死を模す物の禍あれ

作者:幾夜緋琉

●死を模す物の禍あれ
 埼玉県川越市。
 駅からそんなに離れていない繁華街、その路地から一本入ったところにある、雑貨店。
 でも、普通の雑貨店とは全く違う雰囲気を持ったその店は……所謂パンクな商品を専門に取り扱う雑貨店。
 ……そんな異質な物を取り扱う雑貨店は、周りの人からすれば奇異の目で見られ、店を訪れるのは月に数人程度……正しく、閑古鳥が啼き続けるような状況であった。
 そして、そんなお店が長く続くはずもなく……開店し、数ヶ月で閉店。
 ……その閉店の日にも、お別れを惜しむような客はおらず、店の中にたった一人……。
『……はぁ……駄目、だったのね……』
 髑髏指輪や髑髏ネックレスを着た女性店主が、海よりも深い溜息と共に。
 ……そんな彼女の下へ、背後よりそっと近づいてくる、一人の女性……第十の魔女、ゲリュオン。
 そして彼女は、その手に持った鍵で……すっと、店主の心臓を一突き。
『っ……!?』
 と、驚愕の表情を一度浮かべるも、そのまま気絶するように、其の場に倒れていく店主。
 そしてゲリュオンは。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせて貰いましょう」
 と言うと共に……彼女と瓜二つの姿をした、ドリームイーターを産み出す。
 そして。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 と言うと共に……ドリームイーターは、こくりと頷くのであった。
 
「皆さん、集まって頂けましたね? それでは、早速ですが、説明を始めさせて頂きます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達への一礼も早々に、早速説明を始めていく。
「皆さんは、自分の店を持つ……という事にどういう思いを抱いていますか? 夢の具現化、目標……という人もいるかもしれません」
「今回、この店を持つという夢を叶えた方が、その店を潰してしまい、後悔してしまっている……その夢をドリームイーターに襲われ、『後悔』を奪われてしまう、という事件が発生している様なのです」
「この『後悔』を奪ったドリームイーターは、既に姿を消してしまっているのですが……その奪われた『後悔』を元にして現実かしたドリームイーターが、事件を起こそうとしているのです」
「現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターの撃破をお願いしたいのです。このドリームイーターを倒す事が出来れば『後悔』を奪われた被害者も、きっと目を覚ましてくれる事でしょう」
 そして、更にセリカが。
「このドリームイーターは、髑髏とか、死神とか、そういった物を集めて売るという、何と言えば良いのか解りませんが……パンク系の雑貨を主とした雑貨店の店主のドリームイーターです」
「店の中は、そういったグッズが所狭しと並べられており、ちょっと不気味な雰囲気と共に、灯りも少ない間接照明だけで、かなり薄暗い雰囲気を醸し出している様です」
「つまり視界は悪く、狭い中でドリームイーターと戦う事になると思います。幸い皆さん以外、お客さんはいない様ですが……」
「このドリームイーターは、自分の進めるアイテムを身につけてくれた人を、攻撃のターゲットにしづらくなるという性質がある模様です。逆に身につけるのを拒否すると、優先的に攻撃のターゲットとなります」
「ちなみに攻撃手段ですが、その髑髏のネックレスを振り回して、投擲の様に投げてきたり、髑髏水晶の置物を豪腕で以て投げつけてくる……などをしてくる様です。この髑髏水晶は一度のみではありますが、強力な一撃になりますので注意するべきです」
 そして、セリカは。
「彼女が店を潰して市末端は、立地条件もあるとは思いますが……だからといって、ドリームイーターがその後悔を奪って良いという訳ではありません。ドリームイーターを倒し、この事件を解決して頂けるよう、お願いします」
 と、更に一礼するのであった。


参加者
桐山・憩(焚き炎・e00836)
ルオン・ヴェルトラング(人造英雄・e11298)
イリア・アプルプシオ(機械仕掛けの旋律・e11990)
藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)
左文字・紗綾(仏血義理蹴流兵炉守・e22096)
コル・ヴァニタス(煌剣の焔凰騎・e24574)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)

