雪に埋もれし足跡に

作者:幾夜緋琉

●雪に埋もれし足跡に
 雪の吹きすさぶ、北海道は大雪山連峰。
 その一つの山中に、厳重装備で昇っているは、二人の男。
『な、なぁ……本当にこの山に居るのかよ?』
『わかんねえ。でもよ、この雪だ。こういった厳しい環境だからこそ、雪男はぜーったい居る筈なんだ!!』
 と叫ぶ様に言葉を交わす二人。
 ……雪男を探す、そんな些細な噂に流されてきた彼ら。
 しかし吹きすさぶ雪に歩を止められ、中々進む事が出来ない……そんな厳しい環境。
 山を登山し、更に深い所へと分け入っていく二人……と、突如、吹きすさぶ雪が、一時止む。
『……ん? なんだ? ……雪が、雪が止まったぞ!?』
 と、男が言うと共に……其の場に、がくっと崩れ墜ちる。
『お、おい、どうした……あれ!?』
 と、もう一人の男も……。
 ……そんな二人の倒れた跡には、一人の女性の姿。
 そして女性は。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 と言うと共に、二人の男の間に……3m程の、雪男の姿が産まれたのである。
 
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね? それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスににこやかに挨拶すると、早速写真を一枚。
 美しい雪山の写真……その写真を見せながら。
「この写真は、北海道は大雪山連峰という所で取られた写真ッス。今回、ケルベロスの皆さんには、こちらに向かって欲しいッスよ」
「どうやらこの山中に、『雪男』に強い興味を持った男性が二人雪男捜しに山へと行ってしまった様なんッス。そんな二人にドリームイーターが襲いかかり、その興味を奪うという事件が発生したんッスよ」
「興味を奪ったドリームイーターは、既に姿を消しているんッスけど、その奪われた興味を元西、現実化した巨大なゴリラの如き、巨大化した怪物型のドリームイーターが現れたんッス」
「このままでは、このドリームイーターが山を下り、被害を起こしかねないッス。つまり、被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してきて欲しい、って事なんッス。ドリームイーターを倒せば、興味を奪われた被害者もきっと、目を覚ましてくれると思うッスからね!」
 そして更にダンテは。
「この雪男のドリームイーターは一体のみが現れている様ッス。このドリームイーターは、基本的に雪山の上を走り回ることが出来るよう、足回りが頑丈になっている様ッスね」
「このドリームイーターは、人間を見つけようと行動している様ッス。雪山の上で声を上げたりすれば、きっとこのドリームイーターの方から接触してくると思うッスよ」
「ただ、このドリームイーター、人間に対峙すると、自分が何者かを問う様なんッス。この際、正しく対応出来なければ殺す、という行動を取る様ッス。つまり、雪男と言うと正解なんッスけど、ゴリラとか言うと怒って殺そうとしてくるんッス」
「又、このドリームイーターの攻撃手段ッスけど、その太い腕、足から繰り出す殴り、蹴りの攻撃ッス。特殊効果はないものの、一撃一撃が大ダメージをたたき出すことが出来る、危険な一撃ッスから注意して欲しいッスよ!」
 そして、ダンテは最後に。
「興味を何に持つかなんて、人の自由だと思うッス。でもその興味を利用し、化け物wお生み出し殺すなんて許すことは出来ないッスよね? という訳で、ケルベロスの皆さん、宜しく頼むッスよ!!」
 と、元気よく皆を送り出すのであった。


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)
竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)
水咲・玲那(月影の巫女・e08978)
メーリス・サタリングデイ(希望の歌・e10499)
磯野・小東子(球に願いを・e16878)
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)
黒音・小春(黒猫侍・e33787)

