忍軍の屍隷兵~キメラ製造の研究者

作者:雨音瑛

●廃ビルの研究室で
 放棄されたビルの一室。部屋の壁沿いには、薬品や実験器具がところ狭しと並んだ棚が置かれている。それらを照らすのは、眩しく光る手術用のライト。と、部屋の中心で何やら手術台に向かう男の手元だ。
「屍隷兵の研究は、私の研究にも有益ですからねぇ。協力を申し出て正解でしたよぉ……」
 男はメスと化した指先を操り、手術台の上の生物を切り刻んでゆく。
「この私のキメラ製造の技術をもってすれば、屍隷兵技術の再現はそう遠くない……」
 口の端がつり上がる。男がより深くメスを入れれば、被験体の体液が白衣に飛び散った。男は一瞬手を止めるが、汚れを気にする素振りはない。それどころか、笑みを深めて満足そうにうなずいた。
「楽しいですねぇ……また愛しい作品が増える……」
 男はうずくまって待機する屍隷兵たちを見遣り、目を細めた。
 
●ヘリポートにて
 冥龍ハーデスが生み出した神造デウスエクス『屍隷兵』。屍隷兵は、冥龍ハーデスの死と共に失われるものだと思われていた。
 しかし、とウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が続ける。
「螺旋忍軍が、鹵獲したヘカトンケイレスを元に新たな屍隷兵を生み出している事がわかった。どうやら、地球人を材料にして手軽に戦力を生み出せる事に着目したらしい」
 螺旋忍軍は、知性のある屍隷兵を生み出すことはできていない。だが、知性の無いタイプの屍隷兵は既に完成させているという。
「彼らは、完成した屍隷兵の最終テストとして襲撃事件を起こそうとしている。君たちにお願いしたいのは、螺旋忍軍の屍隷兵研究者討伐だ」
 もしここで研究所の破壊と研究者の撃破に失敗することがあれば、さらに強力な屍隷兵が生み出されることとなる。
「彼らの動きを阻止するためにも、一刻も早くこの事件の解決をお願いしたい」
 まずは敵の情報を、と、ウィズはタブレット端末を切り替えた。
「撃破を頼みたいのは、螺旋忍軍『教授のアイン』だ。キメラ製造を得意とする螺旋忍軍で、屍隷兵技術の再現にも大きな役割を果たしたようだな」
 教授のアインは、配下の屍隷兵とともに廃ビルの一室で実験をしている。そこへ乗り込むことになる、とウィズが告げる。
「戦闘となった際は、メスと化した指先を操って切り刻む攻撃と、背から生えたアームから生えた手術道具に冷気を纏わせて放つ攻撃のほか、自作の回復薬を飲んで体力を回復する」
 また、戦闘には屍隷兵も加わってくるため、十分に気をつけて欲しいとウィズは付け足した。
「……屍隷兵の研究が進めば、月喰島にいたような『元の人間の姿や知性を持つ屍隷兵』が生み出されてしまうかもしれない。これ以上、惨い研究をさせてなるものか」
 頼んだぞ、とケルベロスたちを見据え、ウィズはヘリオンへの搭乗を促した。


参加者
ラックス・ノウン(マスクドニンジャ・e01361)
霧凪・玖韻(刻異・e03164)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
レグルス・ノーデント(黒賢の魔術師・e14273)
獅子鳥・狼猿(年越しそばのめんつゆ・e16404)
霧崎・天音(リア充にラリアット・e18738)
シエラ・ヒース(旅人・e28490)

