飛頭蛮

作者:紫村雪乃


 突然少女は足をとめた。はじかれたように振り返る。
 何か物音がしたような……。
 眼を眇めてみるが、何も見当たらない。ただ、質量を伴っているかのような濃い闇があるだけだ。
 少女は安堵の吐息をついた。
 気のせいだ。そう己の臆病さを笑って少女は再び歩き出した。
 が――。
 この時、再び歩き出した少女の背後、緑色の鬼火のような光がふたつ浮かびあがっていることを彼女は知らぬ。それが、少女が足をさらに速めたのを待ち構えていたかのように、一気に夜の底から身を躍らせたことも――。

「……本当かどうか、確かめてやる」
 闇の中、少年はつぶやいた。
 飛頭蛮。近頃囁かれだした都市伝説だ。どうやら中国の妖怪であるらしい。通常は人間の姿と変わりないが、夜になると首だけが胴から離れて空中を飛び回るものとされている。それに少年は興味をもっていた。
「私のモザイクは晴れない」
 声が、した。背後から。気配など感じなかったのに。
 驚いて振り向いた少年は見た。冷たい目をした女を。
 第五の魔女・アウゲイアス。それが女の名であった。
 呆然と佇む少年の胸を魔女は突き刺した。
「けれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 魔女は告げた。すると倒れた少年の上にぼうと何かが現出した。
 ぎろりとむいた血走った目。牙の生えた大きな口。巨大な頭部だ。
 飛頭蛮。伝説の魔物であった。


「あらたなドリームイーターが現れました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がいった。そのドリームイーターは影のような存在であるらしい。
「不思議な物事に強い『興味』を持って、実際に自分で調査を行おうとした人間がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こりました。『興味』を奪った魔女は既に姿を消しているみたいですけれど、奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターを使って、事件を起こそうとしているようです。他の被害が出る前にこのドリームイーターを斃してください。このドリームイーターを倒せば、『興味』を奪われた被害者も目を覚ます筈ですから」
 ドリームイーターが現れるのは昏倒した少年の近くだ。時刻は夜である。今からむかえばさらなる被害を防ぐことはできるだろう。
「ドリームイーターは巨大な頭部という姿をしています。空を飛び、牙で裂きます。威力は絶大。さらにドリームイーターは炎を吐きます。強敵といえるでしょう。けれど」
 誰かが斃さなければなりません。セリカはいった。
「皆さん、お願いします」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)
黒谷・理(マシラ・e03175)
ステイン・カツオ(クソメイド・e04948)
黒木・市邨(蔓に歯俥・e13181)
ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318)
黎泉寺・紫織(ウェアライダーの鹵獲術士・e27269)
浜咲・アルメリア(シュクレプワゾン・e27886)