■リプレイ

●吹雪く中
 雪の吹きすさぶ、北海道は大雪山。
 視界一面に広がる白い雪は、寒さと共に、何だか楽しさを感じてしまう。
「ゆきー! ボク、雪好きだよっ!!」
 と、手を広げながら雪上を駆け回るメーリス・サタリングデイ(希望の歌・e10499)。
 その一方自分を抱く様に腕を組み、歯をガチガチさせながら磯野・小東子(球に願いを・e16878)が。
「う、ううううう……さ……寒いッ!! 東京じゃあこないだありえない時期に雪が降ったけど、も、もうレベルが違うよ……! う、鱗が冷えるぅぅう……!!」
 と大きく震えている。
 ……そんな小東子に、倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)とグレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)が苦笑しつつ。
「そうだねぇ……この時期の北海道って寒いんだよねぇ……」
「ええ。冬の雪山は危険といいますか、今回はまた違った危険ですよね」
「そうだねぇ……雪男、だっけ? どうせなら雪女の方がオレ的にはやる気出たかもしれないんだけどねぇ……」
 と、二人の雪男という言葉。
 雪男を探す、という噂話を信じて、厳重装備ではありながら山登りをする二人の興味を奪い、雪男を作り出したのが第五の魔女・アウゲイアス。
「今回もアウゲイアスが関わっているんですね。あの魔女たちは一体何者なのでしょう?」
 と水咲・玲那(月影の巫女・e08978)が言うと、十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)、黒音・小春(黒猫侍・e33787)らも。
「ええ、雪男ですか。季節物ですから、この季節、雪を見ると興味になる方もいるかもしれませんよね」
「そうでござるなぁ。雪男、俗に言うイエティって奴でござるよな。日本だと着物を着た雪女の方がイメージ的に合うと思うでござるが、どうでござろう」
「まぁ、彼らにとっては、雪山と言えば雪男、という事なのでしょう。分らなくもありません」
「そうでござるか……それにしても寒くて眠くて面倒臭いでござる。お腹も減って遭難しそうでござるよ……でも、真面目にお仕事しなければ、収入が無くなると困るでござる故、何とか頑張るでござるよ」
「ええ。今回の敵は素早い上に強力です。しかも足場の悪い所での戦闘になりますから、気を引き締めていかないと」
 それにグレイシア、メーリスも会話に加わって。
「そうだねぇ。ああ、これこれ。底がゴムでさ、とっても滑らなくていいんだよぉ」
「あ、それいいですねっ。ああ、でもでもっ! 今回は遊ぶんじゃなくって戦わないといけないんだよね! 張り切って頑張るよ! ね? ホッピー!」
 メーリスの言葉に、大斧を持ったテレビウムのホッピーをぶんぶんと振り回して応える。
 そして竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)も。
「やれやれ。未確認生物の小隊を探ってみればデウスエクス、なんて面白くもない。主はここで消えて貰うぞ?」
「そうですね。とても攻撃衝動が強そうですから、被害が出る前に何とかしないといけませんね」
「ええ。街へ降りる前に、ここで食い止めていきましょう」
 そんな仲間達の言葉に頷き、そして雪山を見上げると共に、吹雪く雪山を登り始めるのであった。

