とある地方の廃病院の、正面入口。
「うまいこと乗せられた気もするけど、本当に、ハクロウキの言う『面白い奴ら』ってのは、来るのかねぇ……」
側にたむろする屍隷兵たちに聞かせるでもなく、露出の高い黒い装束を纏った女がひとりごちる。油断なく辺りの様子に目を光らせながら、ひとつ伸びをすると、一つに束ねた紫色の長髪がさらりと風にゆれた。
彼女の背にそびえる廃病院では、「禍つ月のハクロウキ」による大規模な実験が行われていた。その規模は他の研究所とは桁違いであり、ハクロウキ配下の螺旋忍軍6人が手分けして侵入者を警戒している状況である。
正面入口にいる彼女、実験体33号(ミミ)もまた、その1人であった。
「ま、楽しませてくれなかったら、私の雷撃で一瞬で葬るけどね」
言いながら、くるくる、と螺旋をモチーフにした模様の仮面を手の中で弄ぶ。その顔には、妖しくも美しい微笑みが浮かんでいた。
「螺旋忍軍に新たな動きがあるわ」
集まったケルベロスたちを見渡すと、レナ・グルーバー(ドワーフのヘリオライダー・en0209)が緊張した面持ちで切り出した。
「みんな、冥龍ハーデスが生み出した『屍隷兵』のことは知っているわよね。ハーデスの死と共に、『屍隷兵』も失われるものだと思われていた……」
レナの言葉に無言で頷くケルベロスたち。でも、とレナは続ける。
「地球人を材料に手軽に戦力を生み出せる事に着目した螺旋忍軍が、鹵獲したヘカトンケイレスを元に、新たな屍隷兵を生み出している事がわかったの。しかも、悪いことに、彼らは完成した屍隷兵の最終テストとして、屍隷兵を使った襲撃事件を起こそうとしているわ」
ざわめくケルベロスたち。それを軽く制すと、レナは言葉をつなぐ。
「そこで、襲撃事件を阻止するだけでなく、屍隷兵の材料として拉致された一般人の救出、そして、屍隷兵の研究を行っている螺旋忍軍の研究者の討伐を行うことになったの。
ここに集まってもらったみんなには、研究者の討伐をサポートすべく、屍隷兵の研究施設の警備を行っている螺旋忍軍を撃破してもらいたいの。お願い、できるかしら?」
ケルベロスたちは力強く頷く。それを見て軽く笑みを浮かべたレナだったが、再び表情を引き締めて説明を始める。
「今回、みんなには、禍つ月のハクロウキの部下である『実験体33号(ミミ)』の撃破をお願いしたいの。ミミは、配下の屍隷兵を連れて、研究施設である廃病院の正面入口を警護しているわ」
喋りながら、レナは手元のタブレットに目を走らせる。
「ミミは戦闘では雷を操るようよ。雷を纏った拳で相手を貫く『雷撃』や、目にもとまらぬ回し蹴りで敵を薙ぎ払う『光速の突撃』、そして、味方1体にちらつく分身の幻影を纏わせ、味方への被害を逸らす『分身の術』を使ってくるわ」
配下の屍隷兵は、殴ったり、噛み付いたりといった方法で攻撃するようであるが、こちらはケルベロスが1対1で戦っても優位になる程度の戦闘力しか有していないようだ。
敵の情報を確認するケルベロスたちを見ながら、レナはさらに話を続ける。
「みんなには、ミミを倒したあと、廃病院に突入して研究所の主である『禍つ月のハクロウキ』の元へ向かってほしいの」
警備の螺旋忍軍は侵入者の警備であると共に、ハクロウキの退路を守っているものでもある。全ての敵を撃破する事で、ハクロウキを逃がさないように追い詰めていく事ができるはずだ。
「ただ、こちらが隙を見せればハクロウキは逃げ出してしまうかもしれないわ。万一、屍隷兵研究の中核を担う彼を逃してしまえば、今後屍隷兵の研究が大きく進んでまずい状況にもなりかねない……。だから、みんなには、慎重に、追い詰めて撃破して欲しいの」
一息に喋ると、レナはぐるりとケルベロスたちを見渡した。
「ここで研究所を完全に破壊して、研究者である螺旋忍軍を撃破する事ができなければ、更に、強力な屍隷兵が生み出されてしまうかもしれないわ。そうさせない為にも、みんなの力を貸して欲しいの」