■リプレイ


 寒風吹く街角。すでに闇は深い。
「飛頭蛮ですか」
 つぶやく声が流れた。揺れる光に浮かび上がったのは二十歳ほどの青年であった。
 美しい青年だ。女と見紛うばかりに顔立ちの持ち主であった。
 名は十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)。ケルベロスであった。
「確かそういう名前の妖怪がいたよなぁ」
 生真面目そうな、しかし悠然とした青年が眉をひそめた。一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)という名のケルベロスであるのだが、飛頭蛮という妖怪に聞き覚えがある。
「確か首がのびる――」
「それは轆轤首だよ」
 ゆるりと黒木・市邨(蔓に歯俥・e13181)という名の青年は笑った。
「そうか」
 雄太はうなずいた。が、すぐに首を傾げると、
「なら飛頭蛮って何だ?」
「空を舞う首の妖怪だ」
 女が告げた。銀髪紅瞳。二十歳ほどの娘だ。物騒な面付きをしていた。
 ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318)。竜種の娘である。そばには執事のようなビハインドが控えていた。名はアレクだ。
 すると、へえ、と雄太は感嘆の声を発した。
「首だけで飛ぶ、か。そいつは便利そうだな」
「確かにね」
 くすりと市邨が笑った。
「頭だけ飛び回るなんて愉しそうだ。見てみたい以上に、俺は自分がそうなってみたいかも」
「それにしても」
 ふふん、と男が鼻を鳴らした。
 二十歳ほど。精悍な風貌の持ち主だ。右目を通る傷が剣呑な雰囲気を彼に与えている。
 黒谷・理(マシラ・e03175)という名のケルベロスはいった。
「飛頭蛮とはまた古風だなあ。渋い趣味をしている」
「でも、なんで中国の妖怪が日本で噂されているのかしらね」
 訝しげにその女はつぶやいた。十八歳ほどの美しい少女だ。紫の瞳と姫カットにした髪が良く似合っている。
「最初に話し始めた人はよくそんな妖怪の事知っていたわね。私は知らなかったわ」
 黎泉寺・紫織(ウェアライダーの鹵獲術士・e27269)は疑問を口にした。
「確かにね」
 気だるげに鮮桃色の髪の少女がうなずいた。
 セーラー服をまとった可愛らしい顔立ちの美少女だ。が、物腰は流麗で只者では雰囲気を漂わせてる。浜咲・アルメリア(シュクレプワゾン・e27886)だ。
 彼女の知る飛ぶ首の妖怪とは舞首であった。神奈川県真鶴町に伝わる怨霊である。日本においては、そちらの方が知られているはずであった。
 と、そばに浮いたピンク色の翼猫――すあまがアルメリアの頬に身を摺り寄せた。
「本当の飛頭蛮なら良かったのでございますが」
 ふう、と。その女は大きなため息を零した。
 子供のように小柄。が、年齢は三十代後半に見える。肌の色があさ黒く、むっちりした胸と尻が特徴的だ。
 ステイン・カツオ(クソメイド・e04948)。八人めのケルベロスであった。
「どうして本物の飛頭蛮ならよかったんだ?」
 雄太が問うた。するとステインは熱い眼差しを雄太にむけた。
 彼女は美男子を欲している。美男子の結婚相手を。そのために美男子を探しまわり、捕まえて酒の力で既成事実を作ってしまおうと画策しているのだが、未だ成功してはいなかった。
 ステインは媚を売るようにこたえた。
「もし本当に飛頭蛮とやらでございましたら、首が離れているうちに胴体を移動させてしまえば元に戻れずに、それで終わりなのでございますよ。でもドリームイーターとなれば話も変わってくるのでございます」
「では偽物の飛頭蛮を壊しにいきましょうか」
 仲間を促し、泉は街の闇に足を踏み出した。


「夜になると首だけで動き回る奇怪極まりない妖怪がいるそうで」
 闇の中、小柄の女がいった。
「飛頭蛮っていうんだぜ、それ」
 都市伝説をプリントアウトした紙を手に、訳知り顔で青年がこたえた。
 いや、と顔に傷を負った青年が首を振った。
「最近、ここらへんでなにか黒い影が飛び回る姿を見たって噂が流れてるのは確かだ。ワイヤーに首を引っ掻けて死んだライダーの亡霊だとか、電車に引かれて死んだ人の怨霊だとか、いろいろ聞くけど、俺は季節外れのジャックオーランタン説を唱えたいね。ほら、秋葉原とかしょっちゅう仮装パーティやってるじゃねーか。うっかり勘違いして異界に帰り損ねたんだろ」
「ジャックオーランタン……ですか」
 優しげな顔立ちの若者が息をひいた。そのような説を唱えた者がいただろうか。
「噂では、この地で果てたエインヘリアルの頭部に似たものが出るとか?」
 美麗な青年がいった。すると紫髪の少女が感心したように口を開いた。
「飛頭蛮だかジャックオーランタンだか知らないけれど、首が離れて勝手に動き回るなんて、随分とフリーダムな頭なのねー」
「首だけが群れて襲ってきたら怖そーだな」
 気の強そうな顔立ちの女が笑った。すると、面倒くさげにアルメリアの花を髪に飾った少女が指を振った。
「飛頭蛮は群れないから。でも、飛ぶ頭か。見てみたいな。中国の妖怪らしいけれど、日本でも似た伝承を聞いたこと、あるわ。世界中に、あるのかしら……ねえ、みんなで肝試しとか、どう?」
 興味津々といった様子で提案した少女であるが。すぐに表情をひきしめた。
 寒々とした初冬の夜気。それがさらに凍てついている。膨大な妖気のために。
「――来たみたい、だね」
 ライトの光に優しげな顔立ちの若者の顔が浮かび上がった。
 彼の名は市邨。レプリカントであった。


