光明神域攻略戦~迷宮を征け

作者:雨音瑛

●淡路島上空
「ここが淡路島、ナンナが担当する琵琶湖と対となる美しい島ですね。さっそく、私の『超召喚能力』を見せるとしましょう」
 光明神バルドルが、手にした頭骨型の魔具を掲げると、淡路島全土を覆う植物の迷宮が生み出されていく。
 それを満足そうに見やったバルドルは、彼の護衛として付き従っていた、カンギ戦士団の面々に信頼の視線を向けると、軽く一礼する。
「では、私はこの中で、『ミドガルズオルム』の召喚を行います。皆さんには、私の身を守る警護をお願いしますね」
 そう言われた、カンギ戦士団の戦士達……ダモクレス、エインヘリアル、シャイターン、竜牙兵、ドラグナー、ドラゴンといった多種多様なデウスエクス達が、その信頼に応えるように胸を叩いた。
「任せて貰おう。我らカンギ戦士団、生まれも種族も違えども、確かな絆があるのだから」
 光明神バルドルが迷宮に入ると、それに続いて、カンギ戦士団の戦士たちも迷宮へと歩を進める。
 全ては、彼らの主たるカンギの為に。

●ヘリポートにて
「ユグドラシルの魔女を支配下に置き、ハロウィン攻性植物事件を引き起こした『カンギ』。その軍勢により、『淡路島』と『琵琶湖』が同時に植物に覆われる事件が発生した」
 ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が、厳しい表情で話す。
「彼らの目的は『無敵の樹蛇』ミドガルズオルムの召喚。このミドガルズオルムは、どのような方法でも破壊されないという特性を持っている。もしも地球上でミドガルズオルムの召喚を許してしまうようなことがあれば——」
 攻性植物のゲートを破壊し、侵略を排除するのは極めて困難となる。それは、地球にとって由由しき事態だ。
「現在、淡路島と琵琶湖は繁茂した植物で迷宮化している。どうやら、その地の中心に設置された『侵略寄生されたアスガルド神』の神力により、大規模術式を展開しているらしい」
 この迷宮では、カンギの配下の精鋭軍が守りを固めている。彼らは『カンギがこれまでの戦いで打ち負かし、配下に加えたデウスエクス』だ。
「彼らは、カンギと熱い信頼と友情で結ばれている。いわば決して裏切ることの無い、不屈の戦士団だといえるだろう」
 ウィズはタブレット端末の画面を切り替え、説明を続ける。
「さて、君たちに向かって欲しいのは淡路島だ。淡路島全域は、植物迷宮で覆い尽くされている。植物迷宮は、その名の通り植物でできた迷宮。破壊して進むことも不可能では無い」
 とはいえ、迷宮を構成している植物の壁や床は破壊されると自爆してダメージを与えてくる。ある程度迷宮に沿って移動する必要があるだろう。
「また、広い迷宮内のどこにアスガルド神がいるかは不明だ。可能であれば、探索するチームごとに探索開始地点や探索地域を手分けするのが良いかもしれないな」
 そして、敵は広大な迷宮だけではない。迷宮内にはカンギ配下のデウスエクスがいるため、侵入者は攻撃にさらされることになる。
 デウスエクスは迷宮への侵入者を確認次第迎撃に出てくるため、一定時間が経過すればどこにいても攻撃を受けてしまうことは確実。
「デウスエクスの撃破、迷宮の探索、そしてアスガルド神の撃破が今回の目的だ」
 淡路島の迷宮にいるアスガルド神『光明神バルドル』の撃破に成功すれば、植物迷宮は崩壊をはじめ、デウスエクスたちも撤退していく。
「周辺の住民の避難は既に完了している。君たちは迷宮の攻略とアスガルド神の撃破に集中し、無敵の樹蛇『ミドガルズオルム』の召還を阻止してくれ。生やさしいことではないが——君たちならできると、私は信じている」
 私もすべきことをしよう、と。ウィズはヘリオンを仰いだ。


