アポロン暗殺作戦~打ち砕け、最後の砦!

作者:ハル


「皆さん、大変です!」 
 集まったケルベロスを前に、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が興奮した様子で切り出す。
「例の山間部で発生していた飢餓ローカストの事件を見事解決した、御子神・宵一(e02829)さん達多くのケルベロスの調査によって、太陽神アポロンとローカストの残党が結集している拠点を発見する事に成功しました!」
 その報告に、セリカのみならずケルベロス達も息を呑む。
「敵の拠点は、アポロンが潜む急増の神殿らしき建物の周囲を、有力なローカスト氏族がグルリと囲むように布陣していますが、グラビティ・チェインが枯渇している影響か、周囲への警戒心が疎かになっています」
 そのため、今このタイミングならばアポロン神殿に直接乗り込み、太陽神アポロンを暗殺することが充分に可能だろう。
「アポロンさえ倒すことができれば、ローカストウォーの効果も消え、ローカスト達の組織が自然と崩壊に向かっていくと思われます」
 しかし、そこへ辿り着くまでの道も困難だ。神殿には、名のあるローカストの護衛が居る可能性が高い。
「それに加え、神殿が襲撃されれば、周囲のローカスト達も援軍を出すはずです」
 太陽神アポロンを暗殺する部隊を中心に、神殿の護衛を対処する班と、周辺の有力ローカストに奇襲をかけて、援軍を出させないよう牽制する班が協力する事で、作戦を成功に導くことができるだろう。


「そこで、皆さんにはアポロンとの戦いに赴く班を護衛し、アポロンがいる神殿中枢の直前を防衛している、最後の壁となるローカストを撃破して欲しいのです」
 セリカは言いながら、ケルベロス達に資料を配る。
「撃破して頂きたいローカストの名は――蹂躙蟲ダイオーグです。体長7メートル程で、ダイオウグソムシのような見た目をしています。チェーンソーのような鋭い多脚爪はもちろんの事、なによりも皆さんに気を付けて頂きたいのは、その耐久性です」
 巨体に見合うだけの体力を有し、質量を裏切らない攻撃力を持っているのだ。ただ、その弊害として、動きはそれ程速くはないと思われるのが、救いだろうか。
 また、知性はないが、主人に忠実で、ダイオーグがアポロンを裏切る可能性は皆無といっていいだろう
「蹂躙蟲ダイオーグを突破しない限り、太陽神アポロンの元まで突入する事すらできません。太陽神アポロンと戦う班が、全力で心置きなく戦えるかどうかは、皆さんにかかっています!」
 セリカは資料を捲り、ダイオーグの詳細な説明に入る。
「先程も言った通り、ダイオーグはとにかく大きく、堅いです。攻撃手段も、チェーンソーのように鋭い多脚爪による踏みつけに加え、その巨体を生かしたもの」 
 それは、身体をボールのように丸めて転がりながら、障害物を蹴散らすというものだ。
「真面に喰らってしまえば、甚大な被害は免れません。まして、アポロンの座す扉の前の狭い空間で戦うことになるので、危険性はさらに増すでしょう」
 それに加え、ダイオーグはオウガメタルを纏っている。銀色の輝く装甲は、それによるものだ。
「それにより、絶望の黒光すらも自在に操るようなのです」
 聞けば聞くほどに厄介な敵である。扉の前は狭いため、8人以上は戦闘には加われない。おまけに、ダイオーグが扉を完全に塞ぎ、ダイオーグを無視することもできないのだ。
「蹂躙蟲ダイオーグは確かに強敵です。ですが、ダイオーグを倒せないようでは、太陽神アポロン撃破など夢のまた夢! 戦いをここで終わらせるためにも、最後の扉を皆さんで開いてください!!」


参加者
マイ・カスタム(重モビルクノイチ・e00399)
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
塚原・宗近(地獄の重撃・e02426)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
神条・霞(魂を喰らう羅刹姫・e04188)
ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)
レイン・プラング(解析屋・e23893)
ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979)

