●淡路島上空
「ここが淡路島、ナンナが担当する琵琶湖と対となる美しい島ですね。さっそく、私の『超召喚能力』を見せるとしましょう」
光明神バルドルが、手にした頭骨型の魔具を掲げると、淡路島全土を覆う植物の迷宮が生み出されていく。
それを満足そうに見やったバルドルは、彼の護衛として付き従っていた、カンギ戦士団の面々に信頼の視線を向けると、軽く一礼する。
「では、私はこの中で、『ミドガルズオルム』の召喚を行います。皆さんには、私の身を守る警護をお願いしますね」
そう言われた、カンギ戦士団の戦士達……ダモクレス、エインヘリアル、シャイターン、竜牙兵、ドラグナー、ドラゴンといった多種多様なデウスエクス達が、その信頼に応えるように胸を叩いた。
「任せて貰おう。我らカンギ戦士団、生まれも種族も違えども、確かな絆があるのだから」
光明神バルドルが迷宮に入ると、それに続いて、カンギ戦士団の戦士たちも迷宮へと歩を進める。
全ては、彼らの主たるカンギの為に。
「皆様方、緊急連絡です」
秋津島・玻璃(レプリカントのヘリオライダー・en0239)が、一礼をした後、毅然とした口調で状況の説明を始める。
「パッチワークの魔女を支配下に置き、ハロウィン攻性植物事件を引き起こした『カンギ』の軍勢により、『淡路島』及び『琵琶湖』が同時に植物に覆われる事件が発生しました。彼らの目的は、無敵の樹蛇『ミドガルズオルム』の召喚にあるようです」
――無敵。無敵とは、一体どういうことなのか。ケルベロスの一人が質問する。
「ミドガルズオルムは召喚されてしまえば、いかなる方法でも絶対に破壊されない特性を持ちます……文字通り無敵、というわけです。もし、地球上での召喚を許してしまえば……攻性植物のゲートを破壊し、侵略を排除することは、極めて難しくなります」
素早くタブレット端末を操作し、画面をケルベロス達に向ける。そこに映っていたのは、変わり果てた淡路島、そして琵琶湖の映像。
「現在、淡路島と琵琶湖は繁茂した植物で迷宮化しています。その中には、侵略寄生されたアスガルド神が設置されており、その神力によってこの大規模術式を展開しているようです」
さらに、と、休み無く説明を続ける。
「この迷宮は『カンギ』配下の精鋭軍が守りを固めています」
この精鋭軍は『これまでの幾多の戦いで『カンギ』が打ち負かし、配下に加えたデウスエクス』であり、『カンギ』とは厚い信頼と友情で結ばれていて、決して裏切ることは無い不屈の戦士団であるようだ。
「淡路島及び琵琶湖を覆い尽くした植物迷宮は、植物で構成されているため破壊して進むことが可能ですが……植物の壁や床などは、破壊されると自爆します」
自爆されれば、当然ダメージを被ることになる。ある程度、迷宮に沿って移動する必要があるだろう。
「そして迷宮内部には、先ほど説明した通り『ガンギ』によって支配され、攻性植物に寄生されたデウスエクス達が待ち構えています」
彼らは迷宮への侵入者を確認次第、迎撃へと向かう。迷宮のどこにいても、一定時間が経過すれば敵との交戦は避けられない。
「……この作戦の目的は、迷宮内部に配置されたデウスエクスの撃破。及び、迷宮を攻略し、この事件を引き起こしているアスガルド神を撃破することとなります」
淡路島の迷宮にいるアスガルド神『光明神バルドル』の撃破に成功すれば、植物迷宮は崩壊を始め、デウスエクス達も撤退するようだ。
「我々のいずれかがアスガルド神の撃破に成功すれば、作戦の目的は達成となります。即ち、この作戦では他のチームの援護もまた、重要な意味を持つこととなります」
タブレット端末をしまいながら、玻璃が一呼吸を置いた。
「攻性植物が召喚しようとしている無敵の樹蛇『ミドガルズオルム』はその名の通り無敵の存在。そのような存在ならば、敵の切り札たり得ます。つまり……この作戦を成功させることは、攻性植物との戦いに於いて、大きな意味を持つはずです」
