小は大を凌駕するか

作者:水無月衛人

●急募、貧乳を愛する者
「何ですか、これ……」
 街を歩いていたアルフレッド・バークリー(殲滅領域・e00148)が、ふと壁に貼られていたビラを見付けたのは偶然のことだった。
 しかし、余りにも下劣で怪しさの漂うその内容はとても目に付くもので、ある意味では必然だったのかも知れない。
 ビラには『集え貧乳マニア! 小さき事の素晴らしさを知り、君も悟りを開こう!』という表題と、集会場所と思われる簡素な地図、そして日時だけが記載されていた。
 しかし、アルフレッドが気になったはそこではない。
「これ、ビルシャナでしょうか……?」
 ビラの背景に描かれていたのは、仰々しい後光を背に翼状の腕を広げた人型と思しきシルエット。ハッキリとはしないが、見覚えのあるアウトラインに酷似していた。
「……一応、報告しておきましょうか」
 アルフレッドはこんな低俗な内容のビラを気に留めてしまった事に少し後悔を覚えたが、気を取り直して組織の方へと足を向けた。
 
●いかがわしき集会を叩け
「ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響によって、悟りを開いてビルシャナになってしまう人間が出ているみたいっすね。発生件数はそれほど多くない辺り、大菩薩撃破の成果はしっかり出てるみたいっす」
 アルフレッドからの報告を受けた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は予知を終えてケルベロスたちの前に姿を現した。
「それで、こいつらは教義……というよりは自分の意見を押し付けて、半ば強引に信者を増やすのを目的に活動してるようっすね。ビルシャナになった人の言葉には不思議な説得力がありますから」
 胡散臭い話でも、それっぽく思い込ませる事が出来る言葉の力。最初から共感している者であれば効率はさらに良くなる。
 今回のケースはそれを狙った動きであると言う。
「皆さんには信者獲得のために貧乳好き? ……の集会を開こうとしているビルシャナ一体の撃破をお願いするっす。集会場所へ乗り込んで、蹴散らしてやってください」
 ただし、集会場所へ行く以上は一般人の参加者も来ているから注意して欲しいとダンテは付け加える。
 言うまでもなく、それは張り紙を見て興味をもった人たち。すなわち、信者になる高い可能性を秘めた人たちだ。
「もしも会場へやって来た人が信者になってしまった場合、ビルシャナの手下として戦闘に参加してくるんで気を付けて欲しいっす。信者自身は所詮はただの人間に毛が生えた程度っすけど、数が増えると色々厄介になりますから、出来れば信者化される前に一つ対処しておきたい所っすね。ビルシャナの説教を超える説得なんかが出来れば、妨害できるかと思うっすけど……」
 弁論でビルシャナに対抗するのは容易なことではない。
「完全に信者になってしまった人はビルシャナを倒して洗脳状態を解くしかないんで、説得は諦めて戦うかあるいは放置するか、そこの判断はお任せするっす」
 次いでダンテは一枚の紙を取り出して全員に見せた。件のビラだ。
「場所は学校の体育館、集まるのは十名っすね。深夜の密会なので、興味を持ってくる人以外は誰もいないっす。その辺は安心っすよ」
 もっとも、内容が内容だけに自粛したのか、それとも確実性を高めるための策か、その理由は分からなかったが。
「ただ、自主的に足を運んでくる人は最初から興味……この場合は元々貧乳好きとかそんな連中っすから、説得するにもちょっと骨が折れると思うっす。自分にはちょっと分かんないっすけど、奴らの心に響くやつをガツンと言ってやってください」
 肝心な部分をケルベロスたちにぶん投げ、ダンテは誤魔化すように苦笑いを浮かべた。
「……とまあ、そう言うわけなんで、敵は最大でビルシャナ一体と信者候補十人になるっすね。ビルシャナは『ビルシャナ閃光』『孔雀炎』『清めの光』のグラビティを使う個体っす。信者は殴る、蹴る、掴み掛かる程度の事しかしないっすけど、信者化の影響で多少はダメージになるんで頭に入れておいてください。……ちなみに、信者は倒すと死んじゃうんで、助ける場合は注意してくださいよ?」
 
