光明神域攻略戦~蛇の降臨を許すな

作者:質種剰

●淡路島上空
「ここが淡路島、ナンナが担当する琵琶湖と対となる美しい島ですね。さっそく、私の『超召喚能力』を見せるとしましょう」
 光明神バルドルが、手にした頭骨型の魔具を掲げると、淡路島全土を覆う植物の迷宮が生み出されていく。
 それを満足そうに見やったバルドルは、彼の護衛として付き従っていた、カンギ戦士団の面々に信頼の視線を向けると、軽く一礼する。
「では、私はこの中で、『ミドガルズオルム』の召喚を行います。皆さんには、私の身を守る警護をお願いしますね」
 そう言われた、カンギ戦士団の戦士達……ダモクレス、エインヘリアル、シャイターン、竜牙兵、ドラグナー、ドラゴンといった多種多様なデウスエクス達が、その信頼に応えるように胸を叩いた。
「任せて貰おう。我らカンギ戦士団、生まれも種族も違えども、確かな絆があるのだから」
 光明神バルドルが迷宮に入ると、それに続いて、カンギ戦士団の戦士たちも迷宮へと歩を進める。
 全ては、彼らの主たるカンギの為に。


「パッチワークの魔女を支配下に置き、ハロウィン攻性植物事件を引き起こした『カンギ』……皆さんのご記憶にも新しいと思いますが……」
 そう前置きして、小檻・かけら(鉄球ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「そのカンギの軍勢により、『淡路島』と『琵琶湖』が同時に植物に覆われる事件が発生したのでありますよ」
 彼らの目的は、無敵の樹蛇『ミドガルズオルム』の召喚であるらしい。
「ミドガルズオルムは、どのような方法でも破壊されないという特性を持つ為、もし、地球上での召喚を許してしまえば、攻性植物のゲートを破壊し侵略を排除する事は至難となるでありましょう」
 現在、淡路島と琵琶湖は繁茂した植物で迷宮化している。
「その中には『侵略寄生されたアスガルド神』が設置され、その神力により、この大規模術式を展開しているみたいであります」
 この迷宮には、『カンギ』の配下の精鋭軍が守りを固めている。
「『カンギ』配下の精鋭軍は『これまでの幾多の戦いで、カンギが打ち負かして配下に加えたデウスエクス』であり、『カンギ』と熱い信頼と友情で結ばれていて、決して裏切ることは無い不屈の戦士団のようであります」
 植物迷宮は、淡路島全域を覆い尽くしている。
 植物迷宮故に、破壊して進むことも不可能ではないが、植物の壁や床は破壊されると自爆してダメージを与えてくる為、ある程度迷宮に沿って移動する必要がある。
「広大な迷宮の何処にアスガルド神がいるか不明でありますから、探索するチーム毎に探索開始地点や探索する地域を手分けしていくのが良いかもしれません」
 だが、敵は広大な迷宮だけではない。
「迷宮内には、『カンギ』によって支配され、攻性植物に寄生されたデウスエクスがいて、侵入者を攻撃してくるであります」
 迷宮への侵入者を確認するとデウスエクス達はすぐ迎撃に出てくる為、一定時間が経過すれば何処にいても敵の攻撃を受けてしまうだろう。
 敵であるデウスエクスを撃破し、迷宮を探索し、そしてこの事件を引き起こしているアスガルド神を撃破する事が、今回の目的となる。
「淡路島の迷宮にいるアスガルド神『光明神バルドル』の撃破に成功すれば、植物迷宮は崩壊を始め、デウスエクス達も撤退していくであります」
 そう断言するかけら。
「淡路島と琵琶湖周辺の住民の避難は完了していますので、迷宮の攻略とアスガルド神の撃破に集中して頂きたいであります。宜しくお願いします」
 周辺の一般人について補足してから、更に付け加えた。
「アスガルド神を撃破する事ができれば、作戦の目的は達成できるであります。皆さんで神を狩る事も重要でありましょうが、敢えて他のチームを援護する事もまた、大切かもしれないでありますね」


参加者
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)