参加者
呉羽・律(凱歌継承者・e00780)
牡丹屋・潤(カシミール・e04743)
天那・摘木(ビハインドとお姉さん・e05696)
深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)
クレーエ・スクラーヴェ(白く穢れる宵闇の・e11631)
フィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)
上里・藤(レッドデータ・e27726)

■リプレイ

●舞台への誘い
 洲本市南東部の港湾部から上陸したケルベロスたちの眼前に広がるのは、植物が壁や床となった緑の迷宮。
 しっかりと組み合わされた植物の壁に向かい、牡丹屋・潤(カシミール・e04743)が隠された森の小路を使用する。
「ううん、まったく動いてくれないですね。大人しく迷宮に沿って探索しましょうか」
「そうですね、携帯電話も使えないようですし……連絡が取れれば楽でしたが、仕方ありません」
 深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)が携帯電話を仕舞い、頷く。
「それじゃあ、本格的に探索開始するッス!」
 スーパーGPSを使用しながら、上里・藤(レッドデータ・e27726)が特製地図ガイドに視線を落とす。が、地図には今いる場所の大体の位置が表示されるだけ。迷宮は既存の道路とはまったく異なる構造をしているため、持ち込んだ地図を見たところで迷宮攻略の手がかりにはなりそうもなかった。
「うーん、自力で迷宮をマッピングすればスーパーGPSが役に立ったかもしれないッスけど……」
「携帯電話も地図も使えない、か……立ち止まっていても仕方ないし、奥へと進んでみようか」
 隠密気流を使用するクレーエ・スクラーヴェ(白く穢れる宵闇の・e11631)が促し、警戒しつつも先行するのだった。
 踏み込んだ迷宮は、実に複雑な構造をしていた。下へ降り、あるいは上へ上がりながらケルベロスたちは進んでゆく。
「デウスエクスの力は凄まじいですね」
 足に繋がる赤い糸を時折確認しながら、エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)があたりを見回した。なだらかな斜面を降りて角を曲がる際、スプレー塗料で矢印を描く。
「この植物のせいで、ランドマークや建造物もまったく見えないしね」
 フィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)が、植物の絡みあった壁を見遣る。床も壁も天井も、全てが植物でできた迷宮だ。
「同じ道を何度も行き来するのは嫌だし、印はつけておかないとね」
 天那・摘木(ビハインドとお姉さん・e05696)が、ペンキを入れた水風船を床に落とした。一度通った道に、鮮やかな色が残されてゆく。
 そんな風に行きつ戻りつ。迷宮を進んでから、1時間が経過しただろうか。不意にクレーエが立ち止まり、後方を歩く仲間に制止の合図を送った。
 同時に察したルティエは立ち止まり、尻尾の毛を逆立てんばかりに正面を見据える。
「来たな……お前達にこの地を渡す気は無い!」
「ティアクライスのエストレイア、参上です! この剣に賭けて、必ずや勝利を!」
 ゾディアックソード「第二星厄剣アスティリオ」を掲げ、エストレイアも気合い十分だ。
 身構えるケルベロスたちの視線の先には、静かに佇む女性がひとり。女性はケルベロスたちを視界に捉え、上品に微笑んだ。
「信頼せし我が友カンギの名にかけて——邪魔は、させないわ」
 芝居がかった動作で大きく一礼をする女性に、呉羽・律(凱歌継承者・e00780)は悲痛な視線を注いでいた。気付けばクレーエよりも前に出て、声を張り上げていた。
「カンギとの信頼? 友情? 笑わせるな。我等には少なくとも18年一緒だった絆があるだろ?」
 セツは律の紡いだ単語を何度か呟き、不思議そうに見つめ返した。
「人違いではないかしら? 私はカンギの戦友、惑乱の歌姫・セツ。カンギに仇なす者には——容赦しない」
 セツの手にした黒色の剣が、不気味な風をはらみ始めた。