 そこまでで説明を終えたダンテは最後に一つ、アドバイスをケルベロスたちに送った。
「説得のポイントはインパクトっす。相手もごり押しで信じ込ませてるんすから、こっちも理屈にこだわっちゃダメだと思うっす。気持ちをぶつけてやってください!」


参加者
アルフレッド・バークリー(殲滅領域・e00148)
角慧・れいん(匣底のアラディア・e02166)
鎹・聖園(レプリカントぽんこつ・e02814)
クリスティア・マーレイ(ぺったんこの妖精・e05505)
エイジ・スルビィーシャ(シリアスブレイカー・e07778)
アリス・スチュアーテ(不縛の碧風・e10508)
ラティエル・シュルツ(星詠みの蒼きリコリス・e15745)
アニマリア・スノーフレーク(疑惑の十歳児・e16108)

■リプレイ

●狂信を生む集会
 夜も更け始めた頃。とある学校の体育館には、十人の男女がいささか緊張の面持ちで時が来るのを待っていた。
 集まった理由が理由だからか誰も言葉を交わそうとすることなく、互いに名前も知らない初対面の男女たちはただ静かにじっとしているだけだった。
 十人が静けさに居心地の悪さを感じ始めた頃になり、ようやく壇上の舞台袖から主役が現れる。
「諸君、今宵はご苦労。夜も遅くに同好の士が集まってくれた事、嬉しく思うぞ」
 壇の中央に立ったビルシャナが厳かな声色で小さく笑いを零すと、集まった人たちからは「おお……」という感嘆の声が漏れた。
 異形のビルシャナが堂々と現れたにも拘わらず、十人のうちの誰もが疑問や恐怖を口にしなかった。それどころか、何人かは早くも尊敬の眼差しを向けている。
 ビルシャナはそんな一同を見渡すと、仰々しい仕草と共に語り始めた。
「ふふふ、伝わってくるぞ。諸君らの滾る思いが、募りに募った小さき胸への欲望が!」
 十人は黙って聞いている。しかし、迷いの色が濃かった顔には徐々に決意の感情が差し始めていた。
「諸君らは今まで苦労をしてきた。世の中の大きければ良いという風潮に呑まれ、己の感情を抑え込むという苦悩を……。だが、そんな日々は終わろうとしている。そう、諸君らが手によってな!」
 徐々に声を荒げ、昂ぶり始めた聴衆の心理を煽る。
「選ばれし諸君らこそが、まずは新たな悟りへの到達者となるのだ! そして、新たな時代の幕開けを我らが手で成し遂げようではないか!」
「うおおおおおっ! 貧乳ばんざああああああいっ!」
 ビルシャナの高らかな宣言に男女たちは火の付いた火薬のように感情を爆発させて叫んだ。わずか十人の熱狂で、広い体育館がむせ返りそうな異様な空気に包まれる。
 その空気に乗せられ、ビルシャナの言葉にもさらに感情が籠もっていく。
「一つ! 貧乳とは無駄を排した理想の形なり! 最小限に留められた脂肪……その慎ましやかさには心が震える!」
 拳を握り、訴えるように叫ぶ。その姿に見ている者たちは圧倒の表情を浮かべた。
「一つ! 貧乳が作り出す曲線美は唯一無二! 巨乳には決して真似の出来ない造形なり! その美しさたるや……比べるまでもない!」
 その曲線を両手で大きく描いてみせる。その姿に見ている者たちは感動の溜め息を漏らした。
「そして、思い出してみるのだ……数々の絵画の名匠たちは、女神の絵を描く時には必ず貧乳気味に描いている……。つまり貧乳は神に等しい事を意味する! これは歴史に裏打ちされた真実なのだ!」
 力説する謎のこじつけ理論に、見ている者たちは感心の声を上げた。
「我々が望み敬うものは乳の中でもまさに神体! 惹かれるのも致し方なし! ゆえにこの真実を世に広めんとするは、まさに我らが天命なのである!」
 もっともらしい口振りに、見ている者たちからは自然と拍手が起こった。
 十人という少ない、けれどもそれにしては大きな喝采を受け、ビルシャナもまた少人数相手とは思えない豪快な身振りで自説を唱える。
「我が教えを説け! そして高らかに宣言せよ! 貧乳こそが至高であり、愛すべき存在なのであると!」
 感極まった同調の声が怒声となって館内に響く。
 おどおどしていたのはどこへやら、十人の男女たちはすっかりビルシャナの演説の虜となっていた。
 しかし──。
「そこまでです! こんな愚かな集会は中止にしてもらいます!」
 そのまま勢いで街に繰り出そうかと言わんばかりの十人だったが、彼らに最後に残っていた羞恥心と恐怖心を刺激したのは、突入して来たアルフレッド・バークリー(殲滅領域・e00148)の怒りの叫びだった。
「何だ、騒々しい。君も貧乳の良さを学びに来たのかね?」
 興を削がれてやや不機嫌なビルシャナにクリスティア・マーレイ(ぺったんこの妖精・e05505)が諭すように言う
「悪いんだけど、養殖されるのは困るんだよね。僕たちみたいな趣味は希少性がウリだからさ。僕自身の価値を守るために邪魔させてもらうよ」
 続々と押し入ってきたケルベロスたちの姿を見て、ビルシャナはうんざりとした様子で深い溜め息を吐いた。
「巨乳派の差し金か……? 我が道を邪魔しようというのか……だが」
 演壇の中央に置かれた机まで歩いて行き、ゆっくりと一同の方を振り返ると、机を強く叩いて声を張り上げた。
「私が半生を賭けて辿り着いた悟りの境地は不動の真理なり! 貴様らになど妨害させぬ!」

