光明神域攻略戦～爆破迷宮を突破せよ！

■リプレイ

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　ここは琵琶湖。しかし、その外見は大きく変化していた。
「なんでこんな事に」
　そんな琵琶湖を見つめ呟く秋保・陰和（ふわふわグレー・e04792）。現在の琵琶湖は植物が山のように覆い、植物の迷宮となっている。その迷宮にケルベロスたちが入っていく。
「……今回は大規模な戦い……『光明神ナンナ』……意地でも見つけだして撃退して『ミドガルズオルム』の召喚を防ごうか？」
　迷宮をゆっくり歩く上野・零（絶望と希望を死焔に籠めて・e05125）が静かに呟く。この迷宮の何処かに光明神ナンナが召喚の儀式を行っている。そこで召喚しようとしているのはミドガルズオルム。それが召喚されると攻性植物の勝利が確定してしまう。
「そうですね、ミドガルズオルムの召喚を阻止します！」
　そんな零の意見に同意するように真面目な声を響かせるフローネ・グラネット（紫水晶の盾・e09983）。
「アスガルドの神まで取り込むとか、攻性植物もすごいもんだな」
　そんな相手に関心してしまう富士野・白亜（白猫遊戯・e18883）。方法は不明だが、今回の討伐対象の光明神ナンナはアスガルドの神。しかし、それを支配し召喚の儀式を行おうとしているのは攻性植物の将・カンギなのだ。
「カンギってやつがすごいのか？」
「寄生植物による支配、とかなのかな？」
　白亜が猫耳をぴくぴくさせながら問いかけにノーフィア・アステローペ（黒曜牙竜・e00720）が答えるが、その答え推測の域を出ない。

　そんな話をしながら迷宮を進むケルベロスたち。
「やっぱりネットも無線も無理なのデスネ」
　迷宮の内部で何度かアイズフォンを使用して電波状況を確認するアップル・ウィナー（キューティーバニー・e04569）。しかし、アップルも予想していた通りネットも無線も無理。なので事前に用意していた琵琶湖の地図に手書きでマッピングを開始する。
「これだけ複雑な迷宮だと迷う可能性は高いな」
　迷宮は左右に広がるだけでなく上下にも広がる兄弟な立体迷路。琵琶湖を覆うほどの大きさだ。アップルは丁寧にマッピングをしていく。
「見たこともない植物ばっかりだよねー。ペレはどう？」
　そんな迷宮の壁は謎の植物によって形成されている。そんな壁に興味を示すノーフィアの言葉に答えるかのようにボクスドラゴンのペレが鼻先で植物壁にそっと触れる。だけど、その壁は花が咲いていたり、蔓が伸びていたりするだけでなく、かなりの密度で壁となっているので、通常の方法では壊すのは無理。
　そんな壁に鼻先で突いたペレ。そんなペレの側に寄り添って、一緒に壁を鼻先でつつくのは愛柳・ミライ（宇宙救済係・e02784）のボクスドラゴン・ポンちゃん。
「何か分かる？」
　ボクスドラゴンたちの様子に思わず聞いてしまうけど、そんなミライの言葉に対して、ペレとポンちゃんは一緒に小首をを傾げる。
「そうだね、分からないよねー」
「だよね」
　そんなペレとポンちゃんの仕草が可愛らしく感じるノーフィアとミライだった。

　そんな興味を示すノーフィアたちとは同じように、少し楽しそうな雰囲気で周囲を見回しているのは一式・要（狂咬突破・e01362）。
（「迷宮突破作戦。不謹慎だけどちょっと楽しみ、よね」）
　内心ではちょっと楽しみに感じている様子。その服装は迷彩コート。周囲の植物と同化すると普通の人だと分からなくなりそうだ。
（「何かココロに湧き上がる高揚感があります」）
　そんな迷宮に、フローネも気分が高揚している様子。しかし、すでにケルベロスたちの侵入は察知されている。
　周囲を警戒しながら、また壁の自爆性能などを試しながら、様々な工夫を凝らし迷宮を進んでいくのだった。