 闇の中、巨大なモノが空に浮かんでいる。
 泉がライトの光をむけた。浮かび上がったのは巨大な頭である。
 ぎろりとむいた血走った目。大きな口。飛頭蛮――ドリームイーターであった。
「おお、何か出た。残念ながらカボチャじゃなかったな。のっぺりしてるし、瓜の方のジャックオーランタンかもしれんが」
 理がニヤリとした。
 くわっ、と。
 飛頭蛮首が、耳まで裂けたような口を開いた。ぞろりと覗くのは刃に似た歯だ。紫織は、飛頭蛮の眼にどす黒い飢えの光を見とめた。
「頭が大きい方が頭がいいってのはホントなのかね」
 ヴォルフラムがふんと笑った。
「……まあ、こいつはお世辞にも賢くはなさそーだ。それじゃ、挨拶代わりに、こんなのはどーだい!」
 ヴォルフラムは太く長大な銃身を持つライフル銃――バスターライフルをかまえた。
 その時、飛頭蛮が炎を吐き出した。ほぼ同時、ヴォルフラムは飛頭蛮をポイント。撃った。
 煌く光弾が逆巻く紅蓮の炎を穿った。直後、炎がケルベロスたちを飲み込む。
「やってくれたな。が、少し遅かったな」
 狙撃の姿勢のまま、ヴォルフラムが笑った。無傷だ。アレクが庇ったのである。さすがにアレクは姿を消してしまったが。
 他のケルベロスたちの傷も浅い。光弾が炎の威力を削いだためであった。すあまとボクスドラゴンであるナハトに守られたアルメリアと紫織は無論無事である。
「そっ首、撃ち落としてやるよ! 首おいてけならぬ、首落ちてけってな!」
 雄太が人差し指をのばした。
 それは銃口。凝縮したオーラを弾丸と化して雄太は撃った。
 するりと飛頭蛮は動いた。が、意思あるかのように弾丸は軌道を変え、飛頭蛮に食らいついた。
「ぎいっ」
 飛頭蛮がわずかに身を揺らめかせた。その時、すでに雄太は疾駆していた。
 飛ぶ。ジャンプの衝撃で散ったアスファルト片を空に残し、雄太は颶風と変じて飛頭蛮を襲った。脚をぶち込む。
 その時、飛頭蛮は再び口を開いた。炎を吐き出す。紅蓮の濁流に飲み込まれ、火だるまとなった雄太が地に叩きつけられた。
「くうっ」
 雄太が苦悶した。全身が焼けただれている。常人ならば即死の重度の火傷であった。
「磨け、《不語仙》。叢雲流霊華術、弐輪・蓮華」
 小さく叫ぶアルメリアの全身から立ち上る気が雄太の上で結実、紅色の蓮の花と変じた。すると炭化した雄太の皮膚がはらはらと落ちた。分子レベルで肉体が再生されたのである。