■リプレイ

●忌まわしき研究
 廃ビルの一室、そのドアが開く。室内にいた「教授のアイン」は、眉根を寄せて振り返った。
「ここであったが初めまして……ここが貴様のデッドエンド」
 獅子鳥・狼猿(年越しそばのめんつゆ・e16404)が、アインの前で荒ぶるカバのポーズを取る。しかしアインは動じず、眼鏡を中指で押し上げた。
「ケルベロス、ですか……面倒ですねぇ。仕方ありません……私の愛しい屍隷兵たち、お願いしますよぉ」
 ゆるゆると動き出す屍隷兵は、3体。アインの前に並んだかと思えば、ケルベロスたちに攻撃を加えてくる。ある者は殴り、ある者は噛みつき、ある者は飛びついて押し倒すような攻撃を。
 前衛で攻撃を受ける仲間の間を縫って、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)が「アームドフォートMARK9」の主砲を一体の屍隷兵へ向ける。
「悪趣味な研究はここで終わりだ。覚悟してもらうぞ」
 発射をしながらも、視線はアインの方へ。
「……忌まわしい研究だな、業の深い。……だからこそ祟り甲斐もあるというものだ。……呪術の贄になって貰う」
 昏い眼差しをアインと屍隷兵へ向けるのは、祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)。
「……呪わしく往こうか」
 言いつつ、オウガメタルの粒子を放出する。イミナのビハインド「蝕影鬼」が無言で実験器具を飛ばして屍隷兵を襲えば、霧崎・天音(リア充にラリアット・e18738)が大きく踏み出した。
「……屍隷兵を戦わせるなんて……これ以上……させる訳にはいかない……増やさせない…あんなかわいそうな人達を……」
 歯噛みしそうなほどの言葉でありながらも、表情は無い。そのまま地獄の炎弾を放ち、自身の体力の糧とする。
 ケルベロスたちの攻撃を受ける屍隷兵の反応や振る舞いを、アインは興味深そうに観察していた。その様子に気付いたのは、霧凪・玖韻(刻異・e03164)だ。
(「倫理面さえ無視すれば『敵性戦力を利用して自軍を強化する』のは極めて合理的な手法だな」)
 失敗したところで、失うものは無い。だが、目障りではある。ならば、とバスターライフルを構える。
「然るべき報いを与えに行くべきか」
 淡々とした様子で、玖韻は凍結光線を屍隷兵に放った。重ねて、レグルス・ノーデント(黒賢の魔術師・e14273)が回復を阻害するウイルスカプセルを投射する。
「まったくだ。面倒な事にならんように徹底的に潰してやる——ったく、良い趣味してやがんぜ。クソが」
 舌打ち混じりに毒づけば、ラックス・ノウン(マスクドニンジャ・e01361)も仮面の下で呻くように呟く。
「あー、思い出したくね」
 繰り出すのは、地獄の炎を纏わせた攻性植物。屍隷兵を殴りつけながら、屍隷兵の一体に回復薬を使用するアインを見遣った。
 直後、双方の様子をうかがうシエラ・ヒース(旅人・e28490)が、おもむろに歌い出す。
「いつか荒野に還るあなたの詩を、風は遊び歌う。悠久に埋もれたあなたの詞を歌うでしょう」
 燐光が舞い、雨音の傷がふさがってゆく。
 そう来ますか、と気味の悪い笑い声を上げるアインに向けて、狼猿はため息をついた。
「ヤレヤレだな。これ以上犠牲者は出させんよ」
 屍隷兵の研究をするのならば、元に戻す研究もできたろうに、と。
「かぁ〜ば……パーンチ!!」
 複雑な思いを抱いたまま、狼猿は全力の一撃を放ったのだった。

●呪わしき相手
「……ヘカトンケイレスとはまた違う感じだ。……だが祟る祟る祟る祟祟祟祟……」
 不穏な言葉を羅列しながら、イミナが目を細める。
 戦闘開始から数分が経過したところで、ケルベロスたちはやや不利となっていた。特に、何度も味方をかばい立てしたイミナ、蝕影鬼、狼猿の傷たるやかなりのもの。自らを癒やすグラビティも時折使用することで、どうにか持ちこたえている。
 イミナは、呪力を込めた杭を屍隷兵へと打ち込んだ。
「……弔うように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……封ジ、葬レ……!」
 イミナへ向けられる、虚ろな目。そのまま屍隷兵の体が硬直したのは、尋常ではない痛みのせいだろう。
「……蝕影鬼、そのまま二重に祟るぞ」
 目線を合わせずにかけられた言葉に、蝕影鬼は行動をもって返答とする。金縛りを受けた屍隷兵は、糸が切れたようにその場に倒れた。
「では次だな」
 壁役の屍隷兵、その一体へティーシャの「バスターライフルMark9」から放たれたレーザーが命中する。
 体の一部が凍り付く屍隷兵へ、天音が流星のごとき蹴撃を喰らわせた。
「死んだ人を……利用し続けるなんて許せない……」
 鈍い手応えは、不気味で不愉快だ。それを作り出した本人——アインは、何やらぶつぶつと呟いてはにやにやと笑っている。
 屍隷兵にかかりきりであるのも拙いと、玖韻は無言でアインへと肉薄した。不可視の速度で放たれる手刀は、的確にアインを捉える。
「ふひッ!?」
 奇妙な声を上げ、表情を歪ませるアイン。ずれた眼鏡を不快そうに直すが早いか、レグルスが声を張り上げた。
「輝き放つ雷光、天空より降り注げ、敵を打ち滅ぼす力を授けよ!」
 落ちる稲光を、アインは紙一重で回避する。
「おっとぉ、危ないじゃないですか」
 再びずれた眼鏡を直すアインを横目に、ラックスは攻性植物で屍隷兵を締め上げた。
「危ないのはお前や。俺のこの姿に見覚えは——ないんやろうな、きっと」
「はて……そんな仮面に見覚えはありませんねぇ。しかし気になる仮面です。その仮面の下……拝ませてもらいましょうか」
「ただのイケメンや。見て面白いもんはなんもないで」
 途端、アインの背から生えた手術道具が怪しい光を帯びる。冷気を纏ったさまざまな手術道具が、ラックスへと不気味な軌道で飛んで行く。だが、イミナが一瞬ばかり早くラックスの前へと到達し、代わりに攻撃を受けた。
「おや、貴方も私の改造手術を受けたいのですか?」
「……ワタシはお前の研究に興味は無い。……ただ祟るだけ。……螺旋忍軍相手となればいつもより気分が幾分か高揚はするが」
 無表情で言い放つイミナを中心に、シエラの歌が癒しを与える。
「いつかどこかで、あなたに連なる生命が遺した詞。それは荒野に遊ぶ、風の歌。時の流れに全ての人が忘れても、風はあなたの詩を歌うだろう」
 傷の深い狼猿は、更に光の盾を自らの周囲に浮遊させる。
「カバー役として、体力は一定以上キープしておきたいからな。カバだけに」
 鼻息荒く、狼猿が拳を握りしめる。
「小賢しいですねぇ……屍隷兵たち、やってしまいなさい」
 まるで知性の感じられない瞳で、屍隷兵はイミナを殴りつけた。重い一撃は、イミナの残体力をわずかばかり超えてしまう。また、蝕影鬼も別の屍隷兵に同じ攻撃を受て戦闘不能となった。
 床に手を付き、イミナが大きく息を吐き出す。
「……研究の続きは死後の世界だ」
 射るようにアインを見つめ、イミナはいったん体を床に預ける。
「……絶対に祟るから」
 長く伸びた前髪の隙間から赤い瞳がのぞくのを見て、アインは目線を逸らした。