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「おやおや、我の大切な友人カンギに仇なす敵はあなたですかー」
　突然、植物の壁が声をかけてきた……そう判断するしかないほどのタイミングで間伸びした口調が響く。
「……そこか」
　即座にそこへ向かい攻撃を仕掛ける零。敵が来る事を想定していたのだから反応は早い。そんな零の攻撃を残像を残して避け、植物の壁から現れるのは特徴のある仮面、螺旋忍軍だ。
「おやおや、こちらの言葉すら聞かずにこうげきですかー　そうきますかー」
　仮面の下の表情はうかがい知れない。しかし、少なくとも友好的でないのは分かる。間伸びした口調も、時間稼ぎの意味があるのかもしれない。
「……まさか！」
　突如現れた螺旋忍軍の武器に視線を注ぐ陰和。
「おやおや？　あなたは見た事……ありませんね？」
　人を食ったような口調のまま、陰和に武器を向け、見せつけるようにクルクルと回す。そんな陰和の前に立つのはフローネと要。詳しい状況は分からずとも、陰和の普段とは違う様子に、彼女を守るように立ちふさがる。
「ち、治癒魔法を覚えようと思ったきっかけが、何者かに重体にされた友人を助けられなかったから、なんですけど……」
　過去の記憶がフラッシュバックしているのだろうか、少し身体をフラつかせる陰和。そんな陰和の背中に暖かい腕が添えられる。
「大丈夫だよね」
「大丈夫だよ！」
　その手はノーフィアとミライ。詳しく聞かなくても分かる。この敵は陰和の友人の仇なのだろう。
　同時に電光石火の拳が敵螺旋忍軍に叩きつけられる。
「何かされる前に……ん、殴る」
　それは白亜の拳。しかし、それは残像を残し避ける。
「やれやれ。まあ、それくらいでないと、ねえ？」
　螺旋忍軍は、そのまま氷結の螺旋を放ち反撃。それを受け流して蹴りを放つアップル。
　お互いの激しい牽制を繰り出しながら、広い場所へ移動していく。
「さて、ではカンギ様の為に、貴方達を排除させていただきます。カンギ戦士団・絹崎清月、参ります！」
　そして再び氷結に螺旋を込める絹崎清月。戦いの開始だ！