広大な迷宮、内部を守る強敵……一筋縄とは行かないだろう。しかし、それはこの事件が、攻性植物にとっても重要なものであると言うことは明白だ。
「ケルベロスの皆様方ならば、この局面も乗り越えられると……私は、信じております」
最後に、玻璃は大きくお辞儀をした。
参加者 | |
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ペシュメリア・ビリーフニガル(ノーブルオブリゲーション・e03765) |
ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
近藤・美琴(想い人・e18027) |
千里・雉華(警部補の再訪・e21087) |
レイラ・クリスティ(氷結の魔導士・e21318) |
レイン・プラング(解析屋・e23893) |
●乱麻の迷宮
淡路島、慶野松原。淡路島の西、播磨灘に面しているこの地は、夕日が美しいことで知られている。
だが今は、それら全てが植物によって覆い隠された異様な光景に変貌している。ひとまず、ケルベロス達は目的とする侵入地点、慶野松原海水浴場に到着し、眼前にそびえる植物迷宮へと目を向けた。
「……ここですか。何とも、凄い雰囲気ですね」
「何が目的か知りゃしまセんが、立派な城をこさえたもんで」
立件しようと思えば不法侵入と占拠でスかねぇ、と、千里・雉華(警部補の再訪・e21087)が足下の蔦を踏みしめた。今にも海を飲み込まんとするような植物の牙城を前に、生唾を飲み込む近藤・美琴(想い人・e18027)であったが、そんないつも通りの雉華の様子を見ていると、若干ながらリラックスできた。
本来ならば、この蔦だらけの地面も美しい浜であった。
「進みましょう。脅威を除き、平和な島へ戻すために」
事前に打ち合わせた作戦を最終確認したケルベロス達が、ペシュメリア・ビリーフニガル(ノーブルオブリゲーション・e03765)の言葉に頷く。
最奥に座するは光明神バルドル。彼の者がこの地球に呼びださんとする無敵の樹蛇ミドガルズオルム。
切り札を切らせないための戦い――その始まりは、本当に静かなものだった。
「ま、わかっちゃあいまシたけどね……」
迷宮へ潜入した後、雉華がスマホの画面を見る。圏外――すなわち、この手の連絡手段は使用できない。スマホのGPSはパケット通信を使用して座標を取得するため、地図アプリなども役には立たない。ただし、通信を必要としないアプリ、コンパスなどは使えるようだ。
通路の壁、床、天井……通路を構成する植物は強固に絡まり合っており、崩落する心配はなさそうだ。
レイン・プラング(解析屋・e23893)が隠された森の小路を発動させてみたものの、通路の壁に動く様子などは見られない。自然に生み出されたものではない植物迷宮には、効果がなかったようだ。
植物迷宮の通路は、予想以上にねじくれていた。ゆるやかな傾斜と不規則な大きさの通路、上に昇る通路、下に抜ける穴。迷宮は多層構造のようだが、進んでいる内にいつの間にか上層や下層に移動していたりもした。
まるでフェルト生地の繊維のように、乱麻のように通路が絡まり合っている。マッピング担当のペシュメリアも良く頑張ってはいるが、相当に難航していた。紙が足りるかどうかも危うい。
だが、実際の所それは無駄ではなかった。書き込んでいるマップには、スーパーGPSの示すマーカーが現れているからだ。このマップと元々の淡路島のマップを照らし合わせ、マーカーの位置を見れば現在位置も把握できる。
「この先は行き止まりだったよ」
隠密気流を発動させ、集団よりわずかに先行していた氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)の報告に、ケルベロス達は僅かにため息をついた。行き止まりに遭遇した回数は、片手の指の本数以上になったところだ。ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)が行き止まりの壁に蛍光塗料を吹き付けてマーキングした後、分岐点まで戻って別のルートを進む。