●訪れし危機
 盾役が残り一人となりながらも、ケルベロスたちは奮戦した。自身を、あるいは仲間を癒やしつつ、屍隷兵とアインの体力を削いで行く。
 そうして、レグルスの展開したブラックスライムが最後の屍隷兵を飲み込んだ。
 これで、残るは教授のアインのみ。
「おめーが作れるのは所詮紛いモンの2流品だ、しかも苦労したのも水の泡になる始末」
(「あ、やっべ、超楽しくなってきたかも」)
 自身が撃破した屍隷兵が倒れ伏すのをちらりと見て、レグルスは煽るような笑みを浮かべる。そのような挑発をされたアインはといえば、自らの顔を片手で覆って小刻みに震え始めた。
「ふふ……ふ、ふふふ、ひひひッ、どう切り刻みましょう、どうしてあげましょう、どうすれば一番いやがりますかねえ貴方たちは? ふひひッ」
 奇妙な笑い声を零しながら早口で呟くアインに、ラックスが容赦なくルーンアックスを振り下ろす。
「なんや、震えて? 怖いんか? ——せやけどな、お前が製造施設に作り替えた村の住民、そいつらに施した手術——それに比べれば、俺らはまだ優しいと思わん?
 ラックスの無感情な言葉を聞き、アインは独り言と動きをぴたりと止めた。
「施設? 色んなところで色んな研究をしましたからね、いちいち覚えちゃいませんよ。しかし貴方たちはごちゃごちゃ五月蠅いことこの上ない。……まったく——目障りなんですよぉっ!」
 吊り上がった口の端はそのままに、アインが白衣を翻らせてラックスへと迫る。
 メスの指先が数本のナイフのように閃けば、レグルス——ではなく、狼猿の体にいくつもの創傷が走った。
「戦えない獣はただの家畜だ。だが、家畜を笑うやつは豚のエサにも満たないくそ野郎だ」
 幾度となく仲間をカバーした狼猿は、既に満身創痍。メスによる切り傷は思いの外深く、狼猿は膝を突いてしまう。
 残る盾役を失ったことで、ケルベロスたちの間に緊張が走った。
 そんな空気の中、最初に口を開いたのはアインだ。
「ふぅ……私としたことが、いけないいけない。危うく挑発に乗ってしまうところでした。愛しい作品を壊されたのは、確かに腹立たしいですが……次はもっと貴方たちをいたぶれるようなものを作ってみせますよ」
 メガネを押し上げ、アインは平常時の笑みを取り戻した。汚れた白衣には、アイン自身の血もこびりついている。
(「出入り口を確認するような動きもなし。ということは、まだ逃走するつもりはないようね」)
 シエラはアインの様子を観察しつつ指天殺を繰り出すが、手術道具の羽が攻撃を阻害する。しかし、アインが立つその場所はティーシャの射線上であった。
「残念だったな」
 エネルギー光弾がアインを包み込んだところで、天音はアインの足元へと急接近した。
「私は絶対にこの人を消す……!」
 炎のエネルギーが、天音の足元へと集まってゆく。
「打ち砕け…破滅の刃……獄炎斬華……………極殺!!」
 そこから打ち込むのは、強烈な蹴り技。と、地獄の炎の刃。
 だが、最初に行った足元に急接近するという動作は、大きなもの。天音の足は、アインのメスの先を掠めるだけにとどまった。
「ふぅ、危機一髪、でした」
 と、額の汗をぬぐうような動作をするアインの背後に、玖韻が迫る。そのまま背中に音速の拳を叩きつければ、アインは吹き飛ばされ、本棚に体を打ち付けた。
「詰めが甘いな」
 玖韻は静かに拳を下ろす。傷ついた自身の体には、何の興味も示さぬまま。