■リプレイ

●髑髏病
 埼玉県川越市にある、とある雑貨店。
 路地裏にあり、パンクな商品……所謂髑髏の指輪や、髑髏ネックレスが並べられた雑貨店。
 何故、埼玉県川越市という所にあるのか、という理由もある物の、その結果として潰れてしまった店舗……そこに、後悔の念を利用するドリームイーターが現れたとの事。
「随分と迷惑な存在だな、ドリームイーターとやらも」
「そうだね。パンクファッションを売る雑貨や? パンクファッションってあんまり見た事ないんだよね。彼女、髑髏とか死神とか好きなのかな?」
「いや、ウケるウケねーの前に場所柄に合うか合わねーとか、店の場所が知られてるとかもあんしなー。今回は全部駄目だったからこその結果だろうけどよ」
「んむぅ……ンクな商品を専門に取り扱う雑貨店とは、なかなか吾輩的には良い趣向だと思うんじゃがのぉ? やはり人を選んでしまうのかのう……」
「そうだな。人を選ぶだろうな」
(「……こういう事件の時いつも思うんだが、なんでマスターのサ店はあんだけ放置してて潰れねーんだろ……」)
 ルオン・ヴェルトラング(人造英雄・e11298)、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)、左文字・紗綾(仏血義理蹴流兵炉守・e22096)、藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)らの会話に、藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)も。
「まぁこれ、子供の意見なので、聞き逃してもらっても構わないんだケド、店舗を構えず通販にすれば、商売になるんじゃないかなー、とか思わなくもないんだよな」
「うむ。そうじゃな。ネットなら同好の士が多くいるじゃろうし、そういうパンク商品が好きな奴は吾輩の様に一定数は居ると思うのじゃよ。ネット通販を提案為てみるのも、一つの案かもしれぬの」
 そして、イリア・アプルプシオ(機械仕掛けの旋律・e11990)、コル・ヴァニタス(煌剣の焔凰騎・e24574)、ルオンが。
「やりすぎなところがあるのは否めないけれど、彼女から何かを奪っていいわけでもない。後悔を次に活かして貰う為には、あれを倒さないといけないわね」
「うん。彼女の趣味は置いておくとして、後悔を利用されるのは気分が悪いよね」
「ああ。人の夢を嘲笑うが如き所業、この手で打ち砕いてやるとしよう」
 そして、桐山・憩(焚き炎・e00836)が。
「そーだな。ココの主はドリームイーター、テメェじゃねぇ。迅速にお引き取り願おうぜ」
 と拳を振り上げると共に、ケルベロスらは店へと向かうのであった。