■リプレイ


「……繋がらない、な」
 ふぅーと息を吐きつつ、マイ・カスタム(重モビルクノイチ・e00399)は仲間を振り返る。
「こちらも、同じです」
「まぁ、しょうがない。いわばここは敵の腹の中、そこまで甘くはないってことだね」
 マイに問われるまでもなく、レイン・プラング(解析屋・e23893)が首を横に振り、ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)は肩を竦めて見せる。
 何度試してみても、結果は同じ。携帯もネットも圏外であった。つまり、敵の増援があったとしても、知らせを送ることも受け取ることもできないという事。
「ほーら、元気ないぞっ? やるべき事は何も変わらない、そうでしょっ♪」
 神殿に足を踏み入れた瞬間から分かっていた事とはいえ、落胆を隠しきれない仲間に、リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が満面の笑みを浮かべて告げる。割り切るべき所は迷わず割り切る。そんな彼女の快活さに、仲間の表情が幾分和らいだ。
「リディさんの言う通り。私達の仕事は、門を抉じ開ける事です」
「だな、血路を拓く。それだけだ」
 ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979)が、仲間に柔らかい笑みを向けると、応じるように新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)も頷いた。
「……それにしても、薄暗いですね」
 話が一段落した所で、神条・霞(魂を喰らう羅刹姫・e04188)がポツリと呟く。霞の言う通り、神殿内は確かに薄暗かった。警戒しながらも、歩いた距離は短くはないはずで、もうそろそろ中枢に辿り着いてもよさそうなものだが――。
「……ん、行き止まり……かな?」
 進路の安全を確保をしようとして、塚原・宗近(地獄の重撃・e02426)が行き止まりになっていた目の前の壁に手をつく。だが、何かがおかしい。壁に触れる手には、ほのかな体温の暖かみ。そして、宗近の真横にボタリッと、粘着性の大粒の液体が零れ落ちてくる。
「……てっきり壁かと思っていましたが、これは……」
 レインはゆっくりと後退しながら、その壁だと思っていた何かの全容を見ようとする。
 そして、知性の無い瞳と、視線が交錯した。
 確かに、巨大な敵ゆえ見つけやすいという先入観を捨ててしまえば、眼前のそれ――蹂躙蟲ダイオーグは、銀色に輝く装甲が目印となるだろう。
 だが、そんなものは結果論に過ぎない。誰も道を塞ぐ壁のような身体が敵とは思わず、薄暗さの原因がダイオーグの影だとは気づけない。
 まさしくそれは、見上げる程の……三階建てのビルに匹敵する巨体が、ゆっくりと蠢き出す。
「ウ、ウウウ、ヴヴヴヴッッ!!!」
 ケルベロスの存在を認識し、動き出したダイオーグの瞳に、たった一つの感情が宿る。それは、アポロンの盾となるという、忠誠心一色であった。