●開幕
 セツの振るう剣から放たれた衝撃波を受け止めたクレーエは、身じろぎ一つしなかった。
 誰にも無理をさせたくない。同時に、自身も無理はしない。死は絶対であるという認識を胸に刻み、クレーエは立ち回る。
 ゾディアックソード「Gladius de《Virgo》」で星座の加護を施しつつ、視線は一度だけ後方へ。先ほど受けた痛みはかなりのものだったが、大切な人の目の前では多少は強がりたいもの。ルティエのボクスドラゴン「紅蓮」が、クレーエをねぎらうように属性をインストールする。
 腕に銀色の毛並みを宿したルティエは、踏み出す直前に軽くクレーエへと触れた。あとは勢いのまま飛び出し、真正面にセツを捉える。
「ここで止まるわけにはいかない、何としてでも通してもらう!」
 叩きつけられるルティエの拳。その衝撃を、セツは黒色の剣で受け止めた。勢い余って頭部の花が揺れる。ルティエが後続の律へと場所を譲れば、今度は惨殺ナイフがセツを捉える。狙いは頭部の花、その下にあると想定しているもの。金属と金属がぶつかり合う音が鈍く響き、両者は弾かれるように距離を取る。
 律は注意深く様子をうかがうものの、セツの変化は見て取れない。
「そんなに誰かに似ているのかしら?」
「似てるも何も、君は楔だろう。呉羽・楔、呉羽・律の双子の姉で——」
「いいえ。私はカンギが戦友、惑乱の歌姫・セツ」
 律の言葉を遮って微笑むセツに、フィオが斬りかかる。弧を描く太刀筋は、セツの傷を一瞬で広げてゆく。
 斬霊刀を引き戻して息を吐けば、自身が相当に緊張していることに気付く。知り合いもいるこの状況で、格好のつかないところを見せるわけにはいかない。
「うん、頑張らないと」
 藤と摘木を見遣り、フィオは決意を新たにする。そんなフィオの思いを感じ取ったのか、摘木はフィオに微笑みかける。いつも通りやれば大丈夫、と。そしてフィオを中心に薬液の雨を降らせ、傷を癒やす。
 摘木ビハインド「彼」は、何やら親しげにセツに近づいた。が、セツは眉根を寄せてそうに距離を取る。それでも無理矢理近づき、ついには体当たりのような動きをするが、ひらりと回避される。
「もう、甘えちゃだめよ。セツ——律さんの、ええと、関係者さん? 彼は貴方に心当たりがるようだけど、貴方はどうかしら?」
 摘木が彼をたしなめ、次いでセツを見遣る。セツは目を細め、剣を構え直した。
「さあ、どうかしら。もし知っていたとしても、言う義理はないわね」
 不敵な笑みを浮かべるセツと対峙する前衛の仲間に向けて、エストレイアがドローンを展開する。
「このメイド騎士にお任せ下さい! 皆様にご奉仕させて頂きます!」
「じゃあ俺は正面から行かせてもらうッスよ!」
 エアシューズを装着した藤が、セツに向かってゆく。直線を描くエアシューズが接地面から離れ、ぎこちないながらも的確な一撃をセツへと加えた。着地した後は、急いでディフェンダーである潤の後ろへ。
 その潤はといえば。自身の体感、その感度を意図的に上昇させていた。
「お手伝い、します……だから、当ててください……!」
 感覚に入り込んでくるのは、敵の情報。どう狙えば当てやすくなるか。どこからの攻撃が有効か。それらの情報は、感覚的なものとなって近場の仲間にも伝わる。
「——僕はウィッチドクターです。治します」
 潤は見る。仲間を、セツを。だから、と言葉を続ける。
「戦います」