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「黒曜牙竜、ノーフィア・アステローペ！　お相手願うよ、絹崎清月！」
　最初に動いたのはノーフィア。絹崎清月の背後を指し示すと、そこに立体的な魔法陣を形成する。その魔法陣で漆黒の球体へ変化させる。
「むむ？」
　直後、絹崎清月が漆黒の球体に引き寄せられ、球体に飲み込まれ圧縮する。
「やれやれ……」
　しかし、その球体から何事も無かったかの様に抜け出してくる。
「そこデス！」
　抜け出す絹崎清月にアップルが放つのは疾走し喰らいつくオーラ。
「おっと」
　それを半歩、足を引いて残像を残して避ける絹崎清月。
「この技からは逃れられませんヨ！」
　しかし、その最小限の動きが仇となる。直前で変化した疾走オーラが絹崎清月の腹部に喰らいつく。
「おやおや」
　ケルベロスたちの攻撃をまともに受けているはずなのに声に余裕を残す。
　仮面で表情をうかがい知れないが、それでも口調が不気味さを増す。そんな態度に、一瞬背筋に冷たいモノが流れる陰和だが、それを払拭するように動くのは零。
「……大丈夫だ」
　そんな相手であっても怯む者など此処には居ない。零はあえてゆっくりと絹崎清月との距離を詰め、静かに自分の魔力を高める。
「おやおや、何が大丈夫なのでしょうか」
　挑発とういよりは軽口の牽制とフェイント。零にそっと手を伸ばす。
「――この身を焦すは豪の焔――彼の身を貫くは紅蓮の刃――」
　その手を無視して自身の魔力を高めていく零。
「いただきましたよ」
　その手には螺旋の力が込められている。軽く触れるだけで内部から破壊する一撃。しかし、それは零には届かない。
「させません」
　防いだのは紫の光……いや、紫水晶の輝き。フローネの展開したアメジストシールド。
「……おやおや」
　強烈な攻撃を防がれたのに軽口を響かせる絹崎清月。それは一撃への自信。アメジストシールドに防がれた攻撃は、そこで消滅せずに螺旋の力を解放し盾に螺旋の傷跡を作り崩壊させていく。
「アメジストシールド出力全開！」
　しかし、崩壊すると同時に全力で再形成行い、螺旋掌の威力を減衰させる。
「地球の核から溢れて轟け―― 逃げ場なき焔の地獄――燃やし尽くせ――ッ！」
　その攻防の間に零の高まる魔力から、溶岩のような紅蓮の竜巻を作り出し絹崎清月を飲み込む。
「おやおや」
　轟音を響かせる紅蓮の竜巻の中でも軽口を叩く絹崎清月。
「クッキーちゃん、お願い！」
　その隙にサポートに走るミライ。螺旋の一撃を減衰させたとはいっても無論、無傷ではないフローネを癒す為、そして仲間をサポートする為にオウガメタルの『クッキー』にお願いをすると、ミライの体表面で身体を動かし『キュッキュ』と音を響かせ、同時にオウガ粒子をフローネを中心に輝かせる。
「助かるわ」
　ミライからの支援を受け、足を狙い電光石火の蹴りを放つ要。
「おっと」
　それを最小限の動きで避ける絹崎清月。しかし要の蹴りはそこで止まらず水が流れるように自然な動きで弧を描き胴に蹴り込む。
「そうきますか」
　その蹴りに合わせ大きく後ろに飛び衝撃を逃がそうとする絹崎清月。その動きに反応して猫耳をぴくぴく動かす白亜。
「ん、それは隙だな」
　その隙を狙い白亜も電光石火の蹴りを放つ。連続で叩き込まれた蹴りで体勢を崩す絹崎清月。そこへそのまま要と白亜が左右から同時に蹴りを叩き込む。
「おっとっと」
　要と白亜の連続攻撃に思わず膝を付く。
「友人たちの仇！」
　普段とは雰囲気が大きく違う陰和。それは復讐心なのか、それとも『やるときはやる』という強い意志か。
　両手に特製の丸薬を握って、投げつける。普段なら、ドジの性質がある陰和は転んだりしてしまうのだが、足をしっかりと踏ん張って丸薬を命中させる。
「……」
　陰和の丸薬は命中すると同時に大爆発して絹崎清月を衝撃波が襲う。
「……うーん」
　そんな爆煙の中から、相変わらず涼しい声で現れる絹崎清月。しかし、その外見はとても傷ついている。その傷跡から見える一部に緑色の何か。
「仇ですか……知りませ……いえ、覚えてませんね」
　口調に微妙な綻びを感じる。何か違和感があるもののそれは宿敵である陰和にも分からない。
「ともかくカンギ様の為にも消えていただきましょうか」
「神様に、どうしてもいわなきゃいけないことがあるの」
　そんな言葉に答えたのはミライ。それは強い想い。そんなミライにそっと優しい視線を向けるフローネ。
「だから、ここは通してもらうです……！」
　そんなフローネの視線に少しドキドキしながらもきっぱりというミライ。
「もちろん、ダメですよ」
　そう言って分身を形成する絹崎清月。戦いはこれからだ！