「下がって!」
 宗近の檄が飛ぶ。耐久力のある宗近が最もダイオーグの傍にいたのは、幸運と言っていいだろう。
 檄が飛び、仲間達が陣形を整えようとしている最中、ボールのように身体を丸め、転がるダイオーグの突進は宗近の間近に迫っていた。
「……っ!!」
 ダイオーグが前進する度に、神殿に轟音と激しい揺れ。宗近は歯を噛みしめると、猛然と襲い来るダイオーグを真っ向から受け止めに掛かった。 全てを込められた正確無比な斬撃とダイオーグが激突し、摩擦で地面を抉り、靴から火花を散らしながら、宗近の身体がものすごい勢いで押し流される。
「塚原さんっ!? くっ、敵には容赦しないよ、この道は必ずこじ開けるっ!!」
 周囲を巻き込む突進に自身も巻きこれまながら、宗近と違い正面衝突だけは避けたリディが、あまりの勢いと衝撃に思わず声を上げる。だが、仲間を守るため、一瞬でリディは心の内を切り替えると、進撃するダイオーグの横っ腹に煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダイオーグの軌道をズラす事に成功した。
 途端に制御を失ったダイオーグは、轟音と共に壁に激突する。
 この隙を逃してなるものか! 霞が目を見開き、一房の白と黒の混じり合った髪が揺らす。
「義嗣……力を貸してください……っ!」
 魂喰の妖刀【義嗣】に、空の霊力を帯びさせ、霞はリディが攻撃した場所を狙って斬り掛かった。
 だが――。
 ガキンッ! まるで石でも斬りつけたかのような衝撃、手応えに、霞は思わず歯嚙みする。
「お前達との付き合いも長いんで、そろそろ店じまいといきたいが、やっぱそう簡単にはいかないみたいだね」
 ククロイは、言いながらニッと笑った。手応えのある病原体を駆逐すれば、後の達成感も大きなものになる。しかし、集中治療はまだまだ始まったばかり。元凶に辿り着くため、ククロイはローカスト達との戦闘データを過剰にフィードバックし、足に玉虫色のエネルギーを溜める。
「お前らから得た技だ! よぉく味わえッ!!」
 次の瞬間、踏み込んだククロイの姿が掻き消えた。ようやくダイオーグの視界に入ったククロイは、すでにダイオーグに蹴りを叩き込んで後の事。
「ヴヴヴーー!?」
 ベコリとダイオーグの外殻がヘコみ、その巨体がグラリと揺れる。
 あの阿修羅クワガタの装甲ですら破れたのだ。ダイオーグの装甲が破れぬ道理など、どこにもない。
「てぃー坊、頼んだ!」
 久々の感覚――『苦痛』を思い出したであろうダイオーグの視界を眩ますように、マイの指示を受けたてぃー坊が閃光を煌めかせる。
「撃ち貫く!」
 閃光により、ダイオーグが一瞬目を閉じた瞬間を見計らって、マイの放った大量のミサイルがダイオーグの装甲に当たって次々と爆発を引き起こす。
「ヴ、ヴヴ、ア゛ア゛ア゛アアアッッ!!」
 その時、それまで身体を丸めるように身を守っていたダイオーグが牙を剥く。挑発を続けていたてぃー坊が、チェーンソーのように蠢く多脚爪の踏みつけを受けたのだ。
「身体は衰えても、判断力まで衰えたつもりはありませんよ」
 最後方から戦況を冷静に見つめながら、ガラティンはレイピアの仕込み杖――紫電を掌でクルリと弄んだ。ガラティンが刃の反対……杖頭を頭上に掲げると、前衛の前に雷の壁を張り巡らせようとする。
 だが、ダイオーグも黙ってはいない。本能的にガラティンの動きを阻止しようと、ダイオーグが黒太陽を具現化しようとして……。
「逃がさん」
 いつの間にか恭平が網を張っていた鎖が、精神操作により自由自在にダイオーグの周囲を這い回り、その身体を雁字搦めに縛り付けてしまう。
 恭平がそうするであろうことを読んでいたガラティンが微笑みを浮かべると、恭平は目深に被ったハットで目元を隠す。
「攻撃に移ると素早いですが、それ以外は比較的動きは遅いですね。遅いといっても、この狭い空間では脅威ですけど……」
 仮にダイオーグが助走をつけられる広さがあったなら、一撃はさらに威力を高めていたかも知れない。そう思うと、狭い空間であった事が幸運と呼べなくもない。
「アポロンとの戦いを終わらすためにも、この道、切り開かせてもらいます……!」
 ダイオーグの動きを解析しながら、レインのドリルのように回転する一撃が、ダイオーグの外殻に着実に歪みを生み出していた。