●幕間
 仲間の攻撃を弾き返すセツに、ルティエが肉薄した。藍色の瞳は、セツの頭部に咲く花を映す。一瞬の後、地獄の炎が灯る惨殺ナイフ「Roter Stosszahn」を頭部へと叩き込む。しかしそれは、まだ導に過ぎない。
「我牙、我刃となりて、悪しきモノを縛り、その罪を裁け……」
 ルティエの言葉を皮切りに、地獄の炎は紅の飛電へと変異し、紅の刃から解き放たれる。
「紅月牙狼・雷梅香」
 梅花を纏う大狼の形を成したそれは、頭部にあるという装置を噛砕せんと喰らい付いた。
 が、セツは痛みに顔を歪ませるだけで、変化は見られない。
「……ダメか」
 Roter Stosszahnを握り直し、ルティエは距離を取る。紅蓮が体当たりをしたところで、藤が形成したグラビティを向ける。気付けば、藤の背には光輪が、腰には光の尾羽が顕れていた。
「畏れろ」
 生み出されるのは、太陽に似た膨大な光と熱量。そのまま突進すれば、セツは軽く吹き飛ばされる。壁を利用して体勢を立て直したセツの足元へ、律が拳を叩き込んだ。
「あの時は洗脳装置を壊すことができなかったけれど、今度は必ず破壊して楔を頸木から解き放ってみせる!」
 セツは背中を打ち付けた迷宮の壁を利用し、再び体勢を立て直す。
「洗脳装置? 頸木? あなたやはり勘違いしているわ。……そんな調子じゃ、戦闘に身が入らないでしょう?」
 だから何度でも言ってあげる、とセツは歌うように告げる。
「私は、あなたの知る誰かではない」
 律は即座に首を振る。そんなわけがない、と。しかし、それほどまでに否定するならば確かに別人なのかもしれない、とも思う。
「いや、まだだ。次は彼女を操っている腕の甲冑を狙えば——」
「任せて」
 律が最後まで言うか早いか、フィオが小さく頷いて跳躍する。
 フィオの目的は、連戦に備えての短期決着だ。そのため、自身の回復は癒やし手に任せ、極力攻撃に出る。ふとした拍子に傷が目に入るが、大きなものでなければ構わない。
 目的と同時に、律へのサポートも望んでいた。
(「そのための『仲間』だものね」)
 甲冑のようなものに覆われた腕に、フィオの斬霊刀が振り落とされた。刃は物質の姿を捨て、霊体のみを切り裂くものへと変化する。
 切り裂かれ、腕を振り払うセツ。すぐさま彼が金縛りでセツを硬直させようとする。その隙に、摘木が律へと生命賦活の雷光を飛ばした。
「あまり傷つけたくはないのだけれど……」
 ライトニングロッドを握りしめ、摘木は呟く。
「セツ様、無力化できれば良いのですが……」
 エストレイアが、同意を示した。もし、セツが本当に律の知る誰かなのだとしたら。
「倒したくは、ないですね。呉羽様の為にも」
 知らない誰かであったとしても、知人に似ている者を倒すのは堪える。エストレイアは唇を噛みしめ、フィオの前に光の盾を出現させた。続いて、潤も藤へと桃色の霧をまとわせる。
「過去、アンドロイドに改造された女性を見たことがありますけど——」
 もし「セツ」もそうなのだしたら、あまりにも痛ましい。できることならば治してあげたいと、潤はファミリアロッド「ふくろう先生」握りしめた。
 誰もが悲痛な想いを持って、セツと刃を交える。
「まだわからないのかしら……違う、と言っているでしょう? どうしても知り合いになりたいというのなら……そうね」
 セツは剣を下ろし、片手を胸に当てる。ため息のような呼吸をひとつ、瞳を閉じて口から紡ぐは——破滅の調べ。後衛の耳に届くのは、催眠の旋律だ。
 歯を食いしばりながら、藤は立ち上がる。目眩を覚えるほどの歌が止むと同時に、クレーエの放った霧が藤を癒やした。
「辛かったら、言ってね。できる限りのことはするよ」
「た、助かるッス!」
 慌てて礼を述べる藤に、クレーエは微笑みかける。
 攻撃の手が、あるいは思いが届くようにと、願いながら。