●乳への愛に正道なし
「さあ、我が同士たちよ! 立ち上がる時が来たぞ! 貧乳の有り難みを心に刻み、戦いに挑む時だ!」
 ビルシャナが号令を掛けると、十人の男女はそれぞれぶつぶつと小さな声で自分に何かを言い聞かせ始める。
 すると、興奮し熱の籠もっていた目付きが徐々に虚ろなものへと変わり始めていく。
「みんな、惑わされちゃダメだよ! 胸以外にも人にはいろんな萌えがあるんだよ? 貧乳だけに拘泥してちゃ勿体ないよ!」
「そうよ! おっぱいはみんな素敵なものなのよ! 一種類のおっぱいに固執するなんて損をしてるわー!」
 ビルシャナの言葉に取り込まれようとしていた人たちに向かって、ラティエル・シュルツ(星詠みの蒼きリコリス・e15745)と角慧・れいん(匣底のアラディア・e02166)が説得に掛かる。
 すると、人々にわずかながら動揺が走る。
 だが、二人は……。
「やめろ! そいつらは巨乳だ! 巨乳の話に耳を傾けてはならぬ!」
「きょ、巨乳……俺たちの前に立ちはだかるもの……」
「そうだ、我らとは相容れぬ存在……奴らは自分の地位を守るために体の良い事を平気でのたまう。注意せよ!」
 ビルシャナの注意を受けて、人々から宿り掛けた迷いの色が消えていく。
「共感できる話を軸にする……なるほど、心を捉える良い説法ですなの」
 ビルシャナのやり口を聞いていたアニマリア・スノーフレーク(疑惑の十歳児・e16108)は、手を叩いてその論法を評価する。だが、その目は完全に嘲笑していた。
「……ですが、所詮は妄言。虚構を語る言葉に、それ以上の力は無しですなの!」
「馬鹿な……貧乳が一番に決まってる……!」
 アニマリアの態度に反発心を滲ませる貧乳信者たち。そんな彼らに鎹・聖園(レプリカントぽんこつ・e02814)と彼女の言に便乗したアリス・スチュアーテ(不縛の碧風・e10508)がさらに説得を掛けた。
「あんぱんはー、おーきいほーがいいけれどー、おっぱいは-、おーきいもー、ちーさいもー、みんないっしょでーすばらしーいー。おっぱいにー、きせんなしー」
「まったくその通りです! 真に貧乳を愛するなら、大きい小さいの差別なく全てを愛するべきだと思います! そうする事で初めて貧乳に価値が出るのではないのでしょうか!」
「ううっ……俺たちのしている事は差別だと言うのか……?」
 妙に力の入ったアリスに、貧乳信者たちが気圧される。
「お前たちは自分の足でここへ来たんだ、貧乳について思いがあるのだろうな。……だが、そうでない人たちを引き入れるとなれば話は別だ。勧誘で強引に取り込んだら、そこには大事な心を伴っていないんじゃないか? それじゃ意味がないだろう?」
「う、うわああああああっ!」
 戸惑いの色を濃くした信者たちにエイジ・スルビィーシャ(シリアスブレイカー・e07778)が理論で追い打ちを掛けると、恥ずかしさと良心の呵責に耐えられなくなった者が二名逃げ出した。
「ま、待つのだ! 貧乳勃興の道はまだ始まったばかり……この程度の試練を乗り越えられなくてどうする!」
 ビルシャナが慌てて呼び止めるが、一瞬思い止まらせる程度で効果は薄かった。
 根っからの貧乳コンプレックスである彼らの心は傾きやすい反面、揺らぎ始めたら修復するのも容易ではなかったのだ。
「なんと言う事だ……。まだ彼らの迷いを断ち切れていなかったか……」
 やりきれぬ思いを吐露するビルシャナに対し、手応えを感じたケルベロスたちはさらに攻勢を強めた。