「てぃー坊!?」
 今日何度目か分からないローリング攻撃が、前衛と中衛を巻き込んで繰り出される。威力こそ一撃必殺と呼べる程ではないが、それでも範囲が広く、着実にケルベロス達を削っている。
 中でも、ダイオーグへの挑発を行っていた、てぃー坊への被害は甚大だ。最後の力を振り絞り、てぃー坊が応援動画を流すと、その画面がプツリと消えて意識を失う。
「……こんなところで、負けるものかっ」
 相棒の奮闘に花を添えるため、マイが内出血だらけの身体で闘志を燃やす。元々、ダイオーグは彼女と因縁がある。今まであまり意識することもなく、アポロンへの障害としか思っていなかったが……。
「少し、気が変わりました。まだいけますよ!」
 闘志を燃やしながらも、頭の中は冷静だ。被害を最小限に抑えるため、マイがヒールエネルギーを纏わせ、通電する事で、同じく傷を負った仲間の攻撃手を万全の状態に。
「神条ちゃん!」
「ええ、行きましょう!」
 マイの援護を受けたリディが、霞に合図を送る。友達同士、息の合ったコンビネーションでダイオーグの両脇を駆けると、ダイオーグは攻撃目標に一瞬の迷いを見せた。
 だが、その一瞬さえあれば、ケルベロスにとっては充分すぎる時間。
「砕ケ散レエエェェ!!!」
 遅れて多脚爪でのし掛かろうとするダイオーグの頭を、巨大な鉤爪を持った縛霊手に形状変化した、霞の魂喰の妖刀【闇外道】がガッチリと固定し、握りつぶす。
 ダイオーグが暴れる度に、多脚爪が霞の肌を切り裂き、一面白となった髪を赤で染めるが、緋色の瞳はダイオーグを解放するつもりなどないと、何よりも雄弁に語っている。
「今です!」
「了解だよ!」
 今度は霞からの合図。オラトリアの力の一端を解放していたリディによって、時間の流れがゆっくりになる。暴れるダイオーグは、霞に加え、リディの拘束を抜けるために、相当な消耗をしたはずだ。
「狙いを付ける必要もないのは、ありがたい事なんだけれどね」
 宗近が鉄塊剣を振り上げ、豪快で重厚無比な一撃を与えると、ダイオーグの装甲に罅が入った。
 なによりも厄介なのは、その耐久性だ。相当なダメージを与えているはずなのに、ダイオーグは倒れない。
「動きは鈍くなってきているはずなのですが……!」
 そうなれば、当然敵の回避パターンを読むのも楽になってくる。事実、レインの放つグラビティの弾丸は、ダイオーグの動きを先回りし、ナイフで切り裂くことも楽にできていた。
 ガラティンが、チラリと時間を確認する。短期決戦を目指していたが、予想以上に時間がかかってしまっていた。
「増援の気配が今の所ないのは、僥倖なのでしょうがね」
 少なくともアポロンを除けば、ケルベロス達の動きはもう察知されているはず。それだけ、足止め部隊が頑張ってくれているという事なのだろう。ここで、自分達が一秒、1分であろうとも早く始末をつけられれば、それはきっと価値ある時間になるはずだ。
「もうふと踏ん張りです! 『核再生』!」
 ガラティンが、自然治癒の力を増幅させる癒やしの力を宗近に与える。
 やはり、ディフェンダーのマイと宗近に蓄積したダメージと疲労は、回復でもなかなか追いつかない程に色濃いものがある。
「ヴアアアアッッ!!」
 それゆえ、ダイオーグが後衛に照射した絶望の黒光を防ぐことは、間一髪間に合わなかった。
 恭平の全身から、血が噴き出す。その傷口を押さえながらも、恭平は不敵に言って見せた。
「まだやれるぞ、そうだろう?」
 恭平が自分の傷も気にせず、発破をかけるようにマイに緊急手術を行う。辛いのは誰だって同じで、弱音なんか吐いてはいられない。いつか祖父を見返すために、恭平は踏ん張ってみせる。
「デカい図体だけあって、さすがにしぶとい! だけど、いい加減墜ちろ、喰らい尽くせ、アギトォ!!」
 ククロイの漆黒のアギトが、ダイオーグの巨体を丸ごと飲み込み、暗闇に引きずり込む。
 すると、これまでに蓄積したバットステータスの影響か、ダイオーグの動きがさらに鈍くなり、ローリング攻撃はまったく見当違いの壁に激突した。
「新城さん、援護を!」
「ああ、今しかない! 焼き尽くせ」  
 恭平が掌から「ドラゴンの幻影」を放ち、ダイオーグを火達磨に変えて怯ませる。
 そこに、リディが具現化した光の剣での斬撃が刻まれ、ついにダイオーグの外殻に風穴を開けた!
「これは、どうですか……!」
 ケルベロスの追撃は止まらない。できた風穴に、レインがチェーンソー剣を突き刺して、ググッと力を込めると、ダイオーグの傷口が大きく広がり、あまりの苦痛にダイオーグが悶え苦しみ出す。
「レインさん、私も!」
 さらに霞が、傷口に雷の霊力を帯びた【義嗣】を突き立てると、閃光が神殿内に迸り、ダイオーグが内部から煙を上げ始める。
「後は任せましたよ! ここで決めましょう!」
「ああ、任された!」
 ガラティンがククロイに緊急手術を施す。ディフェンダーの消耗も激しいために、判断に迷った末の選択ではあるが、少しでも早くダイオーグを撃破するためには、攻撃力のあるククロイに託すのが最善であるとガラティンは判断したのだ。
「いい判断だ」
「当然だね、僕だってまだまだ行けるさ」
 もう今にでも倒れそうなくらいに消耗しているはずなのに、マイと宗近は軽口を叩きながら笑って見せる。
 眼前からローリングで迫るダイオーグを受け止めるため、二人は最後の力を振り絞ろうとして――ふいを突かれる。
「なっ!?」
 宗近の驚愕も無理はない。ローリング攻撃をしてくると思われたダイオーグは、直前で急停止すると、多脚爪での踏みつけに攻撃手段を変更したのだ。それは、知性ではなく、まさしく本能。
「おおおぉぉぉ!」
 反射的に、マイは肘から先のドリルで応戦するが、巨体にのし掛かられ、至る所を切り裂かれてしまう。
「っ……しくじったか」
「そこをどけええ!!」
 マイを救出するために、宗近の正確無比な斬撃が、初撃以上の迫力を伴ってダイオーグに襲いかかる。
 そして――。
「待たせたね」
 意識を朦朧とさせるマイと宗近の耳に、そのククロイの声が届いた。
 ククロイは、一陣の風となって跳躍していた。天高くから降り注ぐ、流星のようなその一撃は……。
「これが俺のローカストキックッ!! 同胞の技で逝ケェェェッッ!!」
 彼らローカストの必殺技に他ならない。その玉虫色の軌跡に彩られた飛び蹴りは、ダイオーグの身体を貫き、生命活動を完全に停止させるのであった……。