 飛頭蛮が動いた。いまだ動けぬ雄太を狙って。
「させません」
 紫織の手から不吉に輝く大鎌が翔んだ。空間ごと斬り裂くように旋回しつつ疾る。が――。
 飛頭蛮が飛燕の如き動きを見せた。風の迅さで空を舞い、大鎌を躱す。空を流れて戻ってきた大鎌を、上げた片手で無造作に紫織はひっ掴んだ。
 地から綱のようなものがはねたのは次の瞬間であった。
 綱――それはつる草であった。蔓触手形態に変形した攻性植物である。
「さあ、蔓、頼んだよ」
 市邨が叫んだ。するとつる草が飛頭蛮にからみついた。
「つかまえられると、飛ぶ頭も形無しですね」
 泉が跳んだ。飛鳥のように十メートル近くの高みにまで。飛頭蛮に肉薄すると、泉はナイフで切り裂いた。
 噴出する瘴気。それは泉のナイフにまとわりついた。吸い取られているのである。刃にこめた虚の力によって。
 ぶちり。
 もがく飛頭蛮がつる草を引きちぎった。いまだ空にある泉の背を襲う。
 一瞬後、空に真紅の花が開いた。肩から噴出する血飛沫である。
 鮮血をしぶかせて舞い降りたのは――おお、ステインだ。泉を庇ったのである。
「くっ」
 ステインは灼けつくような激痛に呻いた。肩の肉をごっそり食いちぎられている。身動きがならない。
 つっと飛頭蛮の口の端が吊り上がった。血と肉の味に喜悦するただれた笑みだ。
 が、ステインに後悔はなかった。美男子は助けておいて損はない。
 その時、するすると理が滑り出た。飛頭蛮の前で立ちはだかる。
「ほら、もっと突っ込んでこいよ」
 理が不敵に笑った。その笑みに怒ったか、飛頭蛮が襲いかかった。迎え撃つ理はただ両手をだらりと下げ、無様な案山子を思わせる。
 交差する二影。次の瞬間、地に叩きつけられた者がある。――飛頭蛮!
「崑崙八仙」
 理の目が凄絶に光った。