勝利を信じているからね、とレナはケルベロスたちに微笑みかけた。
参加者 | |
---|---|
三和・悠仁(憎悪の種・e00349) |
カルロス・マクジョージ(煌麗の満月・e05674) |
リリーナ・モーガン(君辱臣死の魔女・e08841) |
エレファ・トーン(メガトンレディ・e15392) |
筐・恭志郎(白鞘・e19690) |
ヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366) |
嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437) |
エナ・トクソティス(レディフォート・e31118) |
●正面入口にて
廃病院に到着したケルベロスたちは、各班に分かれて担当する場所へと急ぐ。
「屍隷兵か……一回戦ったが、あいつら痛覚とか無視してくるし面倒なんだよな」
ロケットパンチをくらったその瞬間を思い出したのか、少し顔をしかめながらヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366)が呟く。
「ええ、私も月喰島の事件は友人が大怪我させられて帰って来たので、よく覚えています。その子も言ってたけど、あれは絶対作っちゃ駄目なやつですから……」
ぐ、と静かに拳を握った筐・恭志郎(白鞘・e19690)に、エナ・トクソティス(レディフォート・e31118)も頷く。
「相変わらず碌なことを考えませんね、螺旋忍軍は。まあ、脳天撃ち抜いて息の根止めれば、それまでです」
「はい、私も、頑張ります~」
のんびりした口調ではあるが、エレファ・トーン(メガトンレディ・e15392)は、月喰島の作戦に参加できなかったリベンジを今回の黒幕撃破作戦で果たそうと、彼女なりにとても気合いの入っている様子である。その前方では、屍隷兵の利用に憎悪を抱いている三和・悠仁(憎悪の種・e00349)が、静かに闘志を燃やしていた。
(「お嬢様……!」)
側にオルトロスのアーサーを連れているリリーナ・モーガン(君辱臣死の魔女・e08841)は、お守りとして肌身離さず忍ばせている小さな騎士のぬいぐるみをぎゅ、と抱きしめる。
そうこうしているうちに正面入口付近に到着したケルベロスたちは、今回のターゲットである実験体33号『ミミ』と屍隷兵たちの姿を見つけ、素早く陣形を整えた。
「へえ、本当に来たね」
その様子に気付いたミミが、くすくすと笑いながら、一歩ずつケルベロスたちとの距離を縮めてくる。
(「……うん、スキがないね。どう戦おうか……」)
(「ぎゃう……」)
言葉とは裏腹に隙のないミミの様子に、カルロス・マクジョージ(煌麗の満月・e05674)とそのボクスドラゴン・アルバリドラが悩む横から、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)の「おいしそうだ……」という呟きが聞こえてくるが、何がどうおいしそうなのかは知らない方が幸せかもしれない。
もうすぐ互いの間合いに入る、そのぎりぎりの距離でミミは足を止め、薄笑いを浮かべながら再び口を開く。
「私、『面白い』ものにしか興味がないの。――あなたたち、私を楽しませてくれる?」
「……とっととそこをどかして親玉をぶっ潰させてもらうぜ」
「まあ、怖い怖い」
ヒビスクムの言葉にミミが肩をすくめた――と思った次の瞬間、強烈な回し蹴りがケルベロスたちを襲う。それを合図に、屍隷兵たちもケルベロスたちに向かって攻撃を仕掛け始めた。
●うごめく屍隷兵
「今回もきっちり仕事するぜ。誰も逃がさん」
敵の攻撃に一番に反応したのは、ヒビスクムだった。敵に突進するボクスドラゴン・ガブリンの横で、素早く腕を振ると、真っ赤なハイビスカスの花が傷ついたメンバーを癒す。続けざま、恭志郎もも霊力を帯びた紙兵で仲間を守護した。