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「……君にくれるのは、この蕩けるほど熱い竜巻だけで十分さ－－」
　零の作り出した紅蓮の竜巻が絹崎清月を包み込む。
「やれやれ」
　全身火傷を負いながらも軽い口調のまま。しかし、それに気にする者はもう居ない。
「どんなに願っても　涙は枯れはしない　ゼロを1に変える魔法が　生まれたときから君に掛かってる」
　ミライの歌声に合わせて舞うように紙を舞い散らすノーフィア。それが仲間たちの肩に止まり紙兵となり支援を行う。
「ミライさんの歌が、ココロに、活力を与えてくれます！」
　その歌に合わせてフローネの御業が半透明の身体を揺らしながら絹崎清月を掴み捕縛する。
「ん、すぐに従うといい」
　フローネの御形に捕縛された絹崎清月に強烈な威厳を放つ白亜。その威厳に一瞬動きが止まる。そこへ軽やかに近寄り絹崎清月を踏みつける。
「幻兎変身、ブレイズモード！」
　そこへアップルが猛る情熱の炎を身に纏い変身する。
「これでは動けませんね」
　そんな状態であっても態度を変えないのは最早敵ながら天晴というべきかもしれない。
「その身に刻め！私の愛！」
　そのままの勢いでアップルは豪兎槌（ゴットハンマー）を叩きつける。しかし、それでも絹崎清月は満身創痍ながらも倒れず陰和の方向を向く。
「後は任せたよ」
　少し震える陰和の肩に優しく触れる要。その触れた手から伝わるのは皆の想い。そんな陰和に皆の視線が集まる。
「はい、皆さんありがとうございます」
　要から伝わる想いと共に陰和の拳を静かで柔軟なオーラが包み込む。
「やれやれ……どういう事なんだろうね」
　陰和の方向を向き、最後まで軽口を叩き続ける絹崎清月。
「これでととめです！」
　そんな絹崎清月に陰和の拳が叩き込まれる。その一撃は魂すら喰らう降魔の一撃。
「……」
　その一撃で絹崎清月は粉々に砕け灰となって消えた。断末魔の悲鳴すら残さず、そしてかつてそこに絹崎清月の存在した証拠を残さずに消えてしまった。
「……」
　陰和は宿敵を倒した拳を静かに見つめる。しかし、我に返ると同時に振り返り皆にお礼をする。しかし、感謝の気持ちが強すぎて言葉が出ない。
「……」
　そんな陰和に笑顔だけを向けるケルベロスたち。ここで立ち止まる訳にはいかない。今は気持ちを整理して迷宮の奥を目指すのだった。

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　カンギ戦士団・絹崎清月を倒した後、光明神ナンナを目指し進むケルベロスたちであったが突然周囲の雰囲気が一変する。
「……これは、誰かが光明神ナンナを倒したな……」
　零が呟く。他のケルベロスたちも同様の感覚だった。それを裏付けるように、周囲の迷宮が変化する。不気味なほど生命力に溢れた迷宮の植物壁が目に見える勢いで生命力を失っていく。
「ミドガルズオルムの召喚阻止は成功したようですね、急いで撤退をしましょう」
　何人かは複雑な表情を浮かべているも、冷静な判断を下すフローネ。
「……そうですね」
　ナンナとの邂逅を願っていたミライも、少しだけ眼を閉じて……それからフローネの意見に同意する。
「撤退するナラ、こちらの壁を突っ切りまショウ」
　地図で現在地を確認するアップル。現在地はかなり中央に近い場所。今来た道を戻ると、迷宮の崩壊に巻き込まれる可能性がある。実際に壁の強度を試したから分かるが、今の植物壁は自爆するような力は残っていない。グラビティならば破壊して脱出経路を作成出来る。
（「迷宮崩壊は、お約束よね」）
　口には出さないものの、そんな事を考えてしまう要。
「なら急ぎましょう、こっちね」
　アップルの指示に従い壁を破壊し始める要。
「ん、逃げよう」
　猫耳をぴくぴくさせながらの白亜の言葉と共に脱出を開始する。
　力を失った迷宮にケルベロスを傷つける事は出来ないだろう。ただ、この寒い中で琵琶湖で泳ぎたい人は居ない。
　迷宮から逃げ出しながらも、無事、ミドガルズオルムの召喚阻止に成功した事に少し安堵し走るケルベロスたちであった。

作者：雪見進	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年12月9日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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