●好む髑髏に
 そして、大通りから一本入った裏道。
 そこにある、パンク商品の並べられた雑貨店……赤く色付いた間接照明が、目にも鮮やか。
 ……そんな店内で待つ、ドリームイーター。
「……ここか」
 と店を見渡し、憩の一言。
 それにコルが。
「……炎やヴァルキュリアブラストが使えないってのは、少し痛いかな。まぁ、デウスエクスだった頃ならいざしらず、今はケルベロスだしね。そういった事も気をつけて戦わないとね」
「そうだな。火をつけて全焼して、自分達が逃げ遅れる、なんて事はやめたいものだ」
「うっし、んじゃ店に入るぜ」
 と憩が先陣を切って、店内へ。
『……いらっしゃーい』
 と、何処か気怠げに挨拶する、ドリームイーターの彼女。
 そんな言葉に、軽く挨拶をしながらも、シェーラが。
「ふーん……こーゆーお店は初めてだケド、雰囲気あるね」
 くすりと微笑みつつ、店内に並べられた髑髏雑貨を手に取ってみる。
 ……と、それを切っ掛けに、立ち上がった店主のドリームイーター……そして。
「こういった雑貨に、興味あるのかしら? なら、わたしが見繕って上げるわよ?」
 と。取りあえず、何だか一番似合いそうな紗綾に、髑髏ネックレス、髑髏指輪を次々と私、装着していく。
 かっこいい風のコートに髑髏のアイテムは、結構似合う。そんな彼女の似合いように、視線が集中。
「……あんだよ、ジロジロみて」
 と少し睨み返すが、でも……やっぱり似合っている。
 そして更に、プランやカノンも、店主に勧められるがまま、それらアイテムを装着。
 プランは特に、死神のようなファッションに総合コーディネートしてもらう。
「変ったファッションだね。似合ってるかな?」
 と仲間達に問いかけ、カノンが。
「うむ、似合ってると思うのじゃ。わしも……どうかの?」
「んー……いいんじゃない?」
 と、嬉しげに、会話を交わしていく。
 ……と、そんなパンク商品を受け入れる一方、イリア、シェーラは、髑髏アイテムを勧められても。
「同じく。私にはこういうのは似合わないと思うのよ」
「んー……そうだね。私はこういったアイテム、付けたことなしねぇ」
 ……そんな三人の言葉に、最初は彼女はそうですか……と。
 でも、明らかに彼女の勧める声に、何処か怒りを孕んでいる様に見えてくる。
 そして……憩にも勧めた時。
「私はいらん。アクセを持っちまうと、動き辛くなるんでな」
 と、憩が行ったその瞬間……彼女が。
「そう……何よ、いらないいらないって。だから……だから、売れなかったのよ」
 と言うと共に、一気に怒りを表に出し始め、その手に髑髏ネックレスを手にする。
 そんな彼女に、ルオンが。
「さて。それでは、一手手合わせを願おうか」
 と宣告すると共に、他の仲間達も戦闘態勢を取る。
 怒りに浮かされるように、髑髏のネックレスを超高速で回転させて、鎖鎌の様に投擲したり、鎖の様に投げつけて攻撃してくるドリームイーター。
 しかし、その攻撃を憩が。
「暗いから見にくい? いや、その程度の攻撃なら、大したことねえな」
 と、ギザ歯を剥いて笑い、挑発しつつ、軽く受け流す。
 即座に、憩のウィングキャット、エイブラハムが憩に清浄の翼でヒールを飛ばすのは忘れない。
 そしてイリアが前列にヒールドローンを飛ばしつつ、シェーラもメタリックバーストで狙アップを付与。
 更に、ディフェンダー陣に続き、スナイパーのコル、カノンは後方より狙い澄まして月光斬と、トラウマボールを飛ばしていく。
 又、メディックの紗綾はスターサンクチュアリを前衛陣に更に付与し、強化を施していく。
 そして、憩が。
「まぁ何だ、パンクな店なのにパンクじゃないお前はさっさと殺すわ。本当の主はテメェじゃねえしな」
 と言いながら、更に『嘲笑う案山子』で怒りを付与。そして並行して。
「さ、死神の鎌は命を刈りとるよ」
 と死神の如く鎌を振り回すプランのドレインスラッシュを凪ぎ、ルオンも至近距離に接近しての指天殺。
 強烈な一撃を腹に食らったドリームイーターは、棚と共に壁に叩きつけられる。
 流石に狭い店内……商品に全くの被害無しというのは、中々難しいだろう。
 とは言え火系のグラビティを使わない事で、その中でも被害は最小限にするよう、工夫する。
 ……そして次のターン。
 体力の状況を確認し、特に大きな傷を負っていない事を確認した上で、イリアは星天十字架の一閃を穿つ一方、シェーラは。
「貴女の御前に傅く私が、偉大なる御身を讃えることをお許しください。貴女は例えば氷、茨、棺。極寒の冬に一輪咲く、気高く麗しい白の花」
 と『月は無慈悲な夜叉の女王』の魔眼を貫き、憩いも撲殺釘打法で滅多打ち。
 ルオン、プランも。
「餓え満ちず・渇きに疼き・五臓を食んで・骨噛み砕く・我が手に牙・蝕み尽くせ・喰・喰・喰」
「気持ちよく果てて。こわれちゃうかもしれないけど」
 と『鋼鉄咀嚼・蝕身の牙』に、『過剰な快楽の記憶』の連打で、体力をこそげ取っていく。
 そして、壁に何度も何度も叩きつけられる彼女に、更にコルのスターゲイザー、カノンのデスサイズシュートがバッドステータスを積み重ねていく。
 多重のバッドステータスが、その身体を蝕む。
 どうにか……状況を打破しようと、カウンターに置いてあった髑髏水晶をむんずと掴み、渾身の力で投げつけるのだが……。
「だから言ったろ? テメェはさっさとお引き取りしろってんだよ」
 と、簒奪者の鎌で、地面に叩き落とす。
 コナゴナになった、髑髏水晶。
『あ、あああああ……!!』
 と、驚愕の表情を浮かべるドリームイーターに、イリアが。
「余り時間をかけたくはありません。店主の方の無事も確認したいですから……ね」
 と言いつつ、『Qui tollis』の旋律を歌い上げる。
 ……その旋律に、ドリームイーターは、絶叫を上げながら、幻の如く、姿消え失せて行くのであった。