「まずは、下種が相手か……有難い」
悠仁が己が殺意を凝血剣ザレンにのせて、一番近くにいた屍隷兵に向け一気に振り払う。
と、その背後から、エナがミミに向けて主砲を一斉発射する。それと時を同じくして、麻代の雷の霊力を帯びた斬撃が敵に襲いかかる。
「まあ、それはそれ! これはこれ! 楽しんでいきましょう!」
攻撃の衝撃で、ぐらりと屍隷兵の体が傾く。
「……おっと、ザコキャラ共は僕が請け負うよ」
カルロスとアルパリドラが一緒に飛びかかり、1体目の屍隷兵にトドメを刺した。
――その亡骸が霧散するかしないかのうちに。
「いっきまっすよぉっ!」
敵群の頭上から、巨大化したエレファが落下してくる。その腕につかんでいるライドキャリバー・ハラカのガトリング掃射に続いて、どすん、とエレファの重い衝撃が屍隷兵にのしかかる。そこに生じた敵の隙を逃すまいと、アーサーは瘴気を解き放ち、リリーナは素早く魂魄転写『浮声切響』を行う。
「響け、魔道の深淵を詠う声。祝福と呪詛を以て、新たな扉を此処に……!」
複雑に絡み合った音声が術として発動した直後、ミミが屍隷兵を庇うように動く。そして、攻撃を受けると素早く右の拳に雷の力を蓄え、勢いをつけて悠仁に向かう、が――。
「ガブリン!」
悠仁を庇ったのは、ボクスドラゴンだった。ミミの拳をまともにくらってしまったガブリンに、主のヒビスクムはルーンを宿す。
その間にも、屍隷兵たちの攻撃は続いている。その目標は、一番彼らの近くにいる麻代へと向かった。
「うへぇ、気持ち悪い……」
2体は悠仁の横薙ぎとカルロスの放ったドラゴンの幻影で退けられたものの、別の1体に締め上げられ、その間に噛み付かれてしまった麻代。恭志郎は急いで駆け寄り、オーラを溜めて体力を回復させた。
軽く恭志郎に礼を言うと、彼女は刀身に炎を纏わせる。
「よし、殺そう」
一番弱っている屍隷兵目がけて斬りかかり、2体目を撃破した。
その後も、ケルベロスたちはミミへの牽制と傷ついた仲間の回復を行いながら、3体目、4体目と屍隷兵を倒していく。
そして、残る屍隷兵は1体となった。
「光速、と言ってもこの程度ですか?」
ミミの注意を引き付けるため、エナがハンマーを変形させ、爆音と共に竜砲弾を放った、その時。
「ぶ、ぶつかっちゃいます~!」
後方から、炎を纏ったハラカに跨ったエレファがすさまじい勢いで突進してきた。屍隷兵にぶつかりざま、一瞬エレファの体が宙に浮いたかと思うと、落下する勢いを利用して降魔真拳を叩き込んだ。
「アーサー、私たちも続きましょう」
ふ、と微笑むと、リリーナは傍らのオルトロスを促し、自らも弓を引く。その斬撃と魔法の矢は、過たず敵の急所を貫き、そして。
「吹っ飛べ!」
ヒビスクムの暴風を伴う強烈な回し蹴りにより、最後の屍隷兵も撃破された。
「無理矢理歪められた存在であるんですよね、あなたたちも、私も……」
自身も地獄化で命をつないでいることを思い、どこか切なさもにじませながら、恭志郎は屍隷兵のいた空間を見やる。
●光速のミミ
「ふうん……屍隷兵って、この程度なのね」
まとめた髪をさらりと揺らしながら、ミミが呟く。戦闘が始まってからは螺旋の仮面を被っているため、その表情を窺い知ることはできない。
だが、屍隷兵が全て倒されたことで、数の上では1対12と、ケルベロス側が大いに有利になったことは確かだ。
「降参して、ハクロウキの居場所を仰ってはいかでしょうか?」
リリーナの丁寧語の中には慇懃無礼な態度が見えるが、本人もそれを隠す気はないらしい。
「お断りよ」
きっぱりとした口調で言い放つと、ミミは小さく何かを唱える。すると、ミミの周囲に分身の幻影がちらついた。
「……皆の力になれますように」