●全ての乳に愛を
「小さいのも良いけれどー、大きいのもまた良いのー♪ お互いがー認め合うライバルだからー、もっと素敵になっていくのー♪」
 壇上に上がったれいんが軽やかにステップを踏み、歌とコールで体育館内を包み込む。
「うあああ! やめろ! 貧乳が……貧乳が一番なんだ! それだけがあればいいんだぁっ!」
 大音響のメロディに、貧乳信者たちは逃れられず耳を押さえて必死に抗った。
「惑わされるな! 平等など幻想だ! 巨乳は貧乳を駆逐しようとしているに過ぎんのだ!」
 ビルシャナも動揺を抑え込もうと説得を掛ける。
 その言葉を掻き消そうと、ケルベロスたちは貧乳信者たちに一気に畳み掛けた。
「ちっぱいはね、とても素晴らしいんだ……。そこにあるだけで後光が差し込むんじゃないかというほどに……。でもね、悟りなんか開く必要はないんだよ。……なぜなら、ちっぱいの素晴らしさに気付いた時点で悟っているからさ。そう! 僕らはもう完全な状態であり、どこに向かう必要もない。ただひたすらにちっぱいを愛していればそれでいいのさほらいっしょにさけぼうちっぱいちっぱいぺったんぺったんつるつるぺったんつるぺったん!」
「ぺ……ぺったん……ぺったんぺったん!」
 クリスティアが冷静に、そして徐々に興奮して何を言っているのか分からない言葉を口にする。が、それでも貧乳好きの彼らの心には何かが響いたらしく、何人かが一緒になって唱和し始める。
 そんな彼らの心を決定的に激震させたのは、アルフレッドの訴えだった。
「みなさん考えてみてください! 貧乳の行き着く先を! それは無乳です! そこまで行き着いて初めて、真のぺったん愛好家と呼べるんです。貧乳で満足しようなんて生ぬるいですよ! 小さい方がいいけど少しはあった方が、なんて中途半端すぎます!」
「ちゅ、中途半端……!?」
 あまりの衝撃に愕然とし、信者たちは膝を突く。
 その顔には貧乳に熱狂していた頃の面影は既にない。抜け殻にされてしまったかのように空虚感の漂う視線を、ただ虚空に巡らせるだけだった。
「世の中に一つで良い物なんてないんだよ? 違いがあるからこそ、意味があるの。……そして、誰もが認める完璧なものだって存在しない。貧乳の良い所も悪い所も受け入れる事が出来たあなたたちなら、本当の胸の素晴らしさに気が付くはずだよ」
「乳は……偉大であり……平等……」
 ラティエルが優しく諭すと、放心した信者たちの中には涙すら浮かべる者もいた。彼らの心には、もう偏執した貧乳への絶対的価値観は存在しなかった。
「……ありがとう。劣等感の余り、俺たちは大事な事を忘れていたようだ。今日は良い夜になったよ……」
 十人の貧乳好きたちは正気を取り戻し、晴々しい表情で感謝の言葉を口にする。
「ぐっ、完全に取り込んでさえいれば……」
 信徒化の途中で乗り込まれてしまった事に、ビルシャナが悔しさを口にする。
「さて、あなたの野望は既に潰えたも同然。大人しく討伐されてもらいましょうか」
 アルフレッドがビルシャナに相対すると、計画の遂行が不可能と悟ったビルシャナは身体を震わせた。
「我が信徒たちの心をこうも乱すとは、不届き者どもめ……! やはり、力をもってして切り開かねばならぬ道があるということか……!」
 激しい怒りのオーラを発したビルシャナは、残った女性二人に向かって抗戦を訴えた。
「貧乳の道を信じた者よ! 汝らこそ選ばれし神の使いなり! 行くぞ、これは貧乳の神性を守るための聖戦である! 死力を尽くして敵を蹴散らすのだ!」