目的とする倭文地区の安住寺は淡路島のほぼ中央、出発した慶野松原海水浴場から直線距離で約6キロメートルに位置する。
現在位置は松帆慶野の成福寺付近だ。侵入開始から15分ほど経過したが、まだまだ道程は遠い。
「ここは北方向への通路……回り道のようですね」
「その先は西に曲がっていたよ」
手に持ったコンパスを見遣るレイラ・クリスティ(氷結の魔導士・e21318)の呟きに、戻ってきたかぐらが苦い表情で返答する。
「と、なると……この分岐に戻りますわね」
「では……ここは強硬手段ですね」
ペシュメリアの言葉に、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が返す。周囲を警戒しつつ、破壊予定の壁から距離を開けた。
「プライド・ワン。お願いするです」
真理のサーヴァント、ライドキャリバーのプライド・ワンのヘッドライトが攻撃色へと変わり、内蔵されたガトリング砲が唸りを上げた。
暗い通路を照らし出すハレーションの光、それが数秒続いた後に壁が自爆した。弾け飛ぶ幹、枝、葉、蔓、花弁……それらを受けきっても、プライド・ワンの姿勢は変わらず。
「オラァッ!!」
ドールィが翼を出し、爆風に乗じて勢いよくドロップキックで突っ込んでいく。壁の向こう側に敵は――いなかった。飛び蹴りが空を切る。
「む……縦に大きな通路のようだな」
ドールィに続き、美琴、レイラが翼を広げ、空洞を降下する。丈夫そうな蔓を引っ張って合流した後、ケルベロスはルートを決めて足を進めていく。
探索を初めて40分が経過した。ふ……と、静かに溜息をつくレインだったが――いつの間にか、手のひらが濡れていた。汗だった。嫌な予感がする。
刹那の間を置いて、異様な雰囲気をケルベロス達全員が感じ取った。この通路の先に……何かが、いる。
「……行きましょう」
レインが前へ進む。内心、恐怖でいっぱいだった。足を進めるにつれ、徐々に動悸が速くなる。そして――。
「ご機嫌よう、ケルベロスの皆様」
レインの脳裏にこびりついた記憶から、その姿を違えることなく。
ドラグナーのアーデルハイトが、そこには待ち構えていた。
●カンギ戦士団
とはいえ、迷宮に侵入した時点で、敵勢力のデウスエクス――カンギ戦士団の迎撃が来ることは想定していた。既にケルベロス達は戦闘態勢を整え終えている。
「私はアーデルハイトと言います。カンギ戦士団が一人として、皆様にはここで死んで頂きますわ」
――なんだ? レインは、アーデルハイトの言動に若干の違和感を覚えた。自分の知っている彼女は、このような言動をする性格だっただろうか。
「オマエの名前なんざどうでもいい。この先のバルドル様に会わせてもらうぜ」
ドールィがカマを掛けながら挑発する。これの返答次第でこの先にバルドルがいるかどうか、探りを入れているのだ。
「つれませんわねえ。私と命の奪い合いを楽しんで逝かれてはいいではありませんか」
簒奪者の鎌を下段に構え、アーデルハイトがにこやかに笑う。その瞳は血を求める獰猛さ、そして……カンギへの深い信頼を感じさせた。例えここで命を散らそうとも、バルドルの元へは行かせまい、と。
やはり、何か違う――過去、自分の心を壊す程にいたぶった彼女と、確かに姿形、そして声も一致している。だが――。
「プラングさん!」
叫びながら、かぐらがキャバリアランページでアーデルハイトに奇襲を仕掛ける。まともにぶつかり合う両者――手応えはあった。
その声と音にハッとして、レインがアーデルハイトの方へと姿勢を向ける。その時、それは見えた。
アーデルハイトの体に巻き付くように埋め込まれた、攻性植物が。
「侵略寄生……でスね」
座った目つきをしながら、雉華がそう言った。カンギ戦士団はカンギと戦い、敗れ、そして支配下に置かれたデウスエクスの集団。カンギとは信頼と友情で固く結ばれた信頼関係がある、と聞かされていたが。