●雪晴れた後
 そして、吹雪く山中を昇るケルベロス達。
 ……暫し進んで行くと、更に更に寒さを覚えていく。
「……さ、寒い寒いぃいい……い、いくら。ちょっとっ!」
 と小東子は自分のテレビウム、いくらを呼んで、ぎゅっと前に抱きしめて、どうにか暖を取ろうとするが……そこまで寒さに変わりは無い。
 そんな寒さを紛らわそうと、泉が。
「確かに寒いですしねー……そうだ、メーリスさん、冬の唄は何かありましたっけ?」
「え? 冬の唄ー? うーん……そうだねぇ、定番だと雪やこんこ、とかかなー?」
「確かに冬の唄の定番ですよね。それではそれを唄いながら歩くとしましょうか」
 と唄いながら歩く泉。
 ……なんとなく、寒さがほんの僅か、和らいだ様な気もする。
 とは言え、吹きすさぶ風がぐんぐんと体力を減らしていく訳で……寒さに耐えながら、どうにか山を登っていく。
 ……そして、暫し山を登り続けていくと……不意に、吹雪く雪が止む。
「おっと……雪が止んだねぇ。となると、近くに居るのかなぁ? それじゃあ」
 とグレイシアはメガホンを取り出し。
「ゆーきおーとこー、出ておいでぇぇーー」
 と。
 その言葉が雪山に響く、二度、三度と声を上げて、雪男を呼ぶ寄せる。
 ……すると、ぐ、ゥゥゥ……と、唸り声が響く。
 そして……その唸り声の方へと歩を進めると……現れる雪男。
『グオオオオ……!!』
 と巨体の雪男が唸り、そして。
『ワレ……ナニゾ……!!』
 と問いかけてくる。
 そんな雪男に。
「何者か、ですか? 白いのでアルビノのゴリラさんでしょうか? アルビノのゴリラさんでなければ、シロクマのように雪原に特化して白くなったゴリラさんですよね」
「そうだね。ゴリラさんゴリラさん♪」
 と柚子、メーリスが次々と誤った答えで挑発する。
 対し泉、グレイシア、玲那が。
「いやいや、これは雪男でしょう」
「そうですね。雪男だねぇ……」
「もし被害に逢われた方が本物の雪男を見つけたら、写真を撮って皆に公開したりするのでしょうか? 何にせよ、私達が倒すべき存在であるのは間違い在りません」
 と、正答を。
 ……そんなケルベロス達の言葉に。
『グゥゥ……ワレ、ユキオトコ……アヤマリシ……モノヘ……死ヲ……!!』
 とウガアア、と叫び声を上げて、突撃してくる。
 そんな雪男の突撃へ。
「なななんかもう細かいことといいから、さっさと片付けて帰るよよよ!!」
「わーい! ホッピー! 戦うよーっ! ボクだって戦えるんだよ!」
 と小東子、メーリスが強く宣言し、そして雪男の突撃に対峙する柚子、メーリス、と二人のサーヴァント。
 駆ける勢いは雪上であっても衰える事無い……そして、その太い腕で殴り掛かってくる。
 そんな雪男の一撃、がしっ、とカバーリングする柚子のウィングキャット、カイロ。
「ありがとう、カイロさん」
 と微笑みつつ、すぐ柚子は祝福の矢でクラッシャーに狙アップを付与する。
 更にメーリスがメタリックバーストで前衛強化しておくと共に、ホッピーはカイロを回復。回路自身も自分自身をヒールし、体力を維持する。
 そして、ディフェンダー陣が一巡した後、続けてジャマーの小東子。
「あああもうなんでこいつはこんなにげんきなんだいいい、なななんか理不尽だだだよ!!」
 と言いながら、ゼログラビトンで武器封じを多重付与する一方、スナイパーのグレイシアがハートクエイクアローで、催眠効果を追加付与する。
 その一方、メディックの一刀は、仲間達の状況を見据えた上で。
「打ち合わす 劔の下に 迷いなく――身を捨ててこそ 生きる道あれ!」
 と、『新陰流・無刀取り』で更なる武器封じを付与。一方小東子のテレビウムは、凶器攻撃を振り回していく。
 攻撃力をがっつりと下げると共に、残るクラッシャーの泉、玲那、小春が連続する。
 血襖斬りで泉が斬りかかり、小春が。
「動きの速い相手は足を止めるに限るでござるよ」
 とハウリングによる足止め、そして玲那が。
「……さあ、捕らえました、今です!」
 と、レゾナンスグリードで捕縛する。
 行動一巡し、次の刻。
 雪男は丸太の如き腕で殴り掛かるが、その攻撃は雪男と言わなかったディフェンダー陣に集中。
 ……その攻撃を、カイロとホッピーが交互にカバーリングし、メディックのいくら、一刀を中心にして、回復を行っていく。
 そして、小東子がマインドシールドで、ディフェンダー陣に盾アップを付与する事で防御力を上げつつ、グレイシアはホーミングアロー。
 又泉のハウリングフィスト、玲那のサイコフォース、そして小春が。
「秘剣【黒影】!ふふふのふ、お前は既に斬られている」
 と『秘剣【黒影】』で、ホーミングを与えていく。
 確実に、クラッシャーの攻撃にて体力を削り、バッドステータスも積み重ねる。
 雪男は自己回復する事無く、ただただ攻撃するばかり……体力が減っても、ただただ攻撃。
 そして、経過する事十数分。
「さすがに疲れたでござる。そろそろ終わりにするでござるよ」
 と小春の言葉。
 それに皆も頷く。
 そして、ケルベロス達の総攻撃。
 ガンガンと猛攻撃で押し込んでいき……そして、雪男の足元に、一刀が。
「ノウマク サンマンダ バザラダン カン!」
 と、絶空斬の一撃を叩き込むと、雪男は体制を崩し、其の場に転倒。
 ……そして。
「これで終わりです!」
 と、玲那が絶空斬を、雪男の身体を一刀両断に切り裂くのであった。

●雪に折れた足跡
 そして……雪男を倒したケルベロス達は、やっと安堵の溜息をつく。
 しかし雪男を倒すと同時に、段々とまた吹雪が強くなり始める。
「うーむ……冷え込むのう……」
 と、懐から取り出した珈琲を開けて、ぐいっと一口飲む一刀。
 そして柚子が。
「さて……と。一応、襲われた方を救出しなければいけませんよね。近々に目を覚ますとの事ですし」
 と提案し、周りを捜索……その元となった二人が雪山の上で倒れているのに近づき、肩を叩き起こす。
「こんなところで寝ていては危険ですよ? 探索も楽しいですが、雪道など怖いですから、ね」
「そうだねぇ。もう大丈夫。でも、興味で命を失う事すらあるんだから、注意した方がいいよぉ?」
「そそそそそそうだよっ、あああああんたたちちちも好奇心はいいいけど……は、はーーっくしゅん!!」
 と、声を掛けつつ、さっさと其の場から帰るのを促す。
 そして……彼らと共に、雪山を下りる。
 感謝の言葉と共に、街へと向かっていく二人……そして寒い寒い雪山の上で暫し過ごした為か……すっかり風邪を引いてしまった小東子。
「ううう……は、はーーっくしゅん!!」
「あらあら……もうすっかり風邪引いちゃったみたいだねぇ?」
「あ、ああたりまえだよっ!こんなに寒いだなんて思わなかったし……はああっくしゅん!!」
 グレイシアの言葉に、くしゃみも止まらず……鼻をずるずるとしながら、暖を取る為に早々に帰路へとつくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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