一方で、恭志郎も仲間を守るべく、大量の紙兵を前衛のメンバーに向かって撒く。
「何も、抑えない。何も、考えない――!」
デウスエクスへの憎しみをたぎらせた悠仁が、呪力で光り輝く斧を振り下ろせば、エナは目にも止まらぬ速さで次々と銃弾を放つ。
「螺旋忍軍の陰謀は、ここで潰さなきゃ。放っておくと蛆のように湧いてきますから」
「うん。雑魚も片付いたし、あとはキミだけだね?」
手にした日本刀に炎を纏わせた麻代を、白と黒、2冊のグリモワールを手にしたカルロスが混沌なる緑色の粘菌を招来してサポートする。
畳み掛けるように繰り出される攻撃を避けきれず、体勢を崩したミミにぞろりと這い寄る影がある。
「これは、どうですか~?」
エレファの胸元から伸びる攻性植物が、ミミに絡みつき締め上げる。
「随分とスピードに自信がおありの様で……ですが、『光速を超える剣戟』を放つ我が主に比べれば……前座に興味はございません、消えて頂きますわ」
リリーナのブラックスライムが、鋭い槍となってミミの右腕を斬り裂くいた。だが、その激痛に耐えながら、なおもミミは目にも止まらぬ速さで前衛のメンバーに襲いかかる。
変化が現れるまで、そう時間はかからなかった。
手数で押すケルベロスたちの攻撃を受け続けたミミの技の威力は、当初と比べると格段に落ちてきていた。
戦いの終わりが近いことを感じ取ったケルベロスたちは、残っている力を振り絞ってミミと相対する。
アーサーが敵を睨みつけて時間を稼ぐ横で、リリーナは『浮声切響』を詠唱する。
「おっと、足元がお留守だぜ?」
ミミの注意がリリーナの術に引き付けられている隙に、戦場にばらまいた地雷をヒビスクムが一斉に起爆させ、ガブリンも炎の息で追撃する。
「――これも、自分に出来る事ならば」
ずっと回復に徹してきた恭志郎が、斬霊刀・白綴を鞘から抜く。淡く柔らかな光を纏うその刀身が現れた刹那、天空より無数の刀剣が召喚され、刃の嵐となって敵に降り注いだ。
「Tempus edax rerum. ……Si sic, ede!! 【Abyssus abyssum invocat】!!」
『赤を啜り、白を喰む』――血を啜り、骨を砕き貪るかのように、自分自身への憎悪もすべてない交ぜにした力を悠仁が放つ。
ポジションの効果もあり、相当に重い一撃となったその攻撃に、ミミの足が止まる。
「……スキあり、だよっ!!」
突進するアルバリドラを追って、カルロスも地面を蹴る。
「さあ、躱せるかな? 燃えろ! オルタナティヴ!」
燃える拳がミミの腹部を直撃する。たまらず吐血する彼女を、冷徹に、そして確実に狙っている銃口があった。
「Dead end ――」
『Sudden Impact』。エナの放った重力の弾丸はミミへ撃ち込まれ、体内で炸裂する。
「……まだ、こんな、ところ、で……」
既に仮面が外れたミミの顔面は蒼白である。残った力を振り絞って回復を試みるが、うまくいかない。
「さーて、とっておきの一発芸、見ちゃいますか?」
おどけた口調の麻代がミミに歩み寄り、その目の前で、何と刀を自身の腹に突き刺した。しばらくして地獄の炎が溜まったところで抜刀し、敵にぶつける。
――身を焼くような斬撃に、反射的に悲鳴を上げようとするも、既にミミには声を上げる力も残っていない。
地面に倒れこんだミミを、巨大な影が覆っていく。
「さあ……ぺちゃんこにして、あげますよぉっ!」
ハラカに騎乗したエレファが、象の力を開放し、巨大化する。飛び上がった彼女が落下したとき――実験体33号『ミミ』は息を引き取った。
●ハクロウキを探して
ミミを撃破したケルベロスたちは、目の前にそびえる廃病院に目をやる。
6班に分かれて突入したのはほぼ同時であったが、一刻前には聞こえていた他所での音が、幾分か小さくなっている。連絡が取れないため詳しいことは分からないが、おそらく自分たちと同様に部下を撃破しハクロウキを探索し始めたのでは、と推測した8人は、廃病院の正面扉から中へと潜入した。