ヴァジュラ・ヴリトラハン(戦獄龍・e01638)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
浦葉・響花(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e03196)
結城・八尋(その拳は護るために・e03795)
ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
チェシャ・シュレディンガー(凸凹不偏な能芯套・e27314)

■リプレイ


 兵庫県は洲本市、新都志海水浴場。
 他班と手分けして淡路島の植物迷宮を探索するにあたり、8人は淡路島の北西部に降下。
 そこから植物迷宮内部へ侵入、バルドルの居場所を探すべく先山方面に向かう。
「……ふむ、電波の届かぬ場所でも自分の位置が判るのは便利でござるな」
 緑の蔦が生い茂る中、スマホの画面を見て軽く頷くのは、天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)。
 普段は柔和な表情を浮かべていかにも穏やかな空気を纏う日仙丸だが、依頼に挑む際はその心構えの現れか、螺旋式重装束『落天』を身に着ける事が多い。
 そんな日仙丸は、予めスマホに落としておいた地図アプリとスーパーGPSを用いて淡路島のどの辺りにいるか随時確認、自分の現在地の把握に努めた。
 とはいえ、地図アプリで見られるのはあくまで淡路島の地図であり、迷宮での迷子防止になるかは正直気休め程度だろう。
「さあて、鬼が出るか蛇が出るか。何方も出てくれると最高なんだがな」
 ヴァジュラ・ヴリトラハン(戦獄龍・e01638)は、余裕のある物言いながら周囲を警戒していた。
「迷宮自体が敵だ、壁も床も無視して来るかも知れん……ま、それを含めてゆるりと楽しもうか」
 全身の古傷が地獄化していて、そこから噴き出す炎は闘争心が昂ぶると雷のように迸る、ブレイズキャリパーの素養を持った鎧装騎兵である。
 黒い鱗と金の瞳が雄々しい竜派のドラゴニアンなヴァジュラは、純粋無垢な戦闘狂。
 求め得る最高の戦の為に生きる彼にとって、相手は全て愛すべき敵という認識らしい。
「2人のアスガルド神にカンギ戦士団、そしてミドガルズオルム。ここを通すと後の被害が想像出来ないしここで討たせてもらうわ」
 と、凛とした声音で決意を語るのは、ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)。
 白い髪と赤い瞳が可愛らしい、ちんまりとした小柄なシャドウエルフ。
 育った環境からか世間知らずで、他者との距離感を掴みきれず愛想のない態度になってしまう事もしばしば、良くも悪くも純粋無垢な少女である。
 ヒメは、TW04PH Type-Pなる携帯電話を持ち込み、他班との連絡も想定していたようだが、通話も通信も無理と判ってやっぱりかと諦めていた。
「島全部を迷宮に、ですか。凄まじい力ですね。このままにはできません。取り戻しましょう」
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)も、陽の光が微かに射し込んでくる天井を見上げて思案する。
 手には方位磁針と方眼紙を持ち、地道に迷宮の地図を書き込みつつ歩を進めていた。
「翼を利用できたら何よりですけど……これ、天井を破ろうとしても、やはり自爆は来るのでしょうね」
 水晶のように透き通って輝くツノや、褐色の肌に羽織った羽衣が神秘的な雰囲気を漂わせるラーナ。
「ふふ、それに例え天井を突き破れても、迷宮の外側からバルドルの居場所を探すのは、中と同じぐらい苦労しそうですよね」
 それでいて、笑ってみえる顔とは裏腹に辛辣な言葉を洩らす事も多く、時に蛇のような狡猾さが頭を擡げる、底知れなさを秘めた淑女だ。
「全く……勝手にデカい建物作らないでよね、島民に迷惑でしょ。早いところ撤去しないと」