 ダイオーグの死を確認して、ケルベロス達の口元に笑みが浮かびかけた瞬間。
 大歓声が巻き起こった。
 それは、勝利の瞬間を今か今かと待ち侘びていただろう、暗殺部隊本隊からのもの。
 興奮冷めやらぬ様子で拳を掲げる彼らに、ケルベロス達も応じると、また歓声。
 一先ず、動けないマイと宗近の治療を終えると、
「道は開いた。神をも打ち倒し、終わりにして来い!」
「――うん、行ってくるよ」
 ようやく開け放たれた扉。その脇に立ちながら、恭平は陽葉と拳を打ち合わせる。
 他の面々も、思い思いの覚悟、気持ちを込めて、完全勝利を願って送り出した。
 やがて、ゆっくりと扉が閉められようとした時。
「この場は出来る限り死守します――みなさんもどうかご無事で」
 レインは、その背に最後の言葉を送った。
「(私達の意志、貴方達に託しましたよ)」
 ガラティンの意思は、先の戦闘でしっかりと示せたはずだ。あとはもう、信じる他にない。
「もうひと頑張りだよっ♪」
「はい!」
 静寂を取り戻した扉の前で、リディと霞が笑顔で言う。
 ケルベロス達は覚悟を新たに、扉の前に立ち塞がるのだった……。 

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年12月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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