薄暗い廊下を、夜目のきくビヒスクムとエナが先導し、殿の恭志郎が要所で壁にチョークで印を付けながら進む。自分達の進んできた道への警戒も行いつつじりじりと進んでいると、ほどなく、エナが小さな声をあげた。
「あ、これ……!」
地下へと続く階段に、少なくない人数が通った形跡を見つける。音を立てぬよう悠仁が注意深く周囲を見渡すと、やや離れた廊下の角に先に到着していたケルベロスたちが息を潜めて待機しているのが見えた。
急ぎ合流すると、一人の女性が階下を指差しながら口を開く。
「この先に屍隷兵が沢山いるのよ! きっと、ハクロウキを守っているんだわ!」
恭志郎が手元の見取り図を見ると、指差す方向にあるのは『霊安室』だった。
「子供も何人か捕まってたよ。わたしたちだけじゃと思ったけど……」
ぐるりと見回すエルフの女性と目が合う。
「これだけ揃ったのなら、心配いらないね。一気に突入しよう」
「問題ない、進もう」
「ああ、任せとけ」
金髪の青年が頷くと同時、ヒビスクムがにやり、と口の端を上げる。
次の瞬間、ずどん! と爆音が上がり、それを合図に一斉に皆が階段を駆け下りた。
「ハクロウキはどこかな?」
先行する2班に続いて霊安室に突入したカルロスが一気にダッシュし、空中で回転すると炎を纏った拳で手近な屍隷兵に殴りかかる。
「雑魚に、用はない! シッシッ!!」
目にも留まらぬ高速の突きで敵を斬る麻代のやや後方から、エナが主砲を一斉発射する。
「わる~いヤツは、どこですか~?」
のんびりした口調からは想像のできない、エレファの重量級の攻撃が屍隷兵を襲い、続けざまリリーナの魔法光線が敵の動きを鈍くする。
その周囲でも、爆発や武器のぶつかり合う音が所狭しと鳴り響き、一瞬にして霊安室は戦場と化した。
激しい戦闘が繰り広げられているなか、入口からさらに飛び込んでくる一団がある。
「新手っ?!」
カルロスが入口を見やる。と、そこにいたのは増援のケルベロスたちだった。
「遅くなって悪い、俺たちもいくぜ!」
武器を手に素早く戦闘に加わった新たな仲間に視線だけで頷くと、ケルベロスたちの攻撃はますます過熱していった。
「さあ、盛り上がっていこうぜ!」
ヒビスクムの起こした爆風の中から飛び出した恭志郎が、手にした白綴で敵の傷を抉る。
「ここで、この機会で――全て纏めて、殺そう」
よろめく敵に止めを刺したのは、悠仁の放った強烈な旋風だった。
――戦いの喧騒と煙が、少しずつ収まっていく。
ケルベロスたちの働きによって、霊安室内の屍隷兵たちは一体残らず動かぬ屍と化した。だが――。
「……いませんわね」
リリーナが霊安室を改めて見回し、表情を険しくする。そこには、目的としていたハクロウキの姿はなかった。
ふと檻のほうに目をやると、他班のケルベロスたちが囚われた子どもたちと話している声が聞こえてきた。
「兜の怖い人はいたよ……」
「ケルベロスさんたちが来るより前に出て行ったけど……」
子どもたちの話から推測するに、ハクロウキはここにいたが、ケルベロスたちが突入する前に脱出していたようだ。念のため、ケルベロスたちは再度病院内をくまなく捜索したが、ハクロウキを見つけることはできなかった。
護衛の螺旋忍軍は全て撃破し、拠点の制圧には成功した。
だが、首謀者であるハクロウキを取り逃がしてしまった――苦い思いを抱きながら、ケルベロスたちは帰途につく。
作者:東雲ゆう |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年12月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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