 一方、浦葉・響花(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e03196)は、無口な彼女にしては珍しくバルドルへの文句を垂れつつも、聴覚や嗅覚を研ぎ澄まして敵の奇襲へ備えていた。
 黒く長い髪と涼やかな目元が印象的な、常に人型でいる黒豹のウェアライダーだ。
 その物静かな外見に違わず喧嘩や戦いを好まないが、実は怒ると鬼の如く凶暴になるらしい。
「びっしり植物に覆われてるだけあって、結構薄暗いわね……」
 と、持参した懐中電灯を点ける響花。足には滑り止めのついた靴を履いていて、迷宮を進む為の対策は万全だ。
「さぁて此処はどの辺りかしら? ——おっと目印目印っと!」
 他方。チェシャ・シュレディンガー(凸凹不偏な能芯套・e27314)は、アイテムポケットへ入るだけのスプレー塗料を持ち込み、壁を作り上げている植物へ吹きつけながら歩いていた。
 一度通った道と未探索の区域を判り易くする為である。
 灰色のウェーブヘアと煌めく翠の瞳が妖艶な猫のウェアライダーで、いかにもなオネエ喋りをするチェシャ。
(「アイツもどこかにいるのよねぇ……もし遭遇したら絶対にアタシが仕留めるわ」)
 表面上はいつもの飄々とした佇まいで探索する彼だが、その実、言い知れぬ予感に襲われるのを拭えず、密かに意識を固くしていた。
「ん、どうしたのアロアロ?」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、新たに絆を結んだシャーマンズゴーストのアロアロが、ふるふる震えているのへ気づいた。
 夜明け色の瞳の輝きや褐色の肌から神秘性の垣間見える愛らしい美少女で、黒髪に飾ったハイビスカスの赤い花が、彼女の異国情緒を高めている。
 アロアロもアロアロで、ハイビスカスの花冠やレイを飾った出で立ちに加え、人見知りな性格が主人とよく似ていて微笑ましい。
「大丈夫だよ、依頼はみんなで頑張るものだから」
 マヒナはアロアロの頭を撫でて励ましながら、
(「ワタシも初めての依頼はすごく緊張してたなぁ」)
 震えていた理由を察して、自分も通ってきた道だと当時を思い出すのだった。
「迷宮探索なんて、もうちっと安全だったら心も踊るんだがなぁ……敵がうようよいるってんじゃあぶねぇったら。とっとと排除すっぞ」
 そう荒っぽくもざっくばらんな調子で言うのは、結城・八尋(その拳は護るために・e03795)。
 出版社に勤務し、食に関するコラムを担当している狸のウェアライダーだ。
 むっくり肥えた体型ながら機敏に動けるのが持ち味で、その下半身は硬い筋肉に覆われている。
 かつては妻帯者であった八尋だが、今は養女と共に暮らしている男やもめ。
 非常におおらかな性格の為、滅多な事では怒らないそうな。


 植物迷宮内は区域によって明るさや見た目はまちまちだが、8人が進む北西部は薄暗く、また、体感しづらいほど微妙な勾配のつけ方で、いつの間にか上階にいたりと位置感覚を狂わせる仕掛けが施されていた。
 それでも、壁に吹きかけたスプレー塗料の派手な橙色が床の隙間から目に入って罠に気づけたし、行き止まりへ導かれた所で、8人は壁を自爆覚悟の上に破壊する心算もあった。
 壁を攻撃する際は、ヴァジュラやラーナがディフェンダーに回るなど抜かりない。
「どこまで衝撃が来るかわかんねぇしな、下がってろよ」
 元々ディフェンダーの八尋も仲間へ距離を取るよう促したが、結局、庇われたヒメや響花、マヒナ以外は皆爆破のダメージを受けた。
 それでも爆音に気づいたデウスエクスが襲い来るまで3分、短いがポジションを戻したり怪我を癒すには充分な時間であった。
 迷宮に足を踏み入れてからは1時間余りが経っていて、敵と一戦交える覚悟も決まっている。
「壁を食い荒らす鼠が……イイ声で鳴くか試してやる」
 現れたのは、赤いボンデージに身を包んだエインヘリアル、クィン=ハート。