「侵略寄生って、もしかしたらみんなが平和に暮らす手段に出来るのかもですが……侵略も寄生も、受け入れられないですね」
心理が呟く。恐らく、カンギ戦士団全員、そして光明神バルドルも琵琶湖にいるナンナも同じく侵略寄生を受けているのだろう。ケルベロス達は言いようのない嫌悪感を覚えた。
「いえ……例え貴方の中に友情と信頼が、事実あるのだとしても」
ペシュメリアが、ライトニングロッドを構えながら。
「それは私達のものには及びはしない。貴方を倒します」
雷光の障壁を呼び出し、前衛のケルベロス達へ守りの加護を与える。
それに合わせ、戦闘モードのスイッチが入った美琴が掌からドラゴンの幻影を放つ。無表情で。感情を消していた。敵なら倒すしかない。
「あなただけは、許しません。覚悟してください」
妹のように思ってきたレインの心を壊したアーデルハイト――それが、侵略寄生を受けて変貌していたとしても――へ怒りを乗せながら、ケルベロスチェインを猟犬が如く飛びかからせる。
「はて。私あなたになにかした覚えがありませんが」
鎌を振るい、火花を散らせながらチェインが弾き飛ばされる。
「私にではありません。レインに……!」
「そちらも覚えがありませんわ」
侵略寄生を受けて過去の記憶が消し去られたのか、それともただ単に本当に覚えていないのか。定かではないが、その言葉はレイラの怒りをさらに燃え上がらせていく。
●PAIN KILL
「そろそろ本気を出しましょうか……」
随分と攻撃の応酬を続けた後、アーデルハイトがそう言った。その片手には、簒奪者の鎌では無く――光り輝く、果実があった。
収穫形態。攻性植物のグラビティだ。アーデルハイトの傷が見る見るうちに癒えていく。
「侵略寄生は精神を支配するに留まらないみたいですわね」
攻性植物のグラビティも使ってきますわ、とペシュメリアが周囲に呼びかけた。真理、プライド・ワンが最前衛へ出る
「歯ァ食いしばれェ!」
真っ赤に燃え上がる地獄の両脚を敵に叩きつける、ドラゴンサマーソルトクラッシュ。しかし、それはアーデルハイトの背後から伸びた蔓触手によって阻まれる。
「野郎ッ!」
「溺れろ」
立て続けに、瓦礫の大蛇(ガレキノオロチ)を発動させる雉華。彼女のケルベロスコートの内側から大量の瓦礫や廃棄物が呼び出され、全てを巻き込まんとする質量の濁流がアーデルハイトを呑み込んでいく。
波が引くように、呼び出された瓦礫や廃棄物がケルベロスコートへと引っ込んでいく。アーデルハイトは依然健在。かなりダメージを与えたはずだが、アーデルハイトに倒れる様子はまだ見られない。流石はカンギ戦士団の一人と行ったところか。
「では、こちらも意趣返しと言うことで」
気づけば、アーデルハイトの両脚が蔦に覆われていた。それは通路の床に同化するように巻き込んでいる。
「消え去りなさいませ!」
床が、壁が、天井が。通路の植物全てがケルベロス達へ襲いかかり、飲み込んでいく――! アーデルハイトの眼前には、植物の檻が出来上がり、ケルベロス達の姿が消え去っていた。
「あたしの!! 仲間に!! 手を出すんじゃねえ!!」
植物の檻が爆ぜる。無表情から一変、激情を露わにした美琴が惨殺ナイフを手に、植物の檻を引き裂きながらアーデルハイトへ突撃する。その後ろでは、ケルベロス達がヒールを掛け合っている。相当に被害が出てしまった。
特にディフェンダーを務める二人は危機的状況だ。プライド・ワンは今の攻撃で沈黙してしまった。分身の術を発動させながら、レインは震えていた。思えば、レインは戦闘が始まる前から――アーデルハイトの気配を察知してから、ずっと震えたままだ。ずっと、恐怖に染まっていた。
(「やっぱり、私じゃ……!」)
その小さな手を、レイラが優しく包み込んだ。戦場に似付かわしくないその暖かみに、震えが少し、おさまる。
「大丈夫、私が守ります」
自分と同じく傷を負いながらも、その力強い眼差しに絶望はなかった。いや、ケルベロスの誰もがその瞳に絶望を宿してはいない。