●終幕
 セツの攻撃の手は緩むことはなかった。彼女が攻撃を受け止め、あるいは回避する度に、ドレスの裾がひらりと舞う。問いと否定が繰り返され、気付けば双方は消耗していた。
 セツが無言で振るう剣は律、ではなく、律を庇った彼の上をなぞった。
「偉いわね。でも、無理しすぎちゃだめよ」
 摘木にたしなめられつつも、彼はどことなく得意気にむゆんゆと声を上げる。
 そんな彼の横で、クレーエが穏やかに言葉を紡いだ。
「物語の美しくも悲しい姫からの優しい贈り物を」
 直後、現れた幻影は海に住まう姫君の形を取る。律のよく知る物語に現れる、儚い姿。姫君は律をふわりと包み込み、傷を、痛みを取り除く。
 思わぬ贈り物に、律はひとつ頷いてセツの前へと進み出た。そして、呼吸を整える。
「祝いと呪いの境界……さぁ、我が凱歌を聴け!」
 律の声が、音を持って響き渡る。仲間に届けば祝福の歌であるが、敵に届こうものなら呪詛の歌となる「果てなき星の凱歌」。
 テノーレの歌声は、どこまでも高らかに。
 やがて終わった歌の余韻をそのままに、律はさらに歩み寄った。
「俺が挫けそうなとき、君が歌えと言ってくれた歌だよ」
「私の歌、とは……まったく違う歌、ね……でも、そんな歌は知らない、わ……」
 セツはゆっくりと目を閉じ、その場に倒れた。律は急ぎ駆け寄り、甲冑に覆われた手を取る。しかし頭部に咲く花は枯れ、甲冑は恐ろしい速度で錆びてゆく。
 また、セツ自身も泡沫のように消滅しようとしていた。思わず花弁に手を伸ばして握りしめるが、それも急速に朽ち、さらさらと流れて行った。
「さよなら。楔に似た君——『セツ』」
 セツの体が、すべて消え去る。もはや彼女の、残ってはいない。
「呉羽様……」
 言いよどむエストレイアが、そっと律を癒やした。続けて、他の仲間へもヒールを施す。
 傷が癒えたところで、ケルベロスたちは迷宮の探索を再開した。再び印をつけつつ、行ったり来たりを繰り返す。
 それを繰り返すこと、およそ二時間半。突如、植物の壁が崩壊し始めた。藤がおそるおそる周囲を見回す。
「もしかして……バルドルが撃破された、とか……?」
「おそらく、そうだと思う。これ以上、ここに長居する必要はなさそうだね」
 フィオがうなずき、駆け出す。しっかりと組み合わさっていた植物迷宮の床や壁、天井はばらばらと揺れ、落ちてゆく。もしかして、と、エストレイアが光の羽根から剣を生成して放った。すると植物は自爆することなく砕け散った。
「皆様、今なら壁を壊しても大丈夫そうです! 私に続いてください!」
 エストレイアが崩壊しかかった植物の壁に向かい、突撃する。光の粒子となったエストレイアが突き進めば、道ができてゆく。アリアドネの糸を辿るよりも、植物を撃ち抜きながら進んだ方が断然早い。
 ひたすらに迷宮をぶち抜いて進んだケルベロスたちは、どうにか無事に脱出に成功した。淡路島を覆っていた植物迷宮はさらに崩壊の一途を辿り、一時間ののちには完全に崩壊したのだった。
 ひとまず今回の仕事を終えたことで、潤はへろへろと崩れる。
「終わりました……ね……」
 体が熱いのは、全速力で迷宮を脱出したから、というだけではない。戦いで「淫魔の甘言」を乱発した反動もあるのだろう。
 崩壊しきった迷宮を前に、律は目を閉じる。そうして左耳を飾る赤縞瑪瑙に触れ、誰かの名前を呟いた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。