 紅色の花びらが開いた。菩薩の如く佇むのはアルメリアだ。
 ステインの肉体が呪術的に修復。のみならず一時的ではあるが強化される。
 同じ時、市邨はすでに身体に装備した砲台の筒口を飛頭蛮にむけていた。
「そもそも蔓がつくってくれた隙。逃すわけにはいかないんだよね」
 フォートレスキャノンが火を噴き、飛頭蛮が爆炎に包まれた。肉が灼かれているのだろう。胸の悪くなる臭いが辺りに満ちた。
 その獄炎の地を走り抜ける影があった。泉だ。一刹那で間合いを詰め、空間ごと斬り裂くように大鎌を疾らせる。
 半顔を焼け爛らせた飛頭蛮が飛燕の如き動きをみせた。が、泉の大鎌は逃さない。
『Genau und Geschwind eins』。ただ、ひたすらに、確実に、斬る。魔の理のもとに繰り出される一撃は、同じ魔の理に生きる魔性をも切り裂いた。
 瘴気の尾をひきつつ、飛頭蛮は空に逃れた。かろうじて致命の一点は外している。
 真紅の奔流が泉に吹きつけられたのは次の瞬間だ。溶岩流と同等の熱量をもった炎の奔流が。さすがの泉も躱しきれない。
「ええいっ」
 ヴォルフラムのバスターライフルが光を噴いた。撃ち込んだ光弾により熱量減少。が、まだ炎は灼熱の温度を保っている。
 炎が泉を吹きくるんだ。あまりの熱量にアスファルトが溶解する。
 灼熱の地に、しかし泉は無傷で立っていた。その眼前、黒焦げとなったヴォルフラムの姿がある。ニッとヴォルフラムは笑った。
「……まだ少し熱かったか」
 再びヴォルフラムはバスターライフルをかまえた。が、トリガーにかけた指に力はない。
 が、それでもヴォルフラムは倒れない。怯まない。そこに守るべき者がいる限り。
 ならば噛み裂くのみ。
 そう決した飛頭蛮が笑うように顔を歪ませつつ、ヴォルフラムを急襲した。
「ぬん!」
 ヴォルフラムを躍りこえた影が地に降り立つなり、迫り来る飛頭蛮に掌打を叩きつけた。
 軽く叩いた。そうとしか見えぬ一撃であったが、飛頭蛮の肉が爆ぜた。影――ステインの掌には螺旋の力が込められていたのである。
 が、苦悶したのはステインも同じであった。裂かれた首から霧のように血が噴出している。
「くっ……は、迅いでございます」
「そうともいえないぜ」
 とどめを刺すべく空で翻った首の前に、地を割って跳んだ影がある。雄太だ。
 今、相討つ瞬速の戦鬼二つ。一つはヒトの姿の、そして一つは頭部だけの異形。
「カッ」
「ぬっ」
 同時に二つの影が動いた。――ように、他の者の眼には映った。実際には、その残像を眼で追ったのみであるが。
 風の迅さで魔物が襲った。が、迎え撃つ雄太の旋蹴――虎尾脚は風を超える迅さをもっている。結果は明らかであった。
「足が無いから、虎の尾を踏んだのに気づかなかったようだな!」
 地に鈍い音が響いた。飛頭蛮が叩きつけられたのだ。
 その時、無造作に紫織が動いた。天すら裂くように大鎌を振りかぶる。ぎらりと大鎌の刃が不吉に輝いた。
 おおん。
 顔面をゆがませた飛頭蛮がふわりと浮き上がった。まだ戦う余力を残しているようである。
 が、飛頭蛮が再び流星のように空を舞う事はなかった。市邨の蔓がとらえているからだ。今や飛頭蛮は蜘蛛の糸に捕らえられた蛾であった。
 大気に亀裂を刻みつつ、紫織の巨鎌が疾った。斬風が吹き荒れ、黒血が舞い上がる。その中から、瘴気を噴いた飛頭蛮がばね仕掛けのように跳ねあがった。
 虚を衝かれた紫織がたじろぐ間に、その喉めがけて飛頭蛮が喰らいつく。殺戮の権化ででもあるかのように。
 ガッ、と岩をうつような音が響いたのは、魔物の牙がイーシアの喉に届く前であった。その口にヴォルフラムが拳を突き込んでいる。
 飛頭蛮の後頭部が炸裂した。爆発的なヴォルフラムのパンチによって。
 が、ヴォルフラムの腕も噛み裂かれた。皮膚一枚でつながっている状態だ。
 おおおおお。
 魔物の眼が虚ろに見開かれた。その目が映しているのは死神にも似た存在である。その手には大鎌が握られていた。
 無論、飛頭蛮はその死神の名が理であるという事は知らぬ。ただ、理から発せられる凄愴の鬼気のみはわかった。
 故に、残る命の雫を振り絞って飛頭蛮は化鳥のように飛んだ。が、その飛翔はかつての精彩さを欠いていた。
「伝説の妖怪よ」
 理は大鎌を振りかぶり――。
「伝説に還れ」
 一気に斬り下げた。


 眠っていた少年を泉が揺り起こした。ややあって少年がうっすらと目を開く。アルメリアが気だるげに微笑みかけた。
「大丈夫? 怪談、好きなのかしら。見て、みたいわね。飛ぶ頭のお化け」
 少年はきょとんとして辺りを見回した。どうやら魔女の記憶はないようだ。
 と、少し離れたところで舌打ちの音がした。ステインだ。
「こんないたちごっこもいつまでも続けてらんねえ。魔女っこクラブともどこかで決着つけちまいたいが……」
 魔女の居所がつかめぬ以上、どうしようもない。それよりも――。
「イケメンと一緒に夜道を進むとか、依頼じゃなければワンチャンあった気がする」
 ステインはがくりと肩をおとした。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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