「プライド・ワンの仇……とらせてもらうですよ」
ヒールを受けて立ち上がった真理。今度こそは守ってみせると意気込むドールィ。ペシュメリアはアーデルハイトに何と言っただろうか。
『例え貴方の中に友情と信頼が、事実あるのだとしても――それは私達のものには及びはしない。貴方を倒します』
友情と信頼は崇拝と隷属ではない。そこには温もりもない。勇気もない。それは敵にはなく、我々にはある。
「これでトドメですわ」
アーデルハイトが攻性植物の蔓を飛びかからせる。しかし、それはドールィのリベットナックルが弾いた。
「俺は機械も情報戦もニガテでよ……出来るのは体を張るくらいだ。でも、それならテメェに負けねェな」
「プラングさん、今です!」
「大丈夫、レインなら乗り越えられます」
かぐらのロックオンレーザーと、レイラのルースレス・コンジェラシオンが交差するようにアーデルハイトに直撃し、動きを完全に封じる。
(「姉さん、みんな、ありがとう……私は……!」)
涙しながら、アーデルハイトに肉迫するレイン。その涙はもはや、恐怖に染まったものではない。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その手に携えたゲシュタルトグレイブがアーデルハイトの心の臓を貫く。
致命傷だ。全て、決着した。
「…………お……ま、え……」
絶命の瞬間、アーデルハイトの顔が絶望に染まる。その時、脳裏に何が浮かんだのだろうか――その言葉の深意を聞く前に、彼女は地に潰えた。
●樹界迷宮崩壊
戦闘の被害は大きい。探索を再開するに当たって、まずは各自ヒールを掛け合って体勢を整えていた。
「皆様、よろしければこれを」
と、レイラが胸元から栄養ドリンクを取り出してケルベロス達に配る。暖かい味だ。戦闘に疲れた体によく染みた。
探索を再開し2時間ほど経過した頃、ようやく目的地である安住寺へと到着した。無論、どこにも寺のようなものは見当たらない。そして、バルドルの気配も感じられない。
次の探索方針を決めようとした時、その異変は起こった。植物迷宮全体が、大きく揺れて鳴動している。
「これは……」
天井からパラパラと落ちてくるものを雉華が手にとった。植物の破片だ。崩壊し始めているのだろうか。
「誰かがバルドルを倒したようですね」
「私に付いてきてくださいです!」
崩壊に巻き込まれる前に、脱出しなければ。迷宮侵入後からアリアドネの糸を使っていた真理が呼びかけ、ケルベロス達が走り出す。
しかし、ここまで来るのに3時間は掛かっている。アリアドネの糸がぷつんと消えた。今まで辿ってきた通路のいくつかが、崩落してしまったようだ。あとはコンパスだけが頼りだ。
「チッ、仕方ねェ!」
ドールィが自爆カウンターを受ける覚悟で壁をぶん殴る。弾け飛ぶ壁。だが、自爆は起きなかった。
「今なら自爆しねェのか……!?」
「ならば一気に突き進みますわよ!」
散々自分たちを迷わせた植物迷宮への鬱憤を晴らすかのように、色とりどりのグラビティを駆使して壁も天井も破壊しながらケルベロス達が突き進んでいく。
そして最後の壁を突き破った時――太陽の光のまぶしさに、ケルベロス達が目を覆った。
そこは、侵入開始地点の慶野松原海水浴場。刻は昼過ぎ。日が傾き始めている。
「綺麗……」
崩落を続ける植物迷宮を背に、ケルベロス達が播磨灘の海岸線を見晴らす。水面に日光が照り返し、沖に見えるは小豆島。自分たちが守った美しい光景に感動を覚えながら、充足感に身を震わせるケルベロス達であった。
作者:炭酸水 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年12月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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