 愉悦に満ちた表情や巻き髪のツインテール、露出度の高い胸元が可愛らしく見えるも、チェシャの記憶では幾人もの奴隷を使役していたサド女である。
「この者がカンギ戦士団……チェシャ殿の知り合いなのでござるか?」
 早速ローラーダッシュの摩擦を用いて、エアシューズに炎を纏わせるのは日仙丸。
 激しい蹴りを喰らってクィン=ハートは蔦の壁へ叩きつけられるも、
「フン、温い火花だ。奴隷のいたぶり方を教えてやる」
 全身へ炎が回って見えるのに平気な顔で立ち上がった。
「私の威光にひれ伏しなさい!」
 クィン=ハートが打ち振るって来たのは、鋭い棘が無数に生えた茨の鞭。
 全方位に暴れ狂う鞭が後衛陣を刺し貫き、強い毒で体内を汚染していく——かに見えた。
「っと、通さねぇよ!」
 間一髪、マヒナを八尋が、アロアロを日仙丸が庇って、ダメージも毒もディフェンダー2人が引き受けた。
「操られてるわりには饒舌だねクィン! 腕が鈍ったんじゃない?」
 チェシャは毒の不快感などおくびにも出さず、珍しく男っぽさを感じさせる口調で、クィンへ語りかける。
「操られているとは異な事を。私とカンギ様は互いに背中を預けられる戦友だ!」
 クィン=ハートが言い返すも、その言葉に元の彼女の人格が残っていないのは、チェシャからすれば明白だろう。
 攻性植物の寄生によって人格そのものを塗り替えられたが故に出てくる、薄っぺらいセリフと言えた。
「どうやら、アンタはオレの知るアンタじゃないようだね」
 チェシャは微かに表情を曇らせるも、すぐに鋭い目つきでクィン=ハートを見据えるや、スターゲイザーをぶちかました。
「戦いを経て結んだ絆、と聞いたが、何故戦士団にはカンギが『負かした』相手しか居ないのだ?」
 ヴァジュラは彼らしい言い回しをしてクィン=ハートを挑発。
 地獄の炎を宿した暴風龍ルドラを彼女の脳天へと叩きつけ、大きな裂傷と火傷を負わせた。
「一気に動いてきた……けど逆から見れば動く必要があったという事よね」
 ヒメは、クィン=ハートを視界に入れた刹那、ブローチを操作してセリノリソスを脱ぐとプリンセスモードに変身。
 ボディスーツの上から機械鎧を纏った青色が涼しげな装いで、クィン=ハートへ超加速突撃をお見舞いした。
「さて、カンギ戦士団のお手並み拝見と行きましょうか?」
 足止め狙いにスターゲイザーを一発ぶちかますのはラーナ。
 その当たり具合から再行動の余裕が生まれた為、ルドラの子供達と黒雲でクィン=ハートを何度も殴りつけ、体へ莫大な雷を流し込んだ。
「敵の増援が来ないとも限らないし、短期で仕留めたいわね……」
 と、クールな物腰を崩さずにブラックスライムをけしかけるのは響花。
 捕食モードに変じたブラックスライムは、クィン=ハートを丸呑みにせんと喰らい付いて、その動きを阻害した。
「服従の魔女の心を満たしたカンギ、カンギのために尽くす戦士たち……それだけすごい存在なんだろうな……」
 マヒナはクィン=ハートの自信満々な様子に気圧されつつも、縛霊手を掲げる。
 その祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量に降らせて前衛陣を守護、彼らの異常耐性を高めた。
「へっ、やっぱりお出ましか。ちょっくら遊んで行ってもらうぜ!」
 決して軽くない身体をものともせずにクィン=ハートへ肉薄するのは八尋。
「そぉら、くらえ!」
 電光石火の蹴りを繰り出して、その急所を貫いた。
「くっ……」
 激痛だけでなく全身を襲う痺れへ、クィンは一瞬表情を歪めるが。
「この程度、私に効くと思ったか!」
 どこまでも傲岸不遜な彼女は怒声を浴びせると同時に、真っ赤なハートに見える光弾を飛ばしてきた。
 前衛陣は強烈な眩暈と吐き気に襲われて体力の消耗を自覚するも、これを見越しての紙兵散布だから、いずれは不快感だけでも消えると期待できるのが幸いだった。


 クィン=ハートとの戦いは続いた。
