しない。ここまで紳士的なデウスエクスが、これまでいたのだろうか。少なくともビルシャナでなければ、こんな敵はまずいないだろう。奇妙な、けれど確かな戦闘が、ここにはあった。
 猫又はケルベロスたちを上からのぞき込むと、優雨をべろんと舌で舐めようとした。
「危ないっ」
 咄嗟に、乙女は跳びあがってその攻撃を代わりに受け止める。舌の力で乙女は遠くへ吹き飛ばされるが、間一髪、体勢だけは崩さずに、すぐに陣を取り直す。
「白き絶氷の主、我が愛しきともに歌おう。甘い毒は絢爛の美酒、翻る氷華の羽衣。魂喰らいの華咲かせ、仇敵を滅せよ!」
 ティティスの詠唱で、氷の精霊が辺り一面を凍らせていく。
「堕ちろ」
 リューデの斬撃が、猫又のあばらの隙間を貫く。
「最後は日向ぼっこで終いにしてやる……ちょっと眩しいかもしれねえが、一瞬だ……我慢しな」
 あぽろは手のひらを猫又へと向けた。
「喰らって消し飛べ! 『超太陽砲』!!」
 彼女の放った炎の渦は、猫又を飲み込んでいく。彼を凍り付かせていた氷も溶かし、瞬時、真冬の路地裏に、春が訪れたような陽気がやってきた。

●妖怪猫又、ここにあり
 陽気が過ぎ去れば、今度は冷たい風が吹く。にゃあ、と猫又が一声鳴いた。
「地獄行きだのう、わしは」
 はっは、と笑う彼の元に、さきほどかれをもふもふにした猫たちが集まって、にゃあにゃあと鳴きはじめた。
「これこれ、一緒に行けんぞ、こっち来たら、いかんぞ」
 彼はそれだけ言って、闇の中へと消えていった。
「んー……」
 アルベルトは唸る。
「さすがは妖怪猫又、そんじょそこらのデウスエクスとは格が違うね。見苦しくなくて、いい」
「だが、戦闘自体はあっけなかった」
 乙女は屈むと、無表情のまま、まだにゃあにゃあと鳴く猫を撫でた。
「猫はやる気ないと狩りもしないからにゃあ」
 アイルは両手にあふれんばかりの猫を抱えて、笑った。
「そういうものなんですか、猫って」
 優雨は、イチイがまた猫にまみれて遊んでいるのを、少し離れて見守っている。
「ま、妖怪退治、一件落着ってことで」
 あぽろがそう言うか言わないか、悲鳴が聞こえた。
「今度はなんだ?」
 ティティスが声のほうを見ると、そこには戦闘前に乙女の助けたケイ少年がいた。
「いたーっ! 猫又だぁーっ!!」
「え、いや、猫又はさっき倒して……」
 シェナが少年を諭そうとするが、彼は錯乱しているのか、「助けてくれぇ」と情けなく何度も繰り返す。彼が指をさしている先には、アイルがいた。
「え、私?」
「そんな猫まみれの人間がいるかっ!」
 あははは、と苦笑いしながら、彼女は手の中に抱えた野良猫たちを放してやる。アルベルトも両腕に猫を三匹抱えている。
「ねえ、リューデ、いいよね? ね?」
「……」
 リューデは頬をぽりぽりと掻いて、それから何も言わずに彼から2匹を奪い取って抱きかかえた。

作者:あずまや 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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