●潰えし残骸
 ケルベロスとアイン、双方の消耗度合いが近づいてゆく。
「ひ弱な体躯の割に、存外しぶといものだな」
 ため息まじりに、ティーシャがドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させる。撃ち込まれた弾丸に怯むアインを一瞥して、レグルスが竜語魔法の詠唱を始めた。
「蒼穹よりも蒼き存在 北海に住む竜王よ、汝の氷冠を授けよ。極寒の息吹、氷雪の嵐となりて吹き荒れよ!」
 黒髪が揺れ、冷気の嵐がアインを包み込む。さらに周囲の水分が凍れば、アインの体に氷が纏わり付くのが見える。
「あの島の人達のような犠牲は……もう必要ない! そんなことを続けるならもう……本当に終わらせる!」
 表情の無い目元口元とは裏腹に、その思いは激情そのもの。オウガメタルを纏わせた天音の拳が、鈍い音を立ててアインを打ち砕く。そこへ、玖韻のエアシューズによる攻撃がアインへと叩き込まれた。
 畳みかけられたアインはよろめきながらも太立ち上がり、背中を向けた。
「これでは私の研究が続けられない……」
 歪んだメガネを投げ捨てるアインへ、シエラがすかさず張り付く。バランスを失って倒れたアインの横にレグルスがしゃがみこんだ。
「逃亡は絶対させねえって。死を弄ぶ奴は、死を以て贖え」
 アインがどうにかシエラを振りほどくが、時既に遅し。ティーシャと玖韻が出入り口を塞ぐような位置を取り、アインの正面には肘のブースターを稼働させたラックスが。
「ひ……ひッ、私はまだ研究を続けなければならないのです、こんな、こんなところで……!」
「あんたこそ、ごちゃごちゃやかましいことこの上ないな。……一掌一砕打ち砕く。俺の忍術とくと見よ!」
 さすがのアインも、恐怖に顔を歪ませる。ラックスの掌打、そして続く小型爆弾の追撃は、アインを大きく吹き飛ばして壁へとめりこませた。ひびの入った壁からアインが落ち、床に倒れ伏す。アインは、そのままぴくりとも動かなかった。
 ラックスは仮面に触れ、肩の力を抜く。さまざまな思いが去来するが、口から出た言葉は至って現実的なもの。
「さて、教授の持ち物でも漁ってみるとしよか」

 戦闘が終了し、十分な休憩を取ったイミナと蝕影鬼、狼猿も研究室内の捜索に加わった。
「手がかりとかがあればいいのだが……」
 研究資料や密書のようなものを探し、狼猿が棚の中を確認している。戦闘の合間に落ちたものもあるが、それでも半分以上は無傷だ。
「とはいえ、俺らが見たところで内容を理解できるか不明やけどな」
 ラックスがアインの所持していた本を開き、文字を追う。
 棚の後ろなどを見て回ったレグルスは、ついにはアインの白衣にも手を出した。
「何かメモでもねえかね」
 と、追い剥ぎまがいのことをする横で、ティーシャが紙の束を手にして数枚、めくった。
「確かに資料みたいなものはあるが、どういう内容なのかはまるで分からないな。ひとまず入手したものはヘリオライダーに渡すとしようか」
「それじゃあ……この場所は徹底的に破壊する……」
「賛成や」
 ラックスが天音の言葉に同意し、手術台、照明、棚など、研究室内のものをことごとく破壊していく。散乱した道具も薬も念入りに壊し、二度と使用できないように。
 主を失った研究室は、ただ無残な廃墟として残ることになるだろう。
(「生きて抱きしめていた喜びも、悲しみも、楽しさも、憤りも、そんなきらきらした宝石がなくなってしまった。ここにあるのは終わってしまったものが持つ滅びの哀切さ、ね」)
 シエラは研究室だった場所を見渡して、小さくため息をつく。
「それでも、ここに命はあったのだと、憶えていくわ」
 祈りのような思い、あるいは行き場のない思いを胸に。
 ケルベロスたちは、廃ビルを後にした。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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