●後悔の跡に
 ……そして、ドリームイーターを倒したケルベロス達。
 店内は、抑えたとは言えかなりの被害。髑髏アイテムが足元に色々と散乱し、棚も幾つか壊れてしまっている。
「結構、壊してしまったな。時間は……あるから、散らかった店内を片付けるとするか」
 とルオンが言うと、それにシェーラが。
「ちょっとストップ。一応、さ、店長に許可を取ってからにした方がいいんじゃないかな? だって、グラビティでヒールすると、ファンシーになっちゃうんだよねぇ? ……パンクとファンシー、全く正反対だしね」
「確かに、な。んじゃ、店長を探すとすっか。たぶん、店の奥に居るだろうしよ」
 と憩に頷き、まずは散らかった店内を越えて、奥に向かい、店長を探す。
 ……奥の、狭い狭いバックヤードに、気絶した彼女を発見すると、彼女にヒールグラビティを掛けて、先ずは怪我の治療と、意識回復の補助。
 ……そして意識を取り戻した所で。
「気がつきましたか? ……良かったです」
 微笑むイリア。
 そして、ドリームイーターに襲われたこと、その結果、店の中が荒れたこと。
 実際に店を見せて……そして、店の修理をしていいか、と。
「……別に、構いません。もう……このお店は、潰れてしまったのですから……」
 ……半ば自暴自棄になっている彼女。そんな彼女に、プランと紗綾が。
「うーん……確かに潰れてしまったかもしれない。でも、こういうのって同好の士を集めるのが大変よね? 同好の士がこの近くに少ないだけかもしれないし。なら、ネット販売に為てみたらどうかな?」
「そうそう。どっかではウケるかもしんねーだろ? 夢、辞めるつもりがねーなら頑張れよ。応援しとくわ」
 二人の応援、そしてシェーラも。
「そうそう。まぁ確かにこういった髑髏のアクセサリーとかは、好きな人が限られるからねぇ……でも、好きな人にとっては、唯一無二のものだと思うんだ。ならば、そういった人に向けて発振すれば、きっと噂が噂を呼んで広まっていくのではないかな?」
 そんな三人の言葉に……そ、そうですね……と、頷く彼女。
 そして、取りあえず店内をヒールグラビティで回復を行い、壊れているもの、壊れていない物を仕分けする。
 ……大方、片付いた所で、コルが。
「大体片付いたかな……んと、それじゃコレ、買うよ」
 と、少し壊れた物を指さし、お金を渡すコル。店主は。
「い、いえ……お金を頂くわけにはいきませんよ……」
「いや、折角だしね。受け取れないっていうんなら、お店を壊したお詫び、って事にさせてよ」
 と……お金を渡す。
 更に紗綾が、ドリームイーターにコーディネートされていたアイテムを外そうとすると、それも。
「あの……それ、お譲りします。本当、ケルベロスの皆さんには、感謝で一杯ですから……」
 と、譲って貰える。
 それに紗綾が。
「お、おう、サンキューな。あんがとよ」
 と。
 ……そして、ドリームイーターの後始末を一通り終わり、彼女にもう一度元気づけを行い……帰路へ。
 その道すがら……そのパンクアイテムに紗綾が。
(「……これ、持って帰ったらお父さん、お母さん驚きそう……うん、マスターのお店で預かってて貰おう……」)
 と言いつつ……パンクアクセを光らせたりしながら、くすりと笑うのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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