 茨の鞭による攻撃でアロアロが倒れたが、その分マヒナやヒメが手分けしてヒールに努めていた為、戦況は悪くない。
 むしろ、ケルベロス達の熟練した技や危なげない戦術の組み方のお陰で、次第にクィンを圧倒し始めた。
「この性能、その身をもって味わうといいでござる」
 日仙丸は、大きなダンボール箱を開けて、通販で購入した武器類を発射。
 武器類は指定した配送先、クィン=ハート目掛けて真っ直ぐ送り届けられ、その肉感的肢体を鋭い刃がザクザクと貫いた。
「好きにはさせない……」
 緋雨と緑麗の二刀を操り、高速でクィン=ハートの懐中へ踏み込むのはヒメ。
 先を読み牽制する剣と言うべき斬撃を撃ち放って、彼女の行動を抑止した。
「こうだったでしょうか?」
 ラーナは、かのゲームの裏技バグ技絶許ビルシャナとの戦いを思い出させる『B・B・B・A・右・右・左』を披露。
 うろ覚えのコマンドから繰り出された、実にテキトーでありながら力の籠った足技が、クィン=ハートの顎へ直撃、筆舌に尽くしがたい激痛を与えた。
「躊躇わず……討つ」
 硬い声音を響かせると共に、理力を手足に込めるのは響花。
 体温を超低温にまで下げてぶち当てる打撃は、命中した箇所から熱をみるみる奪ってクィン=ハートに重度の凍傷を引き起こした。
「アロアロはお疲れ様、だね。後はワタシが……」
 マヒナは仲間達の負傷具合を確かめてのち、攻撃に転じる。
「頭上注意、だよ?」
 トロピカルなヤシの木の幻影を生み出して、そこからクィン=ハートの頭上目掛けてココナッツを落下させた。
 その見た目の強烈さ通り、当たるとかなり痛い。しかもうまく追撃を放って複数個降らせた時のダメージたるや、まさに大打撃であった。
「ぶち抜いてやんぜ!」
 猛スピードでクィン=ハートへ突撃するのは八尋。
 並々ならぬ速さと破壊力の乗った貫手を繰り出し、鉄の棒で貫くが如き激痛を齎した。
「俺達が勝てば俺達とも絆を結んでくれはしないものか、訊いてみたいものだな」
 ヴァジュラは暴風龍ルドラに纏わせた地獄の炎を限界まで圧縮。
「我が戦火より戦嵐を呼べ、我が戦獄より戦滅を知れ」
 深紅に染まった刀身を閃かせ、暴虐の剣戟を浴びせてクィン=ハートの身体を焼き斬った。
「無意味な事を……勝つのは私。カンギ様と絆を結びたいなら私が取り成しても構わん。その前に死ぬだろうが」
 クィン=ハートは、全身に激しい火傷を負いながらも強がってみせた。
「オレはもうアンタのモノにはならないし、あの娘の物でもない!」
 それへ確固たる物言いで反抗するのはチェシャ。
「コイツで終わり——最期に答えて。あの娘は今何処にいる?」
 魔導銃キャロルの銃口に膨大な魔力を集中させて、クィンへ詰問するも、
「……カンギ様、申し訳、………」
 答えが得られぬと悟るや圧縮した魔力を一気に開放、遂にクィン=ハートへトドメを刺した。
 地に伏した赤の女王へ、チェシャは一瞬複雑そうな視線を向けたが、
「ふぅ……それじゃあ探索に戻りましょうか♪」
 再び顔を上げた時、その面にはいつもの笑顔が戻っていた。
 アロアロの全快を待って探索を再開した8人。
「打ち負かした相手を配下に加え、絶対的な絆を得て、攻性植物を寄生させる……こう言ってはなんだが、胡散臭いな。攻性植物を根こそぎ引き抜いても変わらんものか……」
「攻性植物はケルベロスとも組むくらいだし、仲良くやっていけないものかな?」
 ヴァジュラやマヒナはそんな事を話しながら歩いていたが。
 ゴゴゴゴゴ——!
 1時間程経過した頃、突如強い地鳴りに襲われた。
「崩れる……という事は」
 冷静に呟くヒメ。
「誰かがバルドルを討ち取ったのね」
 響花も力強く頷く。
「急いで脱出するでござる」
 日仙丸は皆を促して、自分も地図を見ながら駆け出した。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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