●ああ乳よ永遠なれ
「ぬうっ!? 後ろかッ!」
 エイジのビハインドであるアイネに背後から強襲を受け、ビルシャナはバランスを崩した。
「……なんかアイネの奴、妙に力入ってるな。後で俺まで怒られなきゃいいが……」
 先程から要所要所で効果的に攻撃を叩き込むサーヴァントの姿を見て、エイジは冷や汗を流した。と、そのアイネから無言の圧力を受け、慌てて攻撃に参加する。
「ぐっ……この程度では私は屈せぬ!」
 ビルシャナは踏み止まると、向かってくるエイジに攻撃を試みようとする。が、足下から噴出したマグマが先にその身体を包み込んだ。
「ぐおおおおっ……!」
「ふ……おっぱいしかあいせぬさみしいおとこのこころのうごきほど、わかりやすいものはない」
 聖園がしたり顔で両腕を広げて謎の構えを見せる。
 その隙に近距離まで迫ったエイジが素早い蹴りをビルシャナの鳩尾に叩き込んだ。
「ぐぼっ……! こ、この……この程度で……!」
 それでもビルシャナはギリギリの所で体勢を持ち堪えさせると、反撃に炎を巻き起こす。
「まだだ……まだ終わらぬ! 我が熱き貧乳への思い、喰らうが良い!」
 逆巻いた炎が赤き鳥となり、皆の前に立ちはだかったクリスティアに襲い掛かった。
 しかし、クリスティアはその攻撃を正面から受けきると、ビルシャナに向かって強い口調で返した。
「……足りないよ。そんな程度の思いじゃ、ちっぱいに対する愛が足りない!」
「な、なんだと……」
 攻撃に耐えた事に対する驚きと自身の思いの強さを否定された事への戸惑いで、ビルシャナは大きく後退る。
「……終わりです。こんな馬鹿げた話で迷惑を掛けた事、思いっきり悔いてください!」
 珍しく怒りの様相を顕わにしたアルフレッドが意気を削がれたビルシャナに二本の鎖を巻き付けると、何度も執拗に叩き付けた。
「ぬわあああああっ! ひ、貧乳は……ちっぱいは不滅なのだあああああっ……!」
 激しく叩き付けられたビルシャナは雄叫びを上げながら潰されていき、やがて大量の巻き上がった羽毛だけを残して完全に消滅していった。
「まったく……迷惑な敵でしたね……」
「やっぱり、鳥の言葉は人間には通じなかったようですなの」
 敵の消滅を確認して溜め息を吐くアルフレッドたちに、館内の隅に待避していた十人が歩み寄ってきて礼を口にする。
「本当にありがとう……君たちには感謝してもしきれないよ。男性も女性も、貧乳さんも巨乳さんも、君たちの言葉は胸に響いた。これからは色んなものを受け入れ、そして堂々と貧乳を愛していくと誓おう」
「あ、ああ……そうだね。役に立てたみたいで……うん、何よりだよ」
 こちらも勢い重視の詭弁で捲し立てた事は言えず、純粋な視線で感謝の言葉を述べられたラティエルたちは渇いた笑いを上げるしかなかった。

作